NISAが満期になって特定口座に移管していたクラレ200株を節税売した。非課税で得ていた利益分がすっかり台無しになってしまった。
米国子会社での工場火災と損害賠償の件についても書いてあり、解決の開示に係る話も追記した。
クラレの値動きと初期の売買
米国子会社での工場火災と損害賠償の件についても書いてあり、解決の開示に係る話も追記した。
クラレの値動きと初期の売買
クラレは元は合成繊維メーカーで、昔からランドセル等に使われている人工皮革のクラリーノで有名だ。私のように1980年代から株式投資をしている人には、84~87年にかけての一大テーマだった抗がん剤関連で大相場を演じた銘柄の一つとして記憶されているかもしれない。
現在は、高機能樹脂ポバール等とそれを加工した各種フィルムが柱で、首位品も多い特徴ある化学会社であり、比較的利益率が高く、財務も割と良く、高配当銘柄(株価が1,000円なら4%の配当利回り)でもある。
まずは、2013年以降のクラレの月足チャートを載せておく。
出所:株探(https://kabutan.jp/stock/chart?code=3405)
株価は2012年10月を底値にアベノミクス相場で大きく上げていたが、クラレは業績が足踏み状態だったこともあり、2013年の秋には一旦大きく下げ、年末に向けて戻り歩調となっていた。
私が初めてクラレに投資したのはその頃で、一般口座で2013年12月に300株を1,200円で買った。その後、配当落ちもあって少し下がったので、NISA口座で2014年1月に300株を1,167円で買い増した。2月に底を打った後は上げているので、悪くないタイミングだった。
その後の値動きと売買
2017年秋頃、業績は連続最高益の見込みで、株価も高値追いとなっていた。買値の2倍の水準に達したため、2017年11月にNISA口座分の内の100株だけ2,400円で利食いした。利益は12.3万円、利益率105%、年利換算28%の好成績だった。後で見れば、実にうまいタイミングだった。
11月に高値を付けた後は調整に入っていたが、2018年5月には米国子会社の工場で火災事故があり、一段と下げた。後述するが、これがクラレがその後、業績と株価を下げていく原因となった。
残っていたNISA口座の200株は2018年末に満期となり、1,550円で特定口座に移管された。株価は2019年には当初の一般口座分の買値の1,200円辺りを下値とする動きとなった。私は、2019年5月に一段安となり始めた頃から特定口座での買い増しを開始した(細かいので詳細は省略)。
2019年12月時点では1,000株以上の保有となり、カタログギフトの株主優待がもらえるようになった。
2020年にはコロナショックで1,000円割れ水準まで下げた。問題は色々あっても、さすがに1,000円割れは安すぎると思って買い増した。一方で、一般口座分は節税売した。喜べないが、結果的に特定口座へのシフトができた。
株価は今年に入り少し戻したが、また下げてきて、1,000円辺りを下値とする動きになっていた。さらに先週からはコロナのオミクロン株の懸念等で株式市場が軟調となり、年初来安値の水準となってきた。そのため、サブ口座で買い増しする一方、メイン口座でその分を節税売することにした。
個別管理上(取得時期が古い順)、節税売したのはNISA口座から特定口座に1,550円で移管された200株で、1,000円での売却なので約11万円の損失、利益率-35.5%、年利換算-12.1%というひどい結果になった。NISAで買った時よりも売値が低いので移管により非課税で得ていた利益分以上の損失だし、NISA口座で利食った分の利益の大半を失っている。なんとも情けない。
なお、特定口座としての平均取得価格は1,200円ほどなので、口座上の損失は約4万円に過ぎず、節税効果は限定的だった。
米国子会社での工場火災と損害賠償
2018年5月に米国子会社のエバール工場で火災事故が発生した。死者はいなかったが、外部委託の作業員など約160人が肉体的・精神的傷害の損害賠償を請求した。
クラレ側にどこまで非があるのかは分からないが、2019年11月までに損害賠償関連費用として合計480億円も特別損失に計上していた。弁護士費用等も含まれると思うが、単純に160人とすれば一人3億円にもなるので、理解不能な額だ。
