ハルシュタット (オーストリア) の夜
第120話 人生のクラスメート
先日、はじめての、患者さんたちによるクリスマスの劇がありました。交通事故で脳障害を受けてはっきり話せなくなった18歳の女の子が聖母マリアを演じ、裁判で争っていた夫から拳銃で頭を撃たれ、言葉をなかなか思い出せないようになった女性が羊飼いを演じ、と大勢の観客の前でせりふを話す彼らの勇気ある姿には心を打たれました。
わたしたちの病院では、また新しい患者さんたちがどんどん入ってきて、とても忙しい日々です。つまりは、ベットをあけるため、長く入院していた患者さんたちで、リハビリテーションの意味ではプラトーになっている人たちは、もうひとつある施設のほうに移っていったのですが、それもそれなりに、ネクストステップといえるのかもしれないなと、思います。どんな変化も誰にとっても、チャレンジで刺激となることでしょう。
唯一いろいろ話せる患者さんであったひげをたらしたワイズマンのジャングルもほかのところに移っていってしまったのですが、最後のアートセラピーセッションでジャングルは、「人生は学びにきたものだから、出会った人たちはみなクラスメートなんだよ。」と教えてくれました。「転校していったり、転入してきたり、新らしい先生がきたりなのさ」と笑っていました。それからわたしたちはお互いに、「ありがとう、3年間一緒に学べて楽しかったよ」、と言いあっていました。
2012年も終わりを告げようとしています。今年はわたしにとって内面的に大きく変化のあった年でした。なずなも大学二年生となり、家に寄り付かないので、「もう遊んでくれないのだ」、とあきらめがつき、「自分で楽しいことを見つけていくしかないのだ」と、やっとわかったので、イタリアの旅にも出たし、5年前に大学院で出会った人(蜂の巣箱を研究していたかなりの変人)と再会してデート?をしてみたりと、わたしなりに、一歩を踏み出したという年になりました。
人生のクラスメートのみなさん、今年もありがとうございました。
あまりひんぱんに書くことができなくなったこの頃ですが、メール通信を読んでくださってありがとうございました。
どうぞよいお年をお迎えください。
(間美栄子 2012年12月31日 http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef)