今年2月はじめ、2回に亘り「ローザ・ルクセンブルク」という記事を書いた。タイトル通り、マルクス主義の理論家、女革命家でもあったローザ・ルクセンブルクの生涯についてだが、この弱小ブログには珍しく訪問者数が1,170にもなった。左翼知識人でもなければ、ローザなど半ば忘れられた理論家だと思っていたが、この数には私自身驚いた。
私はローザの著書は未読で、永井路子氏のエッセイ『歴史をさわがせた女たち』(外国篇、文春文庫) を元に書いており、永井氏はローザを高く評価していた。しかし、『ブルガリア研究室』さんから「口舌の徒」という題のコメントがあり、ローザの実態が描かれ失望させられた。以下はそのコメントの全文。
-曖昧な記憶に頼る意見で恐縮ですが、小生も誰の著書だったか、覚えていないのですが、何かで読んだ話では、ローザは口ではプロレタリアートの権利を擁護するけど、自らは富裕なユダヤ人家庭出身者として、金には困らない身分で、いつもブルジョア風の生活を維持できた、とそのブルジョア的生活態度に批判的な意見でした。
欧州各地を渡り歩いて左翼の集会では、演説とか、議論を生涯繰り返していたけど、しかし宿泊するのは何時も一流のホテルだし、インテリ左翼の集まりで、口角泡を飛ばして議論に熱狂するけど、実際の労働者達の悲惨な暮らしぶりになどは、さしたる興味も、関心も、同情心もなかった…と酷評していた。
まあ、マルクスが、エンゲルスからの資金援助に寄生したり、米国紙への寄稿で稼いだりしていても、いずれにせよ、家庭内ではユダヤ風に家父長として絶対権力者の立場でいたり、自分の理論構築には熱心でも、決して工場を見学したり、労働者の生活実態、貧困ぶりなどにも、ほぼ無関心だったりしたように、ユダヤ系のインテリ達の間では、理論・学問にのみ興味を持ち、実態には関心のない、書物の上、理論の上のみにこだわる人々がいるようです。
ドイツ市民権が必要だから、偽装結婚したというし、在る意味移民の偽装結婚の先駆け的人間でもある。ともかく、偏狭な理屈バカ、理論・議論好きなだけの、鼻持ちならない人物…自分は一流ホテルに投宿し、高級レストランで食事し、インテリ左翼仲間と口舌のみの議論に明け暮れた人という評価が、左翼系の間でもあるようです。マルクスとほぼ同じ類型の、身勝手な人間という。
永井路子女史が、誤解して持ち上げすぎているのではないでしょうか??
ローザが日本の知識人にも評判がよいのは、ドイツ革命で虐殺されたことが大なのではないか?自らの理念に殉じた革命家として名を遺すことにもなり、特に女なら感嘆と称賛を寄せられるだろう。私自身、永井氏のエッセイを見て、大した女だと感心されられたものだ。
しかし、研究室さんのコメントから、やはり口舌の徒の傾向があったのは否めないし、左翼系の人々からも非難されていたことを初めて知った。こうなると、以前のような固い意志と信念を持つ人物への敬意と憧憬は失せ、頭でっかちの優雅なブルジョワ女への嫌悪と軽蔑心が持ち上げてくる。ローザに限ったことではないが、このタイプの女学者は今の日本でも大手を振っているのではないか?社会の実態には目を向けず、書物の上、理論の上のみにこだわるフェミニズム学者などが典型だが。
『柄谷行人「世界共和国へ」』という興味深いブログ記事がある。管理人「珈琲ブレイク」さんの書評は何時もながら感心させられるが、この記事で初めて柄谷行人なる文芸評論家を知った。私は柄谷の新書を未読なので論評はやれないが、書評だけで読む気も失せる。
「珈琲ブレイク」さんは、「率直な読後感として、いささか稚拙な印象が否めない」と穏やかに結んでいるが、「世界共和国へ」とはアホと言いたくなるような戯言。柄谷自身、「世界共和国」などSF以外に本気で実現可能と思っているのやら。口舌の徒がカネと注目を集めるには、文芸評論家という職業が最適だろう。口舌の徒の思想の結晶が著作となる。
