東京都八王子、夕闇が迫る中、3階の屋上で小型パラボラアンテナをかざす人影があった。「N坊、どうだ?」¨シリウス¨がトランシーバーで呼び掛ける。「かなり微妙だな。僅かでもズレたら、一般家庭のwi-fiに引っ掛かる!自衛隊の電話を普通に聞き取れる様なもんだ!」N坊が返す。「となると、有線しか無いだろう。どうやら¨アイツ¨の出番の様だ!」F坊が台車に乗せたマシンを指差す。「N坊、降りて来い。¨アイツ¨の出番だ!」「了解!」F坊は、サイコロの様な機器をLANジャックに差し込んで、ノートPCの画面を食い入る様に凝視している。「どうだ?ブースターの威力は?」N坊が聞く。「契約速度の10倍は出せるな。横浜の半分だが、実用上は問題ない。¨シリウス¨の専用機は此処にした方がいい」「他のヤツは?」「5台までは接続可能だから、後何台設置するかによりけり。プリンターは無線で行けるだろう」F坊が答える。「部屋は2階を使うか。1階は手狭だし、これから届くサーバーや端末で多分一杯になる。3階が寝床だな」¨シリウス¨は筐体を手に階段を登って行く。八王子の¨司令部¨は手狭ではあったが、3階建てのビルだったのが幸いだった。ビルを取り囲む様に駐車場もあり、¨機動部隊¨と¨遊撃隊¨の車両も停められた。3人は、2階に¨司令部¨を仮設するべく、機器の筐体を運び上げてネットワークを形成していった。リーダーは、駐車場で¨機動部隊¨と¨遊撃隊¨の車両を誘導しながら、今晩の¨作戦¨の打ち合わせに追われていた。「誘導と見張りに4人、運び出しに8人だ。ユニック付きのトラックとキャリアに積み込んで¨基地¨へ回送する。シートで覆い隠して行け!ゼロアワーは、午前0時とする。各隊長は人選を急げ!今晩、動く予定のない車両は、奥へ詰めて駐車場へ並べ替えだ!」駐車場のスペースは限られている。文字通りセンチ単位で詰め込まなくては、各隊の車両は収まり切らない。¨機動部隊¨の半数がまだZ病院周辺に展開しているとは言え、酷く骨の折れる作業だった。そこへ携帯の着信が来る。「ミスターJ、ええ、順調ですよ。今晩の¨作戦¨のメドは立ちました。日付が変わる頃に¨侵入¨してベンツ2台を運び出します。はい、そちらの便はまだ着いてません。¨司令部¨内もまだネットワークが出来上がってませんので。そうですね、後2時間もあれば完了出来ると思います。¨車屋¨が¨基地¨へ着いたんですね?分かりました。¨シリウス¨達に伝えて置きます。はい、こちらは大丈夫です。では、失礼します」リーダーは、トランシーバーを手に取ると「¨シリウス¨、¨車屋¨が帰り着いたそうだ。そっちの準備が出来次第、¨基地¨とコンタクトを取れ!」と吹き込んだ。「了解!」事務所内では、¨シリウス¨専用機を中心に4台の端末の設置が終わり、プリンター5台は無線ルーターを介してネットワークが組上がっていた。「¨シリウス¨、早速テストを始めよう!ブースターの調整もあるしな」N坊がノートPCを起動して、調整画面を出す。「4台の調整とプリンターの調整は、俺がやる」F坊が最後のケーブルを繋ぎながら言う。「さて、それでは接続からだ」¨シリウス¨がキーボードを叩いて回線を繋ぐ。「接続完了。速度は一般家庭と変わらん。ブースターを起動して見てくれ!」「了解、ブースター起動!今、微調整に入る」N坊はノートPCの画面に釘付けになる。「速度が10倍に上昇!動作安定。ロックしてくれ!」“シリウス”が指示を出す。「あいよ、ギリギリだな。これ以上上げると他回線に影響が出て勘づかれる。横浜の半分だが、我慢してくれよ!」調整を終えたN坊が言う。「贅沢は言わんよ!この周辺じゃ最速なんだから」“シリウス”が笑顔で返す。「さて、F坊、そっちはどうだい?」「同調は完了した。ネットワークも異常なし!後は、テストプリントだけだ」F坊は4台の端末からテストプリントの操作を行っていた。「じゃあ、“基地”を呼んでみるか!」“シリウス”が携帯で“車屋”を呼びだす。「もしもし、“車屋”そっちのPCとサーバーの接続は終わっているな?じゃあ、手順通りに“遠隔”のページにアクセスしてくれ!ああ、待機している」“基地”側のPCが“遠隔”のページにアクセスするのを“シリウス”は待った。「よし、繋がった。手を放して画面を見ててくれ、こっちで操作する。異常があれば言ってくれ!」“シリウス”は慎重にキーボードとマウスを操る。「異常はないな?では、こちらからサーバーへデーター転送を開始する。2~3時間はかかるから、その間に装備品の片付けに入ってくれ!