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南房総館山・なぎさの自然詩

南房総館山の自然や海での出来事を紹介しています。

アオイガイとシロカメガイ

2025-02-10 21:48:07 | 

ここ数日の寒波の影響で春から冬へ逆戻りしたような感じの館山湾では、対岸の三浦半島が蜃気楼で浮かんで見えました。
雪とは無縁のような南房総でも、先日は僅かほんの数分間だけ雪が降りました。


海岸の磯ではハクセキレイが忙しそうに飛び回り、鳥達は繁殖期に向けて準備をしているようです。
海岸近くの我が家でもカラスがソワソワして騒がしい鳴き声が聞こえ、ホオジロやシジュウカラが囀り始めました。


冷たい風が吹く海岸を歩くと、アオイガイが打ち揚げられていました。


更にもう1つアオイガイがあります。


こんな風に満潮時の打ち揚げラインの少し離れた所に2つ並んでいました。

もう少し離れた場所にも1つあり、全部で3つのアオイガイを拾いました。
約1.5cmの極小のもの2つと後ろが割れていたものです。
今まで見てきたアオイガイの殻長の最大は約11cm、最小は約1cm。
南房総では、それ以上大きなアオイガイを私自身は見たことがありません。
漂流生活を送るアオイガイの生態はほとんど分かっていないそうです。
1年でどれくらい成長するのか、どの位の大きさになると卵を産めるのか、知りたい事がたくさんあります。
殻長は最大30cmになるそうなので、なぜ南房総ではそのサイズのアオイガイが全く見られないのか不思議に思っています。


ビーチコーミングをしていると、微小貝も目に入ってきました。
その中でも大きなカメガイに驚きました。
約1cmのカメガイは、ネットで調べたところシロカメガイのようです。
有殻翼足類・カメガイ亜科のシロカメガイはウミウシの仲間で浮遊して生活する巻き貝だそうです。
そして体の数十倍の大きさの粘液で作られたクモの巣状のものを広げて餌を捕まえるそうです。
こうやってアオイガイやカメガイ等の実物を手に取り触れると、様々な興味が湧いてきます。
また、海岸で鳥や魚等の生き物をこの目で見ると、生き生きとしたその姿に感動します。
人為による海岸線の改変で多くの生き物達が減ってきている中で、これ以上海岸で生きる動植物をどうしたら守れるかと考えています。
今自分に出来ることを1つずつ行動する事が大切に感じています。








シボリザクラとイソヒヨドリ

2025-01-18 21:54:49 | 

北風の吹く海岸は1年通して暖かな南房総にも冬を感じさせます。
そんな海岸は土曜日とあって、たくさんの観光客で賑わっていました。
観光客の皆さんの服装を見ると軽装の方もいて、他所から来ると南房総は暖かいのだと実感しました。


海岸の砂浜には白く細かい石のような漂着物が網目のように打ち揚げられています。
海水は透明度がとても高くて、青く澄みとても綺麗です。


ゆっくりと歩きビーチコーミングを始めると、サクラガイが幾つかあり、その中に紅白のサクラガイを見つけました。
全体が薄ピンク色のものはサクラガイで、白色にピンク色の放射彩があるものはシボリザクラと呼ばれているそうです。
これまでにシボリザクラを幾つか見ていますが、こんなに色の濃いものは初めてです。
原色日本貝類図鑑によると、ニッコウガイ科で殻表は平滑白色で紅色の放射彩があるが、この放射彩は褪色し易く、本州以南潮線下に棲むとありました。


エンジン音がして、ふと沖を見ると遊覧船が浮かび、人影が見えました。
観光客が短い海上の旅を楽しんでいるのかもしれません。
シボリザクラを見つけた後は、砂浜にしゃがみ込み小さなコメツブウニを集中して探して、20個位拾いました。

