トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

わたしのマーガレット展 その二

2016-06-29 21:40:20 | 漫画

その一の続き
 会場の入口には'60年代作品の原画が飾られており、わたなべまさこの『ガラスの城』もあった。1歳年上の従姉から紹介されて知った作品だが、少女漫画らしからぬダークなストーリーが良かった。70年代初めまでは私の近所に貸本漫画屋があり、ここで色々な漫画を借りて見たものだった。wikiで見たら、何とわたなべまさこは1929年生まれ、未だに健在らしい。
 スポ根漫画の金字塔『アタックNo.1』もマーガレット連載作品、原画を見て、子供の頃のバレーボールごっこを思い出した方もいたはず。気分はアタックNo.1キャラ、腕をぐるぐる回し“木の葉おとし”をキメようとした少女もいたのだ。『エースをねらえ!』の影響でテニス部に入部した少女も多かったらしい。

 懐かしいギャグ漫画もあった。愛らしいキャラで人気のあった『にゃんころりん』、『あのねミミちゃん』は私もお気に入り。前者の原画にはポップアップ型トースターが描かれていて、これも懐かしかった。オーブントースターで食パンを焼くのが当り前になった現代、ポップアップ型トースターを知らない若い人もいるだろうが、70年代のトースターはポップアップ型が殆どだった。
 不潔なブサイクが主人公という変わり種のギャグ漫画が『つる姫じゃ〜っ!』。この漫画は大好きだったし、ベルばらの後で見ていた。オスカルが壮絶な戦死を遂げ大泣きした後、実は『つる姫じゃ〜っ!』で救われたのだ。食欲の秋で食べ過ぎて激太りしたつる姫は、大いに笑わせてくれた。
伊賀野カバ丸』も懐かしい。私は特にファンではなかったが、高校時代のクラスメートが大ファンだったので、釣られて見たことがある。ストーリーは殆ど忘れたが、カバ丸が通う学校名が「金玉学院(きんぎょくがくいん)」だったことだけは憶えている。金玉と書いて、「きんぎょく」と読ませる漫画の憎さ。
 


 私の目当ては池田理代子作品だった。池田氏の原画がなければこの特別展には行かなかったし、仙台展ではベルばらと『オルフェウスの窓』の原画は展示されていても、『おにいさまへ…』はなかった。おそらく他にも展示されない原画があったはずだし、仙台特別版というよりも仙台特別縮小版の方が相応しい。
 上の画像は'73年週刊マーガレット39号表紙で、この原画も展示作のひとつ。オスカルとロザリーのツーショットを描いた32号表紙の原画も展示されていたが、おそらく39号の絵の方がファンの間では人気が高いだろう。入口のオスカル&アンドレの等身大立像の記念写真を撮っている人は見かけなかったが、池田作品が展示された場所では、3人ほどの女性がデジカメを向けていた。

『オルフェウスの窓』はベルばらと並ぶ池田氏の代表作だが、私は全編を見ていない。ドロドロした複雑な人間関係、主人公を含め登場人物が不条理な死を遂げる重いストーリーが好きにはなれなかった。
 会場には立ち読みができるよう集英社漫画文庫も置かれてあり、文庫版『オルフェウスの窓』第一巻もあった。つい手に取り、パラパラとめくって見たが、主人公ユリウスが自分たち母子を脅していた医師を殺害するシーンが目に入った。この場面にはヨハネの黙示録の一節が挿入され、いかにもユリウスの殺人を正当化するかのようだった。
 このシーンは少女時代に見ていた。当時はさすが池田先生、聖書を引用するとは博学…と感心したが、今回は明らかに不適切としか思えない。確かに医師は悪人だったが、ヨハネの黙示録で殺してもよいと認められたのは不信仰者である。神の教えに背くならば、子供の性を偽り、財産を乗っ取ろうとしたユリウス母子も同じ罪人なのだ。中年になると素直に見れず、余計なツッコミをしたくなる。

 私が毎週週刊マーガレットを買っていたのは'74年までだったし、『おにいさまへ…』の連載終了後は時々買う程度になる。漫画を見なくなった訳ではない。先に『ガラスの城』を紹介した従姉から『ポーの一族』を知らされ、すっかり萩尾望都作品にハマり、少女コミックを買うようになったのだ。そのため'75年以降はマーガレットをあまり見ないようになった。
 少女コミックもやがて買わなくなり、私の関心は他誌に移っていく。私が漫画雑誌を買っていたのは主に70年代から80年代はじめであり、社会人となってからは殆ど買わず、立ち読みくらいで済ませた。

 初日でなかったためか、私が行った時は関連グッズも売られておらず、イベントとしてはいささか侘しい印象だった。それでもマーガレットに熱中した少女時代の思い出は忘れ難い。原画を見て昔の記憶が甦ったファンが多かったろうし、帰宅後の私はまさに興奮冷めやらぬ、の一言状態。
 マーガレットなどの少女漫画誌を見て、従姉妹やクラスメートの友人と熱く語り合った遠い日々が懐かしい。青春時代の漫画の影響力の濃さが改めて判った。

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