星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

二月花形歌舞伎 夜の部(3)蜘蛛絲梓弦

2009-03-06 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    二月花形歌舞伎 夜の部
劇場     大阪松竹座
観劇日    2009年2月22日(日)
座席     1階1列

去年の博多座の時は千秋楽が終わった後に感想を書きづらくて、この演
目だけアップしなかったが、当時のメモをみると「いやー、めちゃ面白
かった」と書いてあった♪
今年の大阪編も千秋楽後になってしまったけど、アップしちゃえ。
日を追うごとに熱気が増す松竹座の観客を、連夜、絲でからめて大興奮に
陥れていたのが、この最後の演目「蜘蛛絲梓弦」。
内容としては能の『土蜘(つちぐも)』を題材にした変化舞踊の一つだ
そうで、亀治郎さんが六変化の大活躍! 
妖怪亀ちゃんがどこから現れ、どこへ消えるか。
ハラハラ、ドキドキだ。
博多で一度は見たものの、その時は出の場所をカンペキに騙された。
8日に3階で観たときも、やっぱり騙された。
今日こそめざせ、完全版!


■蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)
市川亀治郎六変化相勤め申し候


傾城薄雲・童・薬売り・番新・座頭・蜘蛛の精:亀治郎
源頼光:勘太郎  碓井貞光:獅童  坂田金時:亀鶴
卜部季武:七之助  渡辺綱:男女蔵  平井保昌:愛之助


源頼光の館。病に伏せっている頼光を守護して、四天王の碓井貞光と
坂田金時が宿直(とのい)をしている。そこに頼光の命をねらう女郎
蜘蛛の精が、童、薬売り、番新(番頭新造)、座頭、傾城薄雲と、
次々に姿を変えて現れ、最後には本性を現す。



物の怪に取り憑かれ、病に臥している源頼光。
しかし、頼りになるはずの宿直役の碓井貞光と坂田金時が、なぜかすぐ
に眠ってしまうんだよねえ。これこそ妖怪のしわざ。
毎回、取り逃がしては「いずれも様には面目次第もございません」と謝
るのが可笑しくて(笑)。
獅童さん、すっきりシャープな顔の貞光。
亀鶴さん、荒武者のメイクがなかなか似合う。

さて、その妖怪とは?
(1)童 熨斗丸
舞台が薄暗くなり、スッポンから現れる童女が一人。客席大騒ぎ!
長い髪を顔の両サイドに分けて垂らした、きり禿の熨斗丸は、目のフチ
を赤く塗ったりして、妖気を宿した目つき。
眠気覚ましのお茶を所望した貞光と金時に、からくり人形のようにツツ
ツーと近づいてお茶を出す。
二人は童女と仲良く凧揚げ、馬乗りごっこなんかをして遊んでしまう。
ハタと気づいた二人。熨斗丸やばっ。
蜘蛛の糸を投げて、逃げる先は下手に仕掛けた御簾の中。

(2)薬売り 彦作
宿直を続ける二人。眠気覚ましに煙管で一服中。
そこへ現れる薬売り。帽子にチャンチャンコ。ニコニコ笑い。
え? どこから来たの? 知らなきゃ全然わからない。
ナント! 上手に並んだ常盤津の赤い見台が1つひっくり返り、その下
から出てきちゃった。
客席に向かってセールスしたり、調子のいい薬売り。
万病に効く薬があると二人に言いよる。が。
これも見破られ、またもや糸を投げ、スッポンの中へ足からピョーンと。

(3)番頭新造 八重垣
花道から小走りで出てくるのは番頭新造。はやっ。
「また来ましたー」と言うや、場内大歓迎ムードで拍手の嵐。
番頭新造とは廓のマネージャーみたいな人だと、イヤホンガイドが言っ
ていた。薄雲太夫から頼光様への手紙を預かってきたと言う。
その手紙を3人でいっしょに読んでいる。
(本当に字が書かれていて、「頼光様へ」という文字が読めた!)
これもやっぱりヘンだというので、バレちゃった番頭新造は糸を投げ、
座敷奥の紐をつたって天井へと昇り、消えてしまう。

(4)座頭 亀市
花道のチャリン! おっと、これはフェイントやね。
この日はもう騙されないぞ。
舞台正面。座敷の下にある黒い階段から出るよ。ほら出た!
奥州座頭の亀市。
杖をつき、目が見えないはずなのにもう所定の場所に(笑)。
仙台浄瑠璃を聴かせてほしい、とリクエストする貞光と金時。
はいよ、と、すわりこんで三味線で弾き語りする亀市。
目を剥き、エアーギターならぬエアー三味線でノリノリの亀市に
(↑これ、エアーじゃなく本当に三味線を持っていました)
場内拍手喝采。ときどき目があく、茶目っ気たっぷりの妖怪だよ。
ほらほらバレたやん。またまた糸を投げ、座敷にある火鉢の中へ!

