[在宅・野良サイン探索]東京メトロ 茅場町駅 その2

2020-07-31 | 野良サイン以外
「その1」では茅場町駅のなかをストリートビューで散歩して野良サインを集めまくりました。今回の「その2」では、野良サインを探す中で気になった「野良サイン以外」のいろいろをふりかえっていきます。


駅員が立っているところ

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自動改札のすぐ横の駅員が立つための空間。(名前なんていうんですか……?)

こじんまりとしていて、地下空間の構造と独立して存在している感じがかわいいですね。駅売店っぽいというか、小屋っぽいというか……。

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外向きにはパンフレット類や野良サインなどが、内向きには業務に使用するさまざまなものが狭い中にぎゅっと詰まっていてなんだか良い。上半分は仕切りなど無くオープンになっていながらも、上に屋根っぽい構造物がついているのもかわいいです。

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「その1」でも紹介した改札横の「インフォメーション」空間。こっちは事務室っぽいタイプ。

トラテープや養生など

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トラテープで何かを塞いでいる様子。その上には「定期券うりば」サインがガムテで覆うようなかたちで封印されていますね……。

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床のシートの固定に

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ホームのタイルのところにも

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階段のはじっこなどに

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でっかく覆われているなにか

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白いテープがぐしゃぐしゃになってる柱


いい線

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あ!

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ゴムホースだ!

ニョローッとのびてホームの下に垂れていますね。作業中でしょうか。

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あ!

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水漏れ対策だ!

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チューブに高低差がつくように天井からの吊るしの高さを調節しています。そんなにごちゃごちゃしていなくて、きれいな処理。


深夜ならでは


駅の中のストリートビューはだいたい終電後〜始発前の時間帯に撮影されていることが多いみたいです。例えば、散歩をしているとメンテナンスに従事されている人びとに遭遇したりします。

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こんばんはー!

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人だけでなく、無造作に放置された物もよく写ってますね。

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あと深夜ならではのものといえばシャッターもそうですね。

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工事中のマーキングの様子

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床の柱が突き刺さっている部分の周辺に青い線がいっぱい。
リニューアル工事に先立って、調査用に引かれたマークでしょうか……?

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ウワーッ!
かなり全面的にマーキングがなされていてびっくりしてしまった。

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こういうのは一般人には読み解けない記法が使われるイメージがなんとなくあって、ここでも線や色の使い分けのルールは不明なのですが、突然「埋設物の可能性有り」と誰がどう見ても意味のわかる文章が登場したので意外〜と思った。

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この壁とかタイルとかってけっこうきれいで良い見た目なのに、がっつりマジックで書き込みがなされいるとちょっとウッとなってしまいますね。いずれ壊されるものではあるのですが……。

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リニューアル工事完了後の様子を横に並べて見てみたくなる……。

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この改装工事真っ只中のタイミングでストリートビューの撮影のスケジュール入れたのちょっと面白いなって思いました。



やっぱり楽しい

ストリートビュー散歩、駅構内をくまなく、かつ人目を一切意識せずに観察できるのはとても楽しいですね。終電後にしか見れない光景もある意味レア。

今回、実際の散歩に近づけるために写真をバシバシ撮れる環境を用意したのも大きかったかもしれません。これについては別記事で書こうと思います。

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全部この人が見た景色なんだよな

[在宅・野良サイン探索]東京メトロ 茅場町駅 その1

2020-07-31 | 野良サイン


以前、Googleストリートビューで大阪の本町駅に行って野良サインを探す、という記事を書きました。


この記事の投稿直後に数駅だけさらにバーチャル野良サイン探訪をしにいったのですが、そのうちのひとつである東京メトロ「茅場町駅」で見つけたいろいろを共有したいと思います。

なぜ茅場町駅か

端的に言うと、「ビーポップ」のメーカーであるマックス株式会社の本社に近い駅だから……です。


お膝元駅であればビーポップが大活躍しておりビーポップ・サインが大量に見られるのでは……?という浅はかな想像から茅場町に行ってみることにしました。それ以上の理由は特にないです。

じつは去年、茅場町駅で乗り換えたことが一度あったのですがその時にビーポップ・サインがいくつか掲示されているのを発見していて、「もしかしたらめっちゃいっぱいあるのでは……?」と思っていたのです。

というわけで、2018年頃にGoogleが撮影した茅場町駅の様子を見に行ってみましょう。

※ 画像をクリックすると「Gyazo」の画像ページが開きます。そこにGoogleストリートビューへのリンクも張ってあります。

ビーポップのサインを集めまくる

ストリートビュー上で駅構内をうろうろしてビーポップっぽいサインをとにかく集めます。

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階段の横の柱に……

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改行もある長い文章をこうやって組んでいる例はあんまり見たことがない気がする。

ビーポップではないけど、右下の「お手洗い」の矢印の曲げ方もすごい。切り貼り!

