ロック・オペラの代表作「ジーザス・クライスト・スーパースター」のライブ映像。昨年10月5日、バーミンガムで行われた公演を収録したのがこの作品。次はチラシにある紹介。
―聖書をもとにイエス・キリスト最後の7日間を描き、ロック・オペラの先駆けとなった「ジーザス・クライスト・スーパースター」は40年以上もの間、世界で最も人気があるミュージカルのひとつとして愛されている。作曲はアンドルー・ロイド・ウェバー、台本・作詞は後に「美女と野獣」「ライオン・キング」「アイーダ」を手がけたティム・ライス。1971年10月のブロードウェイ初公演以来、ショーは42カ国で上演され、19カ国語に訳されている…
1970年代前半には映画化もされ、日本でも劇団四季による公演が行われているが、私はこの作品を今回初めて見た。それだけ有名なロック・オペラでありながら日本ではイマイチ人気が出ないのも、日本が非キリスト教国で聖書の物語になじみが薄いこともあるのだろう。行きつけの映画館のHPでは、「裏切り者ユダの視点から、イエス・キリスト最期の7日間を斬新かつ現代的な解釈で描く」という説明があり、面白そうだと思ったので観に行った。耶蘇嫌いの私だが、予想以上によかった。
イエス最後の7日間を描いた作品でもコスチューム史劇ではなく、登場人物は全て現代の服装をしている。ユダは長髪のハードロック・ミュージシャンスタイルで登場する。ユダは最近のイエスの言動に戸惑い、本人ばかりかローマ支配下にあるユダヤ社会を危機にさらすと危惧している。
イエス自身も弟子たちが自分の教えをよく理解していないと苦悩しており、満足に眠れない。彼を慰めるのがマグダラのマリア。それがユダの苛立ちを煽り、「こんな娼婦と!」とイエスを責め、師の怒りを買う。
マグダラのマリアもアイシャドウの濃いパンク・ファッションなのだ。片方の肩には“女力”のタトゥー。宗教画で描かれる妖艶なマグダラのマリアとは正反対。イエスは肩まで伸びた長髪でも、さすがに真面目そうな若者になっていた。
カヤパはダークスーツで、抜け目ない多国籍企業の最高経営責任者といった印象。彼の従者たちもスーツ姿で、教団の祭司とは思えない格好。いかにも高級官僚といったピラトは、首にタオルを巻きジョギング姿でも登場する。ヘロデ王に至っては真っ赤なスーツを着たバラエティ司会者そのもので、国王よりもショービス界の大御所同然の設定。やはりロック・オペラの世界なのだ。
現代劇風でも、イエスの鞭打ちはきちんと描かれている。その回数を数えるのがピラトで、せいぜい20回程度で止めると思いきや、延々と39回も行っている。イエスの受難を扱った映画『パッション』といい、やはりクリスチャンはこのシーンがないと満足しないのか。そして磔刑になるのだが、共に処刑された2人の男は登場せず、単独で磔された姿がクローズアップされる。弟子の前に復活するシーンもなし。
ユダが裏切ったのも金欲しさではなく、逆にイエスがカヤパに捕えられた方が師やユダヤ社会のためになると判断したためだった。師が罪に問われるのは予想外であり、自分の行いを後悔したユダは首を吊る。そしてペテロの裏切りも描かれていた。イエス逮捕時に早々逃げ、人に問われても自分はイエスなど知らないと3度もしらを切った第一弟子だ。これがキリスト教の聖人なのだ。
劇中でイエスが登場するのは早すぎた、現代のようにマスコミやインターネットのある時代ならば、かなり影響力を持っただろうと歌われていた。確かに21世紀ならテレビ伝道師として大成功しただろうし、宣教活動は世界各地で人気を集めたと思う。ただ、現代は磔刑のような処刑は許されず、拷問も惨殺もされないイエスならば、キリスト教は今とはかなり違った宗教になっていただろう。
この舞台や映画版は当然キリスト教主義団体から強い反発を呼び、「時に映画館が爆破や放火の対象にされるなどの騒ぎも起こった」(wiki)という。原理主義勢力の台頭する今の中東諸国と重なるが、1970年代にこのような事件が起きたのは米国なのだ。
むしろ、「イエス・キリストはわれらと同じただの人間である」「自分の身さえ救うことのできなかった男が他人のために何をしてくれようか」と公言してはばからなかったとされるボニファティウス8世(※1294年ローマ法王就任)の方が醒めており“現代的”だった。
◆関連記事:「パッション」
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この動画をご覧ください。ジーザス・クライスト・スーパースターに対抗して、マリリン・マンソンのアンチクライスト・スーパースターです(爆笑)
http://www.youtube.com/watch?v=rDyN-hQZnJA