こっちでモニターしているから、放って置いても問題は無い。30分に1度くらいの頻度で画面を見てくれりゃあいい。はいよ、何かあったら連絡してくれ」そう言うと携帯を切った“シリウス”は再度画面を凝視して確認に入る。「転送は順調だ。そろそろ“例のサーバーと端末”が着く頃合いだな。N坊、F坊そっちはいいかい?」「問題なし」「“ゲーム”に感染してるヤツがどれだけあるかだな」「感染してても“解除コード”を打ち込んで、“ゲーム”を削除して復元をかければ、正気に戻るさ!端末はいいが、サーバーはちと厄介かも知れんが」“シリウス”が心配する。「まあ、取り敢えずやって見るさ!ダメなら手を考えりゃいい!」「どっちにしても、“ゲーム”を駆逐しなきゃ“情報”には辿り着けない!今晩の内に終わらせよう!」3人は1階へ降りると、スペースを作るために片付けを始めた。そこへリーダーと機動部隊員と遊撃隊員がドヤドヤと雪崩れ込んで来た。「設置は済んだか?」リーダーが誰何する。「完了しましたよ!既に転送を開始してます!」「寝床は何処にした?」「3階にしました。最上階で休んでいて下さい」N坊が言う。「食事当番はどうします?」F坊が聞く。「今、買い出しへ行ってる。ポットは何処だ?」「上に持って行ってあります」“シリウス”が言う。「まもなく“旧AD事務所”経由のトラックが着く。まずは、寝床の確保と湯を沸かせ!」リーダーに促された機動部隊員と遊撃隊員達は階段を登った。「“シリウス”、N、F、今晩の内にメドを付けてくれ!明日からは“切り売り”に入らなきゃならん!」リーダーが真顔で言う。「売り先の選定もですが、どんな“情報”を吸い上げられるか?にもよりけりですね。とにかく、使い物になる様に最善を尽くしますよ!」“シリウス”も真顔で答えた。「うむ、こっちは“黒のベンツ”を奪取する“作戦”も控えてる。“情報”の方はそっちに任せきりになるが、頼んだぞ!メシはもう直ぐ届く。腹ごしらえを済ませたらかかってくれ!」リーダーはそう言うと3階へ向かった。八王子は夕闇に包まれて行った。
R女史は、ようやく電話を手にしていた。ミセスAに泣き落としをかけて、散々ゴネた結果、ミセスAが根負けしたのだ。「10分だけよ!」との厳命付きだったが、彼女は気になっている“事案”について、どうしても確かめずにはいられなかったのだ。急いでU事務所のT女史の携帯を呼び出す。「もしもし、T先輩、今大丈夫ですか?」擦れた声で問いかけると「Rちゃん!絶対安静の人がどうやって電話して来る訳?!また、看護師さんに無理を押し通したわね!貴方って人は、どう言うつもりなの?!」T女史のお怒りが炸裂した。「すいません。どうしても先輩にお願いした“事案”が気になって、その後どうなっていますか?」恐る恐るR女史は切り出した。「まあ、仕方ないか!貴方の性格じゃあ看護師さんも根負けするわね!時間が無い見たいだから簡潔に言うけど、DBは“自らの意思で海外勤務を希望した”様よ!表向きは懲戒解雇になってるけど、Y社長が裏で手を回して海外へ送り込んでくれたそうよ!家族を養う術を奪う事は出来ないからって!」T女史は“筋書き通り”の説明をR女史にした。「それを証明するモノはあるんですか?」「Y社長とDBが直接会談した際の“音声記録”を手に入れたわ!それを聞く限り間違いないと思う。DBが書いた辞表のコピーもあるし、Y社長からも“前代未聞”の処置だったって聞いたわ!」「T先輩、直接Y社長と会ったんですか?」「ええ、向こうも“第三者には明かさない”って条件で話してくれた。最初は渋ってたけど、Kの疑念を払拭して変に騒がれるよりは、真実を告げた方がいいって説得したの。Kだって檻からは出られない訳だし、DBも定年までって条件付きだから、不当な扱いとは言えないと思う。犯罪の片棒を担いだ以上は、懲戒解雇は当然だけど“破格の処遇”を受けて海外の工場で働けるなら、文句は言えないわよ!」「そうだったんですか・・・、そんな取引があったとは・・・、DBは何処の国へ行ったんです?」「ベトナムよ。定年までは帰国は見合わせるって条件で合意してます!さあ、これで安心した?面会が出来る様になったら、直ぐに“音声記録”を持って飛んでくわ!まずは、ICUから一般病棟へ脱出して頂戴!そろそろ時間でしょ!あんまり迷惑かけるんじゃないの!!人を困らせるのちっとも治らないわね!ついでに治療してもらいなさい!」T女史は一通りの説明を終えると、釘を刺すのを忘れなかった。「はい、すみませんでした。T先輩、感謝してます」R女史は神妙な口ぶりで返した。「じゃあ、頑張って“治して”貰いなさい!病気もだけどせっかちな性格もね!今度、会えるまでに報告書をまとめて置く。早く元気になりなさい!」そう言って電話は切れた。R女史は安堵の表情を浮かべた。「さあ、これで納得したかしら?」ミセスAは呆れ顔で言う。「ええ、やっと胸の閊えが降りました」R女史は穏やかに言った。電話機を没収すると「さて、夕食の時間です!ちゃんと食べて下さいね!」と言って膳を差し出した。7分粥がメインだったが、彼女はしっかりと平らげにかかった。
