映画版ダウントン・アビーを見てきた。NHKで放送されたテレビドラマ版ダウントン・アビーは、久しぶりに見ごたえのある海外ドラマだったため、全シーズン見ている。
映画版は最終シーズン6から2年後の1927年の設定。劇場の大画面で見たダウントン・アビーはまさにお城で、その豪華さに息を吞んだ方も多かっただろう。英国貴族の館はこれほどまでに豪華なのか?しかも劇中の台詞からは大貴族ではないらしく、それであの豪邸なのだ。
映画のはじめで、レズリー・ニコル(料理人パットモア役)によるキャラクター紹介がある。ドラマでは口喧しいおばさんだが、さすが女優なので印象はかなり違っている。美人ではなくとも洗練されていて、タダのおばさんではない。
今回は国王夫妻による訪問がテーマとなっているが、英国貴族による“おもてなし”は興味深かった。時の英国王はジョージ5世、王妃や王女と共にヨークシャー行幸途中にダウントン・アビーを訪れ、一泊するという通知を受けてからの物語。天皇家のお迎えもさぞ大変だろうが、英国王夫妻を迎えるにあたり、ダウントン・アビーでも主人から使用人まで緊張を強いられる。
国王一家訪問と言え、先ず王室使用人がダウントン・アビーを先乗りして来るが、彼らは実に不遜極まる態度を見せる。初対面でもダウントン・アビーの使用人に会釈もせず、国王夫妻の世話は着替えから料理に至るまで全て自分たちが行うと宣言する。
国王の執事も当然来るが、肩書は上級保護官だったか、一般貴族の執事とは呼び方も違う。国王の執事となれば国王よりも威張り散らし、ダウントン・アビーの執事以下使用人を見下しきっている。やり方に異議を唱えるカーソンに対し、グランサム伯爵家は地方の小貴族に過ぎず、国王に仕えた我々とは格が違う、と傲然と言い放つ上級保護官。執事の世界も厳然たる階級制があるらしい。
それでもダウントン・アビーの使用人たちは結束して国王側スタッフに対抗する。策謀を用いてまで国王の使用人を出し抜くのはドラマらしいが、いかにも英国人ならやり兼ねない。この辺りは日本人には到底マネ出来ないだろう。国王夫妻に見事な料理を出して給仕したのは、ダウントン・アビー使用人たちだった。
尤も英国人全てが国王に心酔しきっているのではなく、ダウントン・アビーの料理人助手のデイジーは共和主義者で王族には好意的ではない。英国人にも関らず、パレード中の国王を狙撃しようとした男もいる。1920年代は無政府主義が世界的に流行りではあったが。
騎馬隊が整然と行進する国王のパレードは仰々しさも覚えたが、道端で英国旗を振って見送る庶民の姿は日本と重なる。天皇家のパレードはおそらく英国にでも倣ったのかもしれない。格式ばったパレードでも、地方の庶民はイベントを楽しんでいただろう。
ТV版と同じく映画の見どころは当時の風俗。特に貴族女性のファッションは典雅で美しい。ラスト近くの舞踏会でドレスを着て踊るシーンは歴史絵巻さながらで、僅か1世紀近く前にはこのような社交ダンスが実際に行われていたのだ。階級社会が生んだ儀式ではあるが、実に優雅な文化で映像化は素晴らしい。
ダウントン・アビーで初めて英国には、20世紀はじめまで限嗣(げんし)相続制度があったことを知った方が殆どだろう。一般には長子相続と言われ、相続財産が分散しないよう相続人を親族内の一人の男子(主に長男)に限定するもの。相続人対象者は男だけで女は含めない。資産だけでなく爵位などの地位も承継する。
限嗣相続制について解説したサイトがあり、日本との比較で欧米では養子相続制度がなかったのは興味深い。むしろ財産相続で“封建的”なのは、欧米のように思える。
暫く前から私はТVドラマをあまり見ていないが、海外ドラマ(但し韓流ドラマは見ない)には結構いい作品がある。放送されるのは米国ドラマが大半でも、重厚な史劇となれば英国に敵わない。やはり史劇は大画面で見るに限る。
