梅雨が明けた1週間後、“向陽祭”の幕が開く日になった。昨年同様に、空は晴れ渡り“灼熱地獄”の元での開催となった。僕等の“総合案内兼駐車場係”の本部も昨年同様に昇降口の奥に設営され、無線機と仮設内線の前には山本と脇坂の両名が陣取った。少し奥まった場所に“責任者”の椅子があり、僕はそこを“根城”に指示を送る事になった。両脇には、さちと西岡の椅子があり、西岡の隣には上田が座った。彼女には“全てを見聞きして置く”使命があった。来年は、上田が僕の代わりに“責任者”となり、全てを取り仕切るのだ。僕も含めて、上田達3期生と4期生の教育については“最重要課題”として位置付けがなされており、さちと西岡も時間を割いて教育に当たる事になっていた。昨年と違う点は、“精鋭部隊”が集められており、事実上の“原田後の新体制”を形作る人材が集っている事だった。長官と僕が、4月の段階から上田達に命じてかき集めた“次期主力部隊”で構成された係員達を任務を“隠れ蓑”にして、徹底して鍛えるのが今年の目的であった。“太祖(1期生)の世に復する”ための第1段階とも言える事だが、“新閣僚人事”の“内定”も既定路線で進める必要があった。既に、上田の“副会長”や山本と脇坂の“入閣”は決定しているが、石川や本橋をどのポジションに就けるか?などは、適性を見極めてから“内示”する事になっていた。係としての任務に加えて、“人事案”までを決めなくてはならないのだから、僕もピリピリとしていた。「Y、おはよう!今年も宜しくな!」坂野、飯田、今野、小松、宮崎、吉川の6名がやって来た。昨年、A班として苦労を共にした戦士達だ。「おう、今年も頼むよ!我々の背中を後輩達に見せつけてやってくれ!」6人それぞれと握手を交わす。「やっぱり、ここはお前さんが居ないと締まらないな!留年して来年に備えたらどうだ?」坂野が冗談を言う。「無茶を振るなよ!僕は留まるつもりは無いぞ!」と笑い飛ばすと、ピリピリしていた空気が和んだ。「いいか!“陣頭指揮”は認めんぞ!原田からも“Yを外へ出すな!”とくどい位に言いつけられてるんだ!くれぐれも“責任者”の椅子から離れるなよ!」宮崎が先制攻撃をかけて来た。「やれやれ、今年も“監視付き”かよ!」とボヤくと「当たり前だろう?!そうしないと指揮系統に乱れが出る。真面目な話、昨年よりも厳しくなる事は目に見えてるし、万が一に備えるのは“責任者”の義務だ!それをやってのけられるのは、お前しか居ないんだから腹を括れ!」と飯田も言う。「OK、分かったよ。外へは出ないし、“陣頭指揮”も執らない。僕の代わりに後輩達を指導してくれ!恐らく、来場者は昨年の倍になるだろう。酷なことも命ずるかも知れないが宜しく頼んだぞ!」僕は頭を下げた。「だーかーらー!それがダメなんだよ!司令官が部下に頭を下げちゃいかん!俺達は、Yの元で最後の戦いに臨む事を誇りに思って来てるんだぜ!どんな命令でも遠慮無く言い付けろ!たとえ火の中水の中!縦横無尽に戦う覚悟は出来てる!お前は司令官として、毅然とした態度を後継者に見せつけろ!どう足掻いたって、来年は俺達は手出し出来ないんだ。伝えることはお互いに精一杯伝えればいい!」と坂野が言う。「そうだな。大きな“遺産”を残さなきゃならないな。精一杯伝えようじゃないか!僕等のスピリッツを!」6人が黙して頷いた。2期生として“最後の戦い”に臨む戦士達に言葉はいらなかった様だ。「さて、今年の陣形と各メンバーを再確認しよう!Y、最終のメンバー表をくれないか?」宮崎が言い出した。「多少の修正が入っているから、そこを見逃すな!要は、“クローズ作業”を如何にしてスムーズに進めるか?だよ。警備部門との連携も含めてな!」僕はメンバーの一覧表とシフト表を配布した。「了解だ!無線機も出してくれ。準備が良ければテストコールから始めよう!どの道、正門へ行かなきゃならんからな!」飯田が早速準備にかかる。「脇坂、通信回線を開けろ!テストコールから始めよう!チャンネルは19にセット!」僕が命ずると「了解、回線オープン!チャンネル19番にセットします!」と脇坂が復唱した。振り返ると、上田が早速ノートに筆を走らせていた。「いよいよ始まる!全てを見聞きして体に叩き込め!」「はい!」上田の追撃も始まった。「参謀長、8時15分になりました!各隊の集結は順調です!」山本が点呼の状況を知らせて来る。「よし!遠藤を呼べ!」第1陣の指揮官である遠藤を僕は招集した。「坂野、準備が整ったら正門へ!」「了解だ!俺達は先に出るぞ!」坂野達は、正門へ展開するべく出発して行った。「参謀長、第1陣女子軍の集結は完了しました!」遠藤が進み出た。「無線機を受け取って、テストコールから始めろ!化粧は抜かりないな?」「はい、いつでもOKです!」遠藤は涼しい顔で答える。「山本、8時30分になったら、全員を整列させろ!戦場になるぞ!」「了解です!30分になったら、参謀長の前に整列しろ!係員の集合が遅れているクラスは速やかに出頭させろ!」山本が係員に告げて回る。「さち、西岡、始めるぞ!」2人は頷いた。本部前は出陣に向けて慌ただしく動き出した。「始まったな。もう止められんぞ!ここからはノンストップだ!」上田も眼を合わせて頷いた。最後の“向陽祭”の幕は切って落とされた。
