カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

贅沢な椅子

2011年05月24日 | Articles

今の家に住む事が決まり、一番最初に購入した家具のお話です。

私ごときの分際で、分不相応なことは百も承知で購入したものでございます。

それは、コレ。

マッサージー・チェアー

 

贅沢品ではあるのですが、私達にとりまして正に救世主。今や無くてはならない椅子です。

肩こり、腰痛の辛さをご経験の方々も多いかと思います。

私は陶芸家でございまして、それはもう全身コレ筋肉痛とコリの固まりでございます。

アパートに住んでおりました頃は置く場所も無く、

努々マッサージチェアーの購入など考えても居ませんでした。

それが、この家を購入するに当り突然現実のものとなりまして、

何を省いてもマッサージチェアーだけは・・・の一念で探し求めました。

マッサージチェアー等どこにでも売っているのですが、

この明るいベージュを探すのにひと月掛かってしまいました。

真っ白も考えましたが、強すぎます。どうしても明るいベージュが。。。。。

見つけました時は、本当に嬉しかったですよ。

マッサージに通う事を考えれば、投資としては安いものだと理屈をつけました。

この椅子は、ゲストの皆様にも自由にお使いいただける様、ベッドルームではなく、リビングに設置してあります。

座ったまま動かなくなる方ももいらっしゃいます。

結構結構。

多くの方にお使いいただければ、罪悪感も軽減いたしますデス。

レザーですし、色が色ですので、手入れはこまめにしております。

私の場合、汚れ落としと保護を兼ねてミンクオイルを定期的に摺り込んでおります。

こちらのコンディショナーは本来靴のお手入れに使うものですが、大変優秀です。

一日の終わりに、この椅子に腰掛けるのは至福の時間でございます。

 

では失礼して・・・・・


魔法の一滴

2011年05月04日 | Articles

私のファッションやコスメを選ぶ基準はシンプル、フレキシブル、コンパクト。

これは旅が多い事によるものだと思います。

航空会社のセキュリティーや荷物の重量制限は日に日に厳しさを増し、

旅の荷造りに頭を悩ませる方々も多いと思います。もちろん私も。

特に基礎化粧品やヘアケア製品は何しろ重い!かさばる!。

ホテルのアメニティーも益々充実しているとは言え、

使い慣れたものが安心感を与えてくれる事も事実です。


旅の醍醐味は日常と違う時間を過ごすことですから、全て現地調達というのもアリ。

ただ時としてその旅が仕事がらみだったりすると、

冒険は差し控えなくてはならなかったりします。

土地の水や化粧品が合わなくて、

カブレたお顔で仕事相手にお目にかかる訳にもいきません。

そんな私が出会ってから3年間、信頼し頼り切っている一品がこちら。

手のひらにすっぽり納められる小瓶に入った魔法のオイルです。

ジャスミン、パチョリ、イランイラン等のアロマオイルに、

シアバターがブレンドされていて、これ一本で全身の保湿が可能です。

私はこれで乾燥によるお肌のトラブルは一切なくなりました。

とてもクオリティーの高いオイルですので、シャンプーやトリートメント、

ハンドクリーム、保湿パック、乳液、リキッドファンデーション等に混ぜて使えます。

勿論そのまま使う事も出来ます。


私はこのオイルと出会ってから、

日常では季節に合わせて化粧品を変える必要が無くなり、

旅に持って行くコスメが激減しました。

湿度の高い国、低い国、寒い国、熱い国。

どこにでも、スペシャルケアはこれ一本持って行けば大丈夫です。

機内持ち込みの荷物にしても、

セキュリティーチェックで引っかかることも有りません。

乾燥した機内で一滴を手のひらに取ってマッサージし、

その手で顔を包み込むようにして深呼吸しますと、

アロマの香りがリラックスさせてくれます。


私の魔法の一滴のお話でした。


では 

 


