マニカルニカ?はて聞きなれぬ名称だと思ったが、“ジャンシーの女王”の副題でポスターからも、ラクシュミー・バーイーを扱った作品だと判った。一般に日本では知られない人物だが、インドに多少なりとも関心のある方なら知っているはず。何しろ「インド大反乱」で自ら義勇軍を率いて戦った有名なラーニー(女王)なのだ。以下は映画.comでのストーリー紹介。
―ラクシュミー・バーイーの名で人びとに親しまれ、インドのジャンヌ・ダルクと称される実在の女性指導者の活躍を描いたスペタクルアクション。
僧侶の娘に生まれたマニカルニカは、幼い時から男子同様に剣術や弓、乗馬などを習得し成長した。ジャーンシー藩王ガンガーダル・ラーオとの縁談により、ジャーンシーに嫁いだマニカルニカは藩王からラクシュミーという名を与えられ、彼女は人びとからラクシュミー・バーイーと呼ばれて親しまれるようになる。
しかし、授かった王子が亡くなり、ほどなくして藩王が病死するというジャーンシー藩の危機に乗じて、イギリスは藩王国を併合。ラクシュミーは城を後にするが、1857年にぼっ発したインド大反乱で、ラクシュミーも国のために立ち上がる。
映画の冒頭に出るスーパーは苦笑させられた。物語は歴史研究者による助言も受けているが、史実や言語、服装には脚色があるとのこと。さらに国や宗教を侮辱する意思はなく、映画に登場する動物(虎、象、馬など)は全てCGで一切動物を傷つけていない等と云っていた。
これほど釈明が入るのもインド映画ならではだろう。何しろインド大反乱時の国民的ヒロインが登場するのだから、描き方が悪かったり宗教や自国への侮辱があると解釈されたら大変なことになる。不適切と見られた映画では、映画館や監督の家が焼き討ちされることもあるのがインドである。上映拒否が表現の自由への妨害云々と騒がれる日本とは違うのだ。
マニカルニカの誕生から死まで描かれているが、彼女が僧侶の娘として生まれたことは初耳だ。これも脚色の可能性があり、wikiには「没落したマラーター貴族の出身とされ」ていることが載っている。さらに「少女時代より剣術を嗜み乗馬を好んだというが、これも伝説の域を出ない」とか。
ジャンシーに嫁いだマニカルニカが誰も乗り越せなかった荒馬を見事に手なずけて乗馬するシーンがあり、これってアレクサンドロスの故事でしょ、と言いたくなる。それに僧侶、つまりバラモンの娘が格下のクシャトリアと結婚すれば、不吉とされる逆毛婚(婿のカーストが嫁よりも低い結婚)になってしまうのだが。
インド映画らしくこの作品も歌や踊りが挿入され、ヒロインが武術を披露するシーンは少し冗長で退屈だった。但し大反乱前のインドにおいての英国の横暴極まる振舞いもちゃんと描かれている。英国兵は勝手に村に押し入り、止めようとする村人を暴行し仔牛を強奪する。ステーキにするためだが、英国人の施設では「犬とインド人入るべからず」の貼紙をしていた。
いよいよ反乱勃発で、映画に見られる通りインド人暴徒による民間人虐殺があったのは確かだ。尊大なゴードン少将が反乱軍に殺害されたのは当然でも、彼の妻子も殺される。ゴードン少将の幼い娘が血まみれで横たわるシーンがあり、不都合な史実を描いていたのは感心した。
インド総督カニングは反乱鎮圧のため武勇の誉れ高いヒュー・ローズ将軍を迎え、ローズは司令官としてラクシュミー討伐に向かう。ローズがラクシュミーが守るジャンシー城を攻撃した時、反乱軍が反撃出来ぬように寺院の前から砲撃している。ひょっとしてラクシュミーは寺院もろとも砲撃する?と思ったが、そうではなく自ら城門から出てきて、寺院前に陣取っている英国軍を蹴散らす。フィクションでも寺院を吹き飛ばすのはご法度なのか?