形通りの¨訓示¨を述べて、遠藤が率いる女子隊を配置に向かわせると、内線が鳴った。「参謀長、会長からです」脇坂が受話器を向けて来る。オープンマイクのキーを叩いてから「原田、おはよう」と言うと「よし、よし、坂野と宮崎の言う事を聞いたな!まずは、一つ懸念が消えたよ」とホッとした声が聞こえた。「それだけじゃないだろう?問題は何だ?」僕が切り返すと「警備員に欠員が出てる!池野と市野沢のクラスだ!そちらから人を回せるか?」「相変わらずやってくれるな!あの¨陰険禿¨どもは!足りない人数は?」「当面4人だ!何とか手を貸してくれ!」「よし、飯田隊から4名を振り向ける!だが、2時間以内に戻してくれ!こっちも戦場になるのは分かるだろう?」「ああ、分かってる。だが、あの2人に反旗を翻されたままと言う訳には行かない!¨プラン1¨を発動してくれないか?」「早くも発動とはな。¨悪い予感は良く当たる¨と言うが、校長の¨金字牌¨を手に入れて正解だったな!いいだろう。¨プラン1¨を発動する!ついでに悪いが、佐久先生も寄越してくれ!¨陰険禿¨達に背負い投げをお見舞いしたいんでね!」「了解だ。直ぐに向かわせるよ!」そう言って原田は内線を切った。「石川、3名を連れて警備の応援に向かえ!無線機のチャンネルは14番だ。脇坂、坂野を呼び出せ。正門前の状況を知りたい」「はい、坂野先輩、応答願います」「参謀長、では、行って来ます!」石川が引き締まった顔で言う。「2時間経過するか、欠員が到着したら直ぐに戻れ!お前達には、山ほどの¨課題¨が待ってる。ウカウカしている暇は無いぞ!」「分かってます。なるべく早くケリを付けて下さい!では行きます!」石川達は走って現場へ急いだ。「参謀長、正門前ですが、既に15台の車が待機しているそうです。坂野先輩、宮崎先輩以外は、校庭に集結中です。開門時間を早められないか?と言ってます!」時計の針は8時40分を指していた。開門予定は、8時50分だから余り渋滞させると事故の危険性が高まる恐れが見えた。「脇坂、坂野に伝達!8時45分を持って開門させろ!遠藤達には¨奥から詰めろ¨と命じろ!山本、第2陣を至急召集!本部前に整列させろ!」「はい!」2人の声が重なる。僕は、内線を取ると原田を呼び出した。「正門前が渋滞し始めてる。開門時間を5分繰り上げるぞ!」「了解、Y、予想以上に出足が早いな。戦場になるぞ!」「手は打つよ!昇降口は、9時になるまで開けないから、残り15分で立て直してくれ!」「爆竹を忘れるな!破裂音を合図に、全系統が動き出す。15分あれば間に合うだろう。池野と市野沢も片付けられるさ!」「佐久先生が来た。後はお任せだ!」僕は受話器を置くと¨金字牌¨をブレザーの懐から取り出して、先生に渡した。合掌してから、更に拝礼をすると恭しく¨金字牌¨を手にする。「池野と市野沢か!不埒者めが!Y、ごちゃごちゃ言って来ても相手にするな!¨親父¨が書いたからには、誰も逆らえんのだ!まずは、俺が一発お見舞いしてやる!お前達も仕掛けはあるんだろう?」佐久先生は沸騰して言う。「はい、当該クラスを蜂起させますよ!叛いたからには、それなりの報いは受けてもらいます!」僕はさりげなく言う。「蜂起か!いいだろう、思う通りにやれ!背信したのは、アイツらだ!校長に逆らうとどうなるか?を思い知らせてやれ!」佐久先生は、東校舎へ向かった。「脇坂、内線を放送室へ回せ!」「はい、どうぞ」僕は受話器を手にすると、オープンマイクに切り替える。「滝、悪いが至急“WE WILL ROCK YOU”を全校に流してくれ!特に1年4組と6組のスピーカーは全開でな!」と言った。「何があった?」「池野と市野沢が役員の出し惜しみをしてる!1年生に蜂起を促すのさ!」「あの“陰険禿”達を懲らしめるのか?まあ、そりゃあいいが、お前さんの責任問題になるぞ!」と滝は言う。「心配は無用だ!こっちには“校長の金字牌”がある!“彼の命令は、我が命令と心得よ”って一筆書いてもらってあるんだ。“陰険禿”を追い返す力はあるさ!」「了解、それならいい。思いっきり流してやるか!待ってろ!1分以内にやってやる!」僕は受話器を置くと「1年生!クラスに戻って蜂起の準備にかかれ!4組と6組をジャックして、警備要員を連れ出せ!」と命じた。「ズンズンチャ!ズンズンチャ!」“WE WILL ROCK YOU”独特の出だしが流れ出した。「手の空いている者は、曲に合わせて騒げ!」僕が命ずる間もなく合唱が始まった。“WE WILL WE WILL ROCK YOU”を連呼して拳を振り上げる。曲としては短い部類に入るので、滝が巧みにリピートを入れてくれる。1年生達は、教室へ戻ると仲間と共に4組と6組の教室へ雪崩れ込んで「警備要員を出せ!」と騒いだ。池野と市野沢の両担任は、佐久先生の十八番である背負い投げを喰らって、したたかに腰を床に打ち付けられた挙句、乱入してきた生徒達に踏みつけられた。2人は悲鳴をあげて警備要員を出してから、ヨレヨレになって教室から逃走した。暫くすると、脱兎の様に走って行く1年生4名が本部前を駆け抜けた。「脇坂、放送室へ連絡!8時55分を持って“WE WILL ROCK YOU”を停止。通常のBGMへ切り替えさせろ!」「了解!」脇坂は内線を取った。しばらくすると、脱兎の如く走り去った生徒の後を追う様に腰を擦りながら池野と市野沢が来た。「Y!貴様どう言う魂胆だ!」「教師を舐めると、どうなるか?を思い・・・」と言う2人の鼻先に僕は¨金字牌¨を突き付ける。「ゲ!まっ、まさかお前もか?」絶句する2人に“水戸黄門の印籠”の様に書状を開くと「私の言葉や指示は、校長の言葉や指示ですよ!従えぬなら謹慎してもらいますよ!」と鋭く視線を合わせた。池野と市野沢は返す言葉すら失って、うなだれた。「山本、脇坂、ビーニールの紐とガムテープで後ろ手に縛り上げてから、眼と口も塞げ!そして、階段下の物置小屋へ放り込め!鍵はプールにでも投げ込んで置け!」僕は吐き捨てる様に命じた。「では、失礼します」2人は言われた通りに池野と市野沢を監禁した。「Y、8時55分よ!」さちが時計を指して言う。BGMも“グランドオープン”に備えて爽やかな曲に替わった。「本橋、爆竹点火用意!」「はい!」電子ライターを手に本橋は中庭へ出た。「さち、カウントダウン。西岡、上田、グランドオープンだ。配置に付け」僕は随員を伴って昇降口の前に出た。「3、2、1、点火!」午前9時きっかりに爆竹が轟いた。「お待たせ致しました。¨向陽祭¨グランドオープンでございます!いらっしゃいませ!」西岡が淀み無く開会を宣言した。「総員戦闘体制を取れ!戦場になるぞ!」僕は無線機で全員に告げた。2日半に渡る死闘の始まりだった。
