On The Road

小説『On The Road』と、作者と、読者のページです。はじめての方は、「小説の先頭へGO!」からどうぞ。

4-31

2010-02-11 21:24:04 | OnTheRoad第4章
 僕がいつもより早く着いたのに、サトウさんは店の掃除をして待っていた。ショーケースの中はきれいに拭きあげられて、春っぽいピンクや薄い緑の和菓子が並んでいる。

 「早く行っても銀行はやってないぞ」と言いながら、サトウさんはライトバンのキーを出した。「商店街を一回りしてみようか」

 僕は黙ってキーを受け取った。どこかの神社の交通安全のお守りがついていて、サトウさんっぽくないからアキエさんがつけたんだろうと思った。

 ライトバンの運転席に座ってブレーキペダルを踏んだ。ハンドルが近すぎて、僕はシートを後ろに移動した。ルームミラーの角度を変えて、キーを差し込んでイグニッションをまわす。
 はじめて路上教習に出たときの緊張がおそってきた。サトウさんが店のシャッターを下ろして助手席に座った。

 「よろしくお願いします」と僕は言ってゆっくりアクセルを踏んだ。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。