逍遥日記

経済・政治・哲学などに関する思索の跡や旅・グルメなどの随筆を書きます。

新型コロナウイルスと各業種の対策

2020-04-04 08:26:15 | 経済
新型コロナウイルスと各業種の対策
                                                           和洋女子大学・山下景秋


 小売り業や飲食業、旅行業、ホテル・旅館などの業種を中心に経営が悪化しています。
 これらの業種の対策について私が最近投稿したツイートの内容をまとめて整理しました。
 私自身は各業種・業界に関して全くの素人なので、頓珍漢な内容も多いと思いますが、これを1つのきっかけにさまざまな活性化案がたくさん提起されることを望みます。ネットで多くのアイディアを募集すればどうでしょうか。
 ただし、この原稿を最初に投稿(4月4日)してから少し時間が経過して事態が深刻化したので、内容が現在では相応しくないものも含まれています(4月6日現在)
 なお、(  )内の日付は、私のツイート「山下景秋@kageyamashita」に掲載した日を表わします。
1.各業種の対策
小売業
 新型コロナウイルス対策として外出しない人が増えたので、様々な業種の経営が難しくなりつつある。消費者が商品を買いに販売店に行くのではなく、販売店側が消費者の住まいの近くに行って売ること、すなわち現代版御用聞きや行商が必要になってくる。(3月11日)
食材
 日本の牛肉「和牛」の味は世界最高峰である。外国でWagyuのメニューがあるぐらいである。その和牛が最近売れなくなっている。スキヤキ味、焼き肉味などの味のついた冷凍肉や缶詰にして、世界中に対して宅配で販売できないだろうか。(3月31日)
 和牛だけでなく、農家、畜産農家、漁家、道の駅、農協、漁協、旅館、地方自治体などが協力して、地方の食材を都会に配送するビジネスに力を入れてもらいたい。
飲食業、ホテル
 客が店内に入ることをためらうのであれば、客が料理自体を自宅に持ち帰るテイクアウトや、店側が注文に応じて客の方に料理を運ぶデリバリー(出前・配達)、そして高級店やホテルの調理場で調理した複数の豪華な料理や飲み物を自宅や職場、あるいは少人数の会場などに運び配膳するケータリングが可能である。その際、飲食店やホテルであたかも実際に食べているかのような雰囲気を味わうために、飲食店やホテル内の飲食用スペースや調理場を動画や写真にしてそれを付けて宅配する(あるいはYouTubeで流して、宅配先にその動画を紹介する)こともできるかもしれない。
 さらに、飲食店で仕事の減った料理人や、失業した料理人やスタッフが、客の自宅などに出向いてそこで(宅配された食材を使って)料理を作り配膳・給仕することも考えられる(3月24日、28日)。家庭に出向いた料理人が、家族に料理の方法を教えたり、家族と一緒に調理を楽しむということも考えられる。ただし、人が家庭に出向くのは、感染状況が深刻化すると難しくなる。出向く場合は、マスクは勿論、十分な手洗い、消毒が必要になる。
 飲食店が提供する料理自体を(味が少し落ちるかもしれないが)冷凍の弁当や缶詰にして、世界から注文を受け、世界の家庭に配送することはできないだろうか。 (3月31日)
 ただし、腐敗して食中毒をおこすと信頼が低下してこの仕組みが維持できないから、食の安全には十分注意しなくてはならない。
旅行、旅館・ホテル
 現在でも、車で国内旅行に行きたい人は多くいるはずである。客数が激減した旅館・ホテルは、消毒を徹底し、部屋の宿泊は連日ではなく隔日にしたり、各宿泊部屋を離したり、食事は部屋食などにし、それをアピールしてはどうか。(3月24日) ただし、事態が深刻になり外出が規制されると、旅行に出かけるのは難しくなる。緊急事態の期間は、旅館・ホテル、旅行業への政策的支援が必要だ。
 旅館・ホテルは、(低料金施設)貧困者の(補助金による)宿泊券により、(高料金施設)感染避難場所として(ただし、地方の人達からの批判がある)、あるいは逆に、未症状・軽症の感染者収容場所として宿泊客を獲得してはどうだろうか。(3月23日)
 東京都内のある企業が、都の外出自粛の要請を受けて、社員が都内のホテルに宿泊するようにした。満員電車で通勤する必要がなくなるし、ホテルの経営を救うことにもなる。(3月27日)
旅館・ホテル
 我々が各地に旅行・観光に行くのはその地特有の景色や雰囲気や料理・食材を楽しむためである。その地方特有の珍しい食材があるのなら、その地の食材自身や、それを調理した料理を都会の消費者に宅配したらどうか。旅館・ホテルが提供する料理自体を(味が少し落ちるかもしれないが)冷凍の弁当にしたり、 旅館・ホテルの料理そのものを缶詰にできないのだろうか。
食材や料理だけではない。旅館自慢の温泉水そのものや、温泉の水を取り除いた温泉の素を宅配で販売できるかもしれない。(3月31日)。
 ある観光地では、その地の空気を缶詰にして販売したこともある。ならば、その地のおいしい水を宅配で販売することも可能ではないか。またお土産を売ることもできるだろう。
それらのものを都会の消費者に送る時、その観光地の風景や生活や料理、温泉などを動画や写真にしてそれを付けて宅配する(あるいはYouTubeで流して、宅配先にその動画を紹介する)こともできるかもしれない。
交通機関
 人の移動が制限され始めたので、航空機、列車、バス、船などの客数が顕著に減少している。これらが人の移動に使えないならば、これらの交通機関の一部をモノの運搬に使えるように変更できないだろうか。(3月23日)
 空港には、減便により飛べず止まっている飛行機が多数ある。航空会社の収入も落ちている。一方、海外からの帰国者は公共交通機関を使わず2週間人とは触れず待機しなくてはならない。未使用の飛行機を彼らのための宿泊所として使えないだろうか。(4月1日)
 現在のような事態になると、クルーズ船の航行は中止すべきである。その代わりクルーズ船を病院船として使用できないだろうか。勿論、医療スタッフによる感染防止の強力な管理が必要である。(3月24日)
ネットによるビジネス
 今や先進国の産業の中心は情報関連である。新型コロナウイルスが蔓延し外出が規制されている現在、ネットで仕事を人々の間で融通したり分担したりすることが必要である。また在宅の人々に娯楽や気晴らしをネットで提供するビジネス(ヨガの指導など)も求められる。(3月28日)

