カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

山賊焼き ~私の郷土料理~

2011年11月30日 | Food

同じ県内で暮らしているにもかかわらず、

直ぐ近くの郷土料理を知らぬまま過ごして来たことを知って、愕然とすることがございます。

門外不出のレシピな訳ではなく、そこで暮らす方々にとっては極々当たり前の家庭料理で、

よもやその料理を召し上がらない家庭が有ることなど想像したことも無く、

イコール、改めて紹介するなどとは考えても見なかった、という様な場合。

本日ご紹介する山賊焼きもそのような一品でございます。

私の実家からそう遠くない町の郷土料理、山賊焼きを知ったのは、もう大人になってから。

小さな居酒屋さんで衝撃の出会いでございました。美味しいんです。ホントに。

私は、そのお料理の由来も伝統的なレシピも知りません。

既にアメリカで暮らし始めてから突然懐かしく思い出し、もう食べたくて食べたくて・・・

舌が覚えていた味だけをたよりに再現致しました。

ショウガ、ニンニクのみじん切り、醤油、酒、砂糖、ごま油。

ショウガとニンニクは是非スリおろさずに、みじん切りでお願い致します。

後ほど焼き付けた際に、こんがりと香ばしいアクセントになるのです。

そこに鶏もも肉を漬込みます。鶏肉は肉類の中でも味の入り難い食材ですので、

漬込む時間は最低半日、なんなら丸一日でも結構です。

鶏もも肉は味も濃くとても美味しい部位ですが、黄色い脂の処理を手抜き致しますと、

がっかりな一品が出来上がります。

丁寧に脂を取り除くことで、もも肉ならではの食感と美味しさを堪能出来ます。

漬け込んだ鶏肉に片栗粉を軽くまぶし付けます。

唐揚げのようにまんべんなく付ける必要は有りません。

それを少し多めのサラダオイルで焼き付けます。

熱々のフライパンにひと並べに致しましたら、絶対にいじらないで下さい。

家庭での肉料理の失敗の原因ナンバーワンは、いじり過ぎにあると私は踏んでおります。

持ち上げたりかき混ぜたりすることで、べたっと油の回った仕上がりになってしまうのです。

このお約束を守って頂くと、このように水分も出ず、カリッとこんがり焼けます。

片面が焼けましたら、一気に裏返してもう片面を同様に焼き付けます。

焼き上がりまでの時間や、焼き色などを揃える秘訣はただ一つ、

下ごしらえの時に、肉の厚みを揃えることに有ります。

大きさが若干違っていることは全く問題有りません。厚みです、厚み。

焼き上がりを、たっぷりの千切りキャベツの上にドドンと乗せて出来上がり。

レモンをギュッと搾っていただきます。

今回はキャベツを他の野菜に置き換えることは断固お勧め致しません。

それはトンカツに添えられた千切りキャベツ同様、このお料理に必要不可欠なのです。

 

私は一時期、山賊焼きの名店を食べ歩きましたが、

唐揚げのように一枚肉を揚げたものから、焼き鳥のように焼いたものまで色々。

私も以前は唐揚げにしていたのですが、

本日ご紹介した油で焼き付ける方法が一番好みに合いまして、こちらに落ち着きました。

実はね、アメリカの鶏肉には独特の臭みがあるんです。

これは与えている飼料の違いで、品質が劣る訳ではないのですが、

地鶏など、日本の美味しい鶏肉を知っている私には、ちょっと気になります。

こちらはそんな私の数少ない鶏を主役とした一品です。

山賊焼きは漬込むタレがその臭みを消し去ってくれるのです。

 

思い出の味、故郷の味はいつも心を暖かくしてくれるものです。

この次帰国した際には、是非本場の味を再確認して来ようと思う次第です。

私のレシピとは全然違ってるかも。あはは・・・

 

