トーキング・マイノリティ

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ホテル・ルワンダ 2004年【英、伊、南ア】テリー・ジョージ監督

2006-10-10 21:27:00 | 映画
 1994年、アフリカ・ルワンダで起きた大虐殺の最中、1,268人もの避難民を匿った勇気あるホテル支配人がいた。この映画はその支配人ポールが主人公。あれからもう、十年以上が過ぎている。

  ポールは多数派フツ族出身だが妻はツチ族で、外国資本の4つ星ホテル、ミル・コリンの支配人として、恵まれた生活を送っていた。1994年当時、フツ族と ツチ族の間で続いていた内戦が終息、和平協定が結ばれようとしていた。だが、長年の相互不信は容易に消えず、多数派フツ族はツチ族への憎しみを煽るラジオ 放送を行う。ポールの隣人もツチ族というだけでフツ族民兵に襲われる。そんな中、フツ族大統領が暗殺されたという報道を境に、未曾有のフツ族民兵によるツ チ族虐殺が始まる。

 国連は平和維持軍を送るものの、戦局悪化で早々に各国は部隊を引き上げさせる。ルワンダに滞在している自国民の救出には力を入れても、現地の避難民はほとんど見捨てられる。これ程国連軍の無為無策と無能を晒した事件もないだろう。
 英国人作家F.フォーサイスは小説『アヴェンジャー』で、ボスニア紛争時の国連軍を皮肉たっぷりにこう書いている。
国連は“平和維持”のための部隊を創設していた。これは何度も繰り返された茶番劇の一種であって、維持すべき平和などないところへ平和維持部隊を送り、そこでの平和実現を禁じ、あまつさえ虐殺を放置して、ただ眺めていろと命じるのである

  ポールの家には多くの避難民が集まり、彼は自分の勤めるホテルに彼らを匿う。外国資本のホテルゆえ、フツ族の民兵たちもうかつには手を出せなかった。この ため、命からがら逃げ延びてきた人々が続々と集まってくる。彼らを救うためポールは奮闘するが、食糧確保のためホテルを出た時、夥しい死体を目撃する。民 兵はツチ族民間人をなたで殺害したといわれるが、その割には死体がきれい過ぎた。実際はもっと惨たらしかったと思われ、その分リアリティが稀薄な感じを受 けた。

 ポールの機転と度胸により、ホテルに避難してきた1,268人の命が助かる。ポール一家は無事ベルギーへ亡命し、現代もそこで暮らしているとか。ルワンダに限らず民族、宗教対立時に、時々ポールのような勇敢な人物が現れるのは、人類史の光である。

  私はルワンダの民族対立の背景は知らないが、何故これほどの大虐殺事件が起きたのか、全く不可解だ。映画では多数派フツ族が悪役だが、これ程憎悪をむき出 しにするとは、どんな歴史があったのか。植民地時代に少数派が優遇されたからばかりだろうか。それ以前から部族というより民族対立があったのではないかと 想像したくなる。黒人といえ様々な民族がおり、以前の記事「タマンゴ」にも書いたが、黒人を奴隷として売り飛ばした者のほとんどが実は黒人だった。
 数年前ルワンダ大統領が'94年の虐殺時を、「国連の対応のせいで虐殺事件が起きた」と国連の対策を非難していたが、都合の悪い事は植民地時代と国連に責任転嫁する安易な演説だと感じた方もいるかもしれない。

  何年か前にNHK BS特集でこのルワンダ虐殺事件を放送していた。痛ましいのは十代半ばで幼い従弟を殺害した少年がいたことだ。この少年の父はフツ族、母はツチ族だった が、フツ族民族主義を煽る世情で狂ってしまったようだ。従弟を殺す前、父に母を離婚して実家に帰すよう迫ったりもしていたとか。昔の少年を知る者は優しい 子だったと言う。私の想像だが、この少年は混血ゆえ他の同年代の純血のフツ族から信頼されてなかったのかもしれない。自分はフツ族であることを証明したい がゆえに、狂気の犯行を犯すようになったのではないか?

 '94年のルワンダ虐殺後も、ダルフール(スーダン)その他でも似たような蛮行が繰り返されている。特にダルフールの解決を遅らせているのは、国連常任理事国の中国である。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは! (伽羅)
2006-10-14 19:35:17
こんばんは!

TB&コメント、ありがとうございました!



映画ということもあって、ちょっと誇張しずぎているかな?

という部分も多少ありましたが、

役者さんたちの熱演は、見応えがありましたね。

同国の民族紛争って島国日本で育った者としては、

彼らと同じ精神レベルで充分理解できないところがあり、

心苦しいところですが、

このような凄惨な事件があったことは、

しっかりと胸に焼き付けておきたいと痛切に思いました。
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TB&コメント、ありがとうございます (mugi)
2006-10-14 22:32:03
伽羅さん、こんばんは!

こちらこそ、TB&コメントをありがとうございました。



民族宗教対立は日本人になじみが薄いですが、実に凄惨なものです。隣人同士が殺し合いを始めるから、これ程恐ろしいものはない。

ただ、ごく少数にせよ、この映画の主人公のような人物も民族紛争時に現れ、異民族を助ける事もあるので、人間は素晴らしい素質を持っているのは救いです。
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誠心誠意、真実の男(激嘘) (Mars)
2006-10-15 20:13:37
こんばんは、mugiさん。



私はこの映画を未拝見ですが、アフリカの虐殺も単なる貧困だけの問題だけではないように思えます。そして、こういう国にとって重要でないように思われるのが武器ですが、一番、外国より輸入されるのは武器ではないでしょうか?なんだか、「ロード・オブ・ウォー」にも繋がるように思えます。



また、上記の映画にも、現在の我が国にも繋がるのは、金も払わないクセに拒否権を持つ、国連の常任理事国でしょう。また、常任理事国だけでなく、安易な平和主義こそ、軍国主義国家を調子付かせるのは、現代でも同様ですね。



事実は小説よりも奇なり、と言いますが、程度の違いはあれ、ある意味合いでは通じるものがあるのかもしれません。しかし、その他の詳細の肉付けで、事実と異なってくるのが歴史なので(あえて、そう仕向ける人間も少なくないですので)、事実を見分けるのは、思いの他、難しいものかもしれません。

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国連-各国の利権集合体 (mugi)
2006-10-15 21:12:06
こんばんは、Marsさん。



アフリカは鉱物資源が多い国が多いですが、せっかくの資源収入が武器購入に当てられ、紛争が長引く、といったケースが多いですね。

ダルフール紛争(スーダン)は石油利権も背景にあります。利権を得たい国はいくら戦争で死者が出ようが省みませんから。



我国の国連中心主義者や平和団体のおかしなところは、国連を無視しがちのアメリカを非難するくせに、同じ常任理事国の中露の横暴には沈黙すること。アフリカの紛争一つ解決できない国連の実態に目を閉じ、「国連中心」のお題目を唱えているだけです。



今後もアフリカの民族紛争は絶えないでしょうが、AU(アフリカ諸国連合)も無能では国連に劣りません。
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