人間賛歌・もっちゃん4649

温かな気分の一日を

おしゃれが大好きな母はよそ行きの服装だと言うことは良く分かるので、
「今日は私、どこかへいくんじゃったかねえ?」と、5分おきに訊ねていました。

「そうよ~、お泊りにいらっしゃ~いってヘルパーさんが迎えに来てくれるからね、一つだけお泊まりにいくのよ♪」

「どこへ~?」

「デイサービスのところよ~
家にいてテレビばっかり見ていたら、お話しするのを忘れてしまうからね、90歳以上になったらお友だちとお話できるようにお泊りしてゆっくり楽しんでくださいってよ~(*^^)v」

「ああ、そう!ありがたいねえ~」

私が荷物の用意をしていると母は手提げカバンの中をごそごそ整理しはじめました。
お迎えの30分前にはきちんと支度が整ったのでした。

お財布の中を覗いています。
たくさん入れても遣うところがないし、千円札1枚だけ入れたままに去年くらいからしてあります。

なおも見入っているので、
「お小遣いがありますか?少しお渡ししましょうか?」と声をかけると、
「はあ、もう少しいれておきましょうか~」

追加で2枚千円札を渡しました。

四つ折に2枚重ねたままで押し込んでいました。
分厚くなって満足そうです。

シーツや枕カバーの洗濯をしようとベッドで外していると、母の様子が横目の視野に入ってきました。

まだお財布を手に持ったまま中を覗いているのです。
「どうしたの?何を見ているの~」

免許証に貼る大きさの父の写真を小銭入れの所にしまっていたのでした。

「ほれ~、父さんですよ」と出して手渡してくれました。

「あらまあ、私の父さんだわ~」とわざと大声でビックリ顔をすると、とってもうれしそうに得意顔を見せていました。

「いつからここに入れてたの?どこにあったの?この写真・・・」

初めて見る写真でした。

宴会か何かでご馳走を前にしてにこやかな父のよそ行きの姿でした。

裏を見ると、S55,4,23と記してあります。
父が70歳過ぎくらいのものでした。

まるで魔法のように、きちんと大事に母は保存していたのです。

この財布はお土産に私が買ってあげたものですから、介護が始まって後のもので新しいのです。

デイサービスに行っていた2年前は毎週財布の中を点検整理してあげていたから、写真など入っていませんでした。

いつどこから入れ替えて持ち歩いていたのでしょうねえ。

一本やられた~と感じました。

私は写真類だけは奈良でのものは持ってきてありませんから、最愛の連れ合いの顔もほんとに思い出せないくらい朧なんです。

こんなにこやかな楽しい笑顔の一枚を身近に持っていたら、母はしあわせだろうなあ~としみじみ感じました。

認知症ですべてを忘れてしまっていると思い込んでいたけど、大事な人を財布に仕舞って大切に持ち歩いていたのだと初めて知ったのでした。

やっぱり、連れ合いを私も大事にしなければと母に教え示してもらったと感じた朝だったのです。

はい、嫌いで別れているのでもなく、喧嘩別れでもありません。
大事な御用を果たした後は詫びを入れて帰りますから~

きれいな教えをありがとうございました~

ほっこりと温かな気分の一日を過ごせていたのですよ~

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