無患子(ムクロジ)という樹をご存じだろうか。樹の名前そのものはあまり聞いたことがないのではないかと思うが、その実の中の種は黒くて丸くて固いので、正月の羽根突きの羽の重りの部分に使われていた。最近では羽根突きもあまりしないし、重り部分も硬質のプラスチックになったりしていると思う。ムクロジの種は数珠にも使われていたということだ。
我が家の玄関脇にムクロジが植えてあって、玄関脇の広さに不釣り合いなほど巨大化してきた。ムクロジは高木なので、ほっておくと高くなり過ぎる。毎年、葉が落ち始める冬の初めには強剪定して元の太い枝だけの状態にしてしまうが、それでも新緑の季節になると新芽が出でぐんぐん大きくなる。最近の様子は、以下の通りで2階の窓から撮影した。
ちなみに、よく見てもらうとムクロジの葉が少し食害を受けているのが分かるが、マイマイが食べていると思う。這い上って食べているのを見たことがある。他の虫も食べているかもしれない。
ムクロジの奥に写っているのは、毎年遅めに咲く百日紅で、うどんこ病で枝先を切り落とした後、新芽が出てきている状態だ。ムクロジの間からツルが飛び出しているが、花の咲いたことのない藤(一才藤の記事の中に記述あり)だ。巻き付いていかないよう注意しているが、油断しているとすぐに伸びて巻き付く。同様に我が家に自生している自然薯も伸びてきて巻き付いてくる。
少し時間が経つと藤や自然薯のツルはムクロジの枝先に到達して垂れ下がってくる。その状態で、巻き付いたツルを手の届く高さで切ると、そこから先のツルが枯れてくる。その結果、大きなムクロジの樹から枯れた葉の付いた藤や自然薯ツルが垂れ下がったみっともない状態になってしまう。手入れができずに放置されているように見えるので、植木屋や便利屋が営業用のチラシを郵便受に突っ込んでいくようになる。
昨日、2階の窓から高枝切り鋏で飛び出した藤のツルを切り、ムクロジの枝先も切った。強い風が吹いて樹が揺らぐと、引き込んである電話線とかに引っかかるので、伸びすぎないように注意している。枝が若くて緑の間はサクッという感触で切れるが、秋になって木質化し、1センチを超えるようになると、両手鋏とか鋸を使わないと切れなくなる。
なお、この樹は、子供が小学生の頃に拾ってきた種をプランターに播いておいたら、芽が出て育った樹だ。藤と同じ頃で、播くときも種の違いを気にしていなかったので、当初は藤だと思っていた。幼木の頃、葉の形も似ていた。藤の方は2年目にはツルが伸びてきたが、ムクロジの方はツルも伸びず、背もほとんど高くならなかったので、違う樹かなと思っていた。
やがて今の家に引っ越し、ムクロジも玄関脇に植え込んだ。当時は30センチぐらいの高さだった。地植えしてから2~3年経つと根が十分に張ったのか、急に大きくなってきた。その頃になってようやく、葉の形や付き方、新芽の様子で樹の種類を確認し、ムクロジだと分かった。
今や我が家で一番大きな樹となったので、ムクロジがシンボルツリーだ。魔除けの霊力を持つ木として伝えられているらしい(下記の庭木図鑑 植木ペディアの記事参照)ので、玄関にはちょうどよい。今のところ花も咲かないし、ただの樹としか見えないので、ご近所さんから、この樹について何か言われたことはないけど。