そして同じ海岸の磯にいたイソヒヨドリのメス。
スズメ目ヒタキ科で、ヒヨドリとは全く別種の鳥です。
個人的にはイソツグミの方がしっくりくる感じがしていました。
すると英名はBlue rock thrush青い岩ツグミと言うそうです。
イソヒヨドリのオスは青色をしているので、そこからの由来かもしれません。


夢中で採餌していたはイソヒヨドリは、どんどん近づいて来ました。あまり人を怖がっていない様子です。
イソヒヨドリは縄張りに他の鳥が来ると、追い払う行動を取ることがあります。
以前カワセミを執拗に追い掛けていたり、ムクドリを追い払っていました。
人に対しても同じようにするのかと思いましたが、採餌に集中していただけのようで、それ以上は近づいてきませんでした。
昼時で人が居なくなって閑散としていた海岸に、再び人が増え始めてイソヒヨドリもどこかへ去って行きました。
ここ数年の南房総の海岸には、夏冬問わず人が訪れているようになりました。
僅かな時間滞在するだけかもしれませんが、野生動物にとっては貴重な餌場であり、荒天が収まった唯一の採餌の機会なのかもしれません。
野生動物の行動を妨げる事にならないように、海岸の利用について制限が必要な時期にきているような気がしています。
ものを言えぬ生き物達の言葉が聞ければいいのですが、それを想像して自分の行動へ反映していく事が大切だと感じました。










ルリエボシとカルエボシ

2025-01-10 22:16:29 | 

三日間吹き続いていた風が止み、海岸へ行くと富士山が綺麗に見えました。
気象庁によると昨日(1/9)の館山市での最大瞬間風速は23.9mで西南西の風とのことでした。
台風並みの23mの風が真冬の南房総に吹く事はここ数年無かったので、とても驚きました。

海岸の植生の中まで木片等の漂着物があり、強風で波が被った事が分かります。

その強風は様々なものを海辺へと運んできました。
そのひとつは軽石で、黒、茶、白、グレー等色も様々です。
その中の一つにエボシガイが付着していました。

小さなエボシガイが軽石の周りに見られます。

このエボシガイはエボシガイ科エボシガイ属ルリエボシと言うそうで、この軽石に付着していたのは1~3mm位でとても小さいものです。
海面を漂いながら生活する蔓脚類で、甲殻類の仲間だそうです。
フジツボ類と同じように蔓脚を広げて、餌を掻き集めるそうです。

そして木の実に付着していたカルエボシです。
カルエボシとルリエボシは貝の様に見えますが、甲殻類に近い種だと知り、どうして動く事を止めて固着して生活するようになったのかと非常に興味深く思いました。
長い進化の過程で変化してきた生き物の形やその生態は様々で、今自分が見ているものも最終型では無く変わって行くのかもしれません。


カルエボシが付着した流木も打ち揚げられていました。

更に大きなヒトデもありました。
海底にあったものが波にかき混ぜられて砂浜に運ばれたのでしょうか。


まだ荒れた波が残る海の向こうには伊豆大島が見えました。





富士山とベニシボリ

2024-12-23 21:50:41 | 

週末に吹き続いていた大風が止み、穏やかな月曜日を迎えました。
12/21土曜日は南寄りの風で、12/22日曜日は北寄りの風が吹いていました。
その風が地上の空気を綺麗にしていった様で、海の向こうには富士山がよく見え、更に城ヶ島の橋まで見えていたのには驚きました。

しかし今年は富士山の初冠雪が遅かった事もあり、山頂の雪がいつもの年よりも少なく、12月下旬とは思えないくらいです。
暖かな日射しとひんやりと冷たいそよ風の吹く海岸をゆっくりと歩きます。
満潮時の打ち揚げラインには木片等の植物由来の漂着物がたくさんありました。
浜の様子がこんな感じの時は、何かが珍しいものがありそうな雰囲気です。
砂浜にしゃがみ込む様にして、貝殻を探し始めました。


