オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

新形三十六怪撰より 「藤原秀郷竜宮城蜈蚣を射るの図」

2018-09-16 | 新形三十六怪撰

~ 南無八幡大菩薩、加護を下し給へ... ~

『藤原秀郷龍宮城蜈蚣を射るの図』

(ふじわらのひでさと りゅうぐうじょう むかでをいるの ず)

 

大蘇芳年筆

 

藤原秀郷(ふじわらのひでさと)は平安時代中期の貴族、武将


朱雀天皇の時代、俵藤太秀郷(たわらのとうだひでさと)という武将が

瀬田の唐橋を渡ろうとすると一匹の大蛇が寝そべっていて誰も通れません

しかし勇敢な藤太は気にもせず踏みつけて通ったのでした。

その夜、藤太の前に美しい娘が現れて「私は瀬田川に住む龍王の娘です

大蛇に変身していたのはあなたのような勇敢な人物を探していたのです

どうか、三神山に住む大ムカデが琵琶湖を荒らすので退治して欲しい」 と依頼されます。

藤太はこれを快諾し、大ムカデ退治に三上山に向かいます

しかしこの大ムカデ、三上山を七回半も巻くほどの怪物で

藤太の放った弓をはね飛ばしてしまいます。

藤太は最後に残った矢の先に唾をつけて、南無八幡大菩薩と祈って矢を放つと

これが見事に大ムカデの眉間に命中し、無事退治することが出来ました。


龍神の娘はお礼として、織っても尽きぬ絹、食べても尽きぬ米俵

いくら食べても尽きぬ鍋をおいて、どこともなく帰っていきます

数日後、再び龍王の娘が再び訪ねてきて誘われるままに

琵琶湖の深底にあるという龍宮城に案内され酒宴を受け

龍王から、ムカデ退治の恩として黄金札の鎧、太刀一振り

赤銅の釣鐘を贈られたのでした。

御伽草子「俵藤太物語」より





新形三十六怪撰より 「老婆鬼腕を持去る図」

2018-09-15 | 新形三十六怪撰

渡辺綱の伯母に化けて自分の片腕を奪い返した茨木童子

『老婆鬼腕を持去る図』

(ろうば きわんを もちさる ず)

大蘇芳年筆

 

『一条戻橋』

深夜、渡辺綱(わたなべのつな)が一条大宮から帰る途中

若い女性が道に困っていたため馬に乗せてやると、女は突然鬼の姿になって

綱の髪の毛を掴み空中に飛び上がって、愛宕山に連れ去ろうとしたが

綱は慌てず名刀・髭切を抜き、鬼の腕を切って難を逃れた。

綱は切り取った鬼の腕を源頼光に見せ、頼光が安倍晴明に相談すると

「必ず鬼が腕を取り返しにやって来るから、七日の間家に閉じこもり

物忌みをし、その間は誰も家の中に入れないように」と言われ

鬼の腕を唐櫃(からびつ)に封じて仁王経が読誦される事となった。

ついに七日目の晩になって、摂津の国から綱の伯母が綱の屋敷にやってきた

綱は事情を話し、決して伯母を屋敷に入れなかったが

年老いた伯母は「幼いころ大切に育てた報いがこの仕打ちか」と嘆き悲しんだので

綱は仕方なく言いつけを破って伯母を屋敷に入れる。

伯母は、綱が切り取ったと言う鬼の腕を見たいと言い

封印された唐櫃から出されてきた腕を眺めていたが、突然鬼の姿になり 

「これは吾が手だ、持っていくぞ。」 と言うと飛び上がり

破風を蹴破って虚空に消えたという。





新形三十六怪撰より 「小早川隆景彦山ノ天狗問答之図」

2018-09-14 | 新形三十六怪撰

~ 普天のもと、王土にあらずということなし ~

『小早川隆景彦山ノ天狗問答之図』

こばやかわたかかげ ひこさんの てんぐもんどうの ず

 

大蘇芳年筆

 