マティーニグラスの終着駅

2011年04月25日 | Articles

私は出来るだけ作り手の顔が見える物を側に置きたいと思っています。

器にしろ家具にしろ美術工芸品にしろ、見る度に作った人の事を思い出し、

モノに命を感じることが出来るからです。


一方、作り手は判らないけれども、それと出会った時の自分自身の心の動きや、

胸のときめき等を思い出すことが出来るアンティークも同様に好きです。

お天気のいい日にお散歩をかねて近くのアンティーク街を歩いている時や、

旅先でふと立ち寄ったアンティークショップで思いがけない出会いも有ります。

これは大分前に出会った小振りなマティーニグラスです。

普段は慎重派の我がバーテンダーが、知らないうちに迷う事なく会計を済ませていました。

少し驚きましたが、それには理由がありました。

グラスの裏に Made in occupied Japan の文字。

占領下の日本。。。。。

これは戦後アメリカの占領下に有った日本で作られ、輸出された物です。

秋を思わせる草花が優しくシンプルな線で描かれていて、

大分使われたのでしょう、金を吹き付ける為の接着剤として使用された

赤漆の下地がのぞいています。

『誰がどんな気持ちでこのグラスを作ったのかと思ったら、家に連れて行こうと思ってさ』

バーテンダーが言いました。私ももちろん大賛成です。

6客セットで揃っていましたが、どれもかなりの傷みが有ります。

それでも、私達は使いましょう!という事になりました。使ってあげたいと思いました。

これを作った方はもうお亡くなりになっている可能性も高いと思います。

でも敗戦の日本でコツコツと、もしかしたらはっきりとした用途さえ判らぬまま、

このマティーニグラスを作っていた職人さんの生きた証が、

長い年月と海を越えて、日本人の私達の元に巡って来てくれたのです。

よくぞ今まで、壊れもせずに元気で頑張っていてくれましたね。

もう大丈夫、安心して下さい。あなたの旅は終わりです。ここが終着駅。

これからは私達とずっと一緒に暮らしていきましょう。

あなたの主のバーテンダーは、あなたをとても大切にしてくれるはずです。

時々、『ちょっと小さ過ぎるなー』などと文句を言う事も有るかもしれませんが、

どうぞ気にしないでね。酒飲みの戯言ですよ。

 


白いインテリア ~後編~

2011年04月20日 | Articles

 

この写真は引っ越して来たばかりで何もなかった頃の我が家。

王様も私達とほぼ同時にこの家の住人になりました。

どんな毎日が始まるのか想像もつかなかった頃です。

 

インテリアは、自分達で決めました。

何もないところから一軒の家丸ごとの家具を選ぶというのは骨の折れる作業でした。

気に入ったものが見つからなければいつまででも探すつもりでしたので、

結局のところ最低限必要な家具が揃うまで一年かかりました。

ひとつとして同じお店で家具を購入しなかったので、

バラバラに配達されて来る家具の搬入時には、

他の家具と本当にマッチするのか毎回ドキドキでした。

人間の色彩や形の記憶等、全く当てになりませんし、

例え写真に撮ったところで風合いとか温度感等は、実際並べてみて初めて判る事です。

 

 

  

インテリアを考えていく上での手がかりは、

それまで訪れた様々な国々のリゾートホテルのインテリアと、

私が学生時代アートの学生として学んだギャラリーデザインのノウハウだけ。

 

 

家とそこで暮らす人達がチグハグでは、到底心地よく暮らす事は出来ません。

インテリアを考える上で、住む人のライフスタイルやキャラクターを考慮する事は大切です。

私達は二人揃って生活臭のしない人という印象を周囲の方々に与える様です。

これはネガティブ・ポジティブが表裏一体となっているものだと思いますが、

恐らく妥当な評価だと思うべきだと認識しています。

一番大きな理由は、私達が大人だけの暮らしをしているという事、

それから聞かれれば答えますが、自分たちのプライベートを好んで話さないことや、

会話に周囲の特定の人物が登場する、いわゆるゴシップが苦手というのが理由の様です。

そのような私達が暮らす家ですから、アットホームなインテリアは方向違いです。


住まいは住む人と、そこを訪れる人の為のもの。

当然インテリアもそれに付随する訳ですが、もうひとつ忘れてならないのが、

建築物としての家のキャラクターと家の周囲の環境とのハーモニーではないかと思います。

よほど特別な好みが有るか、とんでもなく人里離れた場所に建てる場合を除けば、

家は既に出来上がっている物件を購入するのがこの辺りの習慣です。

そして家は一軒一軒全くデザインの違うものを建てるのではなく、

その地域を大規模に宅地開発してひとつの街を作り上げるので、

近隣の家々は、こまごまとした間取りや敷地の広さに違いが有っても、

共通する空気感とか雰囲気が有りますから、

私はそのハーモニーを大切にしたいと思っています。

引っ越しをしてからかなり長い間、私達は家具を買わず、

引っ越しの段ボールで御飯を食べたり、唯一持っていたベッドを使って、

家の中で一番小さな部屋を中心に生活していました。

この家を知ってからでなければ、家具は選べないと私が主張しましたので。

朝日が昇って、夕日が沈み、夜の静寂に包まれる家は、ちゃんと呼吸をしているのです。

庭の木々には、一日中沢山の野鳥も尋ねて来てくれます。

別の場所での今までの私達の生活をどやどやと持ち込んで、

好き勝手に自分の好みを押し付けられては、

ずっとここで住人達の生活を見守って来た家もたまったものではないでしょう。

色々考えた結果、私は自分達の好みよりも、

家が喜ぶインテリアを作る事にしました。

真っ青な空、沢山のパームツリー、ブーゲンビリアの鮮やかなピンク、プールのブルー。

これらの色に負けず、尚かつ主張しすぎず、清潔感がある色。

インテリアは全て白にする事に。ベージュ、クリーム、生成り、純白・・・・・

様々な素材の、色々な白を重ねていく事で、リズムや奥行きを出す事にしました。

 