2.宅配の必要
ネットによるサービスの提供・管理
 新型コロナウイルスが猛威をふるっている現在、外出が困難な状況であるので、各種商品を各家庭に配送したり、ネットを通じて各家庭にサービスを提供することが求められている。どの家庭でどんな商品やサービスを求めているのか、またその必要をどのようにして満たすのか、それらの情報をネットなどで整理・管理するビジネスが求められる。(3月28日)
宅配
 その情報に基づいて、商品を各家庭に配送する宅配の仕事に従事する人が多く求められている。
 宅配する人がウイルスをうつす可能性やうつされる可能性がある。宅配する人や宅配商品の消毒は十分に行う必要がある。支払いにはおカネや紙媒体の商品券をできるだけ使わず、ネットで支払ことができるならそうした方がよい。また宅配商品の受け渡し時、宅配スタッフと商品を受け取る家庭の人の間の距離をとって渡す(商品を庭先や玄関に置くなど)ことが必要になる。
宅配に従事する人は、危険を伴うのでその分高い賃金で雇わなくてはならない。

3.生産と雇用
生産の変更
 売れない製品が増えてくる一方で、タブレットなどの情報機器や、人工呼吸器やECMO、マスク、消毒剤など医療関係の製品の需要は増えている。
 需要の減った製品から需要の増えた製品へ生産を切り替えていかなくてはならない。そのためには、政府はそれらの製品を生産するための設備投資に資金を援助することが必要である。また、生産された製品のうち将来売れ残るかもしれない場合には、政府はその全量を備蓄用に買い取ることを生産企業に保証しなくてはならない。 (3月31日)
雇用対策
 新型コロナウイルスの蔓延により仕事が失われる。特に、小売り、飲食、旅行・観光、ホテル・旅館などの業種の仕事が減っている。
 一方で、マスク、消毒剤などや買い占め対象商品は生産増が必要になる。また外出せず自宅に居らざるをえない人々にとって食料・食品や日用品などは必要なので、それらを宅配する人が必要になる。これらの生産やサービスの提供に関わる雇用が必要とされている。
 また、在宅の新型コロナなどの患者を世話する人や、街の消毒用の要員も必要になる。
 何よりも情報関連の仕事が激増する。ネットを使って自宅で仕事や学習をする人が増え、ネットで商品を注文する人が増えるからである。
伝染病が拡散する期間、職を求める人々をこれらの仕事の方向に誘導する政府や民間組織の活動が求められる。(3月28日)。


