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見ました!アニメ版鬼滅の刃

2021-10-09 22:11:55 | 音楽、TV、観劇

 遅ればせながら、アニメ版鬼滅の刃を先日ТVで見た。先月「柱合会議・蝶屋敷編」と「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が放送されたため、録画後に鑑賞した。「劇場版 無限列車編」は全編ノーカットと宣伝していたが、「柱合会議・蝶屋敷編」共々CМが多かったのは興ざめだった。
 私は最近ТVをリアルタイムで見ることは殆どなく、録画しても見るのはNHKが大半なのだ。そのため民放番組でやたらCМが入ることに改めて驚いたが、これもケチってDVDではなくТV放送で見ようとしたからだった。やはり民放では映画をみるものではない。

 作品の見せ場やクライマックスでもCМが頻繁に入るのにはイラついたが、それでも久しぶりに良質のアニメが見られた。私は最近のアニメはまず見ておらず、未だにアニメは青少年が見るもの、という偏見がある。いい年をしてアニメにハマっている人間には嫌悪感と侮蔑を感じていたが、私の様なタイプは今や少数派の偏屈だろう。
 この作品で最も感動したのは、キャラクターやストーリーよりも風景の美しさだった。まるで写真のようで、古き良き時代の日本の原風景を見ている思いにさせられた。劇場で見たら、さぞ美しかったことだろう。アニメを見慣れている人なら既知かもしれないが、今のアニメはここまで進化したのか。

 同時に大正時代の生活水準にも驚く。時代考証が正しいとしてだが、日本人の多くは着物姿で洋服の人は至って少ない。歴史教科書などでは街を闊歩するモガの写真が載っているが、このような若者たちはまだまだ少数派だったようだ。
 また無限列車編では、魘夢の術で炭治郎が家族と過ごす夢を見るが、母の頼みで彼が風呂水を汲むシーンには言葉もなかった。近くの川(泉?)に手桶ふたつを持って汲もうとするが、あれでは何往復するのやら。当時は風呂を沸かすだけで大仕事だったが、風呂以外にも飲料や炊事洗濯用にも水は欠かせず、水汲みだけで大変な労働だったことが伺える。
 水道から何時でも水が出る暮らしが「当たり前」になっていると、その有難さも実感できない。水道もない暮らしでも炭治郎は6人兄弟だし、当時は子沢山が珍しくなかった。

 スポンジ頭さんから頂いたコメントも興味深い
舞台は奥多摩だと言いますが、昔の番組を見ると、戦後も秘境扱いです。小卒の子供に炭焼きをさせて現金収入を得る生活を考えると、あの時代は進学できるだけでエリートです。鬼殺隊は過酷ですが、炭治郎の以前の生活水準から考えると遥かに向上してますよ。」(2021-10-02)
 奥多摩であの生活水準とは絶句したが、当時の東北の山間地でも電気・ガス・水道などのライフラインが全くなかったはず。こうなると鬼殺隊員は無惨が言うような異常者の集まりよりも、より良き暮らしを目指す経済的動機もあったのやら。

 漫画と違い全編カラー、キャラクターが声を出し、背景音が入るのがアニメ。私が原作を見たのは、従妹が原作コミック全巻を貸してくれたためだが、その時彼女はアニメ版も内容はあまり変わりないと言っていた。ただ、個人的にアニメ版の方がイイとも話していた。
 原作とさして変わりないなら、特にアニメ版を見る必要もないと思ったので、DVDレンタルをしなかった。確かにストーリーは殆ど同じだったが、キャラが実際に動いて話すと、印象がかなり違ってくる。こうなると初めにアニメ版を見た人は、原作よりこちらを好むようになるかもしれない。

 原作から入ったためか、声優では違和感を覚えたキャラもいた。特に伊之助のだみ声はオッサンくさく感じた。いくら言動が粗野でイノシシの被り物をしていても、もう少し若々しい声でもイイのでは……と思ったし、無惨の声もソフト過ぎる。鬼のボスだから、もう少し重くてもいい。
 一方、全く違和感がなかったのが善逸。いつもは臆病で愚痴ばかりでも、イザとなると決めるのが善逸。「禰󠄀豆子ちゃんは俺が守る!」などメチャクチャカッコイイ。善逸が女性ファンの人気キャラなのがやっと分かった。