では



五目炒り豆腐

2011年11月29日 | Food

サザンカリフォルニアに暮らして13年程になります。

この間のお豆腐の普及率の伸びは目覚ましいものがございます。

LA界隈は、あらゆる民族が暮らす土地柄ゆえ、

世界各国の食材の確保は困難とは申しませんが、

専門のマーケットに足を運ばなくてはならない食材もございます。

13年前は、まだお豆腐もそのような食材に分類されておりました。

お豆腐を購入出来たのは、アジア系マーケットかオーガニック食材や、

ベジタリアン御用達のマーケットなどに限られておりました。

お味も少し解釈が違っていて、冷や奴でお豆腐の風味を味わう気持ちにはなれませんでした。

ところが今やどこでも手に入ります。お味もそこそこ美味しくなりましたよ。

お豆腐だけでなく、調味料や乾物なども普通に手に入るようになり、有り難い限りです。

こちらの方々が、家庭でお豆腐を召し上がる場合、

お肉の代用としてお野菜とともに炒め合わせることが多いようで、それもまた美味。

お友達のお宅で、思いがけないお豆腐の調理法と出会うのも楽しいものです。

 

さて、本日は我が家の定番中の定番のお豆腐料理、五目炒り豆腐をご紹介。

こちらも愛読書である池波先生の鬼平犯科帳からヒントを得た一品です。

にんじん、インゲン、干し椎茸、油揚げを濃いめの甘辛味で煮付けます。

煮汁が僅かになり、野菜に味が入りましたら、乾燥わかめを加えます。これで五品目。

ワカメの代わりに切り昆布でも、ひじきでも結構です。

ワカメが若干戻り加減になるまで加熱を続けますが、海藻の歯ごたえは残しておきます。

煮汁は完全に炒り付けず、鍋を傾げてこの程度は残します。

この五目煮は、大変便利。少し多めに作って翌日の御飯には別のメニューで再登場。

茶飯を炊いて、炊きあがりに具を乗せ蒸らしますと五目混ぜ御飯に、

具材をもう少し小さく刻んで、卵焼きに加えますと五目卵焼きになります。

その他の材料は、、ペーパーで20分ほど水切りをした木綿豆腐

刻んだ青ネギです。

ノンスティック加工のフライパンにお酒を少量加えて中火にかけます。

フライパンが暖まって参りましたら、お豆腐を切らずにそのまま入れます。

お豆腐には、可能な限り金物を当てない方がよろしいかと思います。


木べらを使って切るようにほぐします。手で荒くほぐしながら入れる方法も有ります。

包丁で切ったきれいな断面よりも、手や木べらでほぐした方が味馴染みも断然よろしいです。

お豆腐が暖まり始めましたら、具材を煮汁ごと加えます。

フライパンをあおって混ぜておりますと、煮汁がお豆腐に絡んでいきます。

食材のすべてが充分に暖まりましたら、火を強めて卵を流し込みます。

この時、フライパンの温度が低いと、卵の生臭さが出てしまいます。

卵を流し込んだあと、焦って混ぜないでおくんなまし。

具材に濁った卵液をまぶしつけた様なのは、美味しくございません。

お豆腐をかき分けて、直にフライパンの熱に当て、半熟状態になってから軽く混ぜます。

仕上げに青ネギといりごまを一混ぜして出来上がり。

ごま油で仕上げても良いのですが、今回は極限まであっさりと。

お豆腐を水切りしてあることで、不要な水分は出ず、

具材の煮汁を即座に吸収し、短時間でふっくらと、味も染み込んでおります。

 

具材を煮るところからのスタートですので、シンプルながら多少時間のかかるお料理ですが、

植物性タンパク質、ビタミン、カロチン、ミネラルなどの栄養素をバランスよく含んだ、

家庭でしか頂くことの出来ない滋味溢れる一品かと思います。

 

では


 


鶏団子のあっさり鍋

2011年11月28日 | Food

今の季節、こちらでは夕方5時にはとっぷりと日が暮れます。

ついうっかり、スタジオに長居をしてしまい、暗くなった部屋に戻ってビックリ!

