後期高齢者医療制度（その１）

　日本の医療保険は、若い人も高齢者も年齢にかかわりなく加入できる制度でした。しかし今日から、７５歳の誕生日を迎えたとたん国保や健保から追い出される新しい医療制度＝後期高齢者医療制度が始まりました。
　舛添厚労相は「国民皆保険制度のもとで高齢者の医療を別建てにしている国の例は把握していない」と答弁。世界に例のない差別的な医療制度は、一刻も早く中止、廃止すべきです。

　後期高齢者医療制度は診療報酬を別建てにして、保険がきく医療を制限します。すべての高齢者から取り立てる保険料は２年ごとに改定し、高齢者の人口や医療費が増えるにともなって値上げされます。原則として年金から有無を言わせず天引きし、払えない人からはこれまでの老人保健制度ではできなかった保険証取り上げをするようになります。
　あわせて７０～７４歳の窓口負担を来年４月から２割に引き上げ、世帯の全員が国保加入の６５～７４歳の世帯にも保険料の年金天引きを押し付けます。
　「お国のためと一生懸命やってきた。口先だけでもご苦労さまと言ってほしいのに７５歳を過ぎたらこれでは、国から煮え湯を飲まされるようだ」（７７歳の女性）。「こんな仕打ちを受けようとは何ということでしょう。必死で働き生きてきたことが、いったい何だったのかと絶望感に襲われる」（高齢の男性）などの声があがるのも当然です。

　この制度を導入する理由について当時の尾辻厚労相は「（高齢者が）負担について納得しやすい仕組みとするため」とのべました。厚労省の担当官は露骨に「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」と明言しています。７５歳以上の医療費を５兆円削減する計画（２０２５年）を強行するため、お年寄りに痛みを実感させようという非人間的なやり方です。
　３月１４日の参院予算委で日本共産党の小池晃議員が「高齢者のみなさんが、この国に生まれてよかったと思えないような政治に未来はない」と政府を追及しました。長年にわたり社会に貢献してきた高齢者の医療を、財源を理由に、真っ先に切り捨てるような国に明るい未来はありません。

　差別的な高齢者医療を提唱してきたのは医療保険の負担逃れを狙う財界です。財界は対象年齢の６５歳への引き下げや、財源として消費税の増税を主張しています。
　消費税は導入から２０年目に入りました。「福祉のため」と導入・増税された消費税は、実際には大企業向けの減税や軍事費に回され、社会保障は改悪につぐ改悪にさらされてきました。２０年目の今日、ついに高齢者医療の抜本改悪がスタートすることは、福祉破壊の消費税の本質を象徴しています。
　福田首相はよく「生活を守る」と言います。そうであるなら道理のない差別的な高齢者医療制度を中止、廃止することこそ必要です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜２００８年４月１日付　「しんぶん赤旗」　主張より＞