湯島の聖堂の向かいにある「テロワール・カワバタ」は、いま、最もお気に入りのビストロだ。店の奥からは、階下を流れる神田川が見渡せる立地で、小さな店だが、たいへん素敵なフレンチを食べさせる。
ボキューズドール2003の日本代表を務めた川端清生シェフのお店でだが、カジュアルで、肩ひじを張らない雰囲気で、美味しい料理とワインが楽しめる。その「カワバタ」が御茶ノ水にお店を開いて、5周年を迎えるとのことなので、5周年記念メニューを食べに訪ねた。
シャンパーニュを食前酒にしながら、しばらく待つと、本日のスペシャリテのオマール海老を見せに来た。少しテンションが高くなる。「茄子のアミューズブーシュ」は、旬の秋茄子が本当に美味しい。
前菜の一皿目は、「富士の湧き水育ち 甲斐サーモンのスモーク」で、スモークはこの店の神田川に面したベランダで、燻されている。この自家製スモークサーモンは、名物のひとつで、はじめはそのままで食べ、つぎは、自家製のピクルスと食べ、最後にバケットにのせて、バターを塗って食べるのだそうだ。甲斐サーモンは、いつものサーモンよりもしっかりとしているように思う。
前菜の二皿目は、「久しぶりに作ったスペシャリテフォワグラのテリーヌ」で、フレンチの定番の料理である。三種類のソースが添えてあるが、右下の貴腐葡萄のジュレが美味しい。
魚料理は、「活オマール海老のアメリケーヌソース」で、先ほど見せられた、本日入荷したというオマール海老である。エビの殻でだしを取られたソースが美味しい。海老の腹には、米とオマール海老の味噌をからめた詰め物がされており、濃厚で大変満足した。
肉料理は「フランス産リ・ド・ヴォーと茸のパイケース詰め マデールソース」を選んだ。仔牛のリ・ド・ヴォーが柔らかく、ジューシーで、甘いマデールソースとよくマッチしている。きのこには松茸も使われていた。
ケースに使われたパイも添えられており、これがサクサクで柔らかい仔牛を食べながら、かじると楽しい。濃厚なソースも美味しく、パンにつけて食べてしまった。
チーズの盛り合わせを、しっかりした赤ワインで楽しんだ後、口直しに「無花果のコンポート」を、デザートに「津軽リンゴのババロアと洋ナシのソルベ」を食べ、大変満足したのである。そして、また来たいなと心から思ったのである。