ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

映画「タイタニック」と原発事故

2011-07-27 | 放射能関連情報
 1997年に公開された映画「タイタニック」(ジェームズ・キャメロン監督)はとても有名な映画ですから、多くの人が見たことがあると思います。
 10年ぐらい前になりますが私は最初この映画を見たとき、タイタニックって原発のことだ、と思いました。
 絶対に沈没することはない、と造った人も乗っている人もみんな思い込んでいた巨大客船。もちろん救命ボートの数も足りませんでした。
 一等客室には金持ちが、三等客室には貧しい人が乗っており、船の中に教会も警察もある、という正に社会の縮図。 
 霧の中を高速で進んでいたら、想定外の大きさの氷山が目の前に現れ、避けようと努力はしたものの衝突。大きな亀裂が船体にあいてしまいます。
 これでは沈没してしまう、と分かる人にはすぐ分かります。でも、衝突してすぐのころ乗客の中で「これは危ない。」と思った人はごく少数で、多くの人は音楽を聞きながらお酒を飲んだりして、のんびり指示を待っていました・・・・。

 ・・・・肝心の船長は迅速な命令を出さず、その周りを固める航海士の一人は
「直ちに沈没するものではありません。」
と乗客に言って回っている。
 そのうち船が傾いてきて、敏感な人が
「ちょっと、船が傾いてない? 何だか気分が悪くなってきた・・・。」
よ言っても周りの人は
「そんなことないよ。気にしすぎ! ただの船酔いだよ。」
と相手にしてくれない。
 そういう私はパーサーの一人で必死になって救命胴衣を乗客に配りまくっている。
「早くこれを着てください!」
と言っているところへ別のパーサーがやってくる。
「何この救命胴衣。本当にこんなので命が助かるんですかね? 品質保証のマークはついているんですか? それとも本船での使用の許可はもらっている商品ですか?」
と私が手にしている救命胴衣をじろじろ眺めたり、つついたりしている。私が
「これは他の船でも使われている救命胴衣ですよ。この船に乗っている人には役には立たないんですか? 早く着たほうがいい。」
と言っても
「使用の許可をちゃんともらっているの?」
ときかれる。
「時間があるなら、許可をもらいに申請に行ってもいいですよ。でももうすぐ、この船は沈没するんですよ!」
とこういう無意味なやりとりをしている間にどんどん貴重な時間が過ぎていく・・・・。

 ・・・・もっとも実際のタイタニックの乗客の多くは救命胴衣をつけていても、海水の冷たさに凍死しています。じゃあ、救命胴衣をつけることは全く無駄か、というとそうではありません。
 監督の創作ですが、映画の中でローズは助かりました。それは運よく小さな偶然や条件が重なったからです。もしローズが救命胴衣をつけていなかったら、映画の最後のほうのシーンで水上に浮かんだり、助けを求める笛を泳いで取りに行けたかどうか疑問です。
 タイタニックでは船がどんどん傾き始めるとパニックが起こります。その中には救命ボートに乗ることをあきらめて、美しく死んでいこうとする人もいます。また救命ボートの座る場所を他の人に譲る人もいます。祈りながら天国へ行こうとする人、最後まで楽器を引き続ける人。
 しかしこういう人は少数派で、ほとんどの人は助かろうと救命ボートの周りに群がります・・・・。

 ・・・・船長はふつう
「救命ボートには女性と子どもを優先して乗せるように。」
と指示を出す。しかし残念ながら子どものことを優先して考えない船長もいる。こういう船長の船に乗っていると小さい子どもを抱えた親ほど困り、苦しむことになる。
 しかし船の傾きがひどくなる前に頭がいい人、カンのいい人、知識のある人は沈没するとすぐ分かっている。そして早めに救命胴衣を着せた子どもを救命ボートのほうへ連れて行こうとする・・・・。

 ・・・・私がこのタイタニックの沈没事故を思い出して悲しい、と思うのはやはりどうしても一等客室の乗客のほうが助かっている率が高いことです。もちろん一等客室の乗客でも死亡した人はいますし、二等や三等客室の乗客で助かった人もいます。
 しかし割合で言うと、やはり金持ちほど助かっている割合が高いのです。
 (事故による生存率は一等船客は60% 二等船客は44% 3等船客は25% 乗務員は24%)