一旦は英国軍の攻撃を退けたラクシュミーだが、裏切者の親戚のために城砦は破壊され城は落ちた。落城したジャンシー城は英軍により焼き尽くされ、ジャンシーは焦土と化す。
英国につく藩主国も多く、ラクシュミーが女ということだけで共闘を拒絶したラージャもいた。売国奴同然のラージャにラクシュミーはこう言い放つ。
「国は母と同じ。国を売るのは母を売ることだ。母を売った者は死人だ」
いくら映画の台詞でも格好良すぎる。ラクシュミーの奮戦むなしく史実通り英軍の大軍に圧倒され、彼女は壮絶な戦死を遂げた。後にインド大反乱回想録の中でローズは、ラクシュミーの武勇を讃えている。
映画のポスターではラクシュミーは子供を背負って戦っているが、本作では違っている。また映画ではサリー姿で戦っていたが、実際は絹のブラウスと西洋風の乗馬ズボンといういでたちだったという。
ラストのスーパーでラクシュミーが養子としたダーモーダルは、貧困と病に苦しみながらも1903年まで生きたことを知った。世が世ならジャンシーのラージャとして何不自由ない暮らしが出来たろうが、これが中露ならば反乱指導者の血族は幼子でも抹殺しただろう。
反乱を壊滅させた英国は至る所で恐怖政治を繰り広げ、情け容赦もなく射殺された者は無数に上った。インド初代首相ネルーは著作『父が子に語る世界歴史』の中で、何千という人々が路傍の木にその屍をさらしものにされたことに触れている。映画にも通りすがりの少女が路傍の木に吊るされた場面がある。
作品は伝記映画や史劇よりも映画.comにある通り、スペタクルアクションにちかいものだった。『バーフバリ』と同じ脚本家だからスペタクルアクションになるのは予想がついたが、それでも見に行ったのは主役がラクシュミー・バーイーだったから。鑑賞したのは先月で、既に武漢ウイルス感染が騒がれていたにせよ、映画館には思った以上に来場者がいた。
◆関連記事:「逆立ちした歴史」
「インド大反乱物語」
「インドが長く支配された訳」
「英国人の記録に見るインドの実態」
ラクシュミーの孫もいましか。養子は夫の親族だから彼女の血は引いていませんが、その子が大反乱100周年記念で州政府から報償金を貰ったのは意味深いですね。
女王が反乱を起こして大暴れした話を
読んだ記憶がありましたが、名前すら
忘れてましたが、この方だったんだなあと。
予告動画を見る限り娯楽大作という感じですね。
>描き方が悪かったり宗教や自国への侮辱があると解釈されたら大変なことになる。不適切と見られた映画では、映画館や監督の家が焼き討ちされることもあるのがインドである。上映拒否が表現の自由への妨害云々と騒がれる日本とは違うのだ
恐ろしい!でも大概の国では不当な自国批判は
顰蹙を買いますよね。日本はせいぜいネットで罵詈雑言を浴びる程度で済むのに世界屈指のナチスの言論弾圧国家のように言い募る様は本当に滑稽です。
ナチスだったらその日の夜中に「水道局」がきて
あの世に引っ越し。デモをやったら機関銃どころか
砲弾が飛んでくるですがねえw
インドでも不適切と思われた映画の監督や役者はネットで罵詈雑言を浴びせられます。しかし、かの国で「殺す!」「酸攻撃をしてやる!」といった脅しが単なる脅しではないのが怖いところ。
世界屈指のナチスの言論弾圧国家のように言い募る様は一般日本人からすれば滑稽でも、事情を知らない他国では事実と受け取られてしまう危険性があります。反日プロパガンダの一環であり、決して笑い事ではないはず。
尤もナチス以上の言論弾圧国家は日本の隣に少なくともふたつはあります。ナチスなど中ソ朝の共産党に比べればぬるいでしょう。
「子供のひかり」を小学生の時購読していたのですが毎号連載で世界の偉人漫画がありましてそれをよくよんでました。それでこの方を知りました。
農業関係の読み物 W Cニコルさんの子供向け小説。農業漫画 少女漫画 世界の名作物語の漫画
(ドーデの「最後の授業」掲載回今でもはっきり覚えてます)
詰将棋 詰碁 詰めチェス問題等々結構好きな雑誌でした。
ただ子供が減って子供むけ雑誌てどんどん廃刊に
なってるんですよね。結構こういうので知った知識が意外なところで思い出したりするのに。。寂しい
話です。
私が小学生の頃は小学館の小学〇年生を見ていました。中学になってからは旺文社の中〇時代ですが、どちらも今は廃刊になって本当に寂しい。雑誌全体の売り上げが減少していて、良質な子供向け雑誌の復活はかなり難しいと思います。