在所集落の中央で、歓楽街の入口に立地するのは島で一番大きな料理店の「喜作」である。鉄筋コンクリート造り二階建てで、県道に面していることから嫌でも目立つ店舗である。南大東島の旅行案内や旅行記には必ず取り上げられている。店主は元々農業に従事していたが、飛行場建設に農地が収用されたため、飲食業に転業したという。店舗には座敷もあって宴会ができるようであった。私はこの店を利用したことはなかった。前回の旅行の時、ホテルの宿泊料は朝夕食込みであったため、夕食のために「喜作」に入店することはなかった。今回は利用してみよう、と勇んでいたのだが廃業していた。夫婦で店を切り盛りしていたのだが、老齢のため運営ができにくくなったのが理由である。有名店なので一度は利用したかったが、誠に残念である。
那覇市にも同じ「喜作」の店名を使った居酒屋が営業しているが、これは経営者の四男が運営している。また、「喜作」の店舗の道路を挟んで反対側にある居酒屋「ちょうちん」は実弟であるらしい。
「喜作」での名物は島の近海で釣り上げた魚料理であり、ナワキリ(和名、クロシビカマス)という魚を料理していて有名であった。内地でも釣り上げられることがあるが、市場には出回らないため、一般には馴染みが薄い。この魚を目当てに南大東島に渡航する人もいるらしい。また、この地方でなければ入手できないインガンダルマ(和名、バラムツ)という深海魚を提供してくれるのでも有名であった。この魚は人体では消化できない脂分を大量に含んでいて、販売が禁止されている。「喜作」では、人体の健康に被害が出ない程度の少量をコッソリと料理してくれる、という噂があった。本当かどうかは、私は検証していないので不明であるが。
なお、2024年4月からは、閉店した「喜作」の一階には居酒屋の「ろくさん」が入居したという。「ろくさん」は歓楽街の中央付近で小さな店を運営していたが、顧客に人気があったので大通りに進出したらしい。
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