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近くに似たようなやつがあった!

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「インフォメーション」……!(インフォメーション……)

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高めの位置に「自動改札機をご利用ください」という、今となっては形骸化している呼びかけ。歴史を感じる。

その下の「精算機」は透明のシートに印字されている。

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緑色のオフィシャル寄りな「定期券うりば→」に並んで、青色で「定期券うりば→」と反復。より大きな文字で、より高い位置に掲示されている。

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エスカレーターの運転時間の案内。工事の影響でなのか、元々あった場所から剥がされて再度貼り付けられたように見える。野良サインなのに使いまわされていて、なんだかすごい。ふつうの手作りの張り紙よりも、もっと恒久的に掲示する前提で扱われているのかもしれない。

インクリボンを2色(赤・青)で切り替えて印字しているのもいい。良い見た目。

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出口への案内。

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階段の蹴込み部分にも。

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ビーポップをさがせ!(難易度:★☆☆☆☆)

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矢印の中に文字というタイプ。良い。

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1行で長く印字する、スタンダードな使い方。

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壁に対して垂直に表示面がくるように工夫してある立体構造物。



発見できたビーポップ・サインはこれで全部。めちゃくちゃ多い、というほどでもないけど期待していたくらいの数あるな〜という感じでした。

床タイルに埋めこまれた文字

せっかく散策モードになっているので、ビーポップ以外のサイン類も観察してみましょう。

まず気になったのがこの床に埋まっている文字。

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この「連絡通路」、書体ベースのものではなさそうな独特な造形の文字で気になる。

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真上から撮った風のアングルで。そんなには似てないけど、私は「公団ゴシック」のことを想起しました。

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東西線ホームでも似たようにタイルに埋めこまれた「日比谷線」の文字を発見。これは何箇所かに埋まっていました。

日比谷線ホームにも、リニューアル前までは「東西線」の文字が埋まっていたのでしょうか……。

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非常に見えづらいのですが、ほぼ消えてしまったものも……。

インディーズ路線図・手書き地図

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オフィシャルの日比谷線の路線図を模してつくられた、横長の手作り路線図。

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お知らせ用ホワイトボードに書かれた地上のマップ。筆跡がかわいい……!

早朝・深夜にだけ登場するサイン

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改札口が終電よりも早く閉まるとか、始発より遅く開くみたいな場合がある。Googleストリートビューの駅のなかでの撮影は終電後に行われることが多いみたいなので、こうした早朝・深夜限定の野良サインを捉えてくれる。

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写真のスティッチングがうまくいってなくてグシャーッとなってしまっているが、かなり古そうなサインですね。
 
Image from Gyazo

  Image from Gyazo

上半分は営団地下鉄時代のオフィシャルのサインを流用したものでしょうか。別のサインと合体していてトラテープで額装されているような状態。

いい手書き文字

Image from Gyazo

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妙にかっこいい手書き文字。最近リニューアルされた雰囲気の場所だが、この文字はもっと随分前からここにあるような感じ。大事にされている、とも思えるし、テープでがっつり固定されている感じは雑……とも言える。今も健在なのかどうか気になるし見に行ってみたい。


仮囲いにめり込んでいるサイン

Image from Gyazo

Image from Gyazo

仮囲いに隠れている部分の情報の補足は特になく、めり込みっぱなしという感じだ。



床に貼られたテープ

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3車線!?

