いわゆる統合失調症と診断されている方の発病エピソードを振り返って見てみると、思春期の頃に不登校・ひきこもりとなっていたケースが少なくない。そのため,不登校・ひきこもりという状態を、単に統合失調症発症の兆候だと解釈してしまうことが多い。しかし,ここでは重要な着眼点が抜けている。ひきこもりと精神疾患は別に論じられがちだが、今回はそのことについて解説する。
それは「その人にとってつらい体験(嫌悪刺激)を回避するための行動(複雑性条件反射としての回避行動)」としての「不登校・ひきこもり」という観点である。この観点をもつことで,その状態を強引に抜け出させたり、無理に登校を促すなどといったような(!)、嫌悪刺激を与え続けるような(!)、複雑性のトラウマを強化させたりするような(!)支援は除外できるだろう。
また、複雑性のトラウマ体験は、将来的に精神や身体あるいは行動に何らかの影響が現れることがよく知られている。つまりトラウマ体験は精神障害の発症の因子の1つなのである。この観点に立てば、上述した、「不登校・ひきこもりという状態を、単に統合失調症の発症の兆候だと解釈する」という見方が誤りだということに気づくはずだ。つまり、その人にとっては必要な回避行動であるにもかかわらず、専門家や家族を含む支援者の誤ったかかわり(嫌悪刺激)を受け続けた結果として、なんらかの精神症状が発現したと見立てられてしまうのである。
ここまで述べてきた支援の視点が、つまりトラウマインフォームドケア(Trauma-Informed Care:TIC)と呼ばれるものである。TICにもとづいた、不登校・ひきこもりの状態にあるその人への適切な理解や支援そして環境調整は、将来的な精神疾患の発症予防を可能にする。
令和3年9月26日に大阪の泉佐野市(スターゲイトホテル関西エアポート)にて催される「ひきこもり支援セミナー~どう取り組む8050問題〜(ハイブリットでの開催)」では、ひきこもりの行政上の課題整理や具体的な支援の方法・視点などをより掘りさげて解説したい。
ひきこもり支援セミナー どう取り組む8050問題 - 特定非営利活動法人精神医療サポートセンター (goo.ne.jp)
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