S氏は、癇癪を起していた。部下達は順番に“尋問”に呼び出されていったが、帰っては来なかった。押し込められた“素敵なホテル”には、彼だけが残されたのだ。「どう言うつもりだ?!!」室内のそこかしこに蹴りを入れては、電話をかけまくっていた。“AD法律事務所”へかけると、自動音声で“現在、AD法律事務所は業務を停止しております。お急ぎの方は、・・・”と別の番号を案内させるし、案内先へ何度かけても通じない。サイバー部隊長の携帯は電源を切っているらしく不通。姉のM女史の携帯も同様だった。「身柄引き受けに来いと命じたのに、何をモタモタしとる!!」ヤケクソになって受話器を叩きつけるも、事態は何も進展が無い。夕闇が迫る中、彼は焦りを隠せなかった。「待てよ、相手は米軍だ。余程のツテが無くては基地内へ入る事も不可能だ。姉貴の力を持ってしても時間が必要だと言う事か?!」少し冷静になって考えれば、如何に救出が困難かが見えた。「しかし、妙だな?部下共は何処へ行ったんだ?」檻の中の熊の様に室内をウロウロしながら彼は必死に考えた。そして意を決して“U法律事務所”へ電話を繋いだ。「AD法律事務所のSだが、社長はいるか?」商売敵ではあったがこの際、手段を選んでいる場合では無かった。「Sさん!今、どこに居ます?」“U法律事務所”の社長の声は上ずっていた。「実は、昨夜米軍に拘束されまして、横須賀基地に居るんですよ」S氏はなるべく下手に話し出した。「何の嫌疑です?お姉さんもそれが分からなくて苦労してますよ!」「嫌疑が何か私にもサッパリ分からんのです。身柄引き渡しに協力してもらえませんか?」彼はプライドをかなぐり捨てて懇願した。「うーん、警察ならともかく米軍となると、大使館経由で働き掛けないと難しいですな。アメリカ大使館にツテがある弁護士を総動員して、お姉さんに協力してますが“拘束理由”がハッキリしないと交渉自体が難しいんですよ!Sさん心当たりはありませんか?何でも構いません!鍵を頂かないと事は進みません!」“U法律事務所”の社長の声も困惑気味だ。「心当たり・・・、それが無いんですよ。何故拘束されたのかも見当も付かない有様でして・・・。部下3人は取り調べを受けてますが、別室へ移されてしまって子細も不明なんです」「参ったなー、それが分からないと前には進めませんよ。“不当拘束”の理由が明らかにならなくては、交渉しようにも手が無い。ただ、我々も手をこまねいている訳じゃありません!“解放”する様に交渉する手掛かりを探ってます!」「私の事務所に電話が通じないのはどういうことです?」彼は思い切って切り出した。「非常事態ですからねー、一時業務を止めてるんですよ。お姉さんからの要請で、混乱しては困るので弁護士会で業務を振り分けて、御社の顧客の救済に奔走してます。電話が繋がらないのはそう言う理由もあります。携帯も繋がらないでしょう?」「そうですか、私が拘束されている以上仕方ありませんな・・・」「Sさん、もうしばらく待ってもらえますか?こちらも手は尽くしてます。“解放”へ向けてあらゆる手を繰り出してます。ただ、時間が必要です。相手が悪すぎるし、基地内は“治外法権”です。それを乗り越えるには、どうしても手数がかかる。必ず助けには行きます。待ってもらえませんか?」“U法律事務所”の社長の声も悲痛だった。「分かりました。すいませんがお願いします。姉貴には“心配をかけて済まない”と伝えて下さい!」「承知しました。済まんけどもう少しだけ我慢して下さい。必ず助けに行きますから!じゃあ、伝言は伝えて置きます」と言って“U法律事務所”の社長は電話を切った。「うぬー!嫌疑がバレたらオシマイじゃないか!かと言っていつまでも“素敵なホテル”に滞在はしたくない!俺はどうすれば出られるんだ!」S氏は熊の様にグルグルと室内を歩き回って呻いた。正直に話せば“破滅”しかねないし、話さなくては出られない。彼はジレンマに陥り、頭を掻きむしるしか無かった。
