プロポーズ小作戦88
緊張感からか、無臭のはずのコクピットに金属臭を感じた。
小竜にとってこれが初めての実戦での出撃だ。
白虎のコクピットは完全密閉式で常時快適な環境が保たれている。それなのに汗で操縦桿が滑りそうなのは小竜が大量の汗をかいているためだ。
「脱水症になりそうだ」
通信機は切っているので、一人声に出す。
白虎の計器がわずかに光った気がする。きっと気のせいだと小竜は思う。
ときどき思うのだ。白虎には
心があるみたいだと。
人に聞かれたら笑われそうだから、誰にも言っていないけど。
「閣下のご恩にむくいるためにもがんばろうな、白」
また、計器が光る。返事をしてくれているようで、孤独感や不安感が減っていくのがわかる。
小竜の言う閣下は黎星刻である。
漢族の血をひかない生まれでありながら臣下筆頭たる大司馬になり、あの悪逆皇帝と戦い世界を守った英雄。正義を体現するゼロのただ一人の対等の同盟者。
黎大司馬、神虎将軍とも呼ばれる人。
小竜が軍に入ったのは、あこがれの英雄を少しでも近くで見上げたいから。
雑族と蔑称される弱小部族生まれの自分では、軍でもろくな扱いをうけないと知っていたけれど。それでも軍に入った。軍で複数の体力テストや適性検査を受けたあと、エリート部隊である白虎のパイロットに抜擢された。
黎閣下ご自身の指名で抜擢を受けたと聞いた時は、廬山の大滝を昇り上がり、昇竜になったような気持ちだった。
緊張感からか、無臭のはずのコクピットに金属臭を感じた。
小竜にとってこれが初めての実戦での出撃だ。
白虎のコクピットは完全密閉式で常時快適な環境が保たれている。それなのに汗で操縦桿が滑りそうなのは小竜が大量の汗をかいているためだ。
「脱水症になりそうだ」
通信機は切っているので、一人声に出す。
白虎の計器がわずかに光った気がする。きっと気のせいだと小竜は思う。
ときどき思うのだ。白虎には
心があるみたいだと。
人に聞かれたら笑われそうだから、誰にも言っていないけど。
「閣下のご恩にむくいるためにもがんばろうな、白」
また、計器が光る。返事をしてくれているようで、孤独感や不安感が減っていくのがわかる。
小竜の言う閣下は黎星刻である。
漢族の血をひかない生まれでありながら臣下筆頭たる大司馬になり、あの悪逆皇帝と戦い世界を守った英雄。正義を体現するゼロのただ一人の対等の同盟者。
黎大司馬、神虎将軍とも呼ばれる人。
小竜が軍に入ったのは、あこがれの英雄を少しでも近くで見上げたいから。
雑族と蔑称される弱小部族生まれの自分では、軍でもろくな扱いをうけないと知っていたけれど。それでも軍に入った。軍で複数の体力テストや適性検査を受けたあと、エリート部隊である白虎のパイロットに抜擢された。
黎閣下ご自身の指名で抜擢を受けたと聞いた時は、廬山の大滝を昇り上がり、昇竜になったような気持ちだった。