電気も点いていない部屋に王様がぽつん。 ごめ~ん。

今夜の御飯何にしよう 等と焦ってしまういうことも有ります。

気温もぐんぐん下がって参ります。

予定を変更して今夜は鍋物が良いな、などと思いついた時によく作る、

鶏団子のあっさり鍋をご紹介。

鶏ひき肉です。私は買って参りましたらその足で、写真のように冷凍してしまいます。

2枚のラップの間にひき肉を挟んで薄く伸ばします。

それを菜箸などを使って上から押して小さめに等分。

そのままビニール袋に平らに入れて冷凍庫へ。


ひき肉は、肉類の中でも素晴らしく応用範囲の広い食材です。

ほんの少しの量で、美味しいスープがとれます。

沸騰したお湯の中に、ひき肉と塩少々を入れて、

鍋がはしゃがない程度の火加減で10分ほどアクを取りながら煮込みます。

強火でぐらぐらと煮立てますと、スープが濁ってしまいます。

スープをとり終わったひき肉は、王様の御飯の素晴らしいトッピングになります。

これを牛ひき肉で致しますと、見事なコンソメベースが出来ます。

こんなことを塊肉でするのは大変なことですが、ひき肉ならあっという間。

そのような使い方には、沢山の量は必要ないのです。

ですので写真の様な冷凍の仕方がとても便利。

このように、凍ったままのひき肉をパキパキと割って必要分だけ解凍出来ます。

平にしてあるので、解凍時間もとても早いです。

鶏団子を作ります。

刻んだ干し椎茸、ネギ、片栗粉、塩、コショウ、酒、醤油、ごま油少々、卵、ショウガ汁。

これをスプーンでサクッと混ぜ合わせます。

ひき肉はよく練るという方も多いかと思いますが、私は練らない派。

理由は簡単、手の熱を加えることで肉の風味が変わるからです。

餃子もハンバーグも練りません。


こんな風に全体的に混ざったら、今日のお鍋の第一の主役は準備が整いました。

さて、白菜。私はこのように芯と葉を別の切り方で使います。

白菜は、鍋物の添え物扱いをされる傾向に有りますが、実はしみじみと味わい深いお野菜です。

芯の白い部分には甘さが、葉の部分にはさわやかな風味とデリケートな食感があります。

これを、小学校の家庭科で教わった様な削ぎ切りで処理してしまいますと、

芯の甘みが出て来る頃には、葉はトロトロ、そして白菜特有の臭みが出て参ります。

ですがこの切り方ですと、それぞれの部位を時間差で調理出来、

白菜本来の旨味を味わい尽くすことが出来ます。

芯は繊維に沿ってやや斜め切り、葉は、繊維を断ち切るように切ります。

第二の主役、白菜の準備も整いました。

本日の出汁は、昆布、塩、酒。常夜鍋のようにお酒はたっぷり使います。

鶏団子からも美味しい旨味が出ますので、あっさり仕上げます。

あっさりとは申しましても、テーブルでポン酢などの調味料を足すお鍋では有りませんので、

スープまで飲み干せる程度に、にきちんと味をつけて置く必要があります。

沸騰した出汁に、鶏団子を2本のスプーンを使って丸めながら落としていきます。

全量鍋に入って、出汁が再度沸騰しましたら白菜の芯を加えます。

その後、鍋が再度湧き始めましたら、お豆腐、春雨を乗せます。

春雨は戻す必要は無く、乾燥したままのものを半分の長さに切って使いますが、

ほぐれ難い場合は、流水に当てて、水を含ませると扱い易いです。

お豆腐が入りましたので、鍋の温度が下がります。再度沸いて来るまでしばし待ちます。

出汁の温度が上がったことを確認して、最後に白菜の葉を山盛りに乗せて蓋をします。

蓋をすることで、白菜の葉は直接出汁に触れるのではなく、出汁で蒸されます。

これが、白菜の葉を美味しく頂く秘訣です。

2~3分して蓋を開けると、この様な感じ。

白菜は暖まってはいますが、煮えてしまっては居らず、

シャキシャキとした食感が残っています。

さ、鶏肉団子のお鍋が出来上がりました。

 

こちらのお鍋、途中で具材を足しながら頂くのではなく、

それぞれの火の通りを考えながら時間差で具材を全て入れてしまうお鍋です。

ですので鍋奉行様の出番は有りませんが、ゆっくりとお話ししながら頂けます。

柚子こしょうやスダチなど、お好きな香りを添えて。

 

では



3倍サラダ

2011年11月26日 | Food

お野菜はお肉の3倍食べましょう!