(続いて近く、この私のブログ「逍遥日記 山下景秋」において、「新型コロナウイルスと経済対策―現金給付、消費税引き下げ、商品券―」、「マスク問題―買い急ぎ、買い占め、転売の問題―」、「新型コロナウイルスと世界の経済・政治」という題のブログを掲載する予定です)


最近の世界経済の動き

2019-09-23 22:46:35 | 経済
「最近の世界経済の動き」
和洋女子大学・国際学科教授、山下景秋

(レジュメならびに図は、私のツイッター[ネットに山下景秋を入れて検索すると出てきます]を参照のこと)

1.戦後の世界経済の基本
 戦後の世界経済の基本は、経済の自由化である。
①貿易の自由化
経済の自由化の中心は、貿易(モノの移動)の自由化である。
貿易の意味
 個人も国家も同じなので、まず個人の例で考えてみよう
 英語が得意で数学が苦手な英子さんと、英語が不得意で数学が得意な数子さんがいるとしよう。英子さんが数子さんに英語を教え、数子さんが英子さんに数学を教えるというように、互いに得意な能力を発揮して教え合えば双方とも成績が上がって得をする。
  国も同様に、工業が得意で農業が不得意な工国と、工業が不得意で農業が得意な農国があるとしよう。工国は工業製品の生産に励んでその工業製品を農国に売り(輸出し)、農国は農産物の生産に励んでその農産物を工国に売れば(輸出すれば)、双方とも自分の得意な分野に励むことができるから、(両国がそれぞれ農業、工業生産を共に行う場合に比べると)両国全体において工業製品と農産物の生産が増える。
  このように、2つの国が得意な生産物を交換する(つまり2国間で貿易する)ようにすれば、2国のそれぞれが得意な生産に集中できるので、2国全体の、工業製品と農産物の生産が増えて、(そうでない場合と比べて)両国の国民はより多くの生産物(しかも得意な国が生産を増やすことにより価格が下がる可能性もある)を手に入れることができる。これが貿易することのメリットであり、貿易の意味である。
 世界中が互いに貿易を自由に行えるようにすれば、世界中の生産が増えて世界中の経済水準が上がると考えられて、戦後の世界では貿易の自由化をめざすための仕組みが作られた。
その代表がWTO(世界貿易機関)である。この仕組みには世界の多くの国々が加盟している。
②金融の自由化
もう1つの経済の自由化が、金融の自由化(正確には国際面での,金融の自由化)である。
一般に、同じ重量なら、農産物よりも工業製品の方が価格が高いので、輸出する(外国に売る)ときの利益の方が大きい。だから、科学技術が優れて工業が得意な国、たとえばアメリカや欧州のイギリスやドイツや日本などが、貿易により大きな利益を手に入れることができた。すなわち、金持ち国になることができた。
 しかし、おカネをたくさんもっているだけでは、さらにこのおカネを増やすことができない。誰かにあるいは他の企業や国に貸すことができれば、(おカネを貸してあげたことに対するお礼のおカネである)利子を稼ぐことができる。
 一方、おカネが足りずおカネを必要としている、個人や企業や国がある。おカネさえあれば、そのおカネで仕事を始めることができたり、仕事を大きくすることができるし、家を作ったり、道路や工場などを作ることもできる。
 このように、おカネが余っている方はこのおカネをさらに増やす機会を見つけたいと望むし、おカネを必要としている方はおカネを貸してくれる(借りる)相手を見つけたい。その両者を結び付けるのが、金融である。両者の間でおカネ(お金)を融通するので金融という。
おカネの余っている国からおカネを必要としている国へ、おカネが流れやすいようにするというのが、国際間における金融の自由化である。
③ヒトの移動の自由化と工場の移動の自由化
 仕事がなかったり賃金が低い地域(国であれば途上国=貧困国)に住んでいる人は、当然ながら仕事が豊富にあり賃金が高い地域(国であれば先進国=金持ち国)に移りたいと思うだろう。
 一方、先進国の会社の経営者は賃金が高い労働者を雇うよりも、賃金の低い労働者を雇いたい。コスト(費用)が安くなるからである。
この両者の願いをかなえる方法は、2つある。
 1つは、ヒトが低賃金の国(途上国)から高賃金の国(先進国)へ移動することである。
 もう1つは、先進国の工場を途上国に移すことである。いくつかの途上国は、自国の成長・発展を促すために先進国の工場を自国に誘致するように努めてきた。その結果、工場が先進国から途上国に盛んに移るようになった。
 しかし、注意しなくてはならないのは、このようなヒトの動きにしろ、工場の動きにしろ、一方で先進国では仕事を奪われる人が生まれる可能性があるということである。工場が国から流出する場合は、その工場に勤めていた労働者が仕事を失う。
④EUとASEAN
 EU(欧州連合)は、ヨーロッパの多くの国々が加盟し、これら加盟国の間で、モノ、カネ、ヒトの移動を自由にして、ヨーロッパ全体の経済力を上げようと仕組みである。
 EUの中でも、相対的に豊かな、ドイツ、フランス、イギリスのような国がある一方で、南欧(ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルのような地中海沿岸の国々)や東欧(ポーランド、ハンガリー、チェコなど)のような相対的に豊かでない国々に分かれる。
 ASEAN(アセアン。東南アジア諸国連合)は、東南アジア10各国が加盟し、加盟国間でモノの移動や工場の移動の自由化を進めようとする仕組みである。

