ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

プルトニウム対策には鉄分補給を

2011-06-18 | 放射能関連情報
 ベルラド研究所が発表した論文によると、人間の体内に鉄分が不足していると、プルトニウムが蓄積されやすくなるので、それを防ぐために鉄分を摂っておくとよいそうです。
 プルトニウムは毒性が強い放射性物質です。消化器官からは吸収されませんが、呼吸器官に入って蓄積すると、肺がんの原因になると言われています。

 しかしプルトニウムは重くて原発から30キロ以上は飛んでいかないそうです。
 チェルノブイリ原発事故では30キロ圏内は立ち入り禁止で、人は住んでいません。少数の戻った人が暮らしていますが、本当は規則違反です。しかし、ベラルーシ政府、ウクライナ政府は目をつぶっており事実上居住を黙認されています。
 そんな理由から、一般人に対するプルトニウム対策はこちらはされていません。

 日本の場合、福島の原発から20キロ圏内は強制的に避難する区域になっていますが、20キロと30キロの間は
「計画的避難区域」あるいは「緊急時避難準備区域」に指定されているところが多いです。あるいは何の指定もされていない区域もあります。
 つまりプルトニウムが飛んでくる可能性があるところに住んでいる人がいるということです。

 30キロ圏内で暮らしている方は念のために、鉄分を摂っておいて、プルトニウム対策をされるほうがいいと思います。もしこのブログを読んでいたら、今日から鉄分補給を実行してください。
 もしご親戚や友人知人の方が、この範囲内の地域で生活されている場合、ぜひ教えてあげてください。
 ただしあまり鉄分を大量に摂りすぎるのは体によくありません。また鉄分補給には鉄剤がとても有効ですが、飲み方や量を守ってくださいね。

 30キロ以上離れたところに住んでいる方は、プルトニウムは心配されなくても大丈夫と思います。
 

避難(移住)と保養滞在について

2011-06-18 | 放射能関連情報
 
 保養滞在(放射能デトックス)についてのご質問メールを多くいただいておりますので、ここでまとめてお答えしようと思います。
 被爆した人が放射能に汚染されていない地域へ保養滞在すると、体内の放射能値が少なくなります。
 チェルノブイリの子どもたちも夏休みになると、ヨーロッパ各地、アメリカ、日本などに保養に行きます。
 またベラルーシ国内の非汚染地域にある保養所(SOS子ども村もその一つ)へ行きます。  

 日本人の場合はどこへ行ったらいいのでしょうか?
 放射能汚染地域ではない海外へ行くのも一つの選択です。しかし外国で長期滞在するのは難しいという人もいるでしょう。
 
 日本国内となると、どこへ避難するかというのが問題になります。中部大学の武田先生は、日本海側を勧めています。
 とにかく非汚染地域でないと保養の意味がありませんから、非汚染地域であればそこでいい、ということになります。

 次に期間の目安ですが、滞在が長ければ長いほど効果があります。
 私見ですが、1週間ぐらいではあまり大きな効果はでないでしょう。
 新陳代謝のサイクルなどを考えると短くても2週間はほしいところです。ベラルーシでは保養期間は3週間以上が普通です。
 しかし、保養に全く行かないよりは、短期間でも行くほうがいいです。

 経済的に無理だ、とか仕事を休めないとか、小さい子どもだけ行かせるのは不安だ、とかいった意見があるのも事実です。
 まず非汚染地域に住んでいる親戚の方がいればお願いしてみるのはどうでしょうか? 
 あるいは滞在期間中の滞在先を前半と後半で替えるのもいいと思います。(少々面倒くさいですが。)

 夏休みにまとめて、というのが難しい場合は、毎週日曜日に非汚染地域へご家族で行くのもいいと思います。
 1週間に1日だけでも、繰り返せば大きな結果を生み出すと思います。
 気分的にも気晴らしになればいいですよね。避難とか保養しなくては・・・!とか考えると、気が重くなりますが、楽しい家族の日帰り旅行と思えば、精神的にもいいですよね。
 放射能はストレスが大好きです。だからストレスを持ち続けないようにするのも放射能対策になります。
 冬休みや春休み、GWなど大型連休を利用するのもいいと思います。

 またせっかく保養へ行ってもその間の食事がめちゃくちゃだったり(栄養バランスが悪い、など)、生活習慣がきちんとしていない(睡眠不足、運動不足など)実は放射能に汚染された食品を食べていた、という状況だったりすると、保養に来た意味が全くなくなってしまいます。
 気をつけてくださいね。
 また保養に行ったから、と油断して日々の食生活が乱れるのは禁物です。
 普段から放射能対策をした食事(放射能を減らした調理方法、高カリウム、高カルシウム、高ペクチン)を続けてください。

