27回目となったアユの産卵を見る会。今年も皆さんのおかげで大盛況のもと無事行うことができました。ボクたちがなぜ、アユの産卵にこだわり続けているのか?そのことを書いておきたかった。
撮影者 久津輪雅さん
繋ぐ命
今年27回目となる「アユの産卵を見る会」。アユが産卵する瞬間を「生」で観察してきた。会場は長良川、金華山の麓。そこからは道路を隔て、岐阜小学校が見える。今回、生徒40名余が初の参加となった。
まだ明るい日差しの中、子供らと参加者は、スクリーンを前に集まっている。右手、川の中程の瀬に岐阜大学の学生、市職員と河床の石を動かして、アユが産卵しやすい場所を造った。今そこには友人が潜り、カメラを構える。捉えた映像は無線で送り、岸辺のスクリーンに映し出される。
今年、10月に入って二つの台風。二個目の台風は観察会の一週間前に雨を伴って訪れた。前日に潜って確認するが産卵場にアユの姿は無い。みんなで準備した産卵場だが、水位が下がり続け、河床が安定せず、アユが集まらない。当日の朝まで、河床を調整する。
開始時刻となり、私はスクリーン横で説明を始めた。産卵するその瞬間を生で見ることができるのか、私自身にもわかってはいなかった。
日が傾いて、スクリーンの映像がくっきりとしてくる。小さなオスのアユが一尾と、やや大きなメスが3尾。アユの産卵は群れたオスアユのもとに、メスが訪れることが原則だ。出水でオスアユは下ってしまった可能性もある。不安を隠し、解説をする。ちらと、画面の隅にオスの集団が見えた。私は産卵時刻の予告をした。「4時47分」太陽がビルの影にかくれ、残照が映えマジックアワーが訪れる。水中は一気に暗くなり、アユは塊となって産卵した。
長良川のアユは岐阜市内で生まれる。それを岐阜の人に知って欲しい。そう願った一人の女性の発案から「アユの産卵を見る会」は始まった。彼女は私の伴侶となり、40歳を目前に夭逝、長良川河畔に眠る。
アユはこの場所で産卵して一年の寿命を終え、次の命を繋ぐ。その瞬間を見た子供らの歓声は、きっと彼女に届いたと思うのだ。
来年はというか、あと三年はやるつもりだけど、30回でボクの部は終了したいと思っています。
次はたぶん、誰かが別の形ででも行うことになると思います。
お祭りはいつかは終わるモノですから。