 煉󠄁獄杏寿郎の声もピッタリだった。猗窩座との戦いで瀕死の重傷を負い、何度も鬼になろうと勧誘する猗窩座に、「俺は職務を全うする!」と拒絶するシーンに感動した男性ファンもいただろう。煉󠄁獄の死には泣けたし、柱の中では最初に戦死した煉󠄁獄でも最も印象深いキャラだった。とにかく鬼滅の刃に登場するキャラは、善玉悪玉問わず個性的。

 演出の違いもあり、アニメ版では呼吸の型を漢字で表示しておらず、判り難かった視聴者もいたはず。尤もいちいち「灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)」「烈日紅鏡(れいじつこうきょう)」等の漢字字幕が出れば煩わしいことこの上ない。
 また鬼になった禰󠄀豆子の髪は毛先がオレンジ色になっていて、魘夢の髪も毛先の色が違っている。これも原作にはないビジュアル面重視の手法だろうか。

 明日から『無限列車編』がТV放送される予定だし、『遊郭編』は12月5日(日)に放送開始という。この先も放送が楽しみだ。

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60 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
水汲み (スポンジ頭)
2021-10-09 23:07:24
 炭治郎の水汲みですが、井戸がないのも不思議です。水脈にぶつからないのでしょうか。また、水道がないことから当時の汲取式トイレを連想してしまい、そちらもどのように処理しているのか考えてしまいました。人間の生活において、飲料水の確保と排泄物処理は二大問題です。これが江戸だと、排泄物に関しては農家が肥料として買いに来たのですけど。
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宇宙戦艦ヤマト 2205 (スポンジ頭)
2021-10-09 23:58:56
 ヤマトの記事はかなり前にあり、一応アニメ絡みなのでこちらにします。

 「宇宙戦艦ヤマト 2205」を病院に行った帰りに見てきました。中盤から散々な内容になった「2202」と同じ人物が脚本を担当しているにも関わらず、筋書きが自然で新キャラクター一人ひとりの物語がきちんと描かれているのに驚きます。前回は作品の雰囲気にそぐわない、副監督の小林誠氏デザインのメカ類が多数登場、旧作に登場するメカ類を押しのけて活躍させたので興ざめし、中にはデザイン的に失笑した艦船もありました。しかし、今回は新型戦闘機もきちんとヤマト世界のデザインを踏襲していて違和感がありません。「2202」の設定資料集だったかブルーレイの特典だったか、それに付いている放映前の脚本を読んだら話の筋が通っていた、と言う内容を複数ネットで読みました。小林氏が自分のデザインしたメカ類を活躍させるために筋を曲げた事を暗に批判されていたのですが、今回の作品から氏は降ろされています。この人一人がいないだけでこれほど質が向上するのかと言う思いです。能力に見合わない地位にある人間の負の影響の大きさがよく理解できました。

 「2202」に登場した小林氏デザインのメカ類も若干登場しましたが違和感のない使い方がされており、私が失笑した艦船も出てきましたが、制作陣も分かっていて、観客が失笑せずに済むアングルから描かれていました。

 私が見たのは前半部分で後半部分のレベルはどうなるか分かりませんが、旧作でこのレベルを維持できたなら、ヤマトのファンが離れる事もなかったでしょう。
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Unknown (mobilis-in-mobili)
2021-10-10 08:52:43
当初から鬼滅の刃には期待していました。
ただ劇場版『無限列車編』はやや期待ハズレでした。あれ、クオリティが映画ぢゃないよね。テレビ版の延長に過ぎない。映画館の大画面で鑑るにはちょっと、って感じ(私がテレビで観たせいかも、ですが・・・⤵️💦)。前評判倒れに思えてなりません。
私はこのアニメが受けたのは『最近希薄になっている家族の関係に焦点を当てた作品だったからでは❓』と推測しています。
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Unknown (mobilis-in-mobili)
2021-10-10 21:38:30
【そんなに汲まなくてもいいです】私の実家の本家はマキで沸かす五ェ門風呂でした。そう、弥次喜多道中で描写されるタイプの風呂です。全体が鉄製で木の板を足で押さえながら湯に浸かります。大きさはまるで甕棺のようで、足をすくめると肩まで湯に浸かることができます。お湯は・・・そうですね、『8キロ洗いの洗濯機』マイナス『ニンゲンの体積』で済みますからね。そんなに汲まなくてイイですよ。
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Re:水汲み (mugi)
2021-10-10 21:47:23
 確かに炭治郎の家に井戸がないのは不思議ですよね。近くに川または泉があったため、井戸掘りをしなかった??家業が炭焼きだから、結構「汚れ仕事」だと思いますが、、、

