トーキング・マイノリティ

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ウルトラ怪獣列伝

2011-11-05 20:41:36 | 音楽、TV、観劇

 NHK BS番組『熱中スタジアム』で、先月10日と17日の2回に亘りウルトラ怪獣を特集していた。番組サイトでは出演者の声も紹介されており、ウルトラシリーズを熱心に見ていた子供たちも今は家庭を持つ中年である。スタジオに来ていたファンの殆どは男性であり、怪獣たちへの熱い想いを語るのは面白かった。そんな私自身、ウルトラシリーズは『帰ってきたウルトラマン』まで夢中になって見ており、今回の特集は懐かしかった。

 時間の制限もあるのか今回の特集では取り上げられなかったため、私的に印象的だった怪獣を3例ほど挙げてみたい。数ある怪獣の中で最も憶えているのが、ウルトラマン23話「故郷は地球」に登場した棲星怪獣ジャミラ。上記の画像がジャミラ、不気味な姿もインパクトがある。ただ、この怪獣は元はれっきとした人間であり、宇宙飛行士との設定。宇宙開発競争時代、某国が打ち上げたロケットに乗っていたのこそジャミラで、事故により水のない惑星に不時着。救助を待つ間、環境の変化で醜い怪獣の姿になってしまったのだ。

 ジャミラの母国は国際批判を恐れ、事故を隠蔽、彼を救助せず見捨てる。それを恨んだジャミラは復讐のため地球に帰還、祖国以外の人々にも破壊や殺戮行為を繰り返す。最後はウルトラマンに退治されるというお決まりのパターンだが、水に弱いというジャミラの弱点をつき、ウルトラマンの指噴射(正式名はウルトラ水流)により絶命する。
 断末魔に赤ん坊のような悲鳴を上げ、必死に手を伸ばした万国旗の先が星条旗だったので、某国とされていたジャミラの祖国が想像がつく。いかに悲劇的な背景があったにせよ、無関係の民間人を巻き添えにしたことに弁護の余地はないが、ジャミラの最後は忘れ難い。wikiで初めてこの怪獣の名は、アルジェリアの女性独立運動家ジャミラ・ブーパシャから取られたことを知った。 
 


 上の画像はウルトラマン第30話「まぼろしの雪山」に登場した伝説怪獣ウー。巨大化した白
なまはげといった印象だが、飯田山に住むという設定なので、東北ではなかったことはちょっと残念。雪深い村の物語だったため、舞台が東北でもストーリーは同じとなるはず。既に雪山ではスキーが観光産業となっていたことが伺えるし、村おこし観光は60年代に始まっていたのだ。怪獣出現で観光客が来なくなることを恐れる村の長の苦悩といい、映画『ジョーズ』に通じるものがある。

 ウルトラシリーズにはよく××星人という名の怪獣が登場し、今回の特番でもバルタン星人への解説があった。優れた科学力を持つ冷酷な侵略者型宇宙人の典型であり、このタイプの敵役が殆どの中で、例外的に人間には全く敵対せず、人間以上に人間らしい宇宙人もいた。メイツ星人がその例外で、帰ってきたウルトラマン第33話「怪獣使いと少年」に登場する。
 第33話のストーリーを詳しく紹介したブログ記事もあり、懐かしく読んだ。テーマは人間の差別や偏見そのものであり、余所者への疑惑と恐怖で集団ヒステリーに陥った地球人により、哀れなメイツ星人は殺害されてしまう。少年向け特撮シリーズにしてはかなり重く、後味の悪いストーリだったため、妙に憶えている。
 


 メイツ星人は孤児の地球人少年の親代わりとなり2人で暮らしていたが、そのことが迫害を招く。地球の汚れた環境で病に侵されたメイツ星人を看病する少年は、地域の少年たちから酷い虐めを受けていた。住民のヒステリーが頂点に達し、少年を庇おうとしてメイツ星人は射殺された。上記の画像はその時のものだが、宇宙人の血液が緑色というのはいかにもSF的。Xファイルに登場するメイツ星人とは正反対の凶暴な殺し屋「バウンティハンター」も、最後は緑色の液体となって消滅する。地球人も異星人に劣らぬ冷酷な生き物という寓話か。

