巣鴨駅の思い出 2008-2019

2020-04-30 | 野良サイン
「野良サイン」の存在を意識しはじめたのが2008年で、当時「野良サインを探しに行く」という目的で最初に出向いた先が、巣鴨駅でした。

「高齢者が多そう」という漠然としたイメージから、きっと客層に沿ったかたちの野良サインが見られるのではないか……という期待があって、それで行きました。



山手線で移動して巣鴨駅で下車。ホームから階段をのぼった先を見渡すと、早速というか期待通りというか巨大な貼り紙が。でかい〜〜!

巣鴨駅(JR)・2008年12月
横断幕状のでかい野良サイン

巣鴨駅は「JR山手線」と「都営地下鉄三田線」の2つの路線が交わる駅なので、乗り換え関連の情報のニーズは高そう


巣鴨駅(JR)・2008年12月
「大人の休日倶楽部」の広告も手作り横断幕!


野良サインたちに誘われるようにして、都営三田線の方へ降りていく。
こちらも期待を裏切らない野良サインの数々でした……。


巣鴨駅(都営交通)・2008年12月
公式サインの文字サイズと比べると何十倍あるんだろう……というでかさ

当初想定していた「とげぬき地蔵」関連の案内よりも、「入口」「三田線はこちら」「きっぷ売り場」という内容の掲示がとても目立っていた。この駅には「出口専用の改札口」というのがあって、そのせいか「入口」への誘導が強めになされているみたいだった。

勘亭流のフォントが多用されていているが、色はほとんどが白黒で少し落ち着いた雰囲気でもある。


この三田線のほうの野良サインたちがなんだかとても印象的だったので、その後も巣鴨近辺を通るたびに駅の様子を見に立ち寄りました。



巣鴨駅(都営交通)・2013年4月
公式サインは新しくなったが、「この先/入口」の白黒野良サインは健在


巣鴨駅(都営交通)・2013年7月
……と思ったら、あたらしい貼り紙に差し替えられてしまった

2013年4月〜7月のあいだに白黒の野良サインから、緑色の野良サインに差し替わっていました。作り手の方が変わったような感じもします。

背景の緑色はオフィシャルのサインデザインに倣ったものなのかな。あと今回はラミネート加工もされていて耐久性が高くなりました。掲示場所がドアなので以前のものは破けたりもしていましたが、改善が図られた感じ。
 
巣鴨駅(都営交通)・2019年5月
まだありました

出口専用改札の周辺はこんな感じ。

巣鴨駅(都営交通)・2009年11月

巣鴨駅(都営交通)・2019年05月

タイル壁の「出口専用」は退色しつつも健在。

そして右側の柱には新たな小さめの貼り紙も。勘亭流スタイルのものではなくなり、前任者の不在をますます感じさせます。すこし寂しい。




巣鴨駅(都営交通)・2008年12月

一番最初に見に行った日のA3出口。駅名標の前にどんと柱が立っていて文字が隠れてしまっているこの状況も、サインシステムが本来意図した姿ではないという点で野良サインと言えるのでは……?とか思いながら撮りました。

こういうものも含めてしまうといよいよ定義がしづらくなる感じはありますが、そこは今も曖昧ですね……。

「線」だけ足す

2020-04-29 | 野良サイン
「野良サイン」というとなにかしらの文字情報や図版を書き起こして掲示したもの、みたいなイメージが真っ先に浮かぶのだが、そうでないものもある。

例えば、既にある案内表示に対してなにかを「つけたし」しただけもの。

つけたし系のなかでも、「文字」でも「図版」でもなく、「線」を足すだけという手法をまれに見かける。

八王子駅・2011年1月
赤いテープで重要っぽい情報がハイライトされている

「京王線」「エレベーター」等の情報の周辺に赤いビニールテープを貼ってハイライトさせている例。赤色の注意喚起感も相まって「ここを見て!」と叫んでいるような見た目だが、とにかく手数が少なく済んでいる。やっつけ感……ともとれるが、高コスト・パフォーマンスとも言える。

1枚目の「京王線」、写真でみるとなんだか画像を加工して赤い線を引いたみたいに見えてしまう……。




高田馬場駅・2015年10月
3色のテープを使い分けている

八王子駅のミニマルな対処に反して、手がかかっているように見えるのが高田馬場駅の事例。カラフルでかわいい!……のですが、文字やピクトグラムの部分だけでなく、筐体の輪郭をなぞるようにフチ部分にまでテープが貼られていてちょっと異様。サインをつくる側の人やもじ鉄(鉄道のサインシステムを愛でるファンのことです)趣味の人や見たら卒倒しそう。