何しろ時代は1927年だから、現代の先進諸国の衛生寿命衣食住レベル面とは比較になりませんよね。衣食住では貴族は現代と引けを取りませんが、当時の庶民生活レベルの低さは想像を絶します。大英帝国でもあの水準だったのは改めて驚きます。
ウィキで見ると、伯爵は日本で例えると城持ち大名クラスらしく、明治維新では租税収入(?)5万石より上の大名がなっています。大体10万石以上の藩主でしょうか。
しかし、現在では貴族より大富豪の方が良さげな気もします。
ドラマの舞台となっている邸宅だけで一般の日本人は圧倒されます。ダイアナ妃の実家をТVで見たことがありますが、ここの館よりもずっと大邸宅だったのを憶えています。彼女も伯爵令嬢でしたが伯爵家でこのレベルなら、公爵家の邸宅はもっと豪勢かもしれませんね。
戦前の華族邸宅も英国貴族のそれには及ばないと思います。フランスのように英国貴族の館が民衆に襲撃されなかったのは不思議ですが。
確かに現代なら貴族より大富豪の方がずっと裕福でしょう。尤も英国貴族の称号はおカネでも買えるようで、一代貴族というケースもあるとか。
固定資産税がすごいことになるのでは?
ドラマは見たことありませんが映画の筋立ては悪く
なさそうですね。
>騎馬隊が整然と行進する国王のパレード
日本は結構早い段階で騎馬隊から今回の即位パレードみたいにバイクとサイドカーをお供にする形式に移行してます。はい桜田門事件で馬車に手りゅう弾投擲をされた際騎馬隊の護衛では迅速に下りて
犯人を制圧することができずこの教訓から
近衛師団はサイドカーを導入して対処しました。この戦訓が今の皇宮警察隊にも受け継がれているようです。
戦前、秋の陸軍大演習は必ず大元帥たる天皇陛下が
臨席され、かつ地方持ち回りだったので、地方の
一大イベントだったそうです。戦後はさすがに自衛隊の演習に臨席とはいかないので秋の国体が代わりに行われるようになって各県へ行幸されるようになりました。ちなみに去年は茨城国体でうちの職場近くを新天皇が通るので結構騒ぎになりました。
桜田門事件は未遂に終わりましたが、もし成功していれば日本と朝鮮との関係は戦後でも断交状態になっていたかもしれませんね。少なくとも今のような韓流など考えられないはず。
戦前の秋の陸軍大演習で、各地方の関係者は「おもてなし」にさぞ苦労したことでしょう。皇室には普段は関心のない私でも、国体で職場近くを新天皇が通るならば、やはり見に行ったと思います
でも、維持費に苦労しているので結構宝物を競売にかけているとか、ロンドンの邸宅もロスチャイルドの運営する会社に貸しているとか、皇太子妃を出した家でもそうなのか、と言う思いです。
それにしても、ヨーゼフが公然の秘密になっているお忍びでフランスを来訪したときの称号は「伯爵」ですが、スウェーデン国王やロシアの皇太子がお忍びで同じくヴェルサイユに来た時も名乗った称号は「伯爵」でした。伯爵と言うのは向こうの貴族社会だと、どこで名乗っても身分的に一番融通が効く称号なのでしょうか。
ダウントン・アビーの舞台となった邸宅はカントリー・ハウスだそうですが、あのクラスを上回る邸宅が少なくないというのも驚きます。500年以上経過している邸宅が現存しているのだから、当時戦国時代だった日本と違い、イングランドの政治は結構安定していたのかもしれませんね。その少し前に終結した薔薇戦争では田園も建物も破壊されず、戦闘はごく短期間、攻城戦やそれに伴う略奪は少なかったとか。
やはり大邸宅では維持費はバカにならないでしょう。特に家賃の高騰するロンドンでは、ロスチャイルドの会社が借りていても不思議ありません。
ドラマなどで登場する貴族の称号は「伯爵」が多いですよね。次いで男爵で、公侯爵はあまり聞きません。