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小生のコメントを掲載いただき恐縮です。このローザ・ルクセンブルグに関する評価をどこで読んだのか?小生も、このブログで再度取り上げられたこともあり、少し自分の蔵書を色々探ってみたのですが、結局は、どこに書いてあった内容なのか、発見できませんでした。
もちろん、このコメントに書いたように、どこかで読んで小生の記憶に残っていたことを書いたのですが、また、ウソでは決してないはずですが、出典を証明できないことを残念に思います。
もしかすると、産経新聞の記事だったかも知れないのですが、そうなると捜索は、更に難しく、結局出典探しは失敗に終わりました。
wikiの記述を見ても、偽装結婚に触れているし、小生の記憶に間違いはないと思うのですが。西欧の一流ホテルに宿泊し、インテリが集まるカフェなどで、長々と議論を重ね、集会では演説をし、口角泡を飛ばして持論を展開していたけど、本当の労働者の生活ぶりなどには、ほとんど関心もなかった、と言う。つまり、「革命の闘士、論客」としての人生を貫いた人らしいのです。
現実を見ること、それなりに現場体験を持つこと、などが小生の追求したい理想の研究者のあり方で、マルクスとローザの両名は、その意味では全くの「机上の論理、サロンでの議論」に終始して、現実的側面を重視しない「口舌の徒」なのです。とはいえ、マルクスとなると、現代資本主義の方向について、結構凄い予想を、読書と、自らの思考、考察、理論形成のみで成し遂げた、と言う凄い部分もあるけど、ローザになると、どうも教条主義的な理論家似すぎないような気がします。
同じような、ユダヤ人啓蒙主義者の立場ですが、頭脳の冴え方では、マルクスに軍配が上がるようにも思います。もちろん、マルクスが学究の道を貫いたのに、ローザは、職業革命家としての、一種の実践を試みた人物ですから、自ずから生き方にも差が出るし、理論のあり方にも違いがあったのでしょう。
過去の人間に関し、正しい評価を下すのは、いずれにせよ難しい側面もあるけど、左翼傾向の強い日本で、ローザの人間的な臭みを暴いた名論分を、誰が書いたのか??益々小生にも出典をはっきりさせたいという気持ちが出てきたのですが、どうも分かりません。残念です。
私自身、未だにマルクスだけでなくローザの著書も未読だし、永井路子氏のエッセイを元に書いただけなので、その意味では安易で底の浅い記事を書いたことになります。そこで、永井氏の著書からはじめの箇所を引用します。
-さて、ローザはワルシャワの貧しいユダヤ系商人の娘だった。子供のころ患った重病のため、生涯足を引きずって暮らさなければならなかった彼女は、小学校以来成績は抜群、早くから革命運動に接触し、18歳の時、警察に追われてチューリッヒに逃れ、ここで本腰をいれて勉強をしはじめた…(242頁)
wikiを見るとローザはワルシャワ生まれではなく、「ポーランド立憲王国の都市ルブリン近郊のザモシチに住むユダヤ人の木材商人エリアス・ルクセンブルク3世とその妻リーネの5番目の子供として生まれた」となっています。そして、「1880年に一家はワルシャワへ転居、ローザはワルシャワ第2女子ギムナジウムへ通うことと」なりました。
出生地の違いは些事ですが、家庭を見れば決して「貧しいユダヤ系商人の娘」ではありませんし、「自由な雰囲気の家庭で過ごした少女時代にはゲーテやシラーに傾倒して…」おり明らかにブルジョワです。不可解なことにwikiでは、足の障害に関しては記されていない!
