トーキング・マイノリティ

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ナイロビの蜂 2005年【英】フェルナンド・メイレレス監督

2006-05-26 21:08:41 | 映画
 イギリス外交官夫婦のラブ・ストーリー。育ちのよさを感じさせる物静かな外交官の夫と、対照的にアフリカで貧しい民衆への奉仕活動に精力的取り組む勝気な妻。正義感の強い妻はアフリカで横行する不正を許せず、大手製薬会社の不正と陰謀を暴こうと巨悪に立ち向かい、殺害される。それまで妻の行動をまるで知らなかった夫は妻の軌跡を追い、妻と同じ道を歩んでいく。

 それにしても不可解なのは、臨月が近づいても大きなお腹を抱えて奉仕活動に取り組み、出産するのもアフリカの貧しい人々が利用する病院で行う妻の行動だ。夫婦仲はよく初産なのに、自分の子供を優先させないのだろうか。また妻の殺害後、夫は不正を暴こうと書類を入手するのだが、署名入りの証拠書類などは設定がご都合主義過ぎはしないか。陰謀を企む者なら証拠となるような書類は残さず、「読後消去すべし」で処理すると思うのだが。

 この外交官夫婦の出会いがまた唐突だ。上司に代わり報道陣への説明を行う外交官に、後に妻となる若い女がイラク戦争での英国の加担をガンガン糾弾し、白けた周囲の人々が立ち去る。さすがにばつが悪く謝罪した女に外交官は慰めの言葉をかけるから、ジェントルマンの見本そのものだ。間もなく意気投合した2人は早々にベットイン。男の方は自分にないものを求めたかもしれないが、自分の魅力を知っている女がアフリカでの活動に外交官と親しくなるのは得なので引っ掛けたのか、とも勘ぐった。妻が自分の活動を知らせなかったのは、愛する夫を巻き込みたくなかったからだ。

 大手製薬会社と現地官僚の癒着は薬物実験を生み、最も薬が必要とする人々には行き渡らない。製薬会社が時たま放出する薬は減税対策のためで、しかも有効期限過ぎの代物だ。「不要な薬は不要な人々に」となっている現状は暗い。
 外交官の夫の同僚の台詞もまた重い。「我々は同情される人々のために雇われている訳ではない

 ただ、アフリカの自然風景は雄大で素晴らしかった。アフリカの諸問題を提起する映画でもあるが、自然だけは文句なく美しい。

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2 コメント

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出会い (kossy)
2006-05-26 22:06:28
出会いから結婚にいたるまでの過程はちょっとのめり込めませんでしたよね。

結局は、ジャスティンを利用しようとしてアフリカに行きたかったと、最初は愛情がなかったとも取れるところで悩んでしまうんですよね・・・

序盤とラスト以外は良かったです。
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女の武器 (mugi)
2006-05-27 20:27:46
>kossy様

自分を好いている夫の同僚を利用して証拠集めしようとするくらいのテッサだから、女の武器を使ってジャスティンを丸め込むことは難しくなかったと思いますね。相手はいかにもお坊ちゃま風の外交官だし。

ただ、夫婦生活を通して心から夫を愛するようになったと私は解釈してます。
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