岡山市北区の大井学区連合町内会がおこなった学習会に参加しました。講師は岡山理科大学前学長で生物地球学部教授(専門は生物生態学)の波田善夫先生。里山の大切さをわかり易く話してくれました。
お話の中心は2つでした。1つは里山の雑木林、根についての話、2つめは森林の水分収支(流出係数)の話でした。
(1について)
岡山の里山を構成しているドングリの仲間(コナラ、アベマキ、アラカシなど)やアカマツは、数メートルの深さまで根を張る「深根性」の樹木で、「風に倒れにくく、土砂崩れに強い」。
深くまで根を張る「深根性」のコナラと根が浅い「浅根性」のソヨゴについて、樹木を引っ張った時のビデオを見せてくれました。車をけん引するロープをコナラにくくり重機で引っ張ると、ロープが切れてしまいました。さらに太い重機をけん引するロープでは、なんと重機が持ち上がり、コナラはびくともしませんでした。根っこを掘り返すと、2メートルもの直根がのび、さらにたくさんの根が四方八方に広がり、土を縛り付けていました。
一方、ソヨゴでは、あっという間に根が抜けました。根は大きく横に広がっていますが、深くはなかったからです。
このように、深根性のドングリの仲間やアカマツが多い雑木林では、木の根が土を縛り付け、土砂崩れを防いでいることがよくわかりました。
最近、植林がよくおこなわれています。木を植えれば山がよみがえるということですが、同じ木でも、植える苗木によって根の伸び方が大きく変わることも、実際に実験した映像で説明されました。
植林にはポットで育てた苗がつかわれます。ポットの中では根を伸ばすことができず、ぐるぐる巻いてしまいます(ルーピング)。1年目の苗なら、植林した際にまだ根が伸びるようですが、3年目の苗では、もはや根を伸ばすことができず、栄養分が豊富な地表面に吸収根が伸びるだけ。こうなると同じドングリの仲間でも土砂崩れには弱い可能性があると話されました。
ドングリの仲間は、ドングリの実をそのまま植えるのが一番良いようです。直根を長く伸ばすため、風や土砂崩れに強くなります。安全が必要な人家の周囲などには、苗木の植林でなく、種から木を育てる「育林」をおこないましょうと話されました。
(2について)
森林に降った雨は、木の葉などで蒸発する以外は林の中へ(林内雨)、地上に落ちた雨は、大部分が地下に浸み込みます。地下に浸み込んだ雨は、地中の溝を流れたり、地下水となって流れたり、地中にタンクがあるかのように流れ込みます。地中の水はまた、植物によって吸収されます。そのため、山の斜面に沿って流れる雨(斜面流水)はそんなに多くありません。降った雨に対する流れ出る水の割合が流出係数とよばれます。
地中への浸み込みやすさや地中に浸み込む量(タンクの大きさ)は、その山によって大きく異なってきます。山の傾斜、植物の種類と量によって左右されます。また、年間降水量によっても大きく変わることが示されています。全国平均では、雑木林、山の流出係数はだいたい0.7、(場合によっては0.6~0.8)と言われています。
ところが、林野庁が各県でおこなっている実測調査で岡山市の竜の口山では0.3というデータが出ています。岡山は降水量が少ないことが影響していると思われます。ですから、岡山の山の貯水能力は全国平均よりもずいぶん大きいということです。
問題は、森林伐採にともなって設置される調整池の容量です。流出係数が全国平均0.7として設計したら、そしてその山は実際には0.3であれば、調整池が容量不足になり、少し大きな雨が降ればあふれてしまうことになります。
(最後に)
ソーラー発電と言うのは「自然に優しい」発電のはずです。屋根の上や荒れ地などを利用するには良いでしょう。最近、高い位置にパネルを設置して、その下では農業をおこなうという試みもおこなわれており、大変興味深いものです。
里山を伐採して大規模にパネルを設置すると、
・地中に水がしみこまなくなり(不透水地率が高まる)、流出量が増大します
・樹木によって使われていた水がなくなり、流出量が増大します
・土壌を縛っていた樹木の根が腐ると、土砂崩れの危険が高まります
さらに、ソーラー発電の事業はおおむね20年と言われており、その後もパネルを更新して継続されるのか、撤去されるのか、まったくその先は不透明です。そのような状態で、貴重な自然を失われることが適切・賢明でしょうか? と話されました。
主催者としてあいさつされた萱野英憲会長は、「日々生活するところに、豊かな自然を壊してメガソーラーが設置されるというのはいたたまれない。すでに岡山県に署名を提出し、月末には岡山市にも行く予定ですが、しっかりとした知識を身に着けたうえで反対の運動を確信もってすすめてゆきたい」と話されました。