 そして排泄物処理にも気付きませんでした。まさか近くの川で天然水洗トイレ?奥多摩の山奥ですが、こちらも農家が肥料として買いに来たのやら。
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Re:宇宙戦艦ヤマト 2205 (mugi)
2021-10-10 21:49:03
>スポンジ頭さん、

「宇宙戦艦ヤマト 2205」が制作されていたとは知りませんでした。「2202」が散々な内容になったため、もう新作ヤマトは見る気も起きなかった。それでもまた新作が制作されるのだから、結構支持層があるようですね。

 旧作では副監督が自分のデザインしたメカ類を活躍させるために筋を曲げた結果、内容がおかしくなったようですが、今回はさすがに降板になりましたか。ドラマでは脚本が第一ですが、SFアニメだとメカもかなり影響があるようで難しい。

 小林誠氏について検索したら、氏の言動はtwitterで炎上していて、トラブルメーカーだったことが伺えました。結局作品の出来は制作スタッフに左右されるところが大なのでしょう。
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mobilis-in-mobiliさんへ (mugi)
2021-10-10 21:51:09
 記事にも書いたとおり、私はТVで初めてアニメ版を見ました。ТVシリーズ化されているのは知っていましたが、そちらは未だに未見です。テレビ版を視聴されていれば、劇場版の感想もまた違ってくるでしょう。
 鬼滅の刃に限らず最近のТVアニメは見ていないので、『無限列車編』を見ただけで最近のアニメはクオリティが高いナ~、と感心しました。これなら劇場に行って見るべきだったと思ったほど。アニメに疎いから素直に楽しめたかも。

 この作品がウケたのは、家族の関係に焦点を当てた作品だったと見ている評論家もいるようです。親兄弟の絆を強調する話がある一方、DVや児童虐待家庭も描かれており、必ずしも美しい家族愛の物語ではありません。
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昔の農家 (motton)
2021-10-11 10:58:22
実家の祖父は、私が高校生ぐらいまで(1980年代まで)、炭焼きをしていました。自家用程度でしたが(昔は売っていたかも)。
炭焼きは、山林の管理(植林・枝打ち・芝刈り)や窯の管理に始まり、木を切って割って焼いてと、無茶苦茶重労働です。女性や子供ではまず無理です。
実家の窯は、数km上流の山の中腹にあったので、小学生では行くだけでも大変でした。

大正生まれの祖父母は農家でしたが、基本は自家用の米と野菜(買うものがいらないぐらい。大豆・茶を含む)。季節により、現金収入のための筍・栗・モクズガニ、自家用で、鶏・椎茸・柿・梅・ミカン類・鰻・ゴリ(ハゼ)。私が生まれる前は、養蚕も。器具類も、鉄器は買いますが、木や竹や藁で色々作ります。
農家だけでやっていくには、これくらいやらないといけません。炭治郎やその家族も炭焼き以外に色々やっていると思います(山を所有しているはずで土地はあるはず)。
ただし、私の子供時代には、電気はあったし(ガスはガスボンベ、水道は井戸だが電動ポンプ)、父母は(高知では大企業で)フルタイムで共働きだったので、私が知っているのは「ずっと楽になった」状況でしかないのかもしれません。

山村での「水」について
洗濯は川でします。着物を持って行って洗って絞って持って帰る方が、水を汲んでくるより楽。それでも重労働ですが。洗濯機は「神器」。
飲料水は、井戸がないと衛生面でも厳しいと思います。風呂・炊事(洗い物)は井戸水で賄えない場合は、上流から水路を引いたものを使ってもいい。
# 多くの村は、山と山に挟まれた谷(川)のほとりにあります。しかし、農業用水や生活用水のために川の水を汲み上げて使うのは難しい。そのため、かなり上流から村の上部まで山に沿って緩やかな勾配で水路を引きます。そこから村に落とすように水路を引くのです。

排泄物は、穴を掘って汲取式でしょう。
そのままでは、肥料には使えません。肥溜めで高温発酵させます。(実家では、ドラム缶に入れて日光でやっていました。)
これ、あまり知られていないかもしれません。そのまま、畑に撒くと寄生虫などでヤバい。

