バスの停留所
渡辺 蓮
時間に来ないバスを
苛々しながら待って いる。
もう10分も経っているのに
遠くの方にも姿が見えない。
気になりだすと度々、
バスの来る方角を窺い始める。
それでもバスの姿は見えない。
この時間ならとっくの昔に駅に着いている。
だけど、今から歩くのも癪に障る。
気持ちはどんどん苛立ちはじめる。
隣のおじさんの顔を一瞥してみた。
平気な顔をして平然と微動だにしない。
『バスはあてになりませんね』
と言うと
『バスを待つときはあてにしては
いけませんよ。あてにするから
苛々するのですよ、私はもう30年以上
待っていますよ』
と話してきた。
怪訝そうな顔でおじさんの話を
聴いていたら、
『来るか、来ないか、解からないバスを
待っていると時間は無駄に過ぎてゆくが、
必ず来ると信じて待っているとバスはいつしかちゃんと現れますよ。
そんな思いで私は30年経ってしまったのです。』
このおじさんは、まさか三十年も来ないバスを待っているのだろうか。
そんなことはあり得ない。
そのうち、バスの方向指示器の音がした。
『ほうら、来たでしょう。』
しかし、もう20分も経っていた。
時間通りに来なかったけど、
バスはちゃんと現れた。
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