この場所はJRの改札の中で、
  • ←左 「出口(改札外に東西線)
  • ↑直進 「西武線のりかえ改札」
という、2方向に分岐している地点。

のりかえ専用改札というのは往々にして混乱が生まれやすい場所で、野良・公式問わず案内表示が多くなりがち。ここでは3色のテープで線を引いて目立たせようと試みていいる。
  • [黄] 西武線のカラー
  • [ピンク] 単に目立つ色として選んだ感じでしょうか……
  • [青] 東京メトロ東西線のカラー
テープが貼られる前のサインデザインがJR東日本の旧世代のフォーマットなので、今はもうベースのサインごと新しいものに差し替えられているかもしれません。現状がどうなっているのか、書いているうちに気になってきました……。



最後は、これまで紹介した「ハイライトするための線」とは違って、「区切りのための線」。



新橋駅・2010年12月
グリーンのテープを「区切り線」として追加

「どこまでが『出口4』に属する情報かわかりづらい」という声が上がったのでしょうか……。余白だけで情報を分けて見せることの難しさを感じる。


新橋駅・2016年8月

その後サイン自体が更新されていたのだが、そこにまた新しくテープが貼られてしまっていた。

新橋駅ではもう「出口サインにはテープを貼って境界を明示する」というのがローカルルールになっているのかもしれない。でも前より粘着力が弱そうなテープを使ってるようにも見え、サインへの配慮を感じる……。

仮囲いにめり込んでいるサイン

2020-04-26 | 野良サイン
もともと設置されているオフィシャルのサインの一部が工事の影響で、仮囲いの中に隠れてしまう、というケースに時々遭遇します。


大手町駅・2016年

壁と丸ノ内線に挟まれてしまった状態の半蔵門線。ぎゅっとなっていてかわいい……。


日本橋駅・2015年

「都営浅草線」と書かれた部分がほぼ埋まっていて、ピンクの「○」の左側しか見えなくなっちゃっています。
ここでは、埋もれてしまった内容を仮囲いの面に貼り付けている。本来のサイズの半分くらいに縮小されていて、理由は不明だがかわいい。

もともとあったサインを写真に撮ってプリントアウトして貼る手法、これはこれでなんだか好きなんですよね……。


日本橋駅・2015年

裏側はこんな感じでした。 Distance...



本郷三丁目駅のつけたし周辺施設案内サイン

2020-04-26 | 野良サイン
駅の出口付近には、「周辺にある施設の一覧」みたいなものがよく掲示されている。

それ自体は、鉄道会社が決めた「オフィシャルなフォーマットのサイン」であることが多いのだけど、そこに追加情報を入れてみたり、あるいは施設の変更(新設や閉鎖、名称の変更など)に対応するためにシールで上書きしたりする、ということもまた多く見かける。こういう付け足しされた状態のものも「野良サイン」と呼んでいます。

本郷三丁目駅・2008年
シールの数もすごいし、地図だけでも3つもある

サインシステムに基づいて作られた、フォーマットの整ったサインを見るのが好きだったので、このサインに初めて会ったときの第一印象は「あ、営団地下鉄のサインが残ってる。レア〜」というものだった。次の瞬間には、おびただしい量のシールや貼り紙による「つけたし」に視線が移った。あー、せっかくの営団サインを……なんてことを……と思った。当時は。


本郷三丁目駅・2010年
地図と路線図が取り外され、左下の広い余白部分が見えるようになった。

2年後に立ち寄ってみたら、貼り紙(地図)がいくつか取り外されていて、なんだか少しスッキリしていた。
スッキリ……とは言っても、テプラやビーポップでつくられたシールはまだいっぱい貼られているし、本来の営団サインの姿には程遠い。その中途半端な原状復帰のせいか、なんだか賑やかさが失われたような感じがしてしまい、どこか寂しい……。


本郷三丁目駅・2010年
今はもう無いです

見た目の一貫性が全くないし、利用客視点だと困惑すら生みそうなごちゃごちゃ感だけれども、駅員の方が施してきたさまざまな「対処」の積み重ねがこの狭い空間のなかに密集していてそのまま可視化されている、と思うとなんだかすごみが出てくるような気がする。

いま目の前に
  • 「本郷三丁目駅の周辺施設一覧サイン(新品未使用)」
  • 「本郷三丁目駅の周辺施設一覧サイン(駅員による付け足しあり)」
の2つを出され、どちらか1つだけを貰えるとしたら間違いなく後者、もっと言えば2008年時点の状態のものが欲しいですね……。