今日は不世出のロックシンガー、フレディ・マーキュリー没後22年目となる。フレディが大の親日家だったことを知らないクイーンファンはいないし、彼は本当に日本を愛していたのだ。その彼を描いた日本画家・武田仁氏のことは、ファンの中でも意外に知られていないかもしれない。武田氏のオフィシャルサイトには「フレディとの出会い」というコラムがあり、以下はそこからの全文引用。
―伝説のロックバンド「クイーン」は本国イギリスに先駆けて日本でブレイクしたこともあり、メンバーは大の日本びいきだ。なかでもボーカルのフレディは、インドの血が流れていることもあり、東洋文化に対し、興味と敬意を抱いていたようだ。
何度目かの来日公演の際、日本のお土産にとプロモーターからプレゼントされた武田仁の画集と版画に感動したフレディは「タケダに会いたい」と切望した。1986年、ジャパンツアーで来日したフレディは武田との対面を果たし、その席で「いつか自分のポートレートを描いてくれないか」と依頼した。武田は快諾し、完成次第手渡す約束をする。
しかし、ほどなくフレディは病没してしまった。受け取り手がいなくなった絵をどうするべきか、クイーンのマネージャー、ジム・ビーチ氏と相談した結果、フレディの母へ贈ることとなった。作品はかなりの大きさが有った為、破損しないように輸送するには相応の費用がかかった。だが、レコード会社を通じて募金を呼びかけたところ、またたく間に費用が集まり、作品は無事、フレディの母のもとへと届けられた。贈った絵(如来になったフレディ)はドミニオン・シアターのフレディ・マーキュリー展示室とお母さんの自宅に飾られている。
上記のコラムで間違っている箇所が2つあり、1つ目はフレディは「インドの血が流れている」の箇所。彼は同教徒同士で結婚することで知られるパールシーなので、正しくはペルシアの血が流れていると書くべきだった。「1986年、ジャパンツアーで来日」も違っており、これはプライベートの来日。ジャパンツアーは前年で、これがクイーン最後の来日公演となった。
ただ、私自身も武田仁氏のことはフレディ関連で初めて知った。フレディが 何故武田氏の絵を気に入ったのか、今となっては知る術もないが、日本人画家の仏画を愛でていたのは一ファンとしては嬉しい限りだ。
ゾロアスター教の教義では偶像崇拝が禁止されているはずだが、何故か絵画はお咎めなしで、イスラム化した以降のイランでも細密画は描かれている。アートスクールで学んだだけあり、フレディも絵が得意だった。
「如来になったフレディ」の絵では、如来と共にフレディが描かれている。如来の数も多く、代表的な四如来は釈迦如来に薬師如来、阿弥陀如来、大日如来なのだ。フレディと共に描かれているのは前ふたつの如来とは思えず、おそらく阿弥陀如来だと思われる。実は阿弥陀如来、大日如来ともにゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーが起源と考える学者もいる。阿弥陀仏の救済者的性格は、ゾロアスター教の影響とも言われている。
阿弥陀如来を説く経典そのものが、クシャーン朝時代の北西インドで成立したと考えられており、大乗仏教自体がゾロアスター教の影響を受けているのだ。ゾロアスター教研究者の岡田明憲氏は、「浄土」という概念もゾロアスター教的なものだという。“浄土”とは国土を浄めるの意であり、そこにゾロアスター教の終末の建て直しにおける世界の浄化の影響を見ることが出来るとか。
フレディは武田氏の絵を見ることなくこの世を去ったが、如来と一体化した自分の作品を見たら、その出来に満足しただろうか?阿弥陀如来のルーツがゾロアスター教の可能性大と知ったら、どう感じただろう。
ちなみに我が家の宗派は浄土宗である。私がフレディファンになった時は既に30代になっており、ファンになる以前からゾロアスター教や中東史に関心があった。彼がパールシーだったことを知り大好きになったが、これは単なる偶然なのか、阿弥陀如来の導きもあったのだろうか。
いかにファンといえ、私はフレディと如来を同一視まではしないが、勝手に古代ペルシア帝国の王族の末裔と空想している。しかし、フレディを「宇宙の皇子」とまで書いていたファンサイト(現代は閉鎖)管理人までいた。ファンの妄想度では上には上がいるらしい。
◆関連記事:「フレディ・マーキュリーと私」
「フレディ・マーキュリー/孤独な道化」
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