
(写真は「あしたのジョー」の等身大フィギュア)
お盆休みに、近場の都心の浅草界隈の散策に
出掛けた話の続きです。

猛暑の中、浅草の街を抜けて、千束通りを
真っ直ぐに吉原(よしわら)へ向います。
千束通りが、土手通りに突きあたる交差点を左折
して、土手通りを吉原大門まで歩きます。

吉原大門は、芝の大門(だいもん)と同じ”大門”
ですが、”おおもん”と読みます。

吉原は、江戸時代に江戸郊外に作られた遊廓です。



住所は、台東区千束4丁目ですが、現在は、
「吉原大門」の交差点名が残るのみです。

大門は、吉原遊廓への正面玄関で、江戸時代には
黒塗り木造の楼門があったそうです。
(NHK木曜時代劇「吉原同心」で、毎回、この
大門が出てきますよ。)
吉原遊廓は、幅5間(約9m)の「お歯黒どぶ」
と呼ばれる堀に囲まれ、出入りはこの大門の
一箇所のみだったそうです。
浅草方面から舟で山谷堀を来た人も、日本堤を
歩いて来た人も唯一の出入り口である「大門」
から吉原遊廓に入りました。
現在も、大門から入る道路は、写真の様に、
「衣紋坂」と呼ばれるS字型になっています。

これは、吉原を出入りする人が、大門から見え
ない様に、目隠しの役割をしていたそうです。

遊女の人数は2,000人を越え、当初は武士が
主なお客でしたが、徐々に町人中心になって
いったそうです。
現在は、大門から先は、日本一のソープランド街
を形成していますが、江戸時代の名残りを残す
古い町並みは全く保存されていません。


写真は、吉原大門の交差点前にある「見返りの柳」
と跡地の石碑です。
(柳は3代目か4代目とのこと。)

案内板によると、遊び帰りの客が後ろ髪を引かれ
る思いを抱きつつ、この柳の辺りで遊郭を振り
返ったということから「見返り柳」の名がついた
そうです。

土手通りの「吉原大門」の交差点の斜め前に
「いろは会商店街」の入口があります。
入口の目印は、写真の「あしたのジョー」の
等身大のフィギュアです。

ジョーがズボンのポケットに手を入れ、上着を
肩にかけ、ポーズをとっています。

そう、ここは、梶原一騎原作・ちばてつや漫画で
お馴染みの「あしたのジョー」の舞台なのです!




この商店街も、かっては、吉原遊郭の客や、山谷
の労働者で賑わったらしいですが、現在は、
すっかり寂れかかった感じです。

このノスタルジックで寂しい商店街は、「あした
のジョー」の舞台であることを売りにして、
活性化を図ろうとしているみたいです。

上の写真のパン屋「ぶれ~て」で、ジョーの
グローブパンを買おうとしましたが、残念
ながら売り切れでした。

吉原大門の交差点の斜め前に、本日のお目当ての
「桜鍋・中江」があります。
お店へ行ってみると、5時からの開店で、1時間
くらい前だったので、時間まで、近くの樋口一葉
記念館を見に行きます。(300円)

樋口一葉は、五千円札の肖像で有名ですが、
代表作には、「たけくらべ」「大つごもり」
「にごりえ」「十三夜」等があります。


記念館は、一葉が下谷竜泉寺町の長屋に住み、
駄菓子荒物屋を営んでいたことからこの住居の
すぐ近くに建てられています。
記念館には、一葉が愛用していた櫛やかんざし、
紅入れ、自筆の書、長屋の模型などが展示されて
いました。

一葉は、17歳の時に父親が他界、母親と妹を養う
ために、小説を書きはじめましたが、肺結核
のため、24歳の若さで短い生涯を閉じました。

「たけくらべ」 は、吉原遊郭の近くに住む子供たち
が、大人の世界に入っていく成長の過渡期を
描いた作品です。

下谷龍泉寺町の長屋に住み、下町の風情、人情に
直接に触れた経験がこの小説の背景にあります。

また、記念館の隣には一葉記念公園があり、下の
写真の「たけくらべ」の記念碑などがあります。

更に、記念館のすぐ近くに、下の写真の樋口一葉
旧居跡の碑が建っています。

5時近くになったので、本日の目的の「桜なべ
中江」へ向います。
当時、お店は、土手の上にあり、目の前は川
だったので、店の前には橋が架かっていた
そうです。
当時遊郭の歓楽街として栄えていた吉原には、桜
鍋の店が、20~30軒も軒を連ねていたそうです。
そして、お客は、桜鍋で腹ごしらえして、遊郭へ
繰り出したそうです。
でも、何故、吉原に、桜鍋の店が軒を並べて
いたのでしょうか?

店主の方の話によると、当時、吉原の周辺は
田んぼだったため、農耕用の馬がたくさん
おり、使えなくなった馬を食用にしたのだ
そうです。


桜鍋が有名ですが、この建物も有名なんです。

現在の店舗は、築八十年を越える大正建築です。


東京大空襲にも奇跡的に焼け残り、国の登録
有形文化財に指定されています。
店内には、常連だった先代の市川団十郎、武者
小路実篤などの書が飾られています。
名物の「桜鍋」(1,700円)を注文します。
桜鍋は、コクを出すため秘伝の味噌ダレが入っています。

赤身はサッと火を通し、脂身はゆっくり飴色に
なるくらいまで煮込み、卵につけて頂きます。
最後は、鍋の中に、中落ちと、すくい豆腐を追加
で入れ、煮立ったところに、残った卵と、新たな
卵2個を加えます。
これを、ご飯の上にかけて頂きます。
上質の親子どんぶりの味で、美味しい!

「中江」の桜鍋の味と、店員さんの丁寧な対応に、
すっかり満足して、吉原大門から浅草駅行きの
バスに乗って帰りました。