M女史の携帯に“U法律事務所”の社長から連絡が入ったのは、S氏からの連絡があった直後だった。彼女は、丁重に礼を述べて携帯を切った。「話の途中で済まなかったわ。さて、貴方がSに命じられていた仕事は何なの?」デスクの前にはサイバー部隊長が立っていた。「私が命じられていたのは、同業他社の動向や企業情報、スキャンダルの類の情報を広範囲に集める事、事務所のセキュリティーを保つ事です」「それは“ハッキング”を含めての話なの?」「無論、そうです。“ハッキング”の方が圧倒的に多かったです」彼は正直に答えた。「Sはそれらの“情報”をどうしたかったの?」「分かりません。とにかく“集めろ”が至上命題でした。具体的にどうこうする前に米軍に拘束されたのです」「では、Sが“情報”を利用して悪事を働くことは無かったと言うの?」「いえ、R女史に関しては別です。R女史の動向については、毎日報告を上げていましたし、ミスターJとか言う秘密組織の情報も逐一報告していました。その結果、首都高での襲撃計画や“U法律事務所”と“司令部”の襲撃計画が立案されたのです」「それ以外はどうなの?」「まだ手付かずの状態でした。前社長が何を考えていたのかは分かりません」「“情報”は押収したサーバー以外にどこへ保管していたの?」「サーバーと各端末のHDDです。前社長のPCにも保管してません」「そう、ではRさんとミスターJ以外の“情報”は何も手を触れていないのね?まずはそれが知りたかったのよ。これ以上関係先へ迷惑はかけられないから。では、Sと共に拘束された3人は何処の人間なの?」「撹乱波発生器と同時にやって来た香港人です。取説の代わりも兼ねていました。黒いベンツを発注したのも彼らです」「なるほど、貴方の部下に外国人は居るの?」「いえ、全員日本人です。サイバーセキュリティの専門家ばかりです」「分かりました。貴方達5人に改めて命じます!Sが拘束された以上、こちらがサイバー攻撃に曝されるのは目に見えて明らかです!事務所のPCを攻撃から守り抜く体制を至急取りなさい!こちらの腹を探ろうとする輩は必ず攻撃して来ます。鉄壁の防御を敷いて置きなさい!」「承知しました。ただ、1つ伺いたいのですが、我々はどうなるのですか?」「馘首する理由がありません。むしろ、貴方達の専門知識はビジネスとして使えます。サイバーセキュリティ部門として存続させます。クライアントが見つかり次第、派遣先へ出向いてもらいます!当面は、事務所のPCとタブレットの管理・セキュリティ対策を進めなさい!」「承知しました。では、早速始めさせていただきます」サイバー部隊長は深々と一礼すると社長室を辞して行った。「Sが設置したサイバー部門。再建の柱になりそうだわ。これで3つ柱が揃った。残るは弁護士達の再配置だけね。人材こそが再建の鍵。生かすも殺すも私次第!」M女史は社員達の経歴簿に目を落とした。
八王子の“司令部”に9台の端末とサーバーが設置された。「LAN接続はするな!“ゲーム”に感染してる端末がまだあるはずだ!」“シリウス”が注意する。「サーバーはどこまで感染してるんだろう?」F坊が調べながら言う。「どうやら、片足を突っ込んで止まってる感じだ。感染が広がる前に隔離したらしいぞ!」N坊が状態を確認しつつ言う。「じゃあ、サーバーは後回しだ。端末から1台づつ確認して行こう!」“シリウス”が順に端末の電源を入れていくと、派手な音楽と共に“ゲーム”がスタートし始めた。「おいおい、クリアしたのは2台だけかよ!他はみんな乗っ取られたままだ!」N坊が悲鳴を上げる。「まあ、こんなモノだろうよ。“スターウォーズ・ゲーム”はシンプルだが、クリアするのは余程運が良くなきゃ無理だ!解除コードを打ち込んで、“ゲーム”を止めてプログラムを削除してから、直前の日付付近で復元すりゃあいいんだ!」F坊が早速始末にかかる。“シリウス”もN坊も即座に始末にかかった。「おい、何事だ?」リーダーが3階から駆け下りて来る。「例の“ゲーム”に感染したヤツか!それにしても派手だな!」「送り付けた以上、仕方ありませんよ。もう直ぐ静かになりますから」“シリウス”がなだめる。「どっちでもいいが、“情報”を吸い上げたら、3台くらい貸してくれ!みんな暇を持て余し気味だ!」「マジですか?!まあ、確かに暇潰しには打って付けだな」F坊が認めた。「マシンとしてはややスペック不足だが、“ゲーム”を入れ直すのはそんなに手間じゃない。OK、3台用意しますよ!」“シリウス”が約束した。「ついでですから、言っときますが“情報”の売り先ですが、NHKだけは除外して下さいよ!」N坊が釘を刺す。