出だしは多少の混雑があったが、30分もすると落ち着き出した。「脇坂、坂野に伝達!遠藤隊を引き上げさせろ!スタートは切り抜けたから、もう良いだろ。スペースが足りなくなったら、¨拡張プラン¨を実行しても構わないと言って置け!」「はい、その件は坂野先輩から報告が入っています。現在、約半数が埋まっていますが落ち着いているそうです。“山場”は午後になるだろうとの事です!」「よし、9時55分を持って坂野隊は撤収!以後シフト表に従って随時後続隊を送り込め。山本、そっちは任せるぞ!」「はい!」2人が合唱した。「さち、遠藤達が引き上げて来たら、水分補給と化粧直しを見てやってくれ」「あーい。その後は、ずっと“コンシェルジュ”だよね?」「そうだ、西岡は空き時間に“人事案”を検討し始めてくれ。大変だろうが宜しく頼む」「心得ました。まず、男子連中から手を付けます」と言うと西岡は動き出した。「参謀長、これで一先ずは安心ですか?」上田が聞いて来る。「坂野は“午後”だと言っていたが、山場は恐らくこれから。11時前後に来るだろう!そして、次の山が13時前後に来る!今は“嵐の前の静けさ”に過ぎない。聞いて置きたい事があるなら、今の内に済ませてくれ!」「はい、ではお聞きします。何故“金字牌”を2通も用意されたのですか?」「池野と市野沢の“陰険禿”達が叛くのは察知してたからさ。最終の役員・職員打合せ会議の席上、原田が“警備員の増員”を要請した時に、明らかに不服そうな顔をしてたからな。会議が終わってから、原田に“陰険禿2匹が不満げにしてたぞ!”と耳打ちしたら“何か封じ込める手は無いか?”と問われて“校長に一筆書かせればいい!後は、佐久先生の手を借りれば事足りる”と言って、校長に要請させたのさ。“金字で校長印も押印して下さい”って言わせてな。校長も“金字牌”と言えば岳飛だ。だが、君を秦檜にはさせぬ!これは、私の勅命だ。私に成り代わって事を進めよ“と言ったぐらいだから、校長も抜かり無く見てたらしい。まあ、来年もあの2匹には気を付ける必要があるって事だよ!」「あのー、”岳飛“と”秦檜“ってどう言う例えなんですか?」上田はこめかみを押さえつつ言う。「南宋の始まりと金との対外関係について、掘り下げて学習して見ろ!苦手なのは分かるが、教科書の表面だけが全てでは無い。自分で調べた歴史や故事は忘れないものだ。校長クラスを相手に渡り合うには、この手の話に着いて行けなくては困るんだ!どうしても分からなきゃ”補習“を組んでやるが、その代わり手抜きはするつもりは無いぞ!」「はーい、分からない例えは別のノートに書き写してあるんです!参謀長、”補習“をお願いします!」「夏期講習の時に付き合ってやる!他には?」「これなんですが、¨禿げ禿げと、チョーク投げ合う宴かな¨と¨全斗煥、ビール飲んだら戸塚宏¨って、どう言う事です?」「誰に聞いた!」「西岡先輩ですが?」「ちっ!西岡のヤツ口が軽すぎる!佳奈、今直ぐに消し去れ!他人に見られたり聞かれるとマズイ事になる!」僕は上田をたしなめた。「何故です?なんか面白そうな裏があるんですが?」「職員の宴席での出来事を捻って詠んだヤツだから、我々生徒が知り得ない事なんだよ!知った以上は仕方ないが、公式の記録からは抹消しろ!今、直ぐにだ!」僕は慌てて消させ様としたが、1歩遅かった!上田のノートがつまみ上げられたのだ!「フッ!は、は、は、は!コイツは傑作だ!Y、お前達はあらゆる面で才能があるし、抜かりが無い!池野と市野沢は何処だ?」佐久先生が涙目になって笑い転げた。「階段下の物置小屋に監禁してありますよ!多少暴れてますが」僕は佐久先生からノートを取り返すと階段を指した。「よし、¨親父¨の命令で¨向陽祭に出すに及ばず!官舎に閉じ込めろ!¨と言われて来た。連行するから鍵を貸せ!」佐久先生は大型の台車を持って来ていた。鍵を渡すと、¨陰険禿¨2匹がじたばたと暴れている。「さて、大人しくさせるか!」と言うと頸動脈を軽く締めた。たちまち2匹はぐったりとする。「大丈夫、¨落ちた¨だけだ。しかし、お前達も容赦無しだな!普通はここまでやらんぞ!」と先生は呆れて言う。「学校行事に協力しないんですから、当然の報いですよ!」僕は一蹴で片付けた。「さっきの句もそうだが、お前達は¨大胆不敵¨であると同時に、必ず¨観察¨を怠らない。何があっても切り抜ける¨手¨を用意しているな。こうした事は、必ず引き継いで置けよ!¨正しい遺産¨はキチント残して行け!まあ、お前達と同等とは行かんだろうがな!」佐久先生は台車を押しながら言う。僕は静かに頷いた。後ろ姿を見ながら「佳奈、分かっただろう?理解のある佐久先生だから、笑い事で済んだが教職員全員がそうとは限らない!誰なら¨味方になってくれるか?¨普段から見定めるのが大切だ!¨モニタリング¨を怠るな!」「はーい!次はいつ抱っこしてくれます?」急に佳奈が小声で聞いて来る。「この、あまちゃんが!当分先だ!」と軽く拳を頭に乗せると彼女は、ペロリと舌を出す。でも「なるべく早くね!」と注文も忘れなかった。佳奈との関係を他人に知られるのは勿論、西岡との関係も知られるのは、避けなくてはならない。今のところは心配は無いが、何れにしても¨薄氷を踏んで進む¨様なものだ。僕は深呼吸をすると椅子に座り直した。「参謀長!坂野先輩からです!緊急事態の模様!」脇坂が平和な空気を切り裂いた。「坂野、何があった?」僕は直接交信に割り込んだ。「Y、校庭が満車になった!俺の予想では、こうなるのは午後イチと踏んでいた。¨拡張プラン2¨を発動していいか?」坂野の声は微かに震えていた。「いいだろう!