2020年1月には289億円で一部作業員と和解したというニュースが流れていた。この時点でも一部だし、一部にしては額が大き過ぎた。訴訟社会の米国で対応を誤り、いいように毟られていると思った。
2020年1月には289億円で一部作業員と和解したというニュースが流れていた。この時点でも一部だし、一部にしては額が大き過ぎた。訴訟社会の米国で対応を誤り、いいように毟られていると思った。
2020年12月には、和解金を含む訴訟関連損失約170億円を追加で計上することになった。それで、2020年12月期の純利益予想を従来の150億円からゼロ)に減額した。
2020年12月23日 米国訴訟における一部原告との和解、特別損失の計上および通期業績予想の修正に関するお知らせ
https://pdf.irpocket.com/C3405/oc0k/CcR6/essx.pdf
結局、損害賠償の問題は最終決着してないし、合計650億円もの特別損失を計上していてもさらなる追加計上とそれによる業績の突然の悪化が懸念されることになる。その結果、株式市場での評価も低くなってしまう。例えば、以下のレポートのように。
2021年9月6日 業績自体は順調だが、訴訟リスクがつきまとう
https://www.okasan-online.co.jp/
クラレ関連のニュースや記事
今年に入ってツイートしたものの関連だけ記録として書いておく。
今年5月11日、クラレが国際的な分散投資に用いられる指数の一つであるMSCI銘柄から外れることになった。実際に入れ替えになるのは5月27日終値だったので、それに向けた売が出て、その後の指数連動の買はなくなることになった。
クラレは液晶画面向けの光学用フイルムで世界シェア8割なので高い利益率を誇ってきたが、最近は下降気味になっている。次の柱として、熱可塑性合成ゴムなど高付加価値の製品を柱とするイソプレン事業や、2018年に世界最大手の米社を買収した活性炭事業に注力している。その辺りの解説が以下の記事にある。東洋経済IDがあれば、詳しい記事が読める。
訴訟関連の懸念は別として業績自体は順調なクラレだが、四季報秋号から抽出された今期当期純利益の増益倍率が高い順一覧の5位に入っていた。
四季報で見つけた「想定超に稼ぐ会社」ランキングTOP20
ニュース等は以上で終わり。
11月15日に例年のごとくカレンダーが届いた。中間決算の報告を受け取った際、同封の希望確認のハガキを出しておくようになっていたと記憶している。毎年、きれいな風景のカレンダーだ。退職後、会社に届いていたカレンダーを分けたりすることがなくなったので重宝している。
一般口座分の節税売も合わせれば、クラレも実現損益で銘柄累損を抱えている銘柄だし、保有分の評価損益もマイナスになっている。しかし、いい銘柄だとは思っているし、高配当の上に株主優待もあるので、必要な1,000株分は長期保有するつもりだ。それ以外の分は上げたら利食ったりして、銘柄累損だけは解消したいと思っている。いつかは実現できるたろうと気長に考えている。
【2023.5.12追記】
延々と続いていた米国子会社での工場火災に係る損害賠償の訴訟が解決した。先日、下記の開示があった。
2023年4月26日 米国訴訟の解決に関するお知らせ
なんと、和解金の総額は約800億円にもなった。約160人だから、一人当たり約5億円。死者もいなかったのにたかられ過ぎとしか思えない。被害者側の弁護士もたっぶり稼げただろう。和解金以外の訴訟費用もかかったので、会社/株主にとってはとんだ災難だった。
上記開示では訴訟関連損失とし て68億円を今期の特別損失に計上する想定になっていたが、実際には71.5億円が計上され、今期第1四半期の決算短信が本日発表された。
2023年5月12日 2023年12月期 第1四半期決算短信
本業の業績の方は順調なようで、結局、通期の最終利益は従来予想の510億円から470億円に40億円(7.8%)の下方修正となった。訴訟関連の影響は絶大で株式売買での損害も被ったが、とにかく解決したことはよかった。本業は順調なので今後に期待しよう。