 これは100年前の話で現代人の意識は変わったから、もしタイタニックのような事故が今再び起きたとしても、違う結果になる、という意見の人もいるでしょう。また人間なんて時間が経っても大して変わらない、という意見の人もいるでしょう。
 
 原発事故の場合はどうでしょうか? やはりお金持ちのほうが放射能の被曝を受けにくくなるのでしょうか? イエスかノーかどっちか一つ選べ、と言われたら、私はイエスと答えます。
 お金がたくさんあったら遠い外国へ避難することも長期滞在することも比較的簡単にできるからです。
 
 しかし私は絶対にお金持ちのほうが助かって、貧乏な人は助からない、とは簡単に区別できないと思っています。
 映画の中のローズ(一等客室の乗客でしたが、実際には破産した家の娘)もさまざまな偶然、勇気、知恵、助けてくれた人の存在などにより、助かりました。
 また客室の種類に関係なく、平等に多くの人が放射能被曝を避けられる方法というものを専門家の方に考えてほしい、と思っています。
  
 このような話にお付き合いくださり、ありがとうございます。でも私はタイタニックの映画を見るとどうしても、原発を連想してしまうんです。
 この映画のことを駄作のように言う人もいます。理由はいろいろですが、例えば現存している絵画がタイタニックとともに沈んでしまったとしているのはおかしい、という指摘があります。
 でも私が思うには、あの映画はドキュメント作品ではないですし、空想の設定(ローズをとりまく主要人物のほとんどが実在していない。)の部分があってもおかしくない芸術作品です。
 ただ監督がタイタニックそのものや沈没のようすをものすごくリアルに撮影しているので、そこへ観客の目が行きがちになりますが、そこへところどころ比喩的な映像を混ぜているんですよね。
 甘くておいしいお菓子をずっと食べている、と思っていたら、ところどころ小さい塩の粒が混ざっていて「まずい! 不良品だ!」と思う人がいるようなものです。
 私自身はこの映画が100%リアルを目指した作品でなくてよかったな、と思います。
 
 例えば私にはローズすらローズ以外のものに見えてくることがあります。
 若くて活発で魅力的なローズ。どちらかと言うと、ぽっちゃりタイプのローズ。赤い髪のローズ。
 名門貴族の出ですが、実際には一文無しのローズ。
 そのローズが足の親指だけで立つシーンがありますが、つまり重めの体重をあの小さい2点だけで支えている、ということです。
 実に危ない。いつ倒れてもおかしくない。
 実際倒れてレオ様に支えられていましたが、レオ様がすぐそばにいるローズは運がいいですよ。
 最新式巨大客船の運命も実は、小さな点だけで支えられていた程度のものだったのかもしれません。 
 

このような意見もあります

2011-07-27 | 放射能関連情報
 以前にも科学ライターが書いたというペクチンに関する記事について公開しましたが、同じような内容の記事をお知らせします。
「あやしい放射能対策」

http://synodos.livedoor.biz/archives/1796844.html


 この記事を書いた片瀬久美子さんと言う方は、ずっと前にツイッターで
「ベラルーシの部屋というブログで紹介されているペクチンは放射能には効かない。」
と何度もつぶやいていたそうです。
 私のブログ、名指しで批判されていたんですね。知らなかったです。
 そのころは「ペクチンなんか効くわけない。」という論調だったそうです。

 それに比べるとこの上記のサイトでは、ペクチンに関してはトーンダウンしていますね。
 ペクチンが効果薄、と判断しているわりには、根拠としている論文がIRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)だけ挙げているというのも貧弱です。
 このフランスの論文のほうが誤っているという専門家の方もおられます。
 またIRSNに批判されたベルラド研究所が、
「じゃあ、そちらのやり方を使った方法で共同の実験をしませんか?」
と提案したところ
「ペクチンは効かないと言ったら効かない。だから実験する必要はない。」
といった返事が来たことがあるそうです。
 片瀬さんにはぜひベラルーシを訪問され、ベルラド研究所と共同でペクチン剤を使った実験をしていただきたいです。そうすればもっとはっきりすると思います。

