トーキング・マイノリティ

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ラヴレース 12/米

2014-09-20 20:40:12 | 映画

 私は未だに未見だが、1972に公開、興行成績が6億ドルという記録的な大ヒットとなり、社会現象まで巻き起こしたポルノ映画があった。『ディープ・スロート』がそれで、『ディープ・スロート』主演のリンダ・ラヴレースの半生を描いたのがこの作品。『ディープ・スロート』一本でスターとなり、引退後は伝説のポルノ女優となったリンダだが、その実像はどうだったのか?以下は映画サイトallcinemaからの引用。

1970年。厳格なカトリック教徒の家に育った21歳のリンダ・ボアマン。厳しい両親に反発を感じていた彼女は、バーを経営するチャック・トレイナーと出会い、たちまち恋に落ちる。すぐに結婚したリンダは、チャックの手ほどきで性の快楽に目覚めるとともに、様々な夜のテクニックを仕込まれていく。しかし最初こそ優しかったチャックだったが、次第に強権的で暴力的な本性が露わに。
 やがて経済的に苦しくなったチャックは、リンダをポルノ映画に出演させることを思いつく。チャックに命じられるまま出演した映画『ディープ・スロート』は、彼女が披露した“秘技”がセンセーションを巻き起こし、空前の大ヒットを記録、一夜にしてトップスターとなるリンダだったが…。

 私がまだ未成年だった頃、映画『ディープ・スロート』の題名だけは知っていた。タイトルは忘れたが、松本零士の何かの漫画にこの映画名がでており、男にこの映画どおりにしろ、と迫られる女が登場する。具体的な性描写こそなかったが、有名なポルノ映画だろう…くらいの想像はついた。どうでもよいことほど、妙に憶えているものらしい。
 この映画の主演女優が、実は暴力夫によって出演を強要されていたことも知っていた。これは父が買ってきたスポーツ新聞(たぶん東京スポーツ)にリンダへのインタビューが載っていたのを見たからだ。映画に出たのは夫の暴力に脅されてだった、あの映画のせいでセックスシンボル視されたことに今尚苦しんでいる…と語っていた。これら昔の記憶があったため、リンダの伝記映画を見たのだ。

 厳格なカトリック教徒の家に育ったといえ、リンダには男性関係がなかった訳ではない。それどころか、二十歳前にBFの子供を妊娠・出産しており、生まれた子供は彼女の母親によって里子に出された。リンダ一家がフロリダの小さな町に引っ越してきたのは、未婚の母になった娘への世間体が原因だった。当時はまだ未婚の母は不身持ちと思われており、世間の風当たりも強かったのだ。リンダの両親、殊に母親が喧しかったのは無理もない。尤もこの母も、リンダを生む前に父親の違う子供を未婚で出産、里子に出していたという過去があった。

 リンダの恋人になったチャックは外面はよく、彼女の両親も好感を持ち結婚を認める。結婚当初は優しかったものの、間もなく粗暴な性質を露わにする。妻には口答えを決して許さず、何かと銃を振りかざしてリンダを脅しつける。銃を押し付けられ、「脅しじゃないぞ、本気だ」と凄まれ、恐怖で服従するリンダ。
 夫のあまりの横暴さに耐えかね、ある時リンダは母に電話し、1日でもいいから実家に泊めてほしいと懇願するが、母はにべもなく拒絶する。夫が殴るのはお前が言うことを聞かないからだ、夫にはとにかく従えという。70年代初めはアメリカも家庭内暴力はまだ問題視されていなかったのだ。

 チャックは麻薬常習者でもあり、派手な生活で映画関係者から借金を重ねる。皮肉なことに、これが夫との別れを望むリンダに転機をもたらす。ハリウッドの映画関係者の中にもヤクザの息のかかった者がおり、家族の協力も得られない彼女はその類の映画スタッフに直談判、ようやくチャックと別れることが出来た。
 リンダはその後、別の男性と再婚。こちらは善き夫だったようで、息子にも恵まれる。一方のチャックもまた別のポルノスター、マリリン・チェンバースと再婚、十年の結婚生活を送っている。

 1980年、リンダは自叙伝を発表する。自伝を書くにあたり彼女はポリグラフ検査を受けており、いかにもアメリカらしいが、この検査で真実を語っていると認められた。この自伝は第三版まで出版されたという。映画では自伝を出した当時の本物のリンダの顔が映されたが、お堅い田舎の女教師といった印象で、とても一世を風靡したポルノスターには見えなかった。
 ネットでは実際のリンダとチャックの顔写真も出回っており、上の画像がそう。リンダはまだ二十代だったはずだが、結構老け顔。70年代のセックスシンボルとは到底思えず、リンダに扮したアマンダ・サイフリッドの方がずっとキュートでスターらしい。

 リンダはその後、家庭内暴力とポルノ反対運動家となる。ポルノスターが一転してポルノ映画を非難する側になったのだ。2002年4月、彼女は交通事故のため死亡した。享年53歳。リンダの死から数か月後、チャックも心臓発作で亡くなったという。



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2 コメント

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ポルノって何fだ? (のらくろ)
2014-09-24 21:36:36
>リンダはその後、家庭内暴力とポルノ反対運動家となる。ポルノスターが一転してポルノ映画を非難する側になったのだ。

それがいいことだったのかどうか、こういう論考もある↓
ttp://blog.ohtan.net/archives/50954186.html
ttp://blog.ohtan.net/archives/50954183.html

もっとも、こういうことをいう「わけわからん」のが世界中にいるのは困ったもの↓
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140924-00000007-asahi-int

となると、当然に「大丈夫か? こいつら」となってしまう↓
ttp://www.youtube.com/watch?v=J7DuDRQsocg

とりあえず今日はここまで。近いうちに、もう少し深く切り込んで行きます。
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Re:ポルノって何fだ? (mugi)
2014-09-25 22:23:39
>のろくろ さん、

 かつてアメリカは強姦大国として知られていましたが、何とワシントンポスト電子版によれば、1970年代に比べ米国における強姦件数が85%も減ったのですか??記事では減少について説得力ある説を紹介していないようですが、ダマト教授はポルノ普及説を唱えている。そして米国では、凶悪犯罪全体が減少してきているとは知りませんでした。

「ポルノと強姦(その2)」で挙げられている、強姦率の高い順に世界の国や地域名は見事に英国領やアングロサクソン諸国が殆どという結果は笑えます。1860年までにアメリカ合衆国には350万人の奴隷にされたアフリカ人と、その他の奴隷ではない50万人のアフリカ人がいたそうです。こんな米国が慰安婦問題を言い立てる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E7%B3%BB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA

 尤もポルノが認められているはずの韓国で、強姦率が飛び抜けて多いのは何故でしょうね。ま、これも日本が悪いというでしょうが。

「クレヨンしんちゃんはポルノ」というニュースは知っています。しんちゃんがお尻を突きだすシーンは、確かに子供の視聴に相応しくないし、息子が幼かった頃の私の友人も、このアニメを問題視していました。ネットでは日本のアニメを締め出すため、華僑が騒ぎ立てているといった意見もありましたよ。

 JKT48ことインドネシア版AKB48があったとは知りませんでした。人気があれば、「わけわからん」イチャモンを付ける輩も現れます。
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