ついに妖怪を追いかけてゆく貞光と金時、花道へ。

(5)傾城薄雲
頼光の寝所。御簾がかかっている。
そこへ天井からツツツーとおりてくる蜘蛛。デカッ!!!
広がる8本の足がユラユラゆれている。キモイ~。
どうやら寝所の様子をうかがっているようだ。
御簾が上がって、病気の頼光といっしょにいるのは薄雲太夫。
髪にささった8本のかんざしが、さっきの蜘蛛の足そっくり(笑)。
薄雲→薄蜘蛛に違いない!
頼光がついに太夫の魔の手にかかろうとしたその時、頼光の持ってい
る宝刀「膝丸」が妖気を察知。頼光、膝丸で斬りかかる。
悔しがりつつ、またもや千筋の糸を投げ、逃げる傾城薄雲。
(あれ? どこに消えたんだっけ? 失念!悔し~~。)

大騒ぎを聞きつけ、やってきた渡辺綱(男女蔵さん)と卜部季武
(七之助さん)。立ち役の七之助さんがりりしい。
我が君様と3人で妖しの蜘蛛退治に出かける。

(6)蜘蛛の精
舞台全体に大きな蜘蛛の巣がかかっている。
いや、そういう絵が描かれた黒地の幕が下りている。
その前で語り始めるのは、大薩摩(江戸浄瑠璃の一派)。
片足を台に乗せて聴かせる三味線。これ、博多で初めて見た時にカッ
コいい~~と思ったんですよ。今回も魅せてくれます。
大薩摩を聴きながら、舞台はいよいよ大詰に。

舞台中央のせりがあがって、出たー。すごい顔だよ。
蜘蛛の精は葛城山に住む女郎蜘蛛で、日本を魔界に変えようとして
いたらしい。
化け物の隈取をした蜘蛛の精。背景はまばゆいばかりの紅葉。
したがえるのは、グレー地に蜘蛛の絵の衣装をつけた蜘蛛四天たち。
ぞろぞろっと連なって動く様子が蜘蛛の足っぽい。
博多座よりもひときわスケールの大きい舞台装置。
迫力が松竹座サイズにパワーアップしている。

妖怪を追いかけて花道からやってきた頼光様ご一行。
おお~、壮観!
碓井貞光(獅童)、卜部季武(七之助)、坂田金時(亀鶴)、
渡辺綱(男女蔵)とともに化け物退治に向かう5人衆。

舞台で見せる立ち回りが見せ場、というかショーになっている。
6人並んで所作板を響かせる足踏みがメチャメチャかっこいい。
タップダンスみたいだ。ゾクゾク~♪
ぶっかえって、蜘蛛の糸を投げつける蜘蛛の精。赤い舌を見せつけ
ながら逃げるよ、花道へ。
・・・と、花道の奥のほうから声が聞こえてくる。
来たよ、来たよ。
花道に逃げる蜘蛛を押し戻すのは、力だすき、髪に力紙のいかにも
怪力そうな平井保昌。愛之助さんだよ!
でかい、太い、もこもこ、パンパン、顔もすっげー。
大向こうの声やら、観客の拍手やらで声がかき消されたけれど、何
やらこんなふうに言ってたっけ。
・・・集合かかって松竹座にきてみれば、近頃、クイズのQさま!!
で大人気の亀治郎によく似た男。風林火山はもう古い。(←コレ、
博多座でも言ってましたね。)今年の漢字は天地人。直江兼続の兜
には愛の字が。愛といえば愛之助。(だったっけ?)我が君様には
愛がいる。(ここ勘太郎さんの顔を見たけど神妙な顔してるの。)
・・・立ち回りがあって、いよいよ蜘蛛の精の断末魔。

最後は7人衆がそろったところで糸を投げる亀治郎さん。
舞台の上は蜘蛛の糸だらけ。出演者も観客も糸に絡まって、拍手や
ら声やらで、興奮のうちに幕切れ。

そのまま拍手鳴り止まず、カーテンコールへ。
幕があくと7人衆が。真ん中に亀治郎さんがいてハデなポーズをつ
けながら全員で三方礼。
最後は7人が座礼したまま幕が下りてゆく・・・。完!

あ~、楽しかった。一度経験するとやめられません。蜘蛛の糸!
私の膝の上にあった蜘蛛の糸は、黒子さんが手際よくスルスル巻き
あげて、手元には残らなかった・・・。
でも、亀治郎さんの口上に始まったこの日は、すごいエネルギーを
もらった。素敵だ、7人衆♪
また来年も来てくださーい!!


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2 コメント

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うわー! ()
2009-03-06 23:51:29
ムンパリさんの感想を読んだだけで、
ワクワク♪ドキドキ♪しちゃいましたー。
この演目、観たかったなぁ。
皆さんが大絶賛してるのを読んでは、
羨ましく思ってました。
「女殺油地獄」も観てみたかったし、、、。

大阪歌舞伎は勢いがあって、熱いですねぇ♪
めちゃくちゃ羨ましいぞ。(笑)
返信する
関西ではあまり見られないから・・・ (ムンパリ)
2009-03-07 00:46:49
麗さん、はい、これはもう誰が見ても興奮します(笑)。
ジャンルを超えたエンターテイメントとして、文句なしに
楽しめますもん。
女殺油地獄も、芝居としてホントに面白いと思います。
関西で歌舞伎が見られるのは1年の半分もないから、
毎月、それも複数の劇場で歌舞伎が見られる東京と違うから、
こういうのがあるとスゴ~ク嬉しいんですよ!

こうして今までずうっと糸にからめとられたままだったので、
火星に行った日記を書きそびれています(苦笑)。
8割ぐらい書いてあるので早くアップしたいんだけど。
でも感想文は提出できましたよ♪
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