2.先進国と途上国
 上の1で述べたことを踏まえると、途上国から先進国へ(またEUの中でも、相対的に豊かでない南欧や東欧から相対的に豊かなドイツ、フランス、イギリスへ)ヒトが流れ、先進国から途上国へ工場がどんどん移動する(ときには工場を作るためのおカネも)ことがお分かりいただけるだろう。
 そして途上国へ流入した工場は、途上国の低賃金労働力を利用して低価格工業製品を生産し、それを先進国に輸出するようになった。
この結果、途上国が成長・発展した国がある。その代表が中国である。

3.最近の世界経済
 以上のように、従来世界において経済が自由化する方向にあったが、最近その流れがよどみ始めている。イギリスのEU離脱や米中貿易戦争がその現れである。
①イギリスのEU離脱
 途上国から仕事を求めて移民(自分の意思で国を出る)が、また戦争などから自分の身を守るために国を出ざるをえない難民(外国へ移ることを強いられる)が欧州に流入した。
 EUのドイツなどは、低賃金労働力としてEU外部の国々から移民を受け入れてきた。またEU加盟国の間ではヒトの移動が自由なので、ギリシャやイタリアなどに流入した移民や難民は他の豊かな欧州の国々(ドイツ、フランス、イギリスなど)に移動しやすい。
 また欧州内の相対的に豊かでない南欧や東欧から、同じEU内の豊かな国々(ドイツ、フランス、イギリスなど)へ出稼ぎや移民として多くの人々が移動した。
 このようなヒトの移動は前述のようにプラスの面があるが、ヒトが多く流入した国では現地の労働者が仕事を奪われるという事態も発生した。
 そればかりではない。受け入れ国は、流入した移民などに対して、授業料を補助(一部のおカネを支援する)したり住宅家賃を補助したりした。
 しかし、このおカネは国民の税金からまかなうので、イギリスなどでは、自分たちは流入したヒトたちに仕事を奪われたのに、なぜ流入するヒトたちを優遇するのかという不満が高まった。
 イギリスがEUに加盟しているので、このようなイギリスへのヒトの流入が止まらず不満が高まる、ならば、イギリスはEUから離脱する方がましだというので、イギリスはEUから離脱しようとしているのでる。
②アメリカへの移民の流入
 アメリカにも、中南米から多くの移民が流入した(彼らの多くはスペイン語を話すのでヒスパニックと呼ばれる)。そして、彼らが、やはりアメリカの現地の低賃金労働者の仕事を奪うというのである。だから、これ以上移民を受け入れたくないという考え方がアメリカでも強くなった。
③米中貿易戦争
 また、前は低賃金であった中国の中に、日本やアメリカ、欧州などの企業が大挙として流入した。そして、中国で低賃金労働力を利用して安価な製品を多く生産し、中国はその低価格製品をアメリカや日本、欧州などに輸出しはじめ、その結果中国は巨大な経済大国になった。
 しかし、その製品が流入するアメリカでは、そのぶん自国の製品が売れなくなった。その結果、経営が悪化するアメリカ企業が現れ、失業者も増えたのである。
④トランプ政権
 アメリカのトランプ政権は、このようにアメリカに流入するヒト(移民)とアメリカに流入するモノ(特に中国からの低価格製品)によって、アメリカの白人労働者の仕事が奪われることに対する不満を受けて、誕生した政権である。この政権は、アメリカへの移民の流入と中国などからのモノの輸入を制限しようとしている。後者は米中貿易戦争(アメリカと中国が、互いに相手国からの輸入を制限しようとすることによる争い)の状態にまでなっている。