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手前から出口に向かって伸びる青いラインと、券売機の待機列用とおもわれるオレンジのライン、色分けしてあって良い。

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整列乗車用のサイン。柱を避けて台形状に。

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柱を避けてより複雑な形状に……。

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狭くなった通路で左側通行をしめす表示。





つづく

茅場町駅の野良サインはまだまだもっといっぱいあるのですが、全部を載せようとするときりがないのでこのへんで終わりにします。

記事タイトルに「その1」と付けましたが、「その2」では野良サイン以外で見つけたものを紹介しています。

「太子楼」と「燕」の思い出

2020-07-30 | 野良サイン以外
杭州料理屋「太子楼」と出会ったのは2013年11月のこと。

お昼に近所を散歩しているときに、ランチメニューの書かれた黒板を見つけ、その文字の美しさに驚いた。


2013年11月
初めて黒板と出会ったときの文字。
どこをとってもすごいのだが、特に「麻婆豆腐」の「麻」の字のかっこよさにやられた

何度か通ったことのある道ではあったのでそれまでも視界には入っていたのだと思うが、全く見えていなかった。

それから日々、週に1・2回程度店に行っては看板の写真を撮り、ごはんをたべて帰る、ということが習慣になった。


2014年4月
「太子楼」店頭の様子。黒板は結構大きい

このかっこいい文字たちが、誰にも記録しないままどんどん消されてしまうなんて勿体ない。記録しておく必要がある、という勝手に湧いてきた使命感から日々記録を続けた。

2013年12月
色の切り替え方が謎かっこいい。レイアウトもきれいですね……。

店に通うようになって、この黒板の文字を書いているのはいつもレジや配膳をしてくれるマスター(店主のおじいさん)だということがわかった。マスターは中国から日本に渡ってきたそうだが、書道に関する特別な技能はべつに持っていないという。が、十分に特別な技能と言える字をあたりまえのように書く。しかもチョークで。


2014年6月
「あんかけやきそば」の躍動感、すごくないですか……


当時、太子楼画像まとめサイトとして作成したTumblr。網羅的ではないがそれなりの数の画像を置いた

2015年5月、漫画同人誌即売会「コミティア」にはじめてサークル参加し、太子楼でみてきた文字をまとめた冊子『太子楼五體字類』を頒布した。漫画ではなく、情報・評論系の島での出展だ。

どうして紙媒体としてまとめようと思ったのか、明確な契機についてはもうよく覚えていない。日々SNSに「#きょうの太子楼」というハッシュタグで画像を投稿していたが、その中で「もっとちゃんとかたちに残しておきたい」と考えるようになったのだと思う。

そもそも本のかたちをしたものを作る事自体が初めてのことだったし、いろんな不安があった。マスター本人には2015年の3月か4月ごろ、試作品の段階のものを見せて「こういう本を自費で作ろうと思っているんです……」とおそるおそる切り出した記憶がある。歓迎してくれて、とても安心した。


2015年4月
『太子楼五體字類』製作中の様子。文字の選定作業をPC上でいい感じにやる方法がわからず
印刷したものを床にひろげ、紙にバシバシ貼っていた……


『太子楼五體字類』本文部分


2015年5月
COMITIA112出展時の様子

コミティア(2015年5月5日)が終了した。連休が開けたらすぐにマスターに渡しに行こうと思って、毎日『太子楼五體字類』の入った封筒を携行していたが、太子楼のシャッターは連休以降も降りたまま、「臨時休業」の張り紙が掲示され続けていた。


2015年5月

2015年5月25日、『太子楼』はその後営業を再開することなく別の中華料理屋になってしまった。

経過は毎日見ていた。シャッターが開いて店内でなにか作業をしているのを見たり、看板が取り外されるのをみて「もしかして改装するのかな」とおもっていた。が、全く見覚えのない店名に変わった。

新店舗の開店当日、レジに立っていた見たことのない人に話を聞くと「前の店とは関係がない」ということだった。困った。マスターにそもそも会えすらしない状態になってしまった。


2015年5月
居抜きで入った中華料理屋
その後さらに別の中華料理屋「パンダ」に替わり、こちらは2020年7月現在も営業中

以前、マスターから「原宿に姉妹店がある」と聞いたことがあった。手渡されたショップカードには「東京茶楼 燕」と書いてあった。どうやらご家族が経営されているみたいだったので、行けばなにかわかるかもしれない……。

2015年5月30日、「燕」に行くことができた。


「燕(えん)・東京茶楼」にて・2015年5月

マスターもそこで店番をしていた。『太子楼五體字類』をようやくマスターに手渡すことができた。
何十年かぶりに再会したみたいな気持ちになり、思わず握手をした。(実際は1か月半くらいぶりなのですが……)

