何も知らずに「救出」の日はやって来た。当日の朝、DBはいつも同じく「気合と根性の欠如」について私をこき下ろし、意気揚々と朝礼を終えた。「来週から寺で修行に臨め!」と命じただけでなく「明日から6時には出勤して遅れを取り返せ!」とも命じたのだ。私は、言い返す気力も無く茫然自失で打ちのめされているだけで、抜け殻の様に仕事に向かおうとしていた。その時である。部長が、青ざめ顔つきで走り込んで来るのと同時に、I氏とO先生がやって来て私の肩に手をかけた。DBは不審な表情で小走りで部長と共に室外へ出ていった。それを確認したI 氏と O先生は「私物をまとめて帰る支度をして、保健室へ来て下さい」と私に告げた。「今からですか?」と私が問い返すと「もう苦しむ必要は無い。お前は病院へ行かなくてはならない。何の病気かを明らかにするんだ。治療が必要なんだよ!仕事の事は全て忘れて治療に専念するんだ。これは、所長命令なんだ。誰にも気兼ねは要らないんだ。」I氏は決然と言い、こう付け加えた。「今から所長命令で彼を帰宅させる。何人たりとも止める事はまかりならぬ!また、これから先の事について、口を挟む事も許さない!関わりは一切無用とする!」寸暇を置かず、私は保健室へ連れて行かれ O先生から全てを明かされた。「もう、誰もあなたに手出しはさせません。安心して病院へ行き、何の病気なのかを明らかにするのです。紹介状は用意してありますし、有給で休んで構わないのです。DBの事は心配いりません。」I氏も「後は考えなくていい。これからは自分に報告してくれれば、話しは通るから。携帯に電話をかけてくれ。」と言い携帯番号を教えてくれたのだ。「正門まではガードが付い行くから、早々に帰宅して構わん。いや、一刻も早く帰るんだ。これから起こる事は知らない方がいい。」足下から羽根が生えたかの様に、そそくさと退散させられた私は、言われるがままに自宅へ帰った。紹介状と共に渡された書面には、事業所長命令で「3週間の休暇を命ずる。以後、特段の事情が無い限り自宅待機とする。」と書かれていた。今後については、I氏を窓口として随時決定する旨が付記されていた。ようやく、DBの魔手から逃れる事が出来たと思うと、心の底から湧き上がった感情を抑えきれずに、ただただ涙が溢れ出た。
一方、DBは釈明に終始するハメに陥り、私を「取り上げられたのは、不当だ!」と怒り狂ったそうである。部長や事業部長と共に、これまでの「不当行為」について事業所長から説明を求められたものの、アヤフヤな答弁しか出来ずに「自ら首を絞める」場面ばかりで、周囲からもドン引きされただけでなく「上司としての資質」を疑われたのだと言う。まあ、当然のことと言えばそれまでだが、DBの評価は地に堕ちただけでなく、部長や事業部長までもが「監督責任」を問われた上に、処罰の対象とされてしまったと言う。みっちりとアブラを絞られ、意気消沈で帰って見ると私は「保護」されて帰宅した後だ。「ヤツは何処へ行った!」狂った様に問うと同僚から「連れ去られました」の返事。「俺の部下を連れ去ったのは誰だ?!」「事業所長だよ、DB」I氏が現れ、保護に至った経緯と今後の処置について語り出すと、DBは狂気を宿した目で睨みながら激しく噛み付いたと言う。「ヤツは俺の手で公正させる!そのための修行の手配もしてある!ヤツを返せ!」「そうした非論理的思考は棄てるんだDB!これ以上彼に関わるな!これは会社としての命令だ。違背は許さない!さっきから説明されて来たなら分かるだろう。アンタは彼の人生を狂わせた。責任を取れ!」I氏は決然と言い捨てて立ち去り、DBの反論を聞かなかったと言う。ただ、狂気じみた喚きは暫く続いていたと言う。こうして私は「治療への道」にたどり着いた。だが、医師から告げられた病気の症状は「思いも寄らないもの」になるとは、まだ知らなかった。
一方、DBは釈明に終始するハメに陥り、私を「取り上げられたのは、不当だ!」と怒り狂ったそうである。部長や事業部長と共に、これまでの「不当行為」について事業所長から説明を求められたものの、アヤフヤな答弁しか出来ずに「自ら首を絞める」場面ばかりで、周囲からもドン引きされただけでなく「上司としての資質」を疑われたのだと言う。まあ、当然のことと言えばそれまでだが、DBの評価は地に堕ちただけでなく、部長や事業部長までもが「監督責任」を問われた上に、処罰の対象とされてしまったと言う。みっちりとアブラを絞られ、意気消沈で帰って見ると私は「保護」されて帰宅した後だ。「ヤツは何処へ行った!」狂った様に問うと同僚から「連れ去られました」の返事。「俺の部下を連れ去ったのは誰だ?!」「事業所長だよ、DB」I氏が現れ、保護に至った経緯と今後の処置について語り出すと、DBは狂気を宿した目で睨みながら激しく噛み付いたと言う。「ヤツは俺の手で公正させる!そのための修行の手配もしてある!ヤツを返せ!」「そうした非論理的思考は棄てるんだDB!これ以上彼に関わるな!これは会社としての命令だ。違背は許さない!さっきから説明されて来たなら分かるだろう。アンタは彼の人生を狂わせた。責任を取れ!」I氏は決然と言い捨てて立ち去り、DBの反論を聞かなかったと言う。ただ、狂気じみた喚きは暫く続いていたと言う。こうして私は「治療への道」にたどり着いた。だが、医師から告げられた病気の症状は「思いも寄らないもの」になるとは、まだ知らなかった。