このようなことを、子供の頃から聞いて参りました。

この3倍と言う大雑把な表現は、大雑把なワタクシ向きと言えますが、

実のところ、日本のように火山灰から成る土壌で育ったお野菜ですと、

含有する各種ビタミンが少ないため、必要摂取量は動物性タンパク質の、

4倍とも5倍とも言われている様子。これが確かな数字かどうかは未確認ですが。。。

いずれにいたしましても、お野菜をお肉よりも沢山頂くことは、悪いことではなさそうです。

 

本日も、最近の我が家ではもはや習慣となりました、

炭水化物抜き、お野菜たっぷりの一品”3倍サラダ”をご紹介致します。

豚肉の肩ロースの薄切りです。脂の少ない部分ですが、豚バラでもおいしく出来ます。

塩、コショウ、酒、醤油、片栗粉を揉み込んで20分程置きます。

前もって片栗粉まで揉み込むことで、お肉が柔らかくなります。

醤油、酒、みりんを同じ比率で合わせ、お砂糖はお好みで。

要は照り焼きの合わせ調味料です。

油を薄くひいたフライパンで、お肉をこんがり焼きます。

さて毎度のことながら、お肉をほぐそうとするあまり、激しくかき混ぜないで下さい。

片面が焼けたらフライパンをあおって裏面を焼いて下さい。

片栗粉が揉み込まれているのと、かき混ぜることでフライパンの温度を下げていないので、

ここまで来ても、全くお肉から水分が出ていません。これが大事なのです。

まだ少し、赤い部分が見えますが、この段階で合わせ調味料を一気に注ぎ込みます。

しっかり味付けすることで、あっという間に火が入りますので、

完全に火が通ってから調味料を入れたのでは、加熱し過ぎになります。

水分を全く出す事無く、きれいな照りが出ました。

火を止めて、炒りごまをたっぷり加えて一混ぜします。

お好みのお野菜を、ごま油と極々少量の味ぽんで和えます。

濃い味付けをしたお肉が、ドレッシングの役割を果たしてくれますから、

お野菜だけを味見した段階では、ごま油の風味だけで塩気はほとんど感じない程度で充分。

大きなお皿に、和えたお野菜をたっぷり盛って、上から熱々のお肉を乗せて、出来上がり。

この日私は、生食用ホウレン草、バターレタス、ラディッチョ、ニンジン、キュウリ、

そして彩りにチェリートマトを使いました。どうぞ豪快に混ぜてお召し上がりください。

 

生野菜に暖かいお肉を乗せて混ぜますと、

やんわりと野菜が暖まり油分が回り、それに伴って野菜の嵩が減り、味が入ります。

ですので、お野菜はこれでもかというくらい準備なさって下さい。

お肉の照り焼きなどは、特にお米が恋しくなりがちですが、

このサラダですと、そのような寂しさを感じずに、

とってもおいしく大満足ですよ。

 

Have a healthy and delicious weekend every body !




最高のアート

2011年11月25日 | Controversial

”貴女がうらやましいわ!こんなに素敵なものを創り出すことが出来るんですもの。

私にはアートの才能なんて全くないのよ。”


時々、そんなことを言われることが有ります。

その言葉は、私を賞賛する為であったり、激励する為であったり、

いずれにしても悪意から出ている言葉でないことは明白です。

 

でも私はいつも心の中で、”それは違う”って思うんです。

私にとってアートは自己表現。

陶芸という、形の残るものを作っているから、

それが特別に見えることも有るのかもしれません。

また、形には残らなくても、華々しい舞台に縁取られた

ダンスや歌、お芝居もアートです。

 

でも世界の頂点に立つ超一流のアーティストさえ、

絶対かなわない最高のアートがあります。

それは、美しい笑顔です。

”アートは人間だけが創り出せるもの”

私が美術の勉強を始めた日、教授に言われた言葉です。

 

モノを創り出すこととは縁がなくても、

人は皆、アートの才能を持ってこの世に生まれて来るのです。

人間の表現として最高のアートは笑顔だからです。

笑顔は人を慰め、癒し、勇気づけ、励ます無限のパワーを持っています。

笑顔は弱いものを安心させ、安らぎの気持ちを与えます。

だから私はいつも思うのです。

動物に対しても、人間同士であっても、

特に自分より弱い者に対して笑顔以外の顔を向けることは、

虐待です。

 

アート、してますか?