いろいろ話をしているうちに「この店のメニュー要る?」と提案されてしまった。お言葉に甘えていただくことにしたところ、マスターは店内メニューの冊子を1部手に取り、コピーとるからコンビニ行こう、と言い一緒に行くことになった。

近所のファミリーマートについて行き、コピー機でメニューのコピーをとってくれるのを横で見守る。なんなんだこの状況。再会できただけでもうれしいのにこんなことあるのか。


ファミリーマート表参道中央店のコピー機で「燕」のメニューを複製してくれたマスター

マスターはその後も「燕」で店番をされていて、さらに「燕」のランチタイムでも黒板が店頭に出るようになった。この黒板はたぶん、かつて太子楼で使われていたものだと思う。近くを通った際はぜひ見てみてほしい。

2020年1月に訪問したときはマスターは入院されていたそうでご不在だった。その後わたしはまだ行けてないのですが、そろそろタイミングを見計らって行っておきたいところだ……。元気にしてるかなー。



ここ最近、『太子楼五體字類』の販売をあんまりしていなかったのですが、自宅から在庫がけっこう出てきたので「マルシェル」で販売してみます。まだお持ちでない方はこの機会にいかがでしょうか。


駅でよく見かける謎のでかいシール・謎の丸ゴシック体

2020-07-28 | 野良サイン
駅でよく見かけるが、駅以外ではあまり見ない謎の書体、というのがある。

新宿駅・2019年11月

でかいハートの上にある、これのことです。



「テプラ」を巨大化したみたいなシールとこの丸ゴシックの書体のセット、駅でサインとして使われているところをよく見かけるのです。


とにかくいっぱいある


新宿駅・2018年2月

同じく新宿駅で。文字が縦に長くなっているが、多分これも同じ書体……。

このシールに注目して過去に撮った野良サイン画像を掘り返してみると、本当にいっぱい出てくる。


新宿駅・2019年10月


西国分寺駅・2016年11月

市ケ谷駅・2019年9月


青山一丁目駅・2015年8月


秋葉原駅・2008年12月


目白駅・2015年12月


末広町駅・2009年9月


末広町駅・2009年9月

角ゴシックもある

「帯状のテープの幅いっぱいに文字が印字されたシール」の写真を探していると、丸ゴシック体の文字だけでなく角ゴシック体の文字もたまにある。これも似たような雰囲気を感じるので同じマシンで刷られているのかもしれない……。

高田馬場駅・2019年10月

上野御徒町駅・2014年4月


外苑前駅・2015年8月

一体なんなの→検索→発見

DTPで使用されるような一般的な書体にはない、どことなく不思議な雰囲気があるこの丸ゴシック体。かたちが不自然というか、クオリティがあまり高くないような……。

そもそもこの「テプラ」をでっかくしたみたいなシールはなんなのか。そういう機械があるのだろうか。テプラにはこんなにでかいシールを印刷できる機種はなさそうだしほかのメーカーだろうか。業務用かなにかかな。この書体も、このシールマシンに搭載されているものなのか……。

この未知のシールマシンのことが気になり、Google検索でちょっと検索してみるが見つからない、ということを何度も繰り返してきて、10年近く経ってしまった。

そろそろ正体を知りたい……!と思い、改めて本気出してGoogle検索をすることにしたのが2019年夏。

検索キーワードを少しずつ替えて懸命に画像検索を続ける。が全然それらしいものがヒットしない。

検索チャレンジを開始して数時間、なんとなく「例のテープ」はカートリッジとして販売されているのではないか?という仮定から、その商品ページを探しだすことはできないだろうか……と思った。

そのアプローチで検索バーに入れたキーワードが [シール  巻  100mm  プリンタ] というものだった。



ヒットした画像を見ていると……おや……??というものが。







なんだか例の丸ゴシックぽい……!!!