「何故、NHKがダメなんだ?」リーダーが怪訝そうに言う。「税金を強要する上に、二束三文にしかならないんじゃ話なりません!1円でも高く売り捌く。今回は採算重視で行きましょう!」F坊も釘を刺す。「おいおい、受信料は“税金”なんかじゃ・・・」「立派な“酷税”です!!大体、国会で予算審議をする団体が徴税するんですから、立派な“酷税”です!!年金暮らしでも障害者でも情け容赦なく取り立てるなんざ酷吏もいいとこです!!」N坊とF坊が合唱する。「“シリウス”、お前もか?」リーダーが気圧され気味に問うと「“酷税”云々は別にしても、NHKなどの放送事業者や雑誌社、新聞社へ売り込むにしても、我々では厳しいと思いますよ。第一“相場”が読めません!」「確かにそうだ」リーダーは腕を組んだ。「中身にも寄りますが、同業他社の“情報”については“U事務所と連合艦隊”の意見・同意が無くては無理でしょう?取引企業の内部文書にしても同様です。まあ、あり得ないでしょうけど“スキャンダルネタ”なら交渉次第ってとこですかね?」「我々の手では無理がありか?」「ええ、誰かが間に入るか?“情報”を専門に扱う業者に接触するか?の選択になりますよこれは!」“シリウス”の意見は的を射ていた。「そうなると、マージンを取られたらアウトか!業者と言っても知り合いは居るか?」リーダーは宙を仰いだ。確かに1事務所の“浮沈”を左右する大事だ。採算重視は当然であり、1円でも多く手渡せなくては意味が無い。4人の間に沈黙が流れた。「おい、N坊“泣き虫CAT”のオフィスはどうだ?」F坊が思い出したように言う。「10年は会ってないが、ヤツなら近所のはずだな?」「“泣き虫CAT”とは何者だ?」リーダーが誰何する。「俺達と同様に施設で育ったヤツで、クスリと殺し以外なら何でもやるヤツですよ。裏とも取引があるし、顔は広いですよ。ヤツなら捌きが着くかも知れません。ただ、音信不通になって10年経ってますから、都内を捜索して繋ぎをつけなきゃなりませんが・・・」N坊とF坊は遠い目をして昔を見ていた。「最後の会ったのは10年前で間違いないか?」リーダーが確認する。「ええ、施設の同窓会にフラッと来てそれきりですが・・・。確か神田のビル・・・何て名前だったか・・・?」F坊は必死に記憶を手繰る。「“泣き虫CAT”と神田だな?!よし、俺の知り合いに“探し”のプロが居る。そいつに捜索依頼を出して見よう!」リーダーは携帯を手にして連絡を取り始めた。「“泣き虫CAT”とは親しいのかい?」“シリウス”がN坊とF坊の顔を見る。「ワルガキ3人組の一角よ!」「昔から商売っ気丸出しのやり手だった!」2人はそう振り返った。「おい、捜索してくれるそうだ。“泣き虫CAT”と神田のキーワードがあれば、24時間以内に居所を突き止められるぞ!」リーダーが言った。「後は、“泣き虫CAT”が無事ならいいんですがね」N坊が呟く。「なーに、アイツがくたばるタマか?それより、早いとこ“情報”を吸い上げて分析しとかねぇと時間が無い!」F坊が俄然張り切りだす。「善は急げ!“情報”も鮮度が命だ。大車輪でかかれ!」リーダーが発破をかける。3人は猛然と仕事に掛かった。リーダーは、そんな3人の背を見て「コイツらが敵でなくて良かった」と呟いた。作業は夜を徹して行われた。
R女史は、ようやく電話を手にしていた。ミセスAに泣き落としをかけて、散々ゴネた結果、ミセスAが根負けしたのだ。「10分だけよ!」との厳命付きだったが、彼女は気になっている“事案”について、どうしても確かめずにはいられなかったのだ。急いでU事務所のT女史の携帯を呼び出す。「もしもし、T先輩、今大丈夫ですか?」擦れた声で問いかけると「Rちゃん!絶対安静の人がどうやって電話して来る訳?!また、看護師さんに無理を押し通したわね!貴方って人は、どう言うつもりなの?!」T女史のお怒りが炸裂した。「すいません。どうしても先輩にお願いした“事案”が気になって、その後どうなっていますか?」恐る恐るR女史は切り出した。「まあ、仕方ないか!貴方の性格じゃあ看護師さんも根負けするわね!時間が無い見たいだから簡潔に言うけど、DBは“自らの意思で海外勤務を希望した”様よ!表向きは懲戒解雇になってるけど、Y社長が裏で手を回して海外へ送り込んでくれたそうよ!家族を養う術を奪う事は出来ないからって!」T女史は“筋書き通り”の説明をR女史にした。「それを証明するモノはあるんですか?」「Y社長とDBが直接会談した際の“音声記録”を手に入れたわ!それを聞く限り間違いないと思う。