
舞初メ、謡初メ、笑初メ。
正月気分が未だ色濃く残っている5日の夕刻、千駄ヶ谷の国立能楽堂へ大蔵流狂言を観に行った。演題タイトルは『新春狂言 舞初メ、謡初メ、笑初メ。』(冒頭の写真)だった。
プログラムは次の通り…
一、舞初式
大蔵流茂山家本家で1月4日に行われる「舞初式」の再現
二、新春トーク
三、福の神
古典演目
四、柑子(こうじ)
古典演目
五、新作 流れ星X 茂山千三郎/作・演出
満場笑いと拍手の嵐だった。とくに新作がウケタ。
近頃の東京の寄席へ行って落語を聞いても、こんなには笑えない。原因は噺家が下手だからだ。観ていてハラハラする真打ちが多い。どこかオドオドしていて進取の気性が見受けられない。芸が拙いくせに、先輩の悪い癖だけは学んでいて、妙に図々しい。伝統を守るということの意味が分かっていない。指導者にも一因があるのだろう。そこへ行くと、上方の噺家の方が未だマシだ。
大蔵流の若手狂言師は、十分に狂言の手法と伝統を守りつつ、新作に挑んでいる。
★「五、新作 流れ星Ⅹ」の粗筋は…
2005ーーー
温暖化がすすみ住めなくなった地球から、
宇宙の流れ者となった男は、
ある生命体反応のある星に漂着する。
この星もまた温暖化の過去を持っていた。
この星の住民 『ボイボイ星人』が
その温暖化の危機をある発明で救ったことを
知った地球人は…
ゲーム機(を模したボール紙)が登場するやら、パソコンやネットの用語が飛び交うやら、場内の老いも若きも拍手を惜しまず、笑い転げたのだった。
狂言も発生して未だ間もない頃は、身の回りの品を使い、当時のファッションで演ったのだろう。だからこそ共感を呼び皆が笑えたのだ。現在なら定めしパソコンやゲーム機だろう。
誤解があるといけないので、断っておくが…
狂言も能ほどではないが、やはり伝統・型に極めてやかましい。彼ら若手の新作にも批判があると仄聞する。一方、彼らを温かく見守る風潮もあるやに伺っている。
東京の若手噺家は、もう一度足下を見つめ直して行かないと、自分で自分の首を絞める結果になりかねない。
ともあれ狂言界に芽生えた若き力に盛大な拍手を送りたい。
06.01.06