島には十数店の飲食店が営業していて、それぞれ贔屓客がいてそれなりに繁盛しているようだ。店を大きくすることは望み薄だが、地道に経営していけば生活はできる。そんな平和な地元の飲食店であるが、それなりに悩みがある。また、本州には無い問題もあるようで、それらを項目に分けて説明する。
【極めて良心的な明朗会計】
前回の旅行の時、村役場の職員に「地元のスナックで安心して飲める店を紹介して欲しい」と尋ねたところ、「どの店も同じ値段ですよ。ぼったくることは絶対にない。もし、ぼられたら役場まで苦情を申しつけて下さい」と返事された。この回答はその通りであり、どの店でも明朗会計で、ぼられることは無かった。狭い島なので、ぼったくるような行為をすれば直ぐに島中に知れ渡ってしまう。新宿歌舞伎町のようなスナック、バーは、ここでは成り立たないのである。
【酒代の値上げができない】
前回の旅行の時、ビール(中ビン)はどの店でも千円であった。この島独特のルールで、お通し代やテーブルチャージは一切無い。従って、千円札一枚を持ってスナックに入れば、ビール一本で何時間も遊ぶことができる(店主からは嫌がれるが)。今回の旅行でもビール代はどの店も千円であった。11年間、ビール代は値上がっていなかった。日本国内ではデフレの嵐が続いていたが、南大東島でもデフレの影響を受けていた。
ママさんからは、「この値段では儲からないけど、私の店だけ値上げする訳にもいかないので値段を据え置いているの」と聞かされた。価格協定のように、各飲食店のビール代が統一されている裏では、ママさんの悩みがあるようだ。しかし、他の酒代は微妙に値上げされていた。前回の旅行の時に撮影した写真の中に、偶然にもメニューが写っている写真があった。11年後のメニューと比較してみた。
銘柄 2021年 2023年
ジョニーウオーカー赤 9000円 12000円
ジョニーウオーカー黒 12000円 13000円
久米仙(泡盛・久米島) 6000円 8000円
菊之露(泡盛・宮古島) 6000円 8000円
この店の酒代が特別に高いということはなく、他の店もほぼ同じような酒代であった。この酒代の変化からすると、それほど大幅な値上げではない。ママさんが価格を変更するのは微妙に難しいところである。
【チップ】
酒代の値上げが難しくなると、スナックの方でも収入向上のための方策を考えざるを得なくなる。その方策とは「チップ」をねだることである。チップと言っても現金を貰うのではなく、「お茶を貰ってもよろしいですか」と尋ね、小さな缶入りのお茶をねだることである。原価数十円のお茶が千円の売上げになる。このチップの請求はどのスナックでも実行しているのではなさそうである。
【店内でのケンカ」
酒の出る飲食店のことであるため、店内でケンカが始まることもある。以前は警官を呼んで被害状況を報告していたが、駐在所の警官が一人勤務になったことから呼び出さないことになったらしい。店内でケンカが始まると、先ずは客全員でケンカしている二人を店外に押し出し、店の被害を少なくする。同時に、ケンカしている当人が務めている会社の社長を呼出して仲裁に当たらせる。社長が到着し、二人の頭を殴って喧嘩両成敗するとお終いになるそうだ。社長の指示には逆らうことはできず、これでケンカは納まるとのことだった。
【店内喫煙】
本州の飲食店では見ることができない島独特の習慣は、店内での喫煙である。どの店舗でもテーブルには灰皿が用意されていた。どうも島の喫煙者率は高いようで、女性でも喫煙する人が多いようである。このため、「店内禁煙」「店内分煙」などの表示をしたらたちまち来店者がいなくなる。また、各店舗の床面積が狭いため、喫煙室を設置できないという理由もあるようだ。何れにせよ、これから暫くの間、島は喫煙者にとって天国のようなものである。
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