松山市所在「国指定重要文化財『萬翠荘』」(2015年4月呑舞撮影)
今朝、愚陀佛庵句会の選者"八木健"主宰からメールが届いた。先生は、佐藤紅緑以来の「滑稽俳句」の先駆者として知られており、現在、国指定重要文化財「萬翠荘」館長を務めながら、松山市内を中心に幅広い俳句活動をされている。現在、各地で活動している各種結社と異なる所は、俳句とは、元来「滑稽」なものである、という立場かも知れない。 この萬翠荘の裏山に夏目漱石が止宿していたと言う愚陀佛庵があり、正岡子規も半年ほど滞在し、活発に句会を開いたと言われている。愚陀佛庵は現在はない。本日届いた八木先生の俳句40句中の数句を紹介しよう(八木先生より転載許諾済)。
(八木健先生詠)
炎天の温度を測る犬の舌
心太背なを押されて仕方なく
ビヤガーデンジョッキに泡を盛りつける
饐えるてふ賞味期限を無視の季語
ひらがなで書いてはラムネらしくない
必要とあらば舞ひますゴキカブリ
一年で一番多忙夏休み
昆虫の個人情報落し文
蝌蚪の字は読めても書けぬ俳句歴
丸木橋ぐらぐら山に笑はれる
何れの句も心憎い程のユーモアと皮肉に満ちている。これも俳人としての一つの句の詠み方であると思う。漱石も松山在住中かなり滑稽俳句を詠んでいる。
枯野原汽車に化けたる狸あり 漱石
愚陀佛は主人の名なり冬籠もり 漱石
そこへ行くと、子規はかなり真面目。
春や昔十五万石の城下かな 子規
松山や秋より高き天守閣 子規
呑舞さんも真面目。
松山や桜に浮かぶ天守閣 呑舞
子規堂の小さき庭や春日差し 呑舞
石手寺に梵鐘響く春霞 呑舞
呑舞さんも少し皮肉。
タクシーも許され給へ遍路道 呑舞
春寒し内子座で打つ膝小僧 呑舞
今日は、松山尽くしに成りました。呑舞詠は、何れも松山での旅吟である。
平成28年8月18日記
(追記)8月19日
平成22年7月12日松山地方を襲った豪雨で松山城の石垣が大規模に崩落し、下方にあった愚陀佛庵は全壊してしまった。漱石や子規が居住し、盛んに句会を行った庵は今はない。しかし、愚陀佛庵の再建を願う人達によって、現在再建に向けた努力が続いている。萬翠荘と共に貴重な文化財の再建が願われる(呑舞)。