分散による新型コロナウィルスのリスクの軽減
和洋女子大学教員・山下景秋
1.リスクの問題における集中と分散
一般にリスクの大きな原因は集中にある。
リスク対応に関して、独裁制のような権力の集中にも問題がある(これについては別のブログで述べる予定)が、ダイヤモンドプリンセス号の新型コロナウィルスの感染拡大のように、空間的・時間的に人が集中することによってもリスクが高まる。
ダイヤモンドプリンセス号の問題の根源は、3700人もの乗客・乗員が1つの船に集中していたことにある。多数の乗客・乗員が1つの船に集中していると、接触の度合いが高まるので感染者から未感染者に感染する可能性が高まるし、このような多数を相手に防疫するには非常に多数の人員と装備を要するからである。(しかも、ダイヤモンド・プリンセス号の場合は、乗員が乗客に食事などのサービスを続けざるをえなかったが、感染症に関する多数の素人が人の接触を続けたことになる)
地上で、3700人を別々の組織に分散して収容する方が対処しやすい。感染症の素人ではなく専門家が対処できるし、収容者をコントロールしやすいからだ。(ただし、現実には、3700人を収容する施設は日本では不足していたのかもしれない)
空間的・時間的に人が集中することによって感染症のリスクが高まる顕著な例は、日本の満員電車である。人のこのような(電車や職場という空間における)集中を減らしてリスクを下げるためには、仕事を自宅で行うテレワークを実施したり、生徒・学生が学校に行くのではなくネットを使って自宅で勉学するという方法が有効である。また、時間的に人を分散させてリスクを下げるのが、時間差を設けて通勤・通学するという方法である。
2.病院の診察における集中と分散
中国の武漢で見られたように、感染者と未感染者が同一の病院に同一の時間に集中すると、未感染者が却ってそこで感染するというリスクが高まる。現在の日本でも、病院に多くの感染を疑う人が殺到すると、同じ問題が起こると懸念される。
そこで、病院は感染疑いの人を時間的・空間的に分散させることによりリスクを下げなくてはならない。すなわち、まず通常の診察時間とコロナ感染の疑いがある人を診察する時間帯を分け、次に後者の時間帯をさらに分けるのである。
もう少し具体的に言えば、通常の診察時間が終了した後にコロナ感染の疑いがある人を診察することとして、症状に応じて診察の時間帯を分けるのである。電話で聞き取った症状の程度に合わせ、軽症と思われる患者から症状の程度が重いと考えられる患者へ順番をつけ、その順に病院に来てもらう。すなわち、重症度が高まる患者ほど後の順番に回してはどうか。さまざまな症状の患者が(同一の場所に)同時に混在すると、コロナ感染の患者が未感染の患者にうつす可能性が高いと考えられるが、その場合よりも感染する可能性が低いと考えられるからである。またコロナ感染の疑いの高い人が先に病院にいるよりも、感染の疑いが低い人が先に病院にいた方が感染の可能性が低くなると考えられるからである。
さらに、診察を行う時間帯において単一の待合室に感染疑いの人がいるのではなく、(大きな病院であれば)病院内に複数の待合室と診察室を設けて患者を空間的に分散させる方が病院内感染の可能性を低めることができる。勿論費用がかさむことになるが、政府の強力な財政的支援が欠かせない。
3.その他
感染症の感染の原因として、人と人の接触以外に、電車のつり革やドアノブ、そして乗車カードや貨幣があると思われる。これらのものは、多くの人の使用が集中するから、ウィルスを伝染させるものとなる。
ならば、理屈としては、これらの使用を分散化させればよい。すなわち、現実的ではないが、自分用のつり革やドアノブを持参して、それを使用時に装着することができれば、この部分でのリスクを避けることができる。しかし、現実的には、手袋を持参してつり革やドアノブを使用すればよい。
また乗車カードを読み取り機に接する(多くの人が読み取り機を使用する) ことによって感染リスクが高まるので、カードと読み取り機の間をほんの少し開けて接触させないようにするのが感染を防ぐ1つの方法だが、そもそも読み取り機からカードが離れていても機能するカードが欲しい。
また、多くの人の手を次々移動する現金(多くの人が特定の貨幣を使用する)も感染の1つの原因になる。中国のように現金を消毒するのも1つの対策だし、接触不要のキャッシュレス化も必要である。
(現実的ではないのでおとぎ話として聞いてほしいが、もし深刻な感染が懸念される緊急時のみ、全国内で細分化された範囲の中だけで所有の現金を使えるようにし、他の範囲で現金を使う場合だけその範囲の中で使える新しい現金と交換するようにすれば[現金流通の分散化]、現金を通じる感染のリスクが下がるかもしれない)
#新型コロナウィルス #新型肺炎 #リスク
#coronavirus
