古都、京都の川がおもしろい。30代で漁協の組合長になった澤さん。澤さんたち賀茂川漁協は鴨川に天然遡上のアユを戻そうと、市民と一体となった活動を始めている。組合長は若いほどいい?とも思ったのだった。
年間300万人が訪れるという京都鴨川。直線的な川の両岸には石積み護岸。川筋には落差工(段差)が築かれ、川は段々に流れている。このいかにも人工的な川に漁業協同組合がある。
下賀茂神社から下流の鴨川と、上流の賀茂川、高野川を漁区とする賀茂川漁業協同組合。一時は解散の危機にあったが、現在の組合員数は130名、5年前から澤健次(42)さんが組合長を務める。澤さんはアユなどの川魚を釣り、京都市内の料理屋に卸す川漁師だ。
京都には、鴨川流域の自然の恵みを豊かにし、活用していこうと市民、漁協、研究者が集まる「京の川の恵みを活かす会」というネットワークがある。その会の代表、京都大学の竹門康弘さんに頼まれてアユの産卵調査のお手伝いをしたときのことだ。
産卵場では、率先して川に潜り卵を探す。ふ化したアユを採取する夜間調査では、ネットで濾過したゴミの中から小さな仔魚を探し当てて、歓声をあげる。澤さんは当時まだ30代。組合長というとアユの放流などの式典に、長靴、背広姿で出席、とイメージしていた私にとって、澤さんとの出会いは新鮮だった。
漁協の参加する「活かす会」は、一般の方にも呼びかけ淀川大堰下流に滞留するアユを上流にくみ上げる。落差の大きな堰堤に、木製の仮設魚道を設置する。など、天然アユを鴨川に戻す取り組みをしている。6年前、「活かす会」の設立以前には桂川との合流部で止まっていたアユの遡上だが、現在は三条大橋まで上れるようになった。
天然アユの復活とともに、漁協が進めているのはアユのルアー釣りだ。「アユの友釣りは、始めるのには敷居が高い」と澤さん。市街地を流れる鴨川だからこそ、気軽に鮎釣りをはじめてもらえたらと、アユ用ルアーの普及に期待をかける。
流域の人々とともに天然アユの泳ぐ鴨川を取り戻す。古都で始まった新しい取り組みだ。
(魚類生態写真家)
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