型番らしきものが出ているのでこれを検索してみます。


右の「5Sの徹底」の画像をみて声が出てしまいました。例の丸ゴシック体だ!それにしても、なんて現場みのある利用例なのでしょう……。これはやはり業務用だったのですね。

長年気になっていたシールメーカーの正体はどうやら、事務用品メーカー・マックスが「サインプリンタ」として販売している機器「ビーポップ」だったようです。


入手


マックス PM-100(USED)

これはぜひ手元に1台持っておきたい……(何のために?) という気持ちでいっぱいになってしまったがかなりのお値段。でもほしい……(なぜ?)。

いつか富豪になったら新品で買います……などと言いながら今回は中古市場で入手してしまいました。(※インクリボン・ラベルシールは一般流通されているものを定価購入しました。許してください)

PM-100はパソコンにUSB接続して印刷するタイプの機種でした。専用のアプリケーションを使用して印字内容を作成できるのですが、これに付属しているのがTrueTypeフォント「MAX太丸ゴシック体」「MAX太角ゴシック体」。すなわち例の書体の正体でした。



駅以外でも見えるようになってきた

ビーポップの実機に触れて以降、駅でビーポップ・サインの存在に気づきやすくなってきた。というか、駅以外で使われているところにも遭遇するようになった。

「カッティング機能をつかって文字のかたちにシートを切り取ることができる機種」の存在を知ったということもあるだろう。とにかく以前よりもあきらかに「見える」ようになってきた。一体なんなんだこの能力は……。

小岩・2019年12月


小岩・2019年12月


駒込・2020年3月


船堀・2020年7月

鹿浜・2020年2月



付記

この記事は、2020/5/30にYouTubeで配信された「文字の話をしよう #1」にゲスト出演した際のトーク内容をベースに書きました。

ビーポップ以外にも野良サインや、高島屋とタミヤの制定書体についての話などをしています。是非あわせてご覧ください!


付記2

この記事で紹介したビーポップ・サインも含め、これまでに見つけた事例をたくさん載せた同人誌『えきなか まちなか ビーポップ』を発行しました。
(購入情報などは、↑のリンク先をご覧ください)



出世サイン(前世が野良サインの公式サイン)

2020-07-27 | 野良サイン
中野坂上駅・2019年10月
公式っぽい書式の「途中階から階段になります」

都営大江戸線・中野坂上駅の改札階にこんなサインが掲示されている。ホームに降りていくためのエスカレーターがあるのだが、エスカレーターは途中で終わってしまいそこから先は階段しかない、ということを図示している。階段の昇降を避けたい人にとっては罠のような構造だ。

実はこのサイン、以前は野良サインとして掲示されていたものだった。

中野坂上駅・2018年10月
野良サイン時代の「途中階から階段になります!!」

「公式化」前後で見比べると、文言の「!!」がなくなったり、見た目部分の細かい調整はされているが、大まかなレイアウト・テキスト内容・図の構造は完全に一致している。

こうした「出世」に気づくと、野良サインの存在が肯定されている感じがしてなんだかうれしくなる。野良サインが単なるワークアラウンドのまま終わるのではなく、サインシステム側のアップデートに繋げられているようにも思えて、なんとなく希望を感じる。



上野駅・2016年8月
方面ごとに改札口が異なるタイプの駅なので、改札外にこういう案内がある


銀座線・上野駅のサイン。柵に取り付けているあたりに野良っぽさがあるものの、平面的な見た目は東京メトロのオフィシャルのフォーマットになっている。
これも前世は野良サインだった。

上野駅・2009年9月
ビーポップの明朝体で書かれた「浅草/田原町/稲荷町」

公式化の前後で記載内容はだいぶ整理されているが、「浅草方面に行きたい人はこちらへ」という趣旨と柵本体は変わっていない。おそらくこの野良サインがなければ、上の公式サインは生まれなかっただろう……。




新橋駅・2012年
ホーム柱の注意喚起サイン

東京メトロの公式のサインらしい書体・配色だが、これも以前は野良サインだった。


新橋駅・2009年9月
ホーム柱に掲示されたビーポップの文字 (撮影者:JTC

文言や改行位置が、原作である野良サイン時代のものに忠実につくられている。
公式化にあたって、「足元にご注意ください」の行がより強調され、より適切にメッセージが伝わる様になったように見える。



自分が見た範囲で思い出せる出世サインはこの3種類だけなのですが、おそらく実際にはもっとたくさんの事例があるだろうし、多分そのほとんどには気づけていないと思う。

こうした事例に気づくためには定点観測的に同じ場所に何度も行くこと、「なんてことのない野良サイン」も記録していくことが必要なのですが、なかなか難しいですね……。