
「けーる」か「きえる」か:東京語
05年8月31日付けの東京新聞朝刊に興味深い特集記事が掲載されていた。地道ではあるが、貴重な研究作業だと思う。一端を要約してご紹介すると…
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東京語すなわち「東京の方言」地図を作ろうとしている人びとがいる。都立大名誉教授の大島一郎(77)さんとその元教え子たちだ。
大島さんの活動は、約20年前にさかのぼる。「全国から人が集まり、東京方言は特に変貌が激しい」という危機感から、都教委から予算を得て都内の言語を調査、1986年に「東京都言語地図」にまとめた。
大島さんは「県を挙げて方言調査を行っているところは多い。でも、東京ではそれまでほとんど手つかずだった」と振り返る。
しかしサンプル数も少なく、「もっとしっかりした地図にしたい」と、89年から当時の学生たちと「新・東京都言語地図」づくりを始めた。行政の支援を受けていないから、調査は難航している。研究会のメンバーは、手弁当で駆けつけた元教え子たちだ。
「新・東京都言語地図」は、あと一、二年後の完成が見込まれている。
高齢層・青年層が使う「消える」の方言の分布
「新・東京都言語地図」(制作中)より
【60歳以上】 ◆ 「けーる」 / ○ 「きえる」
伝統的な下町言葉「けーる」が都内全域に残ることがわかる。新島村で「うっきーる」「きーう」などがある。「新島はRを発音しない特徴がある」(研究会メンバーの國學院大教授 久野マリ子さん(56)という。八丈町で「きえろわ」などもあり、島嶼(とうしょ)部には独特の言葉が残る。
【20歳前後】 ◆ 「けーる」 / ○ 「きえる」
都内全域で、共通語の「きえる」が多数を占め、「けーる」が消えつつあるのが分かる。八丈町には「きえろわ」がわずかにみられる。
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このように高齢層と青年層の間には、「東京方言」の使い方に大きな違いが認められる。言葉の違いは、すなわち生活・文化の違いだ。世代間のギャップを叫ぶ前に、このような研究に対する理解を深める必要がないだろうか?
06.09.29
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