(以上は、9月22日の和洋女子大学オープンキャンパスに参加した高校生に対する20分間の講演の内容である。また同じ内容を今日23日の本学の「経済の仕組み」のオリエンテーションの授業でも話した)

⑤カネの移動の自由化による副作用
 その他にも、世界中をカネ(貸し借りのおカネ)が自由に盛んに移動することによって、借り入れが多くなってしまった国は累積債務(借金がたまること)の問題(ギリシャ危機も政府による欧州銀行からの過剰な借金の問題)に苦しむ(おカネを貸した方も、返してくれないとその分損するという不良債権の問題もある)。
 また、アメリカの貧困層(移民が多い)が、欧州や中国などからも借りたおカネで住宅を買って住宅バブル(住宅や土地の価格が上がり過ぎる)が発生し、その後崩壊したのが2008年のリーマンショックだった。

4.結論
 結局、戦後の、世界中をモノ、カネ、ヒト、工場が自由に移動するようになったことは、世界経済を活発にし、世界の経済規模を拡大することに貢献したが、最近その自由化が行き過ぎたために、副作用が目立つようになって、経済の自由化やグローバル化に反対する動きが目立つようになってきたということである。
 

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#トランプ政権  #米中貿易戦争
 

 



授業「アジア経済論」の概要-インド経済-

2019-01-27 22:41:04 | 経済
授業「アジア経済論」の概要
                              和洋女子大学国際学科教授・山下景秋

●1月24日の授業-インド経済-
(1)歴史
 第2次大戦後、南アジアはイギリスから独立した。その際、インドはヒンズー教徒が多くパキスタンはイスラム教徒が多いので、分離した国家として独立した。その後、パキスタンは、経済的・政治的優位にある西パキスタンと劣位にある東パキスタンの間の戦争により分裂し、東パキスタンはバングラデシュとなった。

(2)混合経済体制から経済自由化へ
 インドは独立当初、混合経済体制をとっていた。公的部門の比重大→貧困問題が深刻だったので経済を国家が管理→重要商品の価格統制、小企業保護、解雇の制限。また、外国企業の進出を規制。
 ところが、80年の湾岸戦争→石油価格↑→輸入額↑。またアラブ諸国へのインド人出稼ぎ者からの仕送り↓→石油輸入国・インドの経済↓
→(91年から)新経済政策の実施→経済開放、経済自由化→輸入の自由化、民間の経済活動の比重↑、外国企業の進出↑

(3)IT産業の隆盛
 インドの急成長を支えているのはIT産業である。
 もともとインドは、数学教育・コンピュータ教育が盛んでレベルが高い。
 また、英語ができるので、注文を受けやすい。しかも低賃金。政府や大学からの支援もある。
 90年代アメリカでIT革命→アメリカの大学院で学んだインド人による起業。
 2001年の同時多発テロ事件→アメリカが外国人へのビザ発給制限→インド人IT技術者の帰国→IT産業成長(ソフトの輸出)。また、ITを利用したアウトソ-シング(特定業務の受託サービス)↑→アメリカ企業が夜になったら仕事の続きを請け負う。
→中間層↑→住宅・自動車・電気製品の売り上げ↑→さらに経済成長。