DBが書いた辞表のコピーもあるし、Y社長からも“前代未聞”の処置だったって聞いたわ!」「T先輩、直接Y社長と会ったんですか?」「ええ、向こうも“第三者には明かさない”って条件で話してくれた。最初は渋ってたけど、Kの疑念を払拭して変に騒がれるよりは、真実を告げた方がいいって説得したの。Kだって檻からは出られない訳だし、DBも定年までって条件付きだから、不当な扱いとは言えないと思う。犯罪の片棒を担いだ以上は、懲戒解雇は当然だけど“破格の処遇”を受けて海外の工場で働けるなら、文句は言えないわよ!」「そうだったんですか・・・、そんな取引があったとは・・・、DBは何処の国へ行ったんです?」「ベトナムよ。定年までは帰国は見合わせるって条件で合意してます!さあ、これで安心した?面会が出来る様になったら、直ぐに“音声記録”を持って飛んでくわ!まずは、ICUから一般病棟へ脱出して頂戴!そろそろ時間でしょ!あんまり迷惑かけるんじゃないの!!人を困らせるのちっとも治らないわね!ついでに治療してもらいなさい!」T女史は一通りの説明を終えると、釘を刺すのを忘れなかった。「はい、すみませんでした。T先輩、感謝してます」R女史は神妙な口ぶりで返した。「じゃあ、頑張って“治して”貰いなさい!病気もだけどせっかちな性格もね!今度、会えるまでに報告書をまとめて置く。早く元気になりなさい!」そう言って電話は切れた。R女史は安堵の表情を浮かべた。「さあ、これで納得したかしら?」ミセスAは呆れ顔で言う。「ええ、やっと胸の閊えが降りました」R女史は穏やかに言った。電話機を没収すると「さて、夕食の時間です!ちゃんと食べて下さいね!」と言って膳を差し出した。7分粥がメインだったが、彼女はしっかりと平らげにかかった。
S氏は、癇癪を起していた。部下達は順番に“尋問”に呼び出されていったが、帰っては来なかった。押し込められた“素敵なホテル”には、彼だけが残されたのだ。「どう言うつもりだ?!!」室内のそこかしこに蹴りを入れては、電話をかけまくっていた。“AD法律事務所”へかけると、自動音声で“現在、AD法律事務所は業務を停止しております。お急ぎの方は、・・・”と別の番号を案内させるし、案内先へ何度かけても通じない。サイバー部隊長の携帯は電源を切っているらしく不通。姉のM女史の携帯も同様だった。「身柄引き受けに来いと命じたのに、何をモタモタしとる!!」ヤケクソになって受話器を叩きつけるも、事態は何も進展が無い。夕闇が迫る中、彼は焦りを隠せなかった。「待てよ、相手は米軍だ。余程のツテが無くては基地内へ入る事も不可能だ。姉貴の力を持ってしても時間が必要だと言う事か?!」少し冷静になって考えれば、如何に救出が困難かが見えた。「しかし、妙だな?部下共は何処へ行ったんだ?」檻の中の熊の様に室内をウロウロしながら彼は必死に考えた。そして意を決して“U法律事務所”へ電話を繋いだ。「AD法律事務所のSだが、社長はいるか?」商売敵ではあったがこの際、手段を選んでいる場合では無かった。「Sさん!今、どこに居ます?」“U法律事務所”の社長の声は上ずっていた。「実は、昨夜米軍に拘束されまして、横須賀基地に居るんですよ」S氏はなるべく下手に話し出した。「何の嫌疑です?お姉さんもそれが分からなくて苦労してますよ!」「嫌疑が何か私にもサッパリ分からんのです。身柄引き渡しに協力してもらえませんか?」彼はプライドをかなぐり捨てて懇願した。「うーん、警察ならともかく米軍となると、大使館経由で働き掛けないと難しいですな。アメリカ大使館にツテがある弁護士を総動員して、お姉さんに協力してますが“拘束理由”がハッキリしないと交渉自体が難しいんですよ!Sさん心当たりはありませんか?何でも構いません!鍵を頂かないと事は進みません!」“U法律事務所”の社長の声も困惑気味だ。「心当たり・・・、それが無いんですよ。何故拘束されたのかも見当も付かない有様でして・・・。部下3人は取り調べを受けてますが、別室へ移されてしまって子細も不明なんです」「参ったなー、それが分からないと前には進めませんよ。“不当拘束”の理由が明らかにならなくては、交渉しようにも手が無い。ただ、我々も手をこまねいている訳じゃありません!“解放”する様に交渉する手掛かりを探ってます!」「私の事務所に電話が通じないのはどういうことです?」彼は思い切って切り出した。「非常事態ですからねー、一時業務を止めてるんですよ。お姉さんからの要請で、混乱しては困るので弁護士会で業務を振り分けて、御社の顧客の救済に奔走してます。