トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

民話における欲張り

2008-05-22 21:28:02 | 読書/日本史
 舌切り雀は欲張りが最後に酷い目にあうという、典型的な昔話である。だから欲張りをしてはいけないのだ、との教訓が込められた物語だろうと安易に思っていた。今年3月、河北新報の付録に載ったコラム「民話散策」で、作家・佐佐木邦子さんは舌切り雀を取り上げ、民話における欲張りについて、実に鋭い解釈をされていた。民話から昔の日本の村社会も浮かび上がってくる。その佐佐木さんのコラムを全文紹介したい。 -民話には色 . . . 本文を読む

三行半の実態

2008-02-29 21:20:08 | 読書/日本史
 一般に江戸時代は、男が三行半を書けば簡単に妻を離縁できたと思われがちだ。私の高校時代の日本史参考書にも三行半の写真が載っており、男尊女卑がひどかった時代の遺物との第一印象だった。だが、別れるにせよ煩雑な背景があり、江戸時代は決して現代の一部の男たちが憧れるような男性天国ではなかったのだ。 夫や姑の虐待を受けても女性に離婚請求権のなかった江戸時代、「駆込寺」「縁切寺」の異名を持つ鎌倉の東慶寺に飛び . . . 本文を読む

織田信長の手紙

2008-01-13 20:23:47 | 読書/日本史
 織田信長が家臣に当てた手紙は現代も遺されているが、豊臣秀吉の正室ねねにも手紙を書いていた。手紙からは秀吉夫婦の関係ばかりでなく、とかく苛烈な性格と思われがちな信長の意外な一面も浮かび上がってくる。現代語に訳せば、以下のような内容となる。 -先日はけっこうなものをありがとう。それにしても、そなた、以前合った時よりもずっと美しくなったではないか。そんな美人の妻を持ちながら、藤吉郎(秀吉)は不足を言う . . . 本文を読む

鬼姫と呼ばれた女-伊達政宗の母

2008-01-12 20:15:52 | 読書/日本史
 NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』が放送された昭和62(1987)年、地元紙・河北新報も伊達政宗特集のムックを出版している。虚実含め政宗のエピソード満載の内容だったが、政宗をめぐる人々でも特に母・義姫については一章を割いて記載されていた。その章の冒頭はこうあった。-男にとって、母は永遠の女性であるといわれる。独眼竜と謳われた政宗も例外ではない。では、政宗の母とは、どのような女性であったのだろう。 も . . . 本文を読む

傘地蔵-残酷な民話

2007-12-27 21:18:53 | 読書/日本史
 河北新報の付録「ひまわりクラブ」に『民話散策』というコラムがあり、執筆している佐佐木邦子さんによれば、日本の民話には年越しを扱ったものが多いそうだ。『傘地蔵』もそのひとつだが、その背景にある恐るべき実態が初めて分った。 『傘地蔵』のあらましは正月準備も出来ない貧しい老夫婦の物語。お爺さんは菅傘を作り町に売りに行く。だが、正月を控え菅傘など誰も買いもしない。お爺さんがしょんぼり帰る途中、道端のお地 . . . 本文を読む

博物館網走監獄

2007-10-11 21:26:30 | 読書/日本史
 十年ほど前、パックツアーで北海道道東を旅行したことがある。阿寒湖、摩周湖などの名所を中心とした早廻りの旅だったが、目玉はやはり博物館網走監獄の見学であり、上記の映像もWikipediaに載ったこの博物館の正門である。展示物も豊富で実に見ごたえのある博物館だった。 この博物館は網走刑務所で実際に使用されていた建物を天都山に移築・修復して設置されたものなので、再現された建築物としても迫力が違う。赤レ . . . 本文を読む

建礼門院-平氏一門の箱入り娘

2007-09-29 20:54:28 | 読書/日本史
 小学生の頃、教室の書棚に子供向けに書き直された平家物語が置かれてあった。圧巻は何といっても、まだ8歳の孫である安徳天皇を抱いた二位尼(平時子)が入水するシーン。当時私は6年生だったが、子供心にも痛ましいと感じた。成人したのちに永井路子氏のエッセイ(題は失念)を読んだ時、何故母の建礼門院徳子ではなく祖母が孫と共に入水したのか、氏は疑問を呈されていた。これには私も目からウロコだった。 永井氏は平時子 . . . 本文を読む

ハイカラ趣味

2007-07-31 21:26:58 | 読書/日本史
 現代では戦前のほとんど死語に近い言葉になってしまったが、かつては垢抜けた最先端の流行を指すのがハイカラだった。私の今は亡き明治生まれの母方の祖母も、よくハイカラと言っていた。 ハイカラ趣味が広まったのは明治の御世の文明開化以降だが、情けないことに島国の日本人は古来から舶来崇拝は大変なものであり、それまでの唐嗜好が西欧に切り替わったに過ぎない。明治十(1877)年に出版された『馬鹿の番付』には実に . . . 本文を読む

司馬遼太郎の見た仙台 その②

2007-07-12 21:28:18 | 読書/日本史
その①の続き 地図を見れば、他の東北各県と異なり宮城県だけは平野を表す緑色が多いのが一目で分かる。寒冷で山がちな地形の東北の中で珍しく肥沃な穀倉地帯があり、さらに気候や海産物も比較的恵まれたため、西国ばかりか他の東北と比べても商品開発がさして行われなかった。この点、江戸時代に紅花はじめ活発な商品開発並びに京都との経済交流が行われた隣県・山形とは対照的だ。司馬遼太郎に言わせれば、「米穀一本であるため . . . 本文を読む

司馬遼太郎の見た仙台 その①

2007-07-11 21:22:19 | 読書/日本史
 司馬遼太郎の有名な紀行シリーズ『街道をゆく』26巻目には、仙台・石巻が取り上げられている。やはり地元に住む者からすれば、著名な作家が仙台をどう描いているか関心があり読んでみた。この巻は1985年に週刊朝日に掲載されており、書かれた時点から既に20年も過ぎている。司馬の仙台藩への評価は経済面でかなり辛口だった。 この本に「沃土の民」という章があり、この一言が仙台人気質を如実に示している。この章の冒 . . . 本文を読む