お話の中心は2つでした。1つは里山の雑木林、根についての話、2つめは森林の水分収支(流出係数)の話でした。
(1について)
岡山の里山を構成しているドングリの仲間(コナラ、アベマキ、アラカシなど)やアカマツは、数メートルの深さまで根を張る「深根性」の樹木で、「風に倒れにくく、土砂崩れに強い」。
深くまで根を張る「深根性」のコナラと根が浅い「浅根性」のソヨゴについて、樹木を引っ張った時のビデオを見せてくれました。車をけん引するロープをコナラにくくり重機で引っ張ると、ロープが切れてしまいました。さらに太い重機をけん引するロープでは、なんと重機が持ち上がり、コナラはびくともしませんでした。根っこを掘り返すと、2メートルもの直根がのび、さらにたくさんの根が四方八方に広がり、土を縛り付けていました。
一方、ソヨゴでは、あっという間に根が抜けました。根は大きく横に広がっていますが、深くはなかったからです。
このように、深根性のドングリの仲間やアカマツが多い雑木林では、木の根が土を縛り付け、土砂崩れを防いでいることがよくわかりました。
最近、植林がよくおこなわれています。木を植えれば山がよみがえるということですが、同じ木でも、植える苗木によって根の伸び方が大きく変わることも、実際に実験した映像で説明されました。
植林にはポットで育てた苗がつかわれます。ポットの中では根を伸ばすことができず、ぐるぐる巻いてしまいます(ルーピング)。1年目の苗なら、植林した際にまだ根が伸びるようですが、3年目の苗では、もはや根を伸ばすことができず、栄養分が豊富な地表面に吸収根が伸びるだけ。こうなると同じドングリの仲間でも土砂崩れには弱い可能性があると話されました。
ドングリの仲間は、ドングリの実をそのまま植えるのが一番良いようです。直根を長く伸ばすため、風や土砂崩れに強くなります。安全が必要な人家の周囲などには、苗木の植林でなく、種から木を育てる「育林」をおこないましょうと話されました。
(2について)
森林に降った雨は、木の葉などで蒸発する以外は林の中へ(林内雨)、地上に落ちた雨は、大部分が地下に浸み込みます。地下に浸み込んだ雨は、地中の溝を流れたり、地下水となって流れたり、地中にタンクがあるかのように流れ込みます。地中の水はまた、植物によって吸収されます。そのため、山の斜面に沿って流れる雨(斜面流水)はそんなに多くありません。降った雨に対する流れ出る水の割合が流出係数とよばれます。
地中への浸み込みやすさや地中に浸み込む量(タンクの大きさ)は、その山によって大きく異なってきます。山の傾斜、植物の種類と量によって左右されます。また、年間降水量によっても大きく変わることが示されています。全国平均では、雑木林、山の流出係数はだいたい0.7、(場合によっては0.6~0.8)と言われています。
ところが、林野庁が各県でおこなっている実測調査で岡山市の竜の口山では0.3というデータが出ています。岡山は降水量が少ないことが影響していると思われます。ですから、岡山の山の貯水能力は全国平均よりもずいぶん大きいということです。
問題は、森林伐採にともなって設置される調整池の容量です。流出係数が全国平均0.7として設計したら、そしてその山は実際には0.3であれば、調整池が容量不足になり、少し大きな雨が降ればあふれてしまうことになります。
(最後に)
ソーラー発電と言うのは「自然に優しい」発電のはずです。屋根の上や荒れ地などを利用するには良いでしょう。最近、高い位置にパネルを設置して、その下では農業をおこなうという試みもおこなわれており、大変興味深いものです。
里山を伐採して大規模にパネルを設置すると、
・地中に水がしみこまなくなり(不透水地率が高まる)、流出量が増大します
・樹木によって使われていた水がなくなり、流出量が増大します
・土壌を縛っていた樹木の根が腐ると、土砂崩れの危険が高まります
さらに、ソーラー発電の事業はおおむね20年と言われており、その後もパネルを更新して継続されるのか、撤去されるのか、まったくその先は不透明です。そのような状態で、貴重な自然を失われることが適切・賢明でしょうか? と話されました。
主催者としてあいさつされた萱野英憲会長は、「日々生活するところに、豊かな自然を壊してメガソーラーが設置されるというのはいたたまれない。すでに岡山県に署名を提出し、月末には岡山市にも行く予定ですが、しっかりとした知識を身に着けたうえで反対の運動を確信もってすすめてゆきたい」と話されました。