 特番を見て懐古房に火が付き、いい年をして私はウルトラマンシリーズのDVDをレンタル、鑑賞している。「空想特撮シリーズ」とあるように、今見返しても特撮水準とストーリーから、お子様向け番組とはとても言えない質の高さに驚いた。どうも私は昔から少女向けドラマが苦手で、ウルトラシリーズなどを好んで見ていた。似た血筋なのか従姉妹たちも同じ傾向があり、夏休みなどで親戚の家に泊まった時、一緒に『帰ってきたウルトラマン』を面白く見ていた。実は主人公・郷秀樹(団 次郎)が格好良くて楽しみに見ていたのが本音だが、 テーマ曲もストーリーも面白かった。 



MATのテーマ」もスゴイ曲である。子供の頃、従姉妹たちと何とか「♪ワンダバダダバダワン~~」と声を合わせ、歌っていたのも懐かしい思い出。2005年12月1日付の記事に書いたとおり、その従姉妹の1人は今は星となっている。

 

 闘いの時に流れたBGMは今聞いても元気が出る曲。「シュワッチ!」と腕を交差させていた、無邪気な子供時代に戻った想いになる。毎回登場し、毎度ヤラレた多種多様な怪獣たちこそ、ウルトラシリーズの真の主役だった。



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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウルトラマン百科 (madi)
2011-11-07 01:54:35
うちは男の子がいるのでディアゴスティーニのウルトラマン百科はそろっております。
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初めまして。 (GanganGansoku)
2011-11-07 13:45:45
ジャミラ、メイツ星人の話、
切ない設定なんですねぇ。
兄と一緒にウルトラマンも見ていたはずなのですが、
あまり覚えていませんでした。
大人になってから見るウルトラマンは、
また一味違いますね。
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RE:ウルトラマン百科 (mugi)
2011-11-07 21:33:49
>madi さん、

 もしかすると、『熱中スタジアム』に登場した視聴者のように、父子でウルトラシリーズを鑑賞されているのでしょうか?子供の頃に見た特撮番組を親子で鑑賞するのはいいですよね。私の友人にも母子で仮面ライダーを見ていた人もいます。お母さんはイケメン俳優、息子はヒーロー目当てで。
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RE:初めまして (mugi)
2011-11-07 21:35:30
>GanganGansoku さん、

初めまして。コメントを有難うございました。
 メイツ星人は科学者という設定だし、もしかすると母星には妻子がいたのかもしれない。彼を射殺するのが警官というのもスゴイ話です。

 この他にもウルトラマンシリーズには結構シリアスな話がありました。便利なことにネットでは『ウルトラマン夕陽に死す!』がyoutubeにアップされており、主人公の恋人が敵の宇宙人に殺害される回です。それも車で引きずって殺すのだから惨すぎる。ウルトラマンへの心理攪乱作戦にせよ、子供向け番組とは思えないストーリーでした。
http://www.youtube.com/watch?v=kTf3-IKuszQ&feature=related
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悲哀 (ハハサウルス)
2011-11-07 22:36:52
こんばんは、懐かしいですねウルトラマンシリーズ。私も好きでしたが、何せまだ小さかったので、怪獣のことは覚えていても、正直内容はよく覚えていません(汗)。

ただ、とても印象に残っているのは、どのシリーズかはわかりませんが、何かを研究している男性が、生肉を食べて怪獣になってしまった話ってありませんでしたか?それで、子供の頃は「生肉を食べると大変なことになる」と思っていました(笑)。

ウルトラマンは日本人の戦後の悲哀を背負ったヒーローだという説を、何かで読んだことがあります。ですから、何か物悲しい雰囲気なのだと…、何となくわかる気がします。
 
我が家では、息子がヒーローものに興味がないので、戦隊ものも見ません。お下がりで頂いた「ウルトラマン物語」というビデオは、娘が喜んで見ています(どうやら私似)。成長の過程で、ヒーローものを見るのは大事かなと思っていますので、いつかは息子にも見てもらいと思います。

ちなみに私の最初のヒーローは「勇者ライディーン」の洸あきらです。先日、ネットで子供たちにも見せたのですが、思わず「カッコイイ~!」と童心に返ってしまいました。「ゴッドマーズ」も好きでしたね。この手の話になると止まらなくなりそうですので、この辺で失礼します。
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訂正です (ハハサウルス)
2011-11-07 22:43:17
すみません、訂正させて下さい。

>息子にも見てもらいと → ×
>息子にも見てもらいたいと → ○
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再度訂正です (ハハサウルス)
2011-11-07 22:52:30
またしても間違いました。

>洸あきら → ×
>ひびき洸 → ○

大変失礼致しました(汗)。
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怪獣使いと少年の続編 (madi)
2011-11-08 02:05:02
『ウルトラマンメビウス』では同胞を殺されたメイツ星人が復讐に訪れる続編エピソード『怪獣使いの遺産』があります。