永井氏がローザについて書いたエッセイには文献が挙げられておらず、本当にローザが生涯足を引きずって暮らさなければならなかったのか、確認は出来ません。ネットで検索しても子供のころに重病を患い、足に障害を負ったという書込みは見当たらない。永井氏のミスなのか、勘違いか不明ですが、もし間違いならば印象はかなり変わりますね。「貧しい」「身体障害者」は読者の同情を呼び起こす言葉です。
氏のエッセイを見た時、貧しい生まれで足に障害がありながら、猛勉強して学位をとるとは大したものだと感心させられました。むしろ足に障害があるため、他の女たちのように結婚し家庭に納まるのとは違う人生を歩んだのではないか?とも想像しました。度々の逮捕、投獄にもびくともせず、並みの男以上に度胸がある、と。
いずれにせよ、貴方のコメントで初めて、ローザが口舌の徒と左翼系知識人からも非難されていたことを知りました。参考になる情報を有難うございました!wikiの解説だけ見ても、永井氏がかなりローザを持ち上げているような…
さて、以前二女が男子を出産した(6月末)と書いたように思いますが、小生夫婦は、明日からロンドンに初の男の孫を見に行きます。
それで2週間ほど、小生のブログ記事も、一時休暇となります。
帰国したら、ロンドンでの見聞記を書きたいと思います。
今回は、円高ポンド安です。前回の07年には1ポンド=250円ほどだったのが、今回は120円ほどと、物価が日本人にとっては1/2になっているので、贅沢できるかも知れません。娘の家に宿泊するので、ホテル代はかからないし、ギリシャ系の食品(バルカン、トルコとも共通する)も普通に買える国なので、懐かしい食品も楽しめそうです。
こちらの記事を読んで、久しぶりに『歴史をさわがせた女たち』の外国篇を本棚から出し、ローザの章を読みました。(実はほとんど印象に残っていませんでした。私の「左嫌い」のせいでしょうか…)
なるほど永井氏の評価は高いですね。私もmugiさん同様、これだけ読めば、思想はともかく「たいした女性ね」と思います。しかし、室長さんのコメントを紹介して頂くと、印象はまた別のものになりますね。そうしますと、永井氏の書かれた
>彼女は先に言ったように行動の女性でもある。陽明学派そこのけの、知行合一派で、自分の理論にあった行動をとらなければ承知できなかった。
の部分は「?」と思えました。
そこで思い浮かぶのは、『エミール』の著者ジャン=ジャック・ルソーや、やはりマルクスでしょうか。ルソーは愛人との間にできた5人の子供を孤児院に送っていながら、教育学を説き、マルクスは浪費家でした。表では高い理想を掲げていても、私生活は「えっ?」という人物は多くいるものです。
私としては、実生活とのギャップがある故に、逆にますます理想を高く掲げるようになるのかしらと思っています。言行一致というのは、なかなか思うようにいかず、だからこそ理想に走り、理論武装するのかしらと…。
私の理想としましては、「女性としてはすごい」というような評価のされ方ではなく、性別に関係なく評価されて、その思想、行動等の中に女性ならではの観点が反映されている、というのがいいなぁなどと考えます。(現実には難しいでしょうが…)
明日からお孫さんの顔見を兼ねて、2週間の英国旅行されるとは素晴らしいですね。帰国後の英国見聞録が楽しみです。特に今は空前の円高、海外旅行には最適でしょう。ギリシャ系の食品を堪能されるのだから、羨ましい限りです。
季節がら、英国もクリスマス商戦で活気づいているだろうし、英国旅行を存分に楽しまれて下さい。
「左嫌い」のくせに、何故か私はローザのことは妙に憶えていました。貧しいユダヤ系商人の娘で、足に障害がありながらも学問の道に進み、成功を収めたとはスゴイ…と感心させられました。今でこそ女性学者は珍しくないですが、19世紀後半は西欧でも女性は大学で学ぶことも難しかったのです。有名なオックスフォード大でも、欧州の歴史教養の基礎であるラテン語やギリシャ語を専攻できるのは男性に限られていたほど。
しかし、室長さんからのコメントでローザの実像が分かり、いささか興ざめしました。先に書いたように、何故かローザの足の障害について書かれているサイトがヒットしない。そうなると、五体満足のブルジョワ女に過ぎなかったのか?と疑いたくなる。ローザはマルクス、レーニン等あらゆる著名知識人に噛みついており、非難することで名を売ったのか?と言いたくなります。
ジャン=ジャック・ルソーの偽善性は知られていますね。種付け後は子育てしない動物のオスさながらで、まさに「自然に帰れ!」を実践したのだから、ある意味「言行一致」だったかも。
この類はネットでも見かけますよ。「言行一致が大切です」と説いていた暇人、身元や職業を偽りながら、「正直、誠実は大事です。デマはいけません」と説教する者、ミエミエの嘘を並べ、人間として既に壊れているネットジャンキーなど。もっともらしい道徳を説く者ほど、正体はろくでなしが多いのかもしれません。