 ベラルーシの場合ですが、ベラルーシの子どもが例えば体重1キロあたり20-100ベクレルぐらいの被爆量だった場合、海外へ一ヶ月保養滞在すると、50ベクレル以下ぐらいに減ります。(個人差があります。)
 しかしその後、もともと住んでいたベラルーシ国内の汚染地域に住み続け、食事などにも親が気をつけていないと、1年後には元通りになってしまいます。
 またベラルーシから日本へ飛行機で行くと、宇宙からの放射線を浴びる時間が長くなりますから、約10時間のフライトで、1週間ぐらい放射能汚染地域で暮らしていたのと、同じ量の放射能を被爆してしまいます。
 つまり一ヶ月の保養滞在のはずが、実際には、2週間か3週間しか滞在しなかったのと同じ結果になってしまいます。
 
 もし日本人の方が海外へ保養滞在する場合は、あまり遠方へ飛行機で行かないようにしてください。
 保養の効果がその分減ってしまい、たくさんのお金と時間を使うのにもったいないです。

 ベラルーシの国内の保養ですが、例えばSOS子ども村の場合はこのようなプログラムになっています。
 滞在期間はおよそ3週間。到着後すぐに体内放射能の測定。
 体重1キロあたり20ベクレル以上だと、チロ基金からビタペクトを無料支給。滞在中から飲み始める。
 平行してマルチビタミン剤の配布。滞在中毎日飲むことが義務付けされています。 
 さらに果肉入りフルーツジュースを支給。滞在中、毎日飲むことが義務付けされています。
 食育の授業。教育ビデオを見ながら、放射能対策のための調理方法などをレクチャーしてもらっています。
 そのほか、気分転換のための楽しいプログラム(サーカス、遊園地、動物園、手芸工作、SOS子ども村内のスポーツ大会参加などなど。)や精神的な支援プログラムとして、キリスト教教会へのミサに参加。
 希望者には心理カウンセリング。医療相談など。
 これも希望者にはミンスクにある専門病院への受診、精密検査などの依頼をSOS子ども村が代行。

 ・・・とこのようなプログラムで、体内放射能が体重1キロあたり30-50ベクレルぐらいだったのが、0ベクレル、あるいは20ベクレル以下に下がります。
 他の保養所では、1日6回の食事(ただしうち1回は飲み物だけの場合もあります)、マッサージ、プールがあるので水泳などを行っているところもあります。
 
 もっとも、このような保養滞在をして体内放射能値が下がっても、帰宅後、教わったことを実行せず汚染された食品ばかり食べていれば、1年後には元の放射能値に戻ります。
 
 普段から気をつけていれば、長期の保養滞在など無理にしなくてもいい、と個人的には思います。
 また保養滞在するのなら、最大限の効果が出る方法でしないといけないし、その後に保養の効果をなくしてしまうような
生活をしてしまっては、保養の意味がなくなる、と思います。
 ベラルーシでは保養などに一度も行ったことがなくても、病気にならず元気な人もいるのですから、保養に絶対行かなくては! と堅苦しく考えないほうがいいと思います。
 ご家族の方が反対しているのに、あるいはお子さんが転校したくないと言っているのに、無理に引越しされるのも、精神的にどうか・・・と思います。
 それより日ごろの生活を注意して過ごしましょう。
 
 しかしながら、できることであれば、日本の旅行代理店がこれから
「激安ツアー! 放射能デトックス保養プラン! お子様割引有! 測定済みの食材をつかった安心な放射能対策食(放射能を減らした調理方法、高カリウム、高カルシウム、高ペクチン)1日4食つき。放射能測定を滞在1日目と最終日に実施。体内放射能が減っていなかったら、費用全額お返しします!」
 ・・・というようなツアーをこれからじゃんじゃん組んでほしいです・・・。
 
 

避難についてベラルーシの基準など

2011-06-18 | 放射能関連情報
 放射能被爆を避けるための避難について、また保養滞在(放射能デトックス)についてのご質問メールを多くいただいております。
 まず避難についてです。
 すでに強制避難しないといけない地域が指定されています。この地域に住んでいる人はすでに避難、あるいは近いうちに避難することになっています。
 ここで問題なのは、避難する地域に住んでいるわけではないので、強制的に避難させられるのではないけれど、放射能が気になるので、自主的に避難すべきかどうか悩んでいる、という点です。
 最終的にはご自分で判断されることだと思います。ここではベラルーシの例をご紹介します。

 ベラルーシでは強制的に退避しないといけない地域は年間外部被ばく線量が20ミリシーベルト以上の地域です。
 5ミリシーベルト以上20ミリシーベルト以下の地域は自主的に移住、あるいは避難するということになっています。
 5ミリシーベルト以下の場合は避難や移住はしなくてよい、ということです。