 地球との友好関係を結ぶために地球を訪問しに来たメイツ星人が現れ、地球人との対話を要求します。
同時にメイツ星人はミライ(=ウルトラマンメビウス)に接触し、『これはメイツ星人と地球人の問題。本来無関係な貴方には関わらないでほしい』と不干渉を要求します。外交の基本ですね。つよい第三国の不干渉をいちおういっておきます。外交の基本として約束も要求も守られるかどうかはわからない、というのもおぼえておきましょう。

現場を見たリュウがミライの身を案じて発砲、メイツ星人を傷付けてしまう。

その行為に激怒して、やはり地球人は信じられないと憤るメイツ星人。
そう、彼はかつて地球人に殺されたメイツ星人、金山の息子だったのです。
 
怒りで我を忘れたメイツ星人は、怪獣ゾアムルチを召喚します。
地球の領土を割譲しないとゾアムルチで町を破壊すると脅迫する。

やむなくミライはメビウスに変身し、ゾアムルチを止めに向かう。

破壊をやめろと詰め寄るリュウを意に介さないメイツ星人の前に、幼稚園の保育士の女性が子供達と現れる。
彼女はかつて円盤を掘り起こそうとしていた少年と会ったことがあるという。

語られた少年と父と思しきメイツ星人の話を聞き、また、宇宙人だと知りながらも自分の傷を心配してくれる子供達と触れたことで決して地球人全てが悪いわけではないと実感しながらも、父を殺された憎しみを消し切れないと絶叫するメイツ星人。ちょっと全権にするにはメイツ星人も人選ミスをしていないかな、と大人にはおもえてしまいます。
彼の涙と共に、その心境を表すかのように激しさを増す雨。

涙と雨に濡れながら、メイツ星人は叫ぶ。



お願いだ!私の憎しみを消し去ってくれ!!

ウルトラマンメビウス!!

その絶叫を聞き、ゾアムルチを倒すメビウス。

その後、メイツ星人は地球人に謝罪。
メイツ星と地球との間に、友好関係が結ばれたところで話は終わります。
 
 脚本家のかたが文芸春秋の巻頭エッセイをかいていなかったかな?


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直木賞作家の朱川湊人 (madi)
2011-11-08 02:07:18
怪獣使いと遺産の脚本は直木賞作家の朱川湊人さんです。当時は結構話題になりました。
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RE:悲哀 (mugi)
2011-11-08 21:42:33
>ハハサウルスさん、こんばんは。

 やはり貴女も、ウルトラマンシリーズを好んでご覧になられていたのですか。もしかすると男の子だけでなく女の子も結構ファンが多かったのかもしれません。私も物語の殆どは忘れましたが、毎週ワクワクしてみていたのは憶えています。

 貴方の挙げた生肉を食べて怪獣になってしまうお話は憶えておりません。記事にも書いたとおり私が見ていたのは『帰ってきたウルトラマン』までだし、それ以降のシリーズは見ていません。怪獣ものに飽きたのかもしれませんが、主役が団次郎より格好良くなかったことも影響していたと思います。
 私自身、どのシリーズかは不明ですが、植物怪獣が人間を襲い食べてしまうストーリーがあったような気がします。そのため、子供の頃に鉢植えのような観葉植物を置けば、大変なことになると思っていました(笑)。

 ウルトラマンは日本人の戦後の悲哀を背負ったヒーローとの説は初耳ですが、興味深いですね。確かにそのような面があるかもしれません。ウルトラシリーズも『帰ってきた~』以降はやたらウルトラ兄弟愛が強調され白けました。孤高のヒーローの方がよかった。
 youtube映像に、「(ウルトラ)ブレスレットよりも、どんなに叩きのめされても折れない不屈の闘志が最大の武器だったと思うナ」というコメントがあり、これには納得です。

 高校時代の文化祭の時にウルトラマンの漫画がありました。「また、怪獣をいじめることができる。ヒヒヒ」の吹き出し付きで、怪獣をビシバシ叩いており、怪獣が悲鳴を上げている絵でした。これには私も笑いましたが、この漫画は妙に憶えています。

 ロボットものは苦手なので、「勇者ライディーン」「ゴッドマーズ」は未見です。ついでにアニメでの私の初のヒーローは「海のトリトン」でした。ウルトラセブンでは「キングジョー」という宇宙人のロボットが登場しており、youtubeでも公開されていますよ。
http://www.youtube.com/watch?v=QOejVCwULMo
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