<糖尿病から失明の危機>
◆糖尿病性網膜症の恐怖!
近年、眼科で最も問題視されている病気の一つが、「糖尿病性網膜症」です。この病気は糖尿病の合併症の一つで、見にくいと感じることもなく進行し、自覚症状が現われたときには、すでに失明の危機に瀕してしていることも多いのです。
現在は、レーザー治療や硝子体手術などの治療法の進歩により、網膜症の進行を防ぎ、失明を防止できるようになりました。しかし、治療の進歩にも関わらず、最近でも糖尿病性網膜症は、「中途失明原因第2位」なのです。
日本では長い間糖尿病性網膜症が失明原因のトップでしたが、近年老齢人口が増加したことから老齢性の緑内障が第1位となりました。国際的に見てもやはり糖尿病性網膜症が失明原因のトップに“君臨”し続けていることに留意して、糖尿病患者は眼科検診を疎かにしないことが大事です。
糖尿病を発症して、3~5年間程放置していると、30%以上の確率で糖尿病性網膜症を発症すると言われています。これを防ぐには、早期発見・早期治療につきますので、年に1~2回は眼底検査を受ける事が最も大切です。
◆糖尿病性網膜症の原因は?
目の奥の方には網膜という光を感じる膜があり、ここに多くの細い血管が全体に張り巡らされています。糖尿病になると、血液の粘性が高くなり血管を詰まらせて血管に多くの負担がかかり、血流が悪くなっていきます。そうなると、網膜の隅々まで酸素や栄養を十分に送れなくなるため、細くてもろい「新生血管」が生まれます。新生血管はもろいので頻繁に出血してしまいます。眼球内(硝子体)への出血を繰り返すうち、増殖性繊維がでてきて、ついには網膜剥離を起こします。
◆糖尿病性網膜症の経過
糖尿病性網膜症は、その網膜の血管が侵される病気です。その進行状態により次の3段階に分けられます。
危険度1 → 危険度2 → 危険度3
単純性網膜症 増殖前網膜症 増殖網膜症
①単純性網膜症:網膜の血管がもろくなるために多数の出血が出現します。網膜の中心部が侵されない限り視力は低下せず、きちんと血糖をコントロールすれば、改善できます。
*内科的治療が大切です。
②増殖前網膜症:血管がつまって網膜に無血管領域が出現します。この時期は危険な段階への進行を食い止める治療(レーザー治療)のために最も重要です。
*レーザー治療が必要になってきます。
③増殖網膜症:新生血管という、非常にもろい血管が出現します。この時期でもまだ視力が良いことも多いのですが、新生血管が破れて硝子体出血を起こし、突然見えなくなったり、網膜剥離(はくり)を起こしたりします。治療が難しくなり、失明の可能性が高くなります。
*積極的なレーザー治療と硝子体手術が必要になります。
糖尿病性網膜症は、神経障害、腎症と共に糖尿病の3大合併症の1つです。
糖尿病性網膜症が怖いのは、目がかゆい、痛い、かすむといった自覚症状がないままじわじわと進行することです。ある日突然「真っ赤なカーテンがかすんで見える」などの訴えで眼科を訪ねることもあるのです。このような自覚症状が現れるころには深刻な状態になっていて、失明を余儀なくされることも覚悟しなければなりません。早期発見と早期治療が、失明を防ぐ重要なポイントになります。
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