
ハンガリーは一般に日本人には馴染みの薄い国であり、私もこの国の名を聞いて頭に浮かぶのはピーター・フランクル氏くらい。年配の方ならハンガリー動乱(1956年)を記憶されているかもしれない。この作品をハンガリー版『俺たちに明日はない』と評したコピーもあったが、主人公のカップルは81歳と70歳の老夫婦、無軌道な若者を描いたアメリカン・ニューシネマ代表作とは様相が異なる。
1958年、共産党員として活動していたエミルは反体制派と黙された一家への家宅捜索で、その家の娘ヘディと運命的な出会いをし、ついに結ばれる。そんな夫婦も今は81歳と70歳となり、月4万フォリントの年金だけでは到底生活していけず、借金取りに追われる日々を過ごしている。果ては2人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングも差し押さえられてしまう。ついに怒りを爆発させた夫は、持病のぎっくり腰をこらえ20年ぶりに旧ソ連製の愛車チャイカに乗り、これもソ連製の短銃トカレフを持って郵便局で強盗を働く。強盗でも荒っぽい手口ではなく紳士的な振る舞いであり、これを境に次々と紳士的強盗を重ねていくエミル。
ハンガリーでも防犯カメラは設置されており、エミルの犯行は映像に映された上、TVのワイドショーにも取り上げられる。当然警察も動き出し、ヘディも一旦は警察に協力するも、夫の奮闘する姿にかつての愛情が甦り、共に逃亡する決意をする。老夫婦の逃避行は国中の話題となり、彼らを支持する高齢者が現れ、デモや模倣犯的に強盗を働く者さえ出る有様。
一方、老夫婦を追うのは若い警察官ペアのアギとアンドル。2人は署内で公認の恋人で、同棲している。美人で優秀なアギと彼女よりボンクラな後者だが、ある時アンドルは浮気をしてしまう。勤務中にあろうことかストリッパーと遊んでしまい、それが勤務先にも知られ、上司から謹慎をくらう。それをチクったのはアギに横恋慕する同僚だが、アンドルは職場でからかいの的になり、彼氏の浮気を怒ったアギは別れることにする。浮気がばれ、男が「大人になれよ」と言い訳をするのは東欧も同じようだ。この種の遊興施設が共産主義時代にあったのか疑問だが、女の豊かな胸と臀部に興奮するのはマルキストも変わらないだろう。
エミル夫妻は20年前に共産党の軍用トラックに引かれた息子が若くして死亡するという、辛い出来事があった。それ以来、夫はまず笑わない偏屈な人間となったが、逃亡を続けるうちに夫婦共々若返り、強盗で得た金で高級ホテルに泊まったりする。ホテルには若い女のマッサージ師がいてエミルに声をかけるが、この女の顔立ちはどう見ても東南アジア人風、ハンガリーでもこの手の商売が成り立つらしい。
エミルはかつて共産党要人の運転手を勤め、運転には現役警察官顔負けの腕前だったが、さすがに夫婦は追い詰められていく。妻ヘディにも糖尿病の持病があり、インシュリンが無くなれば逃避行は不可能だった。「海を見ないことが心残りだった」とアギに語ったエミルだが、内陸国ハンガリーでは海は簡単に行けない処なのか。
もう失うものもない老夫婦は最後に取り囲んだ警察の特殊車両に体当たり、盗んだ金もろともこの世から去る。米映画『俺たちに明日はない』は主人公のカップルが警察官に80発以上の弾丸を打ち込まれるという衝撃的なラストだったが、こちらはアギとアンドルの若い恋人達がよりを戻し、老夫妻の若い頃が映されて幕となっている。
ハンガリーが舞台という珍しい作品だが、郵便局の計算機やFAXなどは、かなり旧式の機械が使われていた。銀行の窓口もかなりスローモーな対応で、日本の地方銀行でももっと効率的だ。これも共産圏の伝統だろうか?また、エミルに近付いてきた娼婦が90分で15フォリントと持ちかけており、2009年2月現在、1フォリント=約0.47円とwikiに載っているので、かなり安い!もっとも、西側から来るビジネスマン向けには別料金かもしれないが。
近所の女たちが集まり、お茶飲みに興じるのは日本も同じだが、その際に食べる菓子の量がスゴイ。クッキーやケーキを幾つも食べ、あれでは糖尿病にならない方が不思議なほど。
エミルを演じたエミル・ケレシュは、役どころと同じく81歳でも現役の俳優を続けているそうだ。ハンガリーはアジアからの侵入した遊牧民マジャル人の子孫の国なので、アジア風な容貌と黒髪の人が多いのかと思いきや、完全な白人型だった。中欧に位置し、国土の多くはハンガリー平原と呼ばれる広大な平原のため、様々な民族が侵入、混血を重ねたのだろう。
