8月24日、東京エレクトロンホール宮城(旧宮城県民会館)で行われたTFC55のコンサートを見てきた。東儀秀樹×古澤巌×cobaら3人組のユニットTFC55は今年いっぱいで解散するそうで、今回が宮城県での最後のツアーとなる。このユニットをもっと長く続けてもよいのに……と惜しむファンも多いだろうが、1959年生まれの3人は今年還暦を迎えるため、今年を節目としてしていたのだろうか。
TFC55は2年前の10月27日にも同じ場所でコンサートをしている。主催も前回と同じく地元紙・河北新報で何度も仙台公演の広告を載せていた。会場はほぼ満席状態、観客の大半は中高年女性なのも2年前と変わりない。
公演は2部構成となっていて、第1部のオープニングがビートルズなのも同じだが、今回は A Hard Day's Night だった。普段洋楽を聴かない人でもこの曲は耳にしたことがあるはず。
続いてはクイーンのボヘミアン・ラプソディとボーン・トゥ・ラヴ・ユーだったので、やはり……と思った。実はひと月ほど前、 NHK FM を聴いていたら、番組名は忘れたが東儀さんがゲストに出ていたのだ。令和になって初のアルバムを出したそうだが、タイトルは「ヒチリキ・ラプソディ」。ニューアルバムについて語る東技さんのインタビューが載っているサイトもある。
ただ、タイトルでクイーンファンの私は微妙な感情が湧いた。いかに映画が大ヒット、空前のクイーンブームのご時世にせよ、東儀さんまでもがそれに便乗した?舞台には鳥の羽で飾られたTFCの文字があり、これぞフェニックスを使っているクイーンのエンブレムのパクリにも感じた。
同時に今回のライブで、クイーンの曲が演奏されることに期待する気持ちもあった。東儀さん自身、インタビューでこう語っている。
「“I Was Born To Love You”を選んだのは、この曲でのフレディ(・マーキュリー)の純粋さと精一杯の熱さが大好きだったので、自分も篳篥で演奏して天国の彼に捧げてみたくなったのと、ライヴでお客さんをガンガンのせながらこの曲をロング・トーンで吹きまくったら、さぞかし気持ちいいだろうなと思って。そういうステージを想像しながらノリノリでレコーディングしました。
世の中にクイーン好きは沢山いると思うけど、こうやって自分の好きなようにアレンジして新しいサウンドをクリエイトできて、しかもそれをお客さんと共有できるなんて、自分は本当に恵まれ過ぎていると言わざるを得ませんね。改めていろんなものに感謝したくなりました」
東儀さんがビートルズに夢中だったことは知っているが、フレディを好きだったとは初めて聞いた。流行を巧みに取り入れた印象は否めないし、来場者の心理を見透かしている抜け目なさ。さすがはプロのミュージシャンだ。
意外だったのは、クイーンファンでもなく、洋楽をあまり聞かなかった同行の友人がボーン・トゥ・ラヴ・ユーを知っていたこと。「確かCMに使われていた曲だよね?飛行機と女性パイロットが出ていた…」と友人は言った。何と'80年代半ばのノエビア化粧品のCMを指していたのだ。
この曲は他のCMにも使われている、と答えた後で、直訳すると「君を愛するために僕は生まれた」という曲名と付け加えた。以下はその後のやり取り。
(友)「そんなこと、言われたことないよ~~」
(私)「日本語でマジで言えば、引くんじゃない?」
(友)「確かに日本人が言えば、嘘っぽく聞こえるよね」
(私)「やはり英語だとサマになるかも」
東儀さんのニューアルバムに収録されている Echoes Of Time も演奏されたが、いい曲だった。2部で東儀さんと古澤が狩衣姿でステージに上がったのも前回と同じ。狩衣とは平安時代の貴族の男性の普段着で、狩りをする時にも着ていたため、狩衣と呼ばれるようになったという。それにしても、ポロシャツやチノ・パンツが当たり前の現代人からすれば、非活動的にしか感じられない。これも慣れがあるのだろうか。
cobaのソロ演奏は今回もその凄さに圧倒された。アコーディオンひとつでオーケストラと共に演奏しているように聞こえてくるのだ。アコーディオンといえば、学校の鼓笛隊が使う楽器のイメージがあるが、奏者の腕ひとつでこれだけの音が出せるのか。
今回のコンサートツアーのコピーは、「新たな旅へ。さあ、はばたけ、音楽大飛行!」。国内のみならず、11月にはハワイでのツアーも開催されるそうだ。
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