>本作はマンソン独自の哲学、倫理的歌詞とシアトリカルメタルといわれるけばだった凶暴的なメタルサウンド、そしてマンソン自身のステージでのパフォーマンスとキャラクターで一躍マリリン・マンソンというバンドをスターダムに押し上げ、アメリカ社会に旋風を巻き起こした。特にそのメッセージ性からキリスト教に関して、良くも悪くも議論を提起し、賛否両論のアルバムとなった。
マリリン・マンソンのロスのライブ動画の紹介を有難うございました!Antichrist Superstar とは、いかにも彼らしい。会場は満員で観客はノリノリでした。「聖書を破り捨てながら壇上で歌い叫ぶ」パフォーマンスなら、キリスト主義者が目をむくでしょう。この歌の和訳サイトもありました。
http://minna-no.kget.jp/diaries/view/14888
かつてはエルビス・プレスリーでも、バチカンから“悪魔の使者”と呼ばれたそうです。世俗化が進んでいると言われる欧米社会ですが、米国では未だに原理主義も根強いようで。
朝起きたら桜満開の杜の都に粉雪舞うという、文字にすれば風流かもですが、住人にとっては悪夢以外のなにものでもない。聞くところでは、観測史上2番目に遅い「積雪」(降雪ではない)とのこと。先週末にこちらの「足」として手に入れた11年落ちの軽4輪は当然ながら夏タイヤなので、車線数の多い道路では地元ナンバーにどんどん抜かれ(とはいうものの、私の軽も仙台ナンバー)てトロトロ走っておりました。いろいろ用事をすませつつ、昼になるとようやく雪から雨に変わり、夕方に差し掛かる3時半頃にはようやく雲のすきまからお日様が顔を出し、午前中の荒れ模様は一体何だったんだという感じですが、ともあれ走りやすい条件になったのはラッキーで、夕方からもあちこち飛び回っておりましたら、今日の走行距離は90キロを超えてしまいました。
それにしても、クルマがあるとないとでは、仙台という街の顔はまるでちがって見えますね。それまでは借家のある場所と勤め先の都心しかわからなかったのですが、クルマで走れば、仙台宮城インター周辺の商業集積とか、吸収合併した泉中央の発展度合いとか、バスと地下鉄(1路線だけ)とJRで週末にでかけようとはとても思えないところへすんなり出向くことができるのは、やはり仙台もクルマ社会ということなのでしょう。
あと、節電厳しいですね。昨日出向いた泉中央付近の某PCショップは、全蛍光灯を消灯してLED球をあちこちに張り巡らし、それで「照明」にしていた。正直言っ異様な暗さでしたが、それでも店員は普通に仕事をしてましたから、「必要にして十分な明るさ」は確保されているということなのでしょう。「岡田屋」は幸町も吉成台へも行きましたが、幸町店の売り場フロア(2F)から駐車場階(3F)のエスカレータ上蛍光灯は全部消灯。周囲からの散乱光が足りているので問題ないと言えばないのですが、3月までいた名古屋の同じ系列店とは3段階ぐらい徹底ぶりがちがう。「堤商店」系列も、仙台では食品専用スーパーが多いですが、かなりの灯りを「間引いて」いるようです。
おやおや、ちょっとだけのカキコのつもりが、ずいぶんな量になってしまった。今回のエントリーには無関係ですが、「仙台・宮城」ネタの際にはときどき「寄生」いたしますので今後ともヨロシクです。
赴任したばかりの仙台での4月の積雪、さぞ驚かれたことでしょう。桜の開花時期には花冷えが当たり前の仙台ですが、4月半ばになっても雪が降ることがたまにあります。数年くらい前だったか、やはり「積雪」でせっかく咲いた庭の水仙が全部だめになったことがありました。
しかし、昨日の積雪は仙台っ子の私でも驚きました。朝から牡丹雪だったし、この時期にこれほどの「積雪」になるとは思ってもいなかった。実質は隣国の国営放送となっている放送局のお昼の天気予報で、仙台の積雪は1㎝と発表していましたが、私の住む地区では少なくとも3㎝は積もりました。
仙台のような地方都市では車は欠かせません。私の車も軽自動車ですが仙台も車社会に合わせ、続々と郊外のショッピングモールが開店ラッシュとなっています。昭和時代末期までは仙台市の北隣に「泉市」がありましたが、仰る通り吸収合併となりました。昔の泉市辺りは田んぼが多かったのに、今では仙台で最も発展が著しい地区になっています。
仙台の南隣に名取市もあり、ここに住んでいる友人の話では、名取市住民も年配者を除き仙台との合併を望んでいるとか。しかし、仙台市も財政赤字、泉市と違い合併には及び腰になっています。
名古屋人から見れば、仙台の節電は厳しかったのでしょうか??同じ「岡田屋」「堤商店」でもかなりの灯りを「間引いて」いたとは知りませんでした。「岡田屋」の吉成台なら、私が普段利用している店ですよ(笑)。20日の土曜日(5%オフの日)に行ったばかり。仙台の節電は震災が影響しているのでしょう。
エントリーには無関係でも、「仙台・宮城」関連の書込みなら大歓迎です。私の方こそ、地元ネタを今後もよろしくお願いします。