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1958年、共産党員として活動していたエミルは反体制派と黙された一家への家宅捜索で、その家の娘ヘディと運命的な出会いをし、ついに結ばれる。そんな夫婦も今は81歳と70歳となり、月4万フォリントの年金だけでは到底生活していけず、借金取りに追われる日々を過ごしている。果ては2人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングも差し押さえられてしまう。ついに怒りを爆発させた夫は、持病のぎっくり腰をこらえ20年ぶりに旧ソ連製の愛車チャイカに乗り、これもソ連製の短銃トカレフを持って郵便局で強盗を働く。強盗でも荒っぽい手口ではなく紳士的な振る舞いであり、これを境に次々と紳士的強盗を重ねていくエミル。
ハンガリーでも防犯カメラは設置されており、エミルの犯行は映像に映された上、TVのワイドショーにも取り上げられる。当然警察も動き出し、ヘディも一旦は警察に協力するも、夫の奮闘する姿にかつての愛情が甦り、共に逃亡する決意をする。老夫婦の逃避行は国中の話題となり、彼らを支持する高齢者が現れ、デモや模倣犯的に強盗を働く者さえ出る有様。
一方、老夫婦を追うのは若い警察官ペアのアギとアンドル。2人は署内で公認の恋人で、同棲している。美人で優秀なアギと彼女よりボンクラな後者だが、ある時アンドルは浮気をしてしまう。勤務中にあろうことかストリッパーと遊んでしまい、それが勤務先にも知られ、上司から謹慎をくらう。それをチクったのはアギに横恋慕する同僚だが、アンドルは職場でからかいの的になり、彼氏の浮気を怒ったアギは別れることにする。浮気がばれ、男が「大人になれよ」と言い訳をするのは東欧も同じようだ。この種の遊興施設が共産主義時代にあったのか疑問だが、女の豊かな胸と臀部に興奮するのはマルキストも変わらないだろう。
エミル夫妻は20年前に共産党の軍用トラックに引かれた息子が若くして死亡するという、辛い出来事があった。それ以来、夫はまず笑わない偏屈な人間となったが、逃亡を続けるうちに夫婦共々若返り、強盗で得た金で高級ホテルに泊まったりする。ホテルには若い女のマッサージ師がいてエミルに声をかけるが、この女の顔立ちはどう見ても東南アジア人風、ハンガリーでもこの手の商売が成り立つらしい。
エミルはかつて共産党要人の運転手を勤め、運転には現役警察官顔負けの腕前だったが、さすがに夫婦は追い詰められていく。妻ヘディにも糖尿病の持病があり、インシュリンが無くなれば逃避行は不可能だった。「海を見ないことが心残りだった」とアギに語ったエミルだが、内陸国ハンガリーでは海は簡単に行けない処なのか。
もう失うものもない老夫婦は最後に取り囲んだ警察の特殊車両に体当たり、盗んだ金もろともこの世から去る。米映画『俺たちに明日はない』は主人公のカップルが警察官に80発以上の弾丸を打ち込まれるという衝撃的なラストだったが、こちらはアギとアンドルの若い恋人達がよりを戻し、老夫妻の若い頃が映されて幕となっている。
ハンガリーが舞台という珍しい作品だが、郵便局の計算機やFAXなどは、かなり旧式の機械が使われていた。銀行の窓口もかなりスローモーな対応で、日本の地方銀行でももっと効率的だ。これも共産圏の伝統だろうか?また、エミルに近付いてきた娼婦が90分で15フォリントと持ちかけており、2009年2月現在、1フォリント=約0.47円とwikiに載っているので、かなり安い!もっとも、西側から来るビジネスマン向けには別料金かもしれないが。
近所の女たちが集まり、お茶飲みに興じるのは日本も同じだが、その際に食べる菓子の量がスゴイ。クッキーやケーキを幾つも食べ、あれでは糖尿病にならない方が不思議なほど。
エミルを演じたエミル・ケレシュは、役どころと同じく81歳でも現役の俳優を続けているそうだ。ハンガリーはアジアからの侵入した遊牧民マジャル人の子孫の国なので、アジア風な容貌と黒髪の人が多いのかと思いきや、完全な白人型だった。中欧に位置し、国土の多くはハンガリー平原と呼ばれる広大な平原のため、様々な民族が侵入、混血を重ねたのだろう。
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