トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

粗食のすすめ

2008-03-01 20:46:40 | 読書/ノンフィクション
 十年程前に出版、食に関する本としては珍しくベストセラーになったのが幕内秀夫氏による『粗食のすすめ』(新潮文庫)。この本を私は借りて読み、購入したのはレシピ集だったが、それでも著者の主張には驚かされた。“粗食”と聞くと粗末で不味い食事を連想するが、レシピ集を見た限り旬の食材を中心とした和食中心で、これを見た昭和一桁生れの私の母など、戦前と比べれば豊富な程だと言っていた。

 中国製農薬混入餃子事件もあり、最近食の安全が喧しいため、久しぶりに『粗食のすすめ』レシピ集(東洋経済新報社)を読み返してみた。第一章は「粗食こそ健康の基本」との大見出しで始まり、「食生活の常識に疑問を持ちましょう」の小見出しが続く。小見出し以下を一部抜粋したい。

-私たち日本人は長い間、穀類やいも類を主食として、野菜、海草、豆類、魚介類などを食べてきましたが、昭和30年代から始まる「栄養改善普及運動(食生活近代化論)」によって食生活は大きく変わりました。「ご飯は残してもいいからおかずを食べなさい」「たんぱく質が足りないよ」という言葉と共に、お米の消費量は急激に減少し、パン、砂糖、油脂、牛乳、乳製品、食肉加工品などが急増したのです。
 少し前まではこのような変化を、「食生活が豊かになった」「日本は世界一の長寿国になった」「子供たちの体格は見違えるほど立派になった」と捉えたものです。しかし、最近はこうした言葉も殆ど耳にしなくなりました…

 食生活は豊かになったのではなく、デタラメになっただけ、ということが明らかになりつつあります。私たちは何を食べるべきか、今こそ根本的に見直さなければなりません。
 主食のご飯をしっかり食べ、味噌汁、漬物を組み合わせて基本食とする。これに季節の野菜、魚類、芋、海草などを副食とし、調味料こそ良い物を選ぶ。カタカナ名前の料理はなるべく少なくする。飽食の時代に、こんな食生活はとても素朴。むしろ粗食と言えましょう。けれども真の意味で、「豊かな食事」ではないでしょうか?

 このレシピ集は1999年が初版だが、食をめぐる環境は改善どころか、悪化の一途を辿っている惨状だ。幕内氏が挙げた食生活改善十か条も紹介したい。

①ご飯をきちんと食べる-ご飯が足りぬと甘いジュースや菓子類が欲しくなる。
②発酵食品を常に食べる-味噌汁、漬物、納豆などの発酵食品の常食。味噌や漬物は出来ればきちんと発酵した、質のよい物を選ぶ。
③パンの常食は止める-殆どのパンは砂糖や油脂類だらけで菓子と変わらない。食べたいなら、週一回程度。
④液体でカロリーは取らない-炭酸飲料、清涼飲料水、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、牛乳などは止め、飲み物は水、番茶(ほうじ茶)、麦茶、緑茶にする。
⑤未精製のご飯を食べる-胚芽米、三分、五分、七分米、玄米などを常食。麦、あわ、ひえなどの雑穀を入れるのもよい。
⑥副食は季節の野菜を中心に-その季節に採れた野菜、海草、芋類。
⑦動物性食品は魚介類を中心に-その季節の魚介類を中心にし、時々卵で補う。
⑧砂糖、油脂の摂り過ぎに注意を
⑨出来る限り、安全な食品を選ぶ-神経質にならぬ程度に食品の安全性にも注意したい。
⑩食事はゆっくりと、よく噛んで

 幕内氏が乳製品や食肉加工品を極力減らしたいと言っているのは疑問だが、魚介類自体、現代は入手も難しくなりつつあるから暗鬱な気分になる。「豊かな食事」とは懐の豊かな者以外には縁遠くなってきたのだろうか。“カタカナ食品”を“ひらがな食品”に変えることなら、何とかやれそうだ。例を挙げると…

パン→ご飯、ラーメン→日本そば、パスタ→うどん、ピザ→お好み焼き、サンドイッチ→おにぎり、ピラフ→炊き込みご飯、シチュー→煮込み、スープ→味噌汁、ハンバーグ→がんもどき、魚のムニエル→焼き魚、フライ→天ぷら、オムレツ→卵焼き、ブイヨン→だしの素、アイスクリーム→かき氷、クッキー→煎餅…

 なお、他の本でも幕内氏は身体によい酒の選び方を書かれている。日本酒なら「米、米麹」とだけ表示されている純米酒、ビールは「麦芽、ホップ、大麦(小麦)」、焼酎は乙類本格焼酎、ワインも亜硫酸塩の類の酸化防止剤が使用されていないものを氏は勧められていた。酒も食品添加物が使われているのが現状なのだ。

◆関連記事:「米食は人をスケベにさせる?

よろしかったら、クリックお願いします
   にほんブログ村 歴史ブログへ


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
メ○ボ大臣 (Mars)
2008-03-02 21:01:42
こんばんは、mugiさん。

メ○ボ体型(?)の私が言うのものなんですが、毒入りの食物でなけらば、バランスと適量さえ守ればよいと考えます。

また、「食生活の常識に疑問を持ちましょう」というのであれば、粗食についても、疑問を持ちましょう、としたら??

>ワインも亜硫酸塩の類の酸化防止剤が使用されていないものを氏は勧められていた。
この方は、ワインに関してはあまり詳しくないようですね。また、私も、自称国産の無亜硫酸塩ワインを野でみましたが、味の方は、、、。
ttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/wani/vin/vin0005.html

美味=健康でもなければ、美味=不健康でもないでしょうし。「豊かな食事」とは、簡単に述べられませんね。
返信する
yasukofreddie@m09.itscom.net (やっちゃん)
2008-03-02 23:45:11
こんにちは!お久し振りでございます。
この本は私にとっては「ギクッ!」とする事ばかり。医師から(本当に)メタボを指摘されているにもかかわらず、体によくない食物ばかりいただいている私は、改めて勉強し直して食生活の改善を実行しなければ‥と思いました。でも、美味しいのよねぇ、アレとアレと‥ああ誘惑に負けてしまう
花粉症と戦う私でした。
返信する
コメント、ありがとうございます (mugi)
2008-03-03 22:03:07
>こんばんは、Marsさん。

私は管理栄養士ではありませんが、仰るとおり「粗食のすすめ」も全面的には信頼は出来ません。
幕内氏の食生活改善十か条の概ねは賛成できますが、七分米、玄米やあわ、ひえなどの雑穀を入れたご飯は、正直言って美味しくなかった。特に玄米は年配者には消化がよくないとか。麦ご飯は美味で、ほとんど毎日食べてます。

興味深いサイトの紹介、有難うございました。私も以前、国産を銘打った無添加ワインを飲んでみましたが、不味い!亜硫酸無添加ワインも偽装表示の可能性もあるし。身体によくても不味い酒を飲むのでは、酔えないですよね。
ともかく、毒入りだらけのシナ産食品だけは、「買ってはいけない!」対象ですね。


>「やっちゃん」さん

家での食事の大半は和食の私も、実は外食となれば、この本で“出来るだけ避けたい”食事、つまりファーストフード、カタカナ食事を取っている有様です。ハンバーガーやフライドチキンは安いし美味いし、バイキングともなれば、つい余計に取ってしまう食い意地丸出しの卑しさ。また、イタリアンレストランの某チェーン店、これまた安くて美味いんですよね~~誘惑に弱い私です。

花粉症とは大変ですね。春先は特に症状が出るので、お気をつけて。
返信する