と言うか、車が溢れてるんだろう?否応なしにやらなきゃダメだ!後、30分だけ踏ん張れ!そうすれば、校庭に隙間が出来るはず。¨拡張プラン2¨の並びに切り替えれば、校庭の収容台数も2割増しになる。今は車道の端を使って凌いでいい!」「了解だ!Yは予測してたのか?」「昼前に最初の山が来るとは踏んでた。だが、同時に引きも来ると踏んでた。だから、30分だけ踏ん張れば、午後イチに備えられると思った。今日は¨拡張プラン2¨で凌げるが、問題は明日の展開だよ!戻ってから検討しよう!」「了解!¨拡張プラン2¨の発動を確認してから戻る。交信終了」「山本、総来場者数は分かるか?」「はい、既に昨年のピーク時に達しています!午後になれば更に増えるでしょう!」「脇坂、会長に¨昨年のピークを越えた¨と伝えて置け!こちらは¨手一杯だ¨ともな!」「分かりました!」脇坂は原田に内線を繋いだ。「Y、明日は具体的にどうするつもりだ?」坂野達が戻って来て言う。「¨拡張プラン3¨を発動するしかあるまい。校庭の東側へ駐車場スペースを広げる!同時に、車間を詰めて面積を稼ぐ!シフト表の最後の方のページだよ。会長も承認をしてるしな」「これか!かなり思い切りがいいが、人手が足りなくならないか?」飯田が懸念を示す。「その為にわざわざ¨予備班¨を編成してあるんだ!明日は、投入出来るありったけの人員を出すさ!班編成は、こうするつもりだよ!」僕は、新たな編成表を差し出した。「なるほど、この手がありか!サブリーダーを校庭に置いて、誘導を担わせる訳か。だが、これでもギリギリだろう?」宮崎も言う。「確かにそうだが、1日中満杯とは限らない。ギリギリだが回せる範囲に収めるしか無いんだ!最悪は、正門の前まで使えばいい!要は¨出入り¨に支障が無ければいいんだ!」僕は坂野達を説得する様に言った。「まあ、そうだな。最悪は回避できるとは思うが、今年の出足を見る限り、ある程度の想定は必要性があるな。Yがここまで腹を括ってるなら、俺達も出来る限りの働きはしなきゃならない!おい!確認に行こう!最大限度を見定めるぞ!」坂野達は、図面を手に立ち上がった。「ボトルを持って行け。確認が取れたら休んで¨クローズ作業¨に備えてくれ!」僕は、6人にボトルを手渡すと、休憩する様に言った。「ちょっとだけ出て来るぜ!後は、俺達なりに¨作戦¨を考えてみる。Yにばかり¨おんぶに抱っこ¨って訳にも行くまい。お前さんには、他にも思案しなきゃならない事は山の様にあるんだし!」宮崎が返して来る。「頼んだぞ!現場は、そっちで回してもらわなきゃならないからな」6人の戦士達は、軽く拳を挙げると灼熱の空の下へ向かった。「アイツらが居るから、安心してこっちは動ける。佳奈、アイツらの様に¨信の置ける者¨を探して置けよ!」「はい!信頼関係の構築も含めてですね?」「分かって来たらしいな」僕と上田は笑って戦士達を見送った。
坂野達が再度引き上げて来た頃、来場者の出入りも一応の落ち着きを取り戻した。“山場”は1つクリアした事になる。「参謀長、“メディカルチェック”のお時間です!保健室へどうぞ!」西岡が恭しく言う。「なんだ?そんな話は聞いてないぞ!」僕が色を成すと「校長からの“極秘命令”が出てるの!あなたの体調管理のためよ!」と丸山先生が本部席の前に仁王立ちしている。知らぬは自分だけの様だった。「あー!外堀を埋めたな!聞いてないぞ!」通用しないと分かっていてもボヤキは口を突いて出る。「Y、後は任せて休憩して来な!」さちも釘を打って来る。「あたしも居ますし、上田も見てますからご心配なく!」西岡にも追い打ちを喰らった僕は、肩を竦めると保健室へ連行された。丸山先生は、保健室へ僕を連れ込むと個室へ入れた。「ベッドに横になって居なさい」と言うと厳重に鍵をかけた。背筋に冷たいモノが流れた。彼女は¨年下趣味がある¨と聞いた事があったからだ!「まずは、血圧と体温からね!」と言うと、僕にシャツを脱ぐ様に促す。上半身が裸になると、馬乗りになり唇を重ねて来た。「さあ、坊や。大人の身体を教えてあ、げ、る、わ!待ってなさい!」もどかしげにノースリーブを脱ぎ、ブラを外すとふくよかな乳房に僕の手を導いた。着痩せするのだろうか?弾力がありつつも柔らかい。「どう?触り心地いいでしょう?次は熱いところをかき回して!」パンストとスキャンティを片足に残して、僕の手を下へ持って行く。熱く湿り気を纏っている下半身をかき回してやると、直ぐにぐちゃぐちゃになり、あえぎ始める。「坊や、突いてちょうだい!早く!」ズボンとトランクスを大急ぎで脱がせると、彼女は僕に股がり激しく腰を使い始める。佳奈よりも絡み付く感触がずっと強い!下から突き上げてやると、あえぎ声が高まった。「どう?いいでしょう?もっと激しく突いてちょうだい!」彼女は、気も狂わんばかりに声をあげてねだる。僕は後ろに回ると、腰を思い切り動かしてやる。あえぎ声が更に高まり、彼女は¨教職¨に在る事すら吹き飛ばした。「中よ!中に!出して!」白い体液を余すこと無く注ぐと、ぐったりと横たわり余韻に浸る。「合格よ。坊や、もっと出来るわね?」先生が1度で満足するはずが無い。2回戦は¨前から¨脚をM字に開かせて始まった。突く度に絡み付く感触に病みつきになりながら、ひたすらに腰を使い突いてやる。目の前に居るのは¨ただの女性¨に成り下がった¨丸山恵美子¨その人だった。一際声が高まると、抱き付いて来て唇をかさねる。「今度は、あたしが動いてあげる!」上下逆転すると、恵美子は激しく腰を使いあえぎ声も激しくなった。「気持ちいい!出して!もう1度よ!」一際絡み付く感触が強まると、僕は我慢の限界を越えて白い体液を中に注いだ。痙攣しながら恵美子が抱き付いて来る。体液を指先ですくうと1滴も余さずに味わう。「あなたが最後の獲物よ。あたし、ずっと狙ってたの。これで思い残す事は無くなったわ。