孫弟子まで含めれば一門は約100人。大看板の“六代目”襲名披露は、この日午前から東京・東上野の同協会事務所で行われた理事会で、後見の柳家小三治、副会長・鈴々舎馬風らの推挙によって急きょ決まった。「大看板の名跡が人々に忘れられないうちに継がせたい」が、五代目柳家小さんの生前の意向で、円歌会長も踏襲。
柳家の“芸の主軸”である小三治が近年の三語楼の高座での充実ぶりなどを挙げて推挙。人望のある副会長の馬風や、専務理事の三遊亭金馬ら理事会の総意で決まり、円歌会長が断を下した。
既に三語楼は03年度の芸術祭演芸部門で大賞を受賞しており、五代目小さん、三語楼、孫の花緑での“親子三代落語会”の成果なども知られるところ。芸術祭大賞は映画の山田洋次監督が五代目小さんのために書き下ろした「真二つ」などを演じたもので、父の芸の踏襲、研さんにも余念がなかった。
02年に五代目が他界したとき、六代目は将来小三治が襲名するとみられていた。しかし、小三治自身は継がない考えもあって理事会で強力に三語楼をプッシュ。三語楼の実姉でバレエダンサー、俳優としても名高い十市(じゅういち)、落語家・柳家花緑の母でもある喜美子さんも将来、花緑が七代目小さんを継ぐことを視野に実弟が継ぐことに賛成している。
落語協会では今秋、三遊亭小田原丈、三遊亭金太、橘家亀蔵、五街道喜助、林家すい平の5人を真打ちに昇進させるが、この日の理事会では来春の“5人真打ち”柳家風太郎、林家久蔵、柳家三三、柳家小太郎、柳家さん光の昇進を決定。その席上で三語楼の六代目小さん襲名が持ち出されたもので、時期は来秋で事務局が調整に入った。
今春の林家こぶ平の九代林家正蔵襲名に続いて、大看板がまたまた復活することで寄席演芸界が一段と活気づきそうだ。
◆三代目柳家三語楼(やなぎや・さんごろう)本名小堀義弘。1947年(昭22)7月21日、東京都生まれ。63年、父の五代目柳家小さんに入門して小太郎。67年、小ゑんで二ツ目。76年、三代目柳家三語楼を襲名して真打ち昇進、戦後生まれの真打ち第1号に。恵美子(55)夫人は「花柳孝寿加(たかすが)」の名で舞踊の名手。このため「自分が養子になった方が早い」と結婚。“よっちゃん”の愛称で親しまれるほど人柄の良さは苦労人並みと定評がある。「笠碁」「長短」「大工調べ」など柳家の古典を踏襲。