電話が繋がらないのはそう言う理由もあります。携帯も繋がらないでしょう?」「そうですか、私が拘束されている以上仕方ありませんな・・・」「Sさん、もうしばらく待ってもらえますか?こちらも手は尽くしてます。“解放”へ向けてあらゆる手を繰り出してます。ただ、時間が必要です。相手が悪すぎるし、基地内は“治外法権”です。それを乗り越えるには、どうしても手数がかかる。必ず助けには行きます。待ってもらえませんか?」“U法律事務所”の社長の声も悲痛だった。「分かりました。すいませんがお願いします。姉貴には“心配をかけて済まない”と伝えて下さい!」「承知しました。済まんけどもう少しだけ我慢して下さい。必ず助けに行きますから!じゃあ、伝言は伝えて置きます」と言って“U法律事務所”の社長は電話を切った。「うぬー!嫌疑がバレたらオシマイじゃないか!かと言っていつまでも“素敵なホテル”に滞在はしたくない!俺はどうすれば出られるんだ!」S氏は熊の様にグルグルと室内を歩き回って呻いた。正直に話せば“破滅”しかねないし、話さなくては出られない。彼はジレンマに陥り、頭を掻きむしるしか無かった。
M女史の携帯に“U法律事務所”の社長から連絡が入ったのは、S氏からの連絡があった直後だった。彼女は、丁重に礼を述べて携帯を切った。「話の途中で済まなかったわ。さて、貴方がSに命じられていた仕事は何なの?」デスクの前にはサイバー部隊長が立っていた。「私が命じられていたのは、同業他社の動向や企業情報、スキャンダルの類の情報を広範囲に集める事、事務所のセキュリティーを保つ事です」「それは“ハッキング”を含めての話なの?」「無論、そうです。“ハッキング”の方が圧倒的に多かったです」彼は正直に答えた。「Sはそれらの“情報”をどうしたかったの?」「分かりません。とにかく“集めろ”が至上命題でした。具体的にどうこうする前に米軍に拘束されたのです」「では、Sが“情報”を利用して悪事を働くことは無かったと言うの?」「いえ、R女史に関しては別です。R女史の動向については、毎日報告を上げていましたし、ミスターJとか言う秘密組織の情報も逐一報告していました。その結果、首都高での襲撃計画や“U法律事務所”と“司令部”の襲撃計画が立案されたのです」「それ以外はどうなの?」「まだ手付かずの状態でした。前社長が何を考えていたのかは分かりません」「“情報”は押収したサーバー以外にどこへ保管していたの?」「サーバーと各端末のHDDです。前社長のPCにも保管してません」「そう、ではRさんとミスターJ以外の“情報”は何も手を触れていないのね?まずはそれが知りたかったのよ。これ以上関係先へ迷惑はかけられないから。では、Sと共に拘束された3人は何処の人間なの?」「撹乱波発生器と同時にやって来た香港人です。取説の代わりも兼ねていました。黒いベンツを発注したのも彼らです」「なるほど、貴方の部下に外国人は居るの?」「いえ、全員日本人です。サイバーセキュリティの専門家ばかりです」「分かりました。貴方達5人に改めて命じます!Sが拘束された以上、こちらがサイバー攻撃に曝されるのは目に見えて明らかです!事務所のPCを攻撃から守り抜く体制を至急取りなさい!こちらの腹を探ろうとする輩は必ず攻撃して来ます。鉄壁の防御を敷いて置きなさい!」「承知しました。ただ、1つ伺いたいのですが、我々はどうなるのですか?」「馘首する理由がありません。むしろ、貴方達の専門知識はビジネスとして使えます。サイバーセキュリティ部門として存続させます。クライアントが見つかり次第、派遣先へ出向いてもらいます!当面は、事務所のPCとタブレットの管理・セキュリティ対策を進めなさい!」「承知しました。では、早速始めさせていただきます」サイバー部隊長は深々と一礼すると社長室を辞して行った。「Sが設置したサイバー部門。再建の柱になりそうだわ。これで3つ柱が揃った。残るは弁護士達の再配置だけね。人材こそが再建の鍵。生かすも殺すも私次第!」M女史は社員達の経歴簿に目を落とした。