坊や、あ、い、し、て、る!」恵美子はまた唇を重ねて来た。両手で乳房を握るとピクピクと痙攣し始める。「ダメー!もっ、漏れちゃう!」乳首をクリクリと刺激すると、腰がガクガクと震え始める。「出しなよ!」と言って更に熱い穴を触ると「ダメー!出るー!」と叫ぶと、飛沫が飛び散る。僕の腕もびしょびしょになった。「また、したくなっちゃたじゃないー!」恵美子は、また僕に股がり腰を思い切り動かしてあえぎ悶えた。何のための¨メディカルチェック¨なのか?もはや分からなかった。3回戦を終えると、恵美子は丁寧に僕の身体を拭いてくれた。そして、1学期を以て¨退職する¨と言った。秋にはウェディングドレスを着ると言う。「あなたを最後に抱けて良かったわ!あなたが、もう5年早く生まれてたら、逃さなかったけどね!」丸山先生に戻って、僕の身体を調べながら耳元で囁く。「お相手は、年下ですか?」と言うと恥ずかしそうに頷いた。「¨最後の生徒¨に選ばれたのは、光栄ですよ」「そう?あなたは変わってるわね。襲われて¨光栄だ¨なんて初めてよ!何処かで、あたしの事意識したなー!」先生は拳を頭に乗せる。「教師と生徒。ありがちな事でしょ?」「ふむ、あたし残ろうかな?あなたの事を待っているのもありかもね!」「いずれにしても、解放して下さい。余り留守にも出来ませんから」僕が時計を見ながら言うと「あっ!ごめん!疑われたらマズイよね!」と言って保健室の鍵を開けた。本部は何事も無かった様に動いていた。「調子がいいからと言って、無理はダメよ!去年の¨二の舞¨になりたく無かったら、あたしの言う事も聞きなさい!」わざと聞こえる様に言って、保健室から送り出してくれる。「参謀長、目下、異常ありません!」上田が報告をした。「よし、次は午後イチが山だ!」保健室の方向で丸山先生が笑顔で手を振る。実際、彼女は1学期を以て¨退職¨して、家庭に入った。今頃は、孫に囲まれて居るだろう。「参謀長、¨山¨が来た様です!今野先輩が¨キャパを越えるかも知れない¨と言ってます!」脇坂の声が少し上ずって居る。「今野に伝達!¨1cmも無駄にするな!そうすれば、その分3台は余裕で止められる¨とな」「はい、今野先輩!応答願います」「さて、最難関を突破するか!」他人事の様に僕が言うと、張りつめた空気が微かに和んだ。「これからが¨本番¨だ!本橋、爆竹を用意しろ!景気よく爆発させろ!」「了解、さち先輩、カウントをお願いします!」「12時キッカリに打ち上げよ!OK、後、1分よ」「盛大に打ち上げろ!まだまだ先は長いんだ!」爆竹の轟音が轟いた。初日はやっと折り返し地点を過ぎたばかりだった。
形通りの¨訓示¨を述べて、遠藤が率いる女子隊を配置に向かわせると、内線が鳴った。「参謀長、会長からです」脇坂が受話器を向けて来る。オープンマイクのキーを叩いてから「原田、おはよう」と言うと「よし、よし、坂野と宮崎の言う事を聞いたな!まずは、一つ懸念が消えたよ」とホッとした声が聞こえた。「それだけじゃないだろう?問題は何だ?」僕が切り返すと「警備員に欠員が出てる!池野と市野沢のクラスだ!そちらから人を回せるか?」「相変わらずやってくれるな!あの¨陰険禿¨どもは!足りない人数は?」「当面4人だ!何とか手を貸してくれ!」「よし、飯田隊から4名を振り向ける!だが、2時間以内に戻してくれ!こっちも戦場になるのは分かるだろう?」「ああ、分かってる。だが、あの2人に反旗を翻されたままと言う訳には行かない!¨プラン1¨を発動してくれないか?」「早くも発動とはな。¨悪い予感は良く当たる¨と言うが、校長の¨金字牌¨を手に入れて正解だったな!いいだろう。¨プラン1¨を発動する!ついでに悪いが、佐久先生も寄越してくれ!¨陰険禿¨達に背負い投げをお見舞いしたいんでね!」「了解だ。直ぐに向かわせるよ!」そう言って原田は内線を切った。「石川、3名を連れて警備の応援に向かえ!無線機のチャンネルは14番だ。脇坂、坂野を呼び出せ。正門前の状況を知りたい」「はい、坂野先輩、応答願います」「参謀長、では、行って来ます!」石川が引き締まった顔で言う。「2時間経過するか、欠員が到着したら直ぐに戻れ!お前達には、山ほどの¨課題¨が待ってる。ウカウカしている暇は無いぞ!」「分かってます。なるべく早くケリを付けて下さい!では行きます!」石川達は走って現場へ急いだ。「参謀長、正門前ですが、既に15台の車が待機しているそうです。坂野先輩、宮崎先輩以外は、校庭に集結中です。開門時間を早められないか?と言ってます!」時計の針は8時40分を指していた。開門予定は、8時50分だから余り渋滞させると事故の危険性が高まる恐れが見えた。「脇坂、坂野に伝達!8時45分を持って開門させろ!遠藤達には¨奥から詰めろ¨と命じろ!山本、第2陣を至急召集!本部前に整列させろ!」「はい!」2人の声が重なる。僕は、内線を取ると原田を呼び出した。「正門前が渋滞し始めてる。開門時間を5分繰り上げるぞ!」「了解、Y、予想以上に出足が早いな。戦場になるぞ!」「手は打つよ!昇降口は、9時になるまで開けないから、残り15分で立て直してくれ!」「爆竹を忘れるな!破裂音を合図に、全系統が動き出す。15分あれば間に合うだろう。池野と市野沢も片付けられるさ!」「佐久先生が来た。後はお任せだ!」僕は受話器を置くと¨金字牌¨をブレザーの懐から取り出して、先生に渡した。合掌してから、更に拝礼をすると恭しく¨金字牌¨を手にする。「池野と市野沢か!不埒者めが!Y、ごちゃごちゃ言って来ても相手にするな!¨親父¨が書いたからには、誰も逆らえんのだ!まずは、俺が一発お見舞いしてやる!お前達も仕掛けはあるんだろう?」佐久先生は沸騰して言う。「はい、当該クラスを蜂起させますよ!叛いたからには、それなりの報いは受けてもらいます!」僕はさりげなく言う。「蜂起か!いいだろう、思う通りにやれ!