 この自主的に移住、あるいは避難する地域ですが、移住先避難先の住居は個人で確保せよ、という条件だったので、実際には移住した人はとても少なかったのです。
 
 6月6日のNHK「あさイチ!」で(自主)避難のことが取り上げられていました。
 私がショックだったのは、自主避難した人について、「逃げた」とか「神経質だ」といったことを言う人がいることです。
 逃げられない人が逃げられる人のことを羨ましく思っているのかもしれない、という考え方や、みんな避難したら、地域の復興ができなくなる、という意見があるのも分かります。
 
 ベラルーシの場合は自主的に避難できた人は少数でしたが、残った人たちが、避難した人をあれこれ言うことはありませんでした。
 はい、みなさんご自由に、という感覚です。政府も隣人もです。
 日本のほうがベラルーシよりこういう点では自由がないのかもしれません。

 震災後日本人の心理状態が大きく変化し
「日本人一丸となって復興させよう!」「家族の絆・ご近所の絆の再確認」
とかすばらしい言葉、キャッチフレーズのような言葉が、マスコミにもどんどん登場しました。
 史上まれな大震災発生後、日本人が一帯感を持って困難を乗り越えようという精神を持ったことは、すばらしいことだと思います。
 しかしこういうことを書くと、非難されるのを覚悟して書きますが、このような「日本人一丸精神」がまちがった方向に動くのは危険だと思います。
 被爆の危険を恐れず復興に尽力している大勢の人が、放射能のことを心配して避難する少数派の人を、裏切り者や臆病者、将来戻ってきても白いカラスのように思ってしまう傾向にどうしてもなってしまいます。

 今の日本は戦中のようです。
「神国日本が戦争に負けるはずがない。」というのが当時は常識でした。
「自分は戦争に行きたくない。自分は助かりたい。命が惜しい。」などと言うと、非国民扱いです。 
 日本人が一丸になって戦争に協力するのが当たり前でした。隣組という、一見いいようで、実は隣近所の人同士でお互い監視させる制度もありました。
 戦後、常識は非常識になり、戦争を生き延びた人たちは命の大切さを後の世代に語っています。

 今回の震災で「命の大切さ」を多くの日本人が再確認したり、「助かった命を大事にして生きていこう!」といったメッセージがマスコミからもどんどん流されています。
 それなのに、自分の幼い子どもの命を大切にしたいから、自主避難(つまり費用は自分持ちが普通。)する人は周囲から「神経質だ」とか、「どうして自分たちだけ・・・自己中だ」とか言われてしまうのでしょうか? 
 
 避難された人のほとんどは小さいお子さんを抱えているから心配なのだと思います。
 引越しするのは今の日本では自由な権利のはずです。江戸時代の農民じゃないんですから・・・。
(ちなみにベラルーシは引越しが難しい国です。今住んでいる町の範囲内、例えば、市内の北区から南区に引越しするのは自由ですが、別の市に引越しするには、その理由を証明しないといけません。引越しの完全な自由がまだ認められていない国なんです。)

 どうかお子さんを持っている人たちの自主避難を、責めたりしないでください。
 町が復興しても病気の子どもだらけになった場合、今必死で復興していることの意味が半減します。
 (↑これは復興に尽力されている地域のお子さんが、全員そのうち放射能で病気になる、と言っているわけではありません。誤解を招きたくないので、念のため申し上げておきます。)
 
 私のこの投稿を読んで不愉快な気分になる方もおられると思いますが、あえて、全体主義的な思想に今、日本人の精神がさらされており、個人の自由・権利を独裁国家などではなく、普通の隣人が縛ろうとする社会になってしまう危険性があると、ここで言いたいです。
 絆を大切にして、お互い助け合い、震災から立ち上がろう! という姿勢、愛国心の再確認、一つの目標に突き進む日本人の姿は本当に美しいです。
 このような日本人の姿をベラルーシ人は絶賛しています。
 しかし、私自身の心の中ではひっかかるものもあるのです。

 以前このブログでもお知らせしましたが、岩波書店から発行された
「チェルノブイリの祈り」という本をぜひ多くの日本人の方に読んでほしいです。
 著者はベラルーシのジャーナリスト、スベトラーナ・アレクシエービッチです。
 お近くの図書館でも借りられると思います。
 これはチェルノブイリ原発事故後、10年のときに集めた証言集です。さまざまな立場の人が、事故当時を振りかえったり、今の(10年後の)気持ちなどを語っています。
 個人的には自分が会ったことのある、ベルラド研究所の前所長、ワシーリイ・ネステレンコさんの証言が、いつも心に刺さります。この方がご存命でしたら、今の日本の状況について、何と言っていたでしょうか?
 この本は日本語で読めるのですから、ぜひ日本人の方に目を通していただきたいです。