家具はアメリカ各地、インドネシア、タイ、マレーシア、インド、日本から。

新しいものもアンティークも取り混ぜています。

産地や年代は違っても、木の素材を活かしたものや、細工の面白いものなど、

自分たちが魅力を感じるものを集めていくと、無国籍ながら調和が生まれます。

それらを取りまとめているのが様々な白。

白は光を集めますから、家具に照明を当てているのと同じ効果が期待出来ます。

 

私は陶芸家ですので自分の作品はもちろん、

仕事柄その他のアート作品も家のあちこちに置く事になる訳ですが、

インテリアは、そのフレームとしての役割も果たすものでなくてはなりません。

そんなところからも、色の多用は避けたいと思いました。

家具の配置やアートの展示等については、

学生時代レポート提出の為に数えきれない程美術館に足を運んだ事や、

ギャラリーデザインの授業の一環で、何度もギャラリーの内装をした経験が役に立ちました。


私達は自分たちの暮らすこの家が好きですが、

これが私達のインテリアの一番好きなスタイルなのか?と尋ねられれば、

実のところ答えはNOです。それほど固定された好みを持っていないと言うべきでしょうか。

この家でなければ、私達は全く違うインテリアを考える事でしょう。

自分の好みで飾るのではなく、『家が喜ぶインテリア』。

こんな考え方もあるというお話でした。


The End.


 


白いインテリア ~前編~

2011年04月19日 | Articles

昔々、毎週末を海で過ごしていた頃、とても面白い経験をしました。

ヤドカリのお引っ越しです。

早朝の砂浜を、家を背負った大小さまざまな大きさのヤドカリご一行様が、

えっちらおっちらと歩いていたのですが、その中に家を背負っていないお方が!

ご存知の通り彼らは自分の身体の成長に合わせて住み替えをする生き物。

私が見た裸ん坊は、その時まさに新居を探していたのだと思います。

そこでワタクシ、急遽不動産業を開始いたしまして、

手頃な大きさの貝をヤドカリ君の前に並べて、お勧めしてみました。

一瞬戸惑っていた彼も、そのうちに私の並べた貝に興味を持ち始めて、家選びを始めました。

頭から入って行くのですよ、彼らは。そして突き当たりで一回転するのです。

サイズが合わないのか、インテリアが気に入らないのか、

幾つかの貝からはすぐに出て来てしまいます。気難しいお客様ですな。

ところが!幾つか試した後、しばらくしても出て来ません。

そのうちに上半身を乗り出して、エイヤッと担ぎ上げたと思ったら、

そのまま歩いて行きました。なんだか凄く嬉しかった私です。


その出来事以来、私はヤドカリのように生きたいと思っていました。

自分の身体が心地よく納まる大きさの仮の家で、

スーツケースひとつに納まるだけの所持品を持ち、

行きたいところにいつでも行かれる人生でありたい。

そういうのが、私には似合っているように感じましたので。


そんな私が有る時突然、家を持つ事になりました。

ヤドカリに自分で持ち上げる事の出来ない家など必要な訳が有りません。

お話が有った当初は、私にとっては手に入れるものより失うものの方が遥かに大きいと感じました。

最後の最後まで迷いましたが、最終的には自分には相応しくないと思ったら、

その時は、あのヤドカリのように出て来てしまえば良いのだと思いました。

マイホームを持つ事が夢で、その為にコツコツと蓄えをしてる方々も居られる中、

感じ悪く聞こえるかもしれませんが、人生に必要な荷物は人それぞれで、

私達の人生設計の中に、自分の所有する居を構える事が含まれていなかったのです。

なので、それまでも何度かお話は有りましたが、断り続けて来た私達でした。

でも何故でしょう?その時は直感的に、

家を持つという経験を人生に加えるのなら今かもしれないと感じたのです。

ひとことで言えば " If God gives you lemons, make Lemonade " という事になるかな。

暮らし始めて3年。私達の判断は間違っていなかったと今のところは思える日々です。


このような経緯で、今の家で暮らす事になった私。

家具はほとんど何も持っていませんでしたので、引っ越しは楽でしたが、

インテリアは一から全て選ばなければなりませんでした。

これは私にとって、楽しいというよりも非常に大きなチャレンジでした。

そんな私が選んだインテリアは全て白。

あらら自分の記録の為にも書いておきたくて、少し長くなってしまいました。

その白いインテリアについてお話しさせて頂くのは、また明日にしましょう。


To be continued.