背信したのは、アイツらだ!校長に逆らうとどうなるか?を思い知らせてやれ!」佐久先生は、東校舎へ向かった。「脇坂、内線を放送室へ回せ!」「はい、どうぞ」僕は受話器を手にすると、オープンマイクに切り替える。「滝、悪いが至急“WE WILL ROCK YOU”を全校に流してくれ!特に1年4組と6組のスピーカーは全開でな!」と言った。「何があった?」「池野と市野沢が役員の出し惜しみをしてる!1年生に蜂起を促すのさ!」「あの“陰険禿”達を懲らしめるのか?まあ、そりゃあいいが、お前さんの責任問題になるぞ!」と滝は言う。「心配は無用だ!こっちには“校長の金字牌”がある!“彼の命令は、我が命令と心得よ”って一筆書いてもらってあるんだ。“陰険禿”を追い返す力はあるさ!」「了解、それならいい。思いっきり流してやるか!待ってろ!1分以内にやってやる!」僕は受話器を置くと「1年生!クラスに戻って蜂起の準備にかかれ!4組と6組をジャックして、警備要員を連れ出せ!」と命じた。「ズンズンチャ!ズンズンチャ!」“WE WILL ROCK YOU”独特の出だしが流れ出した。「手の空いている者は、曲に合わせて騒げ!」僕が命ずる間もなく合唱が始まった。“WE WILL WE WILL ROCK YOU”を連呼して拳を振り上げる。曲としては短い部類に入るので、滝が巧みにリピートを入れてくれる。1年生達は、教室へ戻ると仲間と共に4組と6組の教室へ雪崩れ込んで「警備要員を出せ!」と騒いだ。池野と市野沢の両担任は、佐久先生の十八番である背負い投げを喰らって、したたかに腰を床に打ち付けられた挙句、乱入してきた生徒達に踏みつけられた。2人は悲鳴をあげて警備要員を出してから、ヨレヨレになって教室から逃走した。暫くすると、脱兎の様に走って行く1年生4名が本部前を駆け抜けた。「脇坂、放送室へ連絡!8時55分を持って“WE WILL ROCK YOU”を停止。通常のBGMへ切り替えさせろ!」「了解!」脇坂は内線を取った。しばらくすると、脱兎の如く走り去った生徒の後を追う様に腰を擦りながら池野と市野沢が来た。「Y!貴様どう言う魂胆だ!」「教師を舐めると、どうなるか?を思い・・・」と言う2人の鼻先に僕は¨金字牌¨を突き付ける。「ゲ!まっ、まさかお前もか?」絶句する2人に“水戸黄門の印籠”の様に書状を開くと「私の言葉や指示は、校長の言葉や指示ですよ!従えぬなら謹慎してもらいますよ!」と鋭く視線を合わせた。池野と市野沢は返す言葉すら失って、うなだれた。「山本、脇坂、ビーニールの紐とガムテープで後ろ手に縛り上げてから、眼と口も塞げ!そして、階段下の物置小屋へ放り込め!鍵はプールにでも投げ込んで置け!」僕は吐き捨てる様に命じた。「では、失礼します」2人は言われた通りに池野と市野沢を監禁した。「Y、8時55分よ!」さちが時計を指して言う。BGMも“グランドオープン”に備えて爽やかな曲に替わった。「本橋、爆竹点火用意!」「はい!」電子ライターを手に本橋は中庭へ出た。「さち、カウントダウン。西岡、上田、グランドオープンだ。配置に付け」僕は随員を伴って昇降口の前に出た。「3、2、1、点火!」午前9時きっかりに爆竹が轟いた。「お待たせ致しました。¨向陽祭¨グランドオープンでございます!いらっしゃいませ!」西岡が淀み無く開会を宣言した。「総員戦闘体制を取れ!戦場になるぞ!」僕は無線機で全員に告げた。2日半に渡る死闘の始まりだった。
出だしは多少の混雑があったが、30分もすると落ち着き出した。「脇坂、坂野に伝達!遠藤隊を引き上げさせろ!スタートは切り抜けたから、もう良いだろ。スペースが足りなくなったら、¨拡張プラン¨を実行しても構わないと言って置け!」「はい、その件は坂野先輩から報告が入っています。現在、約半数が埋まっていますが落ち着いているそうです。“山場”は午後になるだろうとの事です!」「よし、9時55分を持って坂野隊は撤収!以後シフト表に従って随時後続隊を送り込め。山本、そっちは任せるぞ!」「はい!」2人が合唱した。「さち、遠藤達が引き上げて来たら、水分補給と化粧直しを見てやってくれ」「あーい。その後は、ずっと“コンシェルジュ”だよね?」「そうだ、西岡は空き時間に“人事案”を検討し始めてくれ。大変だろうが宜しく頼む」「心得ました。まず、男子連中から手を付けます」と言うと西岡は動き出した。「参謀長、これで一先ずは安心ですか?」上田が聞いて来る。「坂野は“午後”だと言っていたが、山場は恐らくこれから。11時前後に来るだろう!そして、次の山が13時前後に来る!今は“嵐の前の静けさ”に過ぎない。聞いて置きたい事があるなら、今の内に済ませてくれ!」「はい、ではお聞きします。何故“金字牌”を2通も用意されたのですか?」「池野と市野沢の“陰険禿”達が叛くのは察知してたからさ。最終の役員・職員打合せ会議の席上、原田が“警備員の増員”を要請した時に、明らかに不服そうな顔をしてたからな。会議が終わってから、原田に“陰険禿2匹が不満げにしてたぞ!”と耳打ちしたら“何か封じ込める手は無いか?”と問われて“校長に一筆書かせればいい!後は、佐久先生の手を借りれば事足りる”と言って、校長に要請させたのさ。“金字で校長印も押印して下さい”って言わせてな。校長も“金字牌”と言えば岳飛だ。だが、君を秦檜にはさせぬ!これは、私の勅命だ。私に成り代わって事を進めよ“と言ったぐらいだから、校長も抜かり無く見てたらしい。まあ、来年もあの2匹には気を付ける必要があるって事だよ!」「あのー、”岳飛“と”秦檜“ってどう言う例えなんですか?」上田はこめかみを押さえつつ言う。「南宋の始まりと金との対外関係について、掘り下げて学習して見ろ!苦手なのは分かるが、教科書の表面だけが全てでは無い。自分で調べた歴史や故事は忘れないものだ。