そんな漂着物の上にポツンと置かれていたベニシボリ!
標準原色図鑑全集3によると、ベニシボリは房総以南、潮間帯の海藻の間に生息するそうです。
かなり広い範囲に分布し、比較的浅い所にいるのですが、貝殻を見かける頻度はとても低い感じです。
とても小さくて薄い貝殻は、脆く壊れやすいからかもしれません。


その他には二枚目や微小貝等をビーチコーミングで見つけました。


波打ち際近くにブイが打ち揚げられていました。
長い間漂流していたブイには海藻やフジツボ、カルエボシが付着し、海に浮かぶ小さな町のようです。


残念ながら砂浜に上陸してしまい、その町に棲む住人は息絶えていました。

キンセンガニも打ち揚げられていました。
磯や砂浜で見かけるカニと違って脚にはヒレがあり、泳ぎが得意なカニの様です。
普段は砂の中に潜っていて、いざという時にはヒレのある脚で海中を泳ぐそうです。


海上にはカンムリカイツブリの姿がありました。
潜って魚を探していたり、海面で羽づくろいしたりと全部で4羽いました。
冬の始まりはとても暖かく、富士山の冠雪も少ないですが、野鳥達は今年も同じように南房総へ越冬しにやって来ています。
今年は海の中では水温が高いため、南の方の魚が多いと漁師さんが仰っていました。
南房総の冬が暖かいのは海水温の高さと関係があるようですが、目に見えて海中の変化が現れているとすれば、いずれは陸上でも生き物達の行動が変わってくるのかもしれないと思いました。
打ち揚げられた木片等の漂着物もそのままで、たくさんの貝類の生きていた痕跡も見られる自然な海岸は素晴らしいです。
しかし手付かずの場所の様に見えるこの海岸ですが、6月頃になると海水浴場開設の為に、漂着物が全て一掃されます。
更に長い海岸線の両端が護岸されているのも残念です。
人の生活やレクリエーションの為に、小さな生き物達が犠牲になっていることが無くなるような、人と生き物の調和のとれた海岸が理想的だと感じました。













オオモモノハナ

2024-12-06 08:56:29 | 

記録日2024年12月5日
今日は鳥見がメインでしたが、初見の貝殻との出会いがありました。
3cm程の薄桃色の貝殻が目に飛び込んできました。
合弁では無く一枚だけが木片等の漂着物の上に打ち揚げられていました。
早速手に取って眺めるとサクラガイのような淡い色をしていますが、とても大きくて驚きました。
初めて見る貝殻なので、種類が分からず家へ帰ってから調べたところ、原色日本貝類図鑑(吉良哲明著)によるとニッコウガイ科のオオモモノハナのようです。
千葉県レッドリストによるとカテゴリーB重要保護生物に指定されていました。
今までこの海岸を何度も訪れていますが、手付かずの自然が残されている素晴らしい場所です。
波打ち際から続く広々とした海浜植物茂る草地、その後ろへと繋がるなだらかな山々。
漂着物がそのまま残されているので、そこではシギやチドリ達の休息地となっています。
千葉県で絶滅危惧種に指定されているシロチドリと一緒にミユビシギが休んでいました。
またそのままの漂着物は、海中の栄養分としても役立っているのではないかと思います。


波打ち際にはサクラガイもちらほらと打ち揚げられていました。
貴重なオオモモノハナが生息する海中も、その他たくさんの貝類が暮らしているはずです。
以前にはこの海岸にもたくさんのシロチドリいて、大きな群を作っていただろうということを容易に想像出来ました。
残念ながら現在はオオモモノハナもシロチドリも生息数の減少から保護対象種と成ってしまいました。
そんな多くの生き物が暮らしていた海岸を、今このままの状態が変わらず保全されていく事がとても大切に思います。
シロチドリ達が安心して休める砂浜のある海岸がいつまでも変わらぬ様に願って止みません。