#risk
和洋女子大学教員・山下景秋
1.リスクの問題における集中と分散
一般にリスクの大きな原因は集中にある。
リスク対応に関して、独裁制のような権力の集中にも問題がある(これについては別のブログで述べる予定)が、ダイヤモンドプリンセス号の新型コロナウィルスの感染拡大のように、空間的・時間的に人が集中することによってもリスクが高まる。
ダイヤモンドプリンセス号の問題の根源は、3700人もの乗客・乗員が1つの船に集中していたことにある。多数の乗客・乗員が1つの船に集中していると、接触の度合いが高まるので感染者から未感染者に感染する可能性が高まるし、このような多数を相手に防疫するには非常に多数の人員と装備を要するからである。(しかも、ダイヤモンド・プリンセス号の場合は、乗員が乗客に食事などのサービスを続けざるをえなかったが、感染症に関する多数の素人が人の接触を続けたことになる)
地上で、3700人を別々の組織に分散して収容する方が対処しやすい。感染症の素人ではなく専門家が対処できるし、収容者をコントロールしやすいからだ。(ただし、現実には、3700人を収容する施設は日本では不足していたのかもしれない)
空間的・時間的に人が集中することによって感染症のリスクが高まる顕著な例は、日本の満員電車である。人のこのような(電車や職場という空間における)集中を減らしてリスクを下げるためには、仕事を自宅で行うテレワークを実施したり、生徒・学生が学校に行くのではなくネットを使って自宅で勉学するという方法が有効である。また、時間的に人を分散させてリスクを下げるのが、時間差を設けて通勤・通学するという方法である。
2.病院の診察における集中と分散
中国の武漢で見られたように、感染者と未感染者が同一の病院に同一の時間に集中すると、未感染者が却ってそこで感染するというリスクが高まる。現在の日本でも、病院に多くの感染を疑う人が殺到すると、同じ問題が起こると懸念される。
そこで、病院は感染疑いの人を時間的・空間的に分散させることによりリスクを下げなくてはならない。すなわち、まず通常の診察時間とコロナ感染の疑いがある人を診察する時間帯を分け、次に後者の時間帯をさらに分けるのである。
もう少し具体的に言えば、通常の診察時間が終了した後にコロナ感染の疑いがある人を診察することとして、症状に応じて診察の時間帯を分けるのである。電話で聞き取った症状の程度に合わせ、軽症と思われる患者から症状の程度が重いと考えられる患者へ順番をつけ、その順に病院に来てもらう。すなわち、重症度が高まる患者ほど後の順番に回してはどうか。さまざまな症状の患者が(同一の場所に)同時に混在すると、コロナ感染の患者が未感染の患者にうつす可能性が高いと考えられるが、その場合よりも感染する可能性が低いと考えられるからである。またコロナ感染の疑いの高い人が先に病院にいるよりも、感染の疑いが低い人が先に病院にいた方が感染の可能性が低くなると考えられるからである。
さらに、診察を行う時間帯において単一の待合室に感染疑いの人がいるのではなく、(大きな病院であれば)病院内に複数の待合室と診察室を設けて患者を空間的に分散させる方が病院内感染の可能性を低めることができる。勿論費用がかさむことになるが、政府の強力な財政的支援が欠かせない。
3.その他
感染症の感染の原因として、人と人の接触以外に、電車のつり革やドアノブ、そして乗車カードや貨幣があると思われる。これらのものは、多くの人の使用が集中するから、ウィルスを伝染させるものとなる。
ならば、理屈としては、これらの使用を分散化させればよい。すなわち、現実的ではないが、自分用のつり革やドアノブを持参して、それを使用時に装着することができれば、この部分でのリスクを避けることができる。しかし、現実的には、手袋を持参してつり革やドアノブを使用すればよい。
また乗車カードを読み取り機に接する(多くの人が読み取り機を使用する) ことによって感染リスクが高まるので、カードと読み取り機の間をほんの少し開けて接触させないようにするのが感染を防ぐ1つの方法だが、そもそも読み取り機からカードが離れていても機能するカードが欲しい。
また、多くの人の手を次々移動する現金(多くの人が特定の貨幣を使用する)も感染の1つの原因になる。中国のように現金を消毒するのも1つの対策だし、接触不要のキャッシュレス化も必要である。
(現実的ではないのでおとぎ話として聞いてほしいが、もし深刻な感染が懸念される緊急時のみ、全国内で細分化された範囲の中だけで所有の現金を使えるようにし、他の範囲で現金を使う場合だけその範囲の中で使える新しい現金と交換するようにすれば[現金流通の分散化]、現金を通じる感染のリスクが下がるかもしれない)
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