 片瀬さんの記事の中で
「ペクチンによって必要なビタミンやミネラルが吸着されてしまい栄養欠乏になる副作用の懸念が指摘されていることである。放射線対策としてとくに子どもや妊婦にペクチンを摂らせすぎるのは心配である。」
 というのは正しい指摘です。
 ですから、内部被曝の検査をして、体重1キロあたり何百ベレクル、といった結果が出ない限り、チロ基金とSOS子ども村の決定として、子ども1人あたりビタペクトTを1日1タブレット(ペクチン保有量は961ミリグラム)ずつ飲ませています。これは半分の量に当たります。
 もし体重1キロあたり100ベレクル以上、というような子どもだったら、ビタペクトTを1日2タブレットずつあげるところですが、2002年から今まで2000人以上の子どもたちと会ってきて、そのような高い値の内部被曝の子どもに会ったことが私はありません。
(体重1キロあたり20ベクレル以上の子どもにビタペクトをあげています。)

 またビタペクトは純粋なペクチン剤ではなく、各種ビタミンが配合されています。これもペクチンによって必要なビタミンやミネラルが吸着されてしまい栄養欠乏にならないように、(ちゃんとペクチンのことが分かっている)ベルラド研究所が最初から配合しているからです。

 このブログでもお知らせしているように、ペクチンの摂りすぎはよくないこと、また日本人の方がペクチンサプリを購入した場合、マルチビタミンやマルチミネラルのサプリも購入して併用することを呼びかけているのは、以上のような理由があるからです。

 また繰り返しになるのですが、ペクチンは放射能の排出には効かない、という日本人の専門家の方は、もう少しチェルノブイリ事故の汚染地域で行われていることにも目を向けていただきたいです。
 歴史上、原発職員でもないごくふつうの一般人が大勢、放射能の被曝の危機にさらされる、という事態は、今回の福島第1原発事故をのぞけばチェルノブイリ原発事故が1番の大事故だったわけです。
 そのチェルノブイリ原発事故の汚染地域は、現在のベラルーシ、ウクライナ、ロシアにまたがっています。
 この3国の保健省、つまり日本でいうところの厚生労働省に当たる国の機関が、10年も前から自国民の健康のため、内部被曝対策としてペクチンの効果を認めているという事実が、何を意味しているのか、日本人の専門家の方にも少し考えていただきたいです。
 
 またチェルノブイリの子ども達がペクチン剤を無償で飲めるように、多くの寄付が長年にわたり、ヨーロッパ各国や日本、アメリカなどからの支援団体からベラルーシやウクライナに寄せられていることも、なぜなのか考えていただきたいです。

(ちなみにベラルーシ保健省も1日に摂取するペクチンの上限を1日9グラムまでと定め、きちんと提示しています。これもちゃんとペクチンのことが分かっているからです。) 

 私が心配しているのは「あれもダメ。これもダメ。」と科学者といった頭のいい人から言われると(もっとも原発で放射能漏れ事故なんか起きない。大丈夫大丈夫。と言い続けていた人の中にも科学者という職業の方がいましたが。)
「じゃあ、どうしたらいいの?」
と不安になる一般人(特にお母さん方)が出てくることです。

 そして「鼻血が出た。」「体調が辛い。」「もしかして放射能のせい?」
と訴えると
「放射能を気にしすぎ。精神的なものからくる症状です。」
 だからしっかりせよ! と叱咤されるわけです。
 放射能を精神的なストレスに感じないようにするためにも
「料理に工夫をして、放射能を食品から減らそう。」とか「ペクチンがチェルノブイリ汚染地域では対応策として使われている。だから方法はある。」といった「放射能とともに生きる暮らし」に頭を切り替えるほうが、「放射能を気にするな。忘れましょう。」あるいは「だまされるな。全部怪しい方法だ。」とアドバイスするより、私はずっといいと思うのですが・・・。