父の実家は、(なぜ、こんな所に住んでいるの?落ち武者だった?と思うくらい)さらにさらに山奥にあり伯父母の代まで専業農家でした(主力はミカン類)。しかし、「水」は豊富でした。錦鯉も飼っていました。
父や従兄弟は、そこから高知市内の高校に通うのも一苦労だったはずですが、なぜか IQが高い家系(伯母と母が従姉妹ですが、そちらも賢い家系)で、従兄や私や弟はそこそこですが、従兄の娘さんは東大法学部卒で一流企業入社。
(最貧県高知の山奥の農家から 2代でここまで…)
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宇宙戦艦ヤマト 2205 その2 (スポンジ頭)
2021-10-11 19:11:54
>それでもまた新作が制作されるのだから、結構支持層があるようですね。

 「2202」では作品設定を曲げてまで作ったシーンが有り、これで続編制作の意図があるのを確信しました。私の感想は「続編を露骨に示しすぎ」。「2202」で相当ファンが離れたそうです。そりゃあんな唐突な内容の脚本や魅力のないメカでは。作品中、コスモタイガーの空中戦もありません。また、ストーリー上加藤三郎の扱いがひどく、私は「製作者は加藤に謝れ」でした。

 「2205」は私も見るつもりはなかったのですが、ユーチューブで冒頭部分が流れていたのを見たら結構面白かったこと、ネットでも評判が良かったので急遽見に行きました。本当に「2202」と同じ脚本家が書いたものとは思えません。ただ、絵が雑になる場面がある(特に人物を下から見上げる部分)のが気になりました。また、「2202」を制作した会社が倒産したので今回は別の会社が担当しており、業界の厳しさが垣間見えました。

 内容は今のところ旧作を丁寧に分解して再構成されています。ネタバレにならない程度に言うと、作品世界の世代交代を意識して作成してあり、ヤマトに乗艦するのは、「ヤマト2」以前に登場しないキャラクターが殆どです。旧作の「ヤマト2」までに登場するキャラクターでヤマトにいるのは古代・佐渡先生・島だけです。後は別の艦船勤務です。個人的には旧作のある人物が大きな存在感を持つとは思いませんでした。

 旧作の有名なセリフを別のキャラクターが少し変えて言うのですが(まさかこの人が言うとは思わなかった、と言う感じ)、状況的にしっくり来ました。また、「2199」で、飛来する遊星爆弾を訳も分からず見ている地球人の上に遊星爆弾が落ちる場面がありますが、似た構図でガミラス側の上に「飛翔体」が落ちる場面があり、因果が巡って来る話でした。また、旧作でデスラーがイスカンダルを追いかけたり、イスカンダルがワープしますが、彼の行動の動機は今回納得できますし、ワープも敵に関する説明に必要なのが分かるので、構成もきちんとしています。そして、タランは今回も苦労するのです。

>今回はさすがに降板になりましたか。

 「2202」がバ○ダイを怒らせた、という噂があります。「2199」では艦船のプラモが非常に売れたのに、「2202」では不作だったとかで。分かります。バン○イの意向もかなりあるのではないでしょうか。小林氏は復活編のスタッフだったそうですが、私は復活編は評判が悪すぎるので見ていません。話の部分部分を聞くだけで、見る必要なし、と判断しました。

> 小林誠氏について検索したら、氏の言動はtwitterで炎上していて、トラブルメーカーだったことが伺えました。

 社会人としての常識を疑う言動をされます。守秘義務はないのか、と思うような発言、作品にちょっとした疑問を呈しただけで相手に罵声を浴びせてブロックするとか、批判は他作品を制作している会社の工作と主張するとか。更に政治的発言もあり、こんな事をされると作品に変な色がついて困ります。呆れたのは、喫茶店でプラモデルの塗装をした話でした。
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mobilis-in-mobiliさんへ (mugi)
2021-10-11 22:22:28
 私の母の実家のお風呂は木製だったし、原作最終巻で出てくる炭治郎の家のものと殆ど同じ型でした。あの容量では手桶2杯で何回も汲む必要があるはず。いったい何往復するのか……と感じました。

 一方、母の実家でも風呂はマキで沸かしますが、側に井戸や川はありました。井戸があっても母屋から少し離れていたし、飲料水はかめに汲んでいたとか。改めて蛇口をひねれば何時も水が出る生活に感謝させられます。
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