校長クラスを相手に渡り合うには、この手の話に着いて行けなくては困るんだ!どうしても分からなきゃ”補習“を組んでやるが、その代わり手抜きはするつもりは無いぞ!」「はーい、分からない例えは別のノートに書き写してあるんです!参謀長、”補習“をお願いします!」「夏期講習の時に付き合ってやる!他には?」「これなんですが、¨禿げ禿げと、チョーク投げ合う宴かな¨と¨全斗煥、ビール飲んだら戸塚宏¨って、どう言う事です?」「誰に聞いた!」「西岡先輩ですが?」「ちっ!西岡のヤツ口が軽すぎる!佳奈、今直ぐに消し去れ!他人に見られたり聞かれるとマズイ事になる!」僕は上田をたしなめた。「何故です?なんか面白そうな裏があるんですが?」「職員の宴席での出来事を捻って詠んだヤツだから、我々生徒が知り得ない事なんだよ!知った以上は仕方ないが、公式の記録からは抹消しろ!今、直ぐにだ!」僕は慌てて消させ様としたが、1歩遅かった!上田のノートがつまみ上げられたのだ!「フッ!は、は、は、は!コイツは傑作だ!Y、お前達はあらゆる面で才能があるし、抜かりが無い!池野と市野沢は何処だ?」佐久先生が涙目になって笑い転げた。「階段下の物置小屋に監禁してありますよ!多少暴れてますが」僕は佐久先生からノートを取り返すと階段を指した。「よし、¨親父¨の命令で¨向陽祭に出すに及ばず!官舎に閉じ込めろ!¨と言われて来た。連行するから鍵を貸せ!」佐久先生は大型の台車を持って来ていた。鍵を渡すと、¨陰険禿¨2匹がじたばたと暴れている。「さて、大人しくさせるか!」と言うと頸動脈を軽く締めた。たちまち2匹はぐったりとする。「大丈夫、¨落ちた¨だけだ。しかし、お前達も容赦無しだな!普通はここまでやらんぞ!」と先生は呆れて言う。「学校行事に協力しないんですから、当然の報いですよ!」僕は一蹴で片付けた。「さっきの句もそうだが、お前達は¨大胆不敵¨であると同時に、必ず¨観察¨を怠らない。何があっても切り抜ける¨手¨を用意しているな。こうした事は、必ず引き継いで置けよ!¨正しい遺産¨はキチント残して行け!まあ、お前達と同等とは行かんだろうがな!」佐久先生は台車を押しながら言う。僕は静かに頷いた。後ろ姿を見ながら「佳奈、分かっただろう?理解のある佐久先生だから、笑い事で済んだが教職員全員がそうとは限らない!誰なら¨味方になってくれるか?¨普段から見定めるのが大切だ!¨モニタリング¨を怠るな!」「はーい!次はいつ抱っこしてくれます?」急に佳奈が小声で聞いて来る。「この、あまちゃんが!当分先だ!」と軽く拳を頭に乗せると彼女は、ペロリと舌を出す。でも「なるべく早くね!」と注文も忘れなかった。佳奈との関係を他人に知られるのは勿論、西岡との関係も知られるのは、避けなくてはならない。今のところは心配は無いが、何れにしても¨薄氷を踏んで進む¨様なものだ。僕は深呼吸をすると椅子に座り直した。「参謀長!坂野先輩からです!緊急事態の模様!」脇坂が平和な空気を切り裂いた。「坂野、何があった?」僕は直接交信に割り込んだ。「Y、校庭が満車になった!俺の予想では、こうなるのは午後イチと踏んでいた。¨拡張プラン2¨を発動していいか?」坂野の声は微かに震えていた。「いいだろう!と言うか、車が溢れてるんだろう?否応なしにやらなきゃダメだ!後、30分だけ踏ん張れ!そうすれば、校庭に隙間が出来るはず。¨拡張プラン2¨の並びに切り替えれば、校庭の収容台数も2割増しになる。今は車道の端を使って凌いでいい!」「了解だ!Yは予測してたのか?」「昼前に最初の山が来るとは踏んでた。だが、同時に引きも来ると踏んでた。だから、30分だけ踏ん張れば、午後イチに備えられると思った。今日は¨拡張プラン2¨で凌げるが、問題は明日の展開だよ!戻ってから検討しよう!」「了解!¨拡張プラン2¨の発動を確認してから戻る。交信終了」「山本、総来場者数は分かるか?」「はい、既に昨年のピーク時に達しています!午後になれば更に増えるでしょう!」「脇坂、会長に¨昨年のピークを越えた¨と伝えて置け!こちらは¨手一杯だ¨ともな!」「分かりました!」脇坂は原田に内線を繋いだ。「Y、明日は具体的にどうするつもりだ?」坂野達が戻って来て言う。「¨拡張プラン3¨を発動するしかあるまい。校庭の東側へ駐車場スペースを広げる!同時に、車間を詰めて面積を稼ぐ!シフト表の最後の方のページだよ。会長も承認をしてるしな」「これか!かなり思い切りがいいが、人手が足りなくならないか?」飯田が懸念を示す。「その為にわざわざ¨予備班¨を編成してあるんだ!明日は、投入出来るありったけの人員を出すさ!班編成は、こうするつもりだよ!」僕は、新たな編成表を差し出した。「なるほど、この手がありか!サブリーダーを校庭に置いて、誘導を担わせる訳か。だが、これでもギリギリだろう?」宮崎も言う。「確かにそうだが、1日中満杯とは限らない。ギリギリだが回せる範囲に収めるしか無いんだ!最悪は、正門の前まで使えばいい!要は¨出入り¨に支障が無ければいいんだ!」僕は坂野達を説得する様に言った。「まあ、そうだな。最悪は回避できるとは思うが、今年の出足を見る限り、ある程度の想定は必要性があるな。Yがここまで腹を括ってるなら、俺達も出来る限りの働きはしなきゃならない!おい!確認に行こう!最大限度を見定めるぞ!」坂野達は、図面を手に立ち上がった。「ボトルを持って行け。確認が取れたら休んで¨クローズ作業¨に備えてくれ!」僕は、6人にボトルを手渡すと、休憩する様に言った。「ちょっとだけ出て来るぜ!後は、俺達なりに¨作戦¨を考えてみる。Yにばかり¨おんぶに抱っこ¨って訳にも行くまい。お前さんには、他にも思案しなきゃならない事は山の様にあるんだし!」宮崎が返して来る。「頼んだぞ!現場は、そっちで回してもらわなきゃならないからな」6人の戦士達は、軽く拳を挙げると灼熱の空の下へ向かった。「アイツらが居るから、安心してこっちは動ける。佳奈、アイツらの様に¨信の置ける者¨を探して置けよ!」「はい!信頼関係の構築も含めてですね?」「分かって来たらしいな」僕と上田は笑って戦士達を見送った。