八王子の“司令部”に9台の端末とサーバーが設置された。「LAN接続はするな!“ゲーム”に感染してる端末がまだあるはずだ!」“シリウス”が注意する。「サーバーはどこまで感染してるんだろう?」F坊が調べながら言う。「どうやら、片足を突っ込んで止まってる感じだ。感染が広がる前に隔離したらしいぞ!」N坊が状態を確認しつつ言う。「じゃあ、サーバーは後回しだ。端末から1台づつ確認して行こう!」“シリウス”が順に端末の電源を入れていくと、派手な音楽と共に“ゲーム”がスタートし始めた。「おいおい、クリアしたのは2台だけかよ!他はみんな乗っ取られたままだ!」N坊が悲鳴を上げる。「まあ、こんなモノだろうよ。“スターウォーズ・ゲーム”はシンプルだが、クリアするのは余程運が良くなきゃ無理だ!解除コードを打ち込んで、“ゲーム”を止めてプログラムを削除してから、直前の日付付近で復元すりゃあいいんだ!」F坊が早速始末にかかる。“シリウス”もN坊も即座に始末にかかった。「おい、何事だ?」リーダーが3階から駆け下りて来る。「例の“ゲーム”に感染したヤツか!それにしても派手だな!」「送り付けた以上、仕方ありませんよ。もう直ぐ静かになりますから」“シリウス”がなだめる。「どっちでもいいが、“情報”を吸い上げたら、3台くらい貸してくれ!みんな暇を持て余し気味だ!」「マジですか?!まあ、確かに暇潰しには打って付けだな」F坊が認めた。「マシンとしてはややスペック不足だが、“ゲーム”を入れ直すのはそんなに手間じゃない。OK、3台用意しますよ!」“シリウス”が約束した。「ついでですから、言っときますが“情報”の売り先ですが、NHKだけは除外して下さいよ!」N坊が釘を刺す。「何故、NHKがダメなんだ?」リーダーが怪訝そうに言う。「税金を強要する上に、二束三文にしかならないんじゃ話なりません!1円でも高く売り捌く。今回は採算重視で行きましょう!」F坊も釘を刺す。「おいおい、受信料は“税金”なんかじゃ・・・」「立派な“酷税”です!!大体、国会で予算審議をする団体が徴税するんですから、立派な“酷税”です!!年金暮らしでも障害者でも情け容赦なく取り立てるなんざ酷吏もいいとこです!!」N坊とF坊が合唱する。「“シリウス”、お前もか?」リーダーが気圧され気味に問うと「“酷税”云々は別にしても、NHKなどの放送事業者や雑誌社、新聞社へ売り込むにしても、我々では厳しいと思いますよ。第一“相場”が読めません!」「確かにそうだ」リーダーは腕を組んだ。「中身にも寄りますが、同業他社の“情報”については“U事務所と連合艦隊”の意見・同意が無くては無理でしょう?取引企業の内部文書にしても同様です。まあ、あり得ないでしょうけど“スキャンダルネタ”なら交渉次第ってとこですかね?」「我々の手では無理がありか?」「ええ、誰かが間に入るか?“情報”を専門に扱う業者に接触するか?の選択になりますよこれは!」“シリウス”の意見は的を射ていた。「そうなると、マージンを取られたらアウトか!業者と言っても知り合いは居るか?」リーダーは宙を仰いだ。確かに1事務所の“浮沈”を左右する大事だ。採算重視は当然であり、1円でも多く手渡せなくては意味が無い。4人の間に沈黙が流れた。「おい、N坊“泣き虫CAT”のオフィスはどうだ?」F坊が思い出したように言う。「10年は会ってないが、ヤツなら近所のはずだな?」「“泣き虫CAT”とは何者だ?」リーダーが誰何する。「俺達と同様に施設で育ったヤツで、クスリと殺し以外なら何でもやるヤツですよ。裏とも取引があるし、顔は広いですよ。ヤツなら捌きが着くかも知れません。ただ、音信不通になって10年経ってますから、都内を捜索して繋ぎをつけなきゃなりませんが・・・」N坊とF坊は遠い目をして昔を見ていた。「最後の会ったのは10年前で間違いないか?」リーダーが確認する。「ええ、施設の同窓会にフラッと来てそれきりですが・・・。確か神田のビル・・・何て名前だったか・・・?」F坊は必死に記憶を手繰る。「“泣き虫CAT”と神田だな?!よし、俺の知り合いに“探し”のプロが居る。そいつに捜索依頼を出して見よう!」リーダーは携帯を手にして連絡を取り始めた。「“泣き虫CAT”とは親しいのかい?」“シリウス”がN坊とF坊の顔を見る。「ワルガキ3人組の一角よ!」「昔から商売っ気丸出しのやり手だった!」2人はそう振り返った。「おい、捜索してくれるそうだ。“泣き虫CAT”と神田のキーワードがあれば、24時間以内に居所を突き止められるぞ!」リーダーが言った。「後は、“泣き虫CAT”が無事ならいいんですがね」N坊が呟く。「なーに、アイツがくたばるタマか?それより、早いとこ“情報”を吸い上げて分析しとかねぇと時間が無い!」F坊が俄然張り切りだす。「善は急げ!“情報”も鮮度が命だ。大車輪でかかれ!」リーダーが発破をかける。3人は猛然と仕事に掛かった。リーダーは、そんな3人の背を見て「コイツらが敵でなくて良かった」と呟いた。作業は夜を徹して行われた。