(4)課題
①インフラ整備
②貧富の格差…ヒンズー教徒のカースト制度(職業・身分の世襲)、差別されるイスラム教徒、農村部の貧困。



授業「アジア経済論」の概要-東南アジア-

2019-01-27 00:32:57 | 経済
授業「アジア経済論」の概要
                      和洋女子大学国際学科教授・山下景秋

●1月10日・17日の授業-東南アジア経済

(1)東南アジアの発展過程
 東南アジアの発展が遅れた理由→①タイを除き欧米の植民地だった。②第2次大戦後の独立戦争(特にインドシナ戦争)による疲弊。③社会主義勢力の伸張と(ドミノ理論による)資本主義勢力によるその阻止→ベトナム戦争→ポルポト派による虐殺→カンボジア内戦
→国土の荒廃と人口激減。
④フィリピンやインドネシアなどにおける政府軍と反政府軍の対立→リスク高い。また、欧米・日本による経済支配を嫌がる→外国企業の進出困難。⑤一次産品輸出依存と輸入代替(製品の輸入を抑えて自給)政策→工業製品の輸出の必要なし。
 しかし、70年代のオイルショック→石油価格↑↑→石油を輸入する欧米・日本の経済↓→80年代、石油需要↓・一次産品需要↓→石油価格↓(逆オイルショック)・一次産品価格↓→(石油・農産物輸出依存の)東南アジアの輸出↓→タイやインドネシアなどの経済↓→経済転換の必要→(日本・台湾・韓国・中国の発展モデルを参考に)外国企業の進出を奨励。
【★オイルショックは、(米英が支援するイスラエルと対立する)アラブ諸国が発動したものだから、米国資本主義陣営に対する第3勢力(+資源主権)の台頭、またプラザ合意は米国資本主義陣営の中で伸長する日本経済を抑え込もうとした米国の思惑による】
 また、「日本→アジアNIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)→中国」の発展→賃金↑、さらにまた、(85年)プラザ合意→円高加速(+韓国ウォン高、台湾ドル高)→輸出困難
→対策として、日本とアジアNIES企業の工場が東南アジアに移転→工業化と製品輸出↑
 さらに、ベトナム戦争終結(75年。共産勢力勝利)、カンボジア内戦終結、インドネシアやフィリピンの反政府共産勢力↓→政治的安定・民主化(フィリピン86年・インドネシア05年)→企業進出のリスク↓、また中国の賃金↑→中国にある日本・アジアNIES ・中国の企業の多くの工場が東南アジア(東南アジアは親日的)に移る→特にインドネシア・ベトナム・フィリピンの工業化↑→成長。
 そしてASEAN(アセアン。東南アジア諸国連合)→加盟10カ国の間で貿易と投資の自由化を目指す、またインドシナ半島の東西・南北を結ぶ道路の完成→木材などの搬出↑、また賃金↑のタイから低賃金のカンボジアなどへ工場が移転→他の加盟国への輸出↑→成長。

(2)東南アジア各国の経済
①シンガポール(+香港)は貿易の中継港と貿易に関する金融で発展。
②タイは、米・砂糖・トウモロコシ・天然ゴム+ブロイラー・焼き鳥(日本へ輸出)など農産物(+加工品)の生産・輸出↑→財政収入↑、国内市場↑→輸入代替産業↑
ところが、80年代、石油価格↓、農産物価格↓→貿易赤字↑、農村不況→輸入代替産業↓→財政収入↓→外国企業の進出を奨励→日本・アジアNIES企業が進出→自動車・電機・電子製品の生産・輸出↑→最近は、自ら自動車・部品を生産→成長・発展。
③ マレーシアは、マレー人61%・中国人30%・インド人8%→農村に集中し貧しいマレー人支援政策→ブミプトラ政策。中国系資本に依存しない工業化のため→外国企業の奨励→(70年代から)輸出志向工業化、また隣国(賃金↑→)シンガポールからの工場移転→工業化
④ インドネシアは、人口2億4千万ぐらい(日本の2倍)、しかも平均年齢若い→生産能力↑、消費意欲↑。また、石油・天然ガス・石炭などエネルギー・鉱物資源、天然ゴム・コーヒーなどの生産・輸出豊富。日本(石油などを確保する目的など)・アメリカからの援助。
 石油依存型経済開発→しかし、石油輸出↑→通貨ルピア↑→工業製品の輸出困難→長い輸入代替工業化政策の時期→しかし、逆オイルショック→石油価格↓、プラザ合意→外国企業奨励→(繊維製品・合板・履物・家電など)製品輸出↑
⑤ベトナムは、ベトナム戦争終結→中国支配を嫌いソ連の援助に依存→しかしソ連経済↓→援助↓。(86年~)ドイモイ政策(→経済自由化)。カンボジア駐留ベトナム軍の撤退、ASEAN加盟、米国・中国との国交正常化→国際機関・欧米日本からの援助↑→外国企業の進出
⑥ミャンマーの民主化→アメリカの制裁終了→低賃金かつ識字率高い→日本がインフラ投資→日本企業などの進出→成長。