坂野達が再度引き上げて来た頃、来場者の出入りも一応の落ち着きを取り戻した。“山場”は1つクリアした事になる。「参謀長、“メディカルチェック”のお時間です!保健室へどうぞ!」西岡が恭しく言う。「なんだ?そんな話は聞いてないぞ!」僕が色を成すと「校長からの“極秘命令”が出てるの!あなたの体調管理のためよ!」と丸山先生が本部席の前に仁王立ちしている。知らぬは自分だけの様だった。「あー!外堀を埋めたな!聞いてないぞ!」通用しないと分かっていてもボヤキは口を突いて出る。「Y、後は任せて休憩して来な!」さちも釘を打って来る。「あたしも居ますし、上田も見てますからご心配なく!」西岡にも追い打ちを喰らった僕は、肩を竦めると保健室へ連行された。丸山先生は、保健室へ僕を連れ込むと個室へ入れた。「ベッドに横になって居なさい」と言うと厳重に鍵をかけた。背筋に冷たいモノが流れた。彼女は¨年下趣味がある¨と聞いた事があったからだ!「まずは、血圧と体温からね!」と言うと、僕にシャツを脱ぐ様に促す。上半身が裸になると、馬乗りになり唇を重ねて来た。「さあ、坊や。大人の身体を教えてあ、げ、る、わ!待ってなさい!」もどかしげにノースリーブを脱ぎ、ブラを外すとふくよかな乳房に僕の手を導いた。着痩せするのだろうか?弾力がありつつも柔らかい。「どう?触り心地いいでしょう?次は熱いところをかき回して!」パンストとスキャンティを片足に残して、僕の手を下へ持って行く。熱く湿り気を纏っている下半身をかき回してやると、直ぐにぐちゃぐちゃになり、あえぎ始める。「坊や、突いてちょうだい!早く!」ズボンとトランクスを大急ぎで脱がせると、彼女は僕に股がり激しく腰を使い始める。佳奈よりも絡み付く感触がずっと強い!下から突き上げてやると、あえぎ声が高まった。「どう?いいでしょう?もっと激しく突いてちょうだい!」彼女は、気も狂わんばかりに声をあげてねだる。僕は後ろに回ると、腰を思い切り動かしてやる。あえぎ声が更に高まり、彼女は¨教職¨に在る事すら吹き飛ばした。「中よ!中に!出して!」白い体液を余すこと無く注ぐと、ぐったりと横たわり余韻に浸る。「合格よ。坊や、もっと出来るわね?」先生が1度で満足するはずが無い。2回戦は¨前から¨脚をM字に開かせて始まった。突く度に絡み付く感触に病みつきになりながら、ひたすらに腰を使い突いてやる。目の前に居るのは¨ただの女性¨に成り下がった¨丸山恵美子¨その人だった。一際声が高まると、抱き付いて来て唇をかさねる。「今度は、あたしが動いてあげる!」上下逆転すると、恵美子は激しく腰を使いあえぎ声も激しくなった。「気持ちいい!出して!もう1度よ!」一際絡み付く感触が強まると、僕は我慢の限界を越えて白い体液を中に注いだ。痙攣しながら恵美子が抱き付いて来る。体液を指先ですくうと1滴も余さずに味わう。「あなたが最後の獲物よ。あたし、ずっと狙ってたの。これで思い残す事は無くなったわ。坊や、あ、い、し、て、る!」恵美子はまた唇を重ねて来た。両手で乳房を握るとピクピクと痙攣し始める。「ダメー!もっ、漏れちゃう!」乳首をクリクリと刺激すると、腰がガクガクと震え始める。「出しなよ!」と言って更に熱い穴を触ると「ダメー!出るー!」と叫ぶと、飛沫が飛び散る。僕の腕もびしょびしょになった。「また、したくなっちゃたじゃないー!」恵美子は、また僕に股がり腰を思い切り動かしてあえぎ悶えた。何のための¨メディカルチェック¨なのか?もはや分からなかった。3回戦を終えると、恵美子は丁寧に僕の身体を拭いてくれた。そして、1学期を以て¨退職する¨と言った。秋にはウェディングドレスを着ると言う。「あなたを最後に抱けて良かったわ!あなたが、もう5年早く生まれてたら、逃さなかったけどね!」丸山先生に戻って、僕の身体を調べながら耳元で囁く。「お相手は、年下ですか?」と言うと恥ずかしそうに頷いた。「¨最後の生徒¨に選ばれたのは、光栄ですよ」「そう?あなたは変わってるわね。襲われて¨光栄だ¨なんて初めてよ!何処かで、あたしの事意識したなー!」先生は拳を頭に乗せる。「教師と生徒。ありがちな事でしょ?」「ふむ、あたし残ろうかな?あなたの事を待っているのもありかもね!」「いずれにしても、解放して下さい。余り留守にも出来ませんから」僕が時計を見ながら言うと「あっ!ごめん!疑われたらマズイよね!」と言って保健室の鍵を開けた。本部は何事も無かった様に動いていた。「調子がいいからと言って、無理はダメよ!去年の¨二の舞¨になりたく無かったら、あたしの言う事も聞きなさい!」わざと聞こえる様に言って、保健室から送り出してくれる。「参謀長、目下、異常ありません!」上田が報告をした。「よし、次は午後イチが山だ!」保健室の方向で丸山先生が笑顔で手を振る。実際、彼女は1学期を以て¨退職¨して、家庭に入った。今頃は、孫に囲まれて居るだろう。「参謀長、¨山¨が来た様です!今野先輩が¨キャパを越えるかも知れない¨と言ってます!」脇坂の声が少し上ずって居る。「今野に伝達!¨1cmも無駄にするな!そうすれば、その分3台は余裕で止められる¨とな」「はい、今野先輩!応答願います」「さて、最難関を突破するか!」他人事の様に僕が言うと、張りつめた空気が微かに和んだ。「これからが¨本番¨だ!本橋、爆竹を用意しろ!景気よく爆発させろ!」「了解、さち先輩、カウントをお願いします!」「12時キッカリに打ち上げよ!OK、後、1分よ」「盛大に打ち上げろ!まだまだ先は長いんだ!」爆竹の轟音が轟いた。初日はやっと折り返し地点を過ぎたばかりだった。