小早川隆景(こばやかわたかかげ)は戦国時代~安土桃山時代の武将


秀吉の命により九州の彦山から木材を切り出そうとした隆景の前に現れた天狗と

隆景(スリットの向こうに見える人物)のやりとりを描いています


山伏は隆景に向かって 「この山の木々は、千年以上も切られたことのない

神木である、それを切り出し軍船に仕立てるとは何事か。天下に名高き仁将である

小早川隆景殿がそのような悪逆無道をするとはどうしたことか」 と言った。

隆景は、山伏の異様な外見を見て即座に「これは天狗だな」と見抜いていた

そこで隆景は怖じた様子も見せずに 「確かに、この隆景が私利私欲のために

神木を切るというのであれば、非難されても仕方がない。

だがこれは天子様の代行である関白秀吉殿のご命令であり

私はその奉行として罷り出でたのだ。

山伏殿こそ神木如きにこだわって、公儀を蔑ろにしているではないか

それこそが無道に値しないのか」 と切り返した。

対する山伏(彦山天狗)は隆景に反論することができず

霞のように消え去ったという。

              出典元:ニコニコ大百科





新形三十六怪撰より 「大物之浦ニ霊平知盛海上ニ出現之図」

2018-09-12 | 新形三十六怪撰

~ 見るべき程の事は見つ いまは自害せん ~

『大物之浦ニ霊平知盛海上ニ出現之図』

だいもつのうらに れい たいらのとももり かいじょうに しゅつげんの ず

大蘇芳年筆

 

平知盛(たいらのとももり)は平安時代末期の武将。平清盛の四男

 

源平合戦の功績ありながら兄頼朝と不和になり

都を追われ西国へ落ち延びる身となった源義経

摂津国・大物浦から船を漕ぎ出し、一行は瀬戸内海を西へ進む

ところが出発して暫くすると にわかの暴風に見舞われ

高波に舵を取られて船中は大きく揺れ動く。 そして

壇ノ浦で滅んだ平家一門の亡霊が、行く手の海上に現れた。

安徳天皇を中心に、勢揃いした平家一門の亡霊たち

その中でもひときわ禍々しい妖気を放つ一人の武将

彼こそ、滅びゆく平家一門の全てを見届け

壇ノ浦の露と消えた総大将・平知盛の怨霊であった。

「義経よ、ここで会うとは珍しい・・・。そなたに追い詰められた我等の末路と同じように

今度はそなたを海の藻屑としてくれようぞ」 知盛は一行の船に襲いかかる。

応戦する義経。しかし相手は亡霊、刀では対抗できない

弁慶は義経を押しとどめると、数珠を押し揉み、法力によって撃退しようとする。

弁慶の祈祷とともに亡霊の姿は次第に遠ざかる

怨霊の群れから逃げるべく船頭は渾身の力で船を漕ぐ

なおも迫り来る亡魂を祈りによって追い払い、遂に船は逃げきることができた。

あとには波の音だけが、そこには残っているのだった。。。

能楽「船弁慶」より


 

 


新形三十六怪撰より 「平惟茂戸隠山に悪鬼を退治す図」

2018-09-10 | 新形三十六怪撰

~ 惟茂少しも騒ぎ給わず 南無や八幡大菩薩と 心に念じ ~

『平惟茂戸隠山に悪鬼を退治す図』

たいらのこれもち とがくしやまに あっきをたいじす

 

 大蘇芳年筆

 

平惟茂(たいらのこれもち)は平安時代中期の武将

鬼女紅葉伝説

時の帝の勅命を受け信州戸隠山に住む鬼女の成敗に向かった

中納言平惟茂主従は、人里離れた戸隠山中で紅葉狩の宴を催す

美しい女性たちと出会い、酒宴に加わるように勧められる。

この女性たちこそ戸隠山の鬼女であり、酒を呑ませ惟茂の命を狙おうと企んでいた。

美女の舞に酔い、盃を重ね深い眠りに落ちた時

夢に八幡大菩薩の神勅を伝える白狐が現れ

女の正体は戸隠山の鬼女であることを告げ神剣を授ける

我に返った惟茂はその神剣を抜いて、激しい戦いの末

みごと鬼女紅葉姫を退治した。