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授業「アジア経済論」の概要-中国経済-

2019-01-26 00:37:51 | 経済
授業「アジア経済論」の概要
           和洋女子大学国際学科教授・山下景秋

●11月29日~12月20日の授業-中国経済-
78年から改革開放へ。
 農村改革により人民公社弱体化→家族請負責任制の導入→農業生産↑、人民公社の解体→農村の余剰労働力を吸収して郷鎮企業が成長。国営企業から国有企業へ→ある程度の経営自主権を与える。
 79年「経済特区」設立、(85年の)プラザ合意後の円高による日本の輸出↓→その代わりアジアNIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)の輸出↑→中国への工場移転↑→外資系企業による輸出、94年からの人民元安政策、01年のWTO加盟→中国の輸出↑。輸出↑と公共投資・不動産投資・設備投資↑→成長
 08年のリーマンショック対策としての財政支出増と金融緩和により、公共投資↑、住宅投資↑→住宅バブル。また、人民元安政策もあり→インフレ→国民の不満↑→引き締め→住宅バブル崩壊→株バブルへ誘導→株バブル。
 住宅バブルの崩壊(壊滅ではなくバブルではなくなるという意味)→資金の返済↓→銀行の不良債権↑、理財商品投資の損↑→投資家の不満↑。
 賃金↑、人民元↑+リーマンショック、欧州経済危機+米中貿易戦争→輸出の伸び悩み。
 輸出伸び悩みの対策…①中国、日本など東アジア諸国の自由貿易を目指すRCEPに力を入れて輸出↑。
★RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership=東アジア地域包括的経済連携)とは、ASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)10か国と日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計16か国が合意をめざす自由貿易協定(FTA)。
②一帯一路構想。③賃金↑→内需(中国国内でモノを買ってくれる・売る)の拡大。
★一帯一路構想とは、中国の銀行AIIB(アジアインフラ投資銀行)を通じて、中国周辺の諸国(アジア、アフリカ、中南米)に資金を貸出→鉄道・道路・港・ダムなどのインフラ建設→中国企業が請け負う、中国人労働者を雇用、中国の余剰鉄鋼やセメントを使用
→中国の経済↑
 一帯一路構想による鉄道・道路・船舶により、中央アジアの石油・小麦、アフリカの鉱物・石油などの輸入↑→それを基に製品の生産↑→鉄道などを通じて、欧州やアジア諸国への輸出↑
 一帯一路構想の問題点…①借入諸国が借金を返済できない→中国が鉱山開発権や港湾使用権(スリランカでは軍用港化)などを取得→諸国の反発。②ビジネスと労働力を諸国に任せない不満。③中国国内貧困層の(外国優先に対する)不満↑。
 米中貿易戦争→輸出の伸び悩み→人民元↓→米中貿易戦争深刻化なら→(輸出↓→)ドルの獲得↓→中央銀行による人民元買い・ドル売り介入困難の可能性→人民元↓↓(人民元の暴落→通貨危機)→輸入価格↑→インフレ→輸出価格↑→輸出の伸び悩み(悪循環)。
 その他の問題点…①国有企業改革の遅れ→ゾンビ企業。②内陸部はまだ貧困→西部開発の必要。③環境問題(森林伐採→洪水・断流→水不足←地下水の涸渇。深刻な大気汚染、水汚染、